第102回
ドキュメントスキャナ
富士通(PFU) ScanSnap S1500
(2010年4月1日購入・2011年2月12日著)



ScanSnapを買い換えよう

 ロードテスト第32回で購入した富士通(PFU)のドキュメントスキャナ「ScanSnap fi-5110EOX2」はプリンタ給紙トレイに用紙をセットする様に原稿をセットすると、A4までの原稿を連続で両面スキャンしてくれるというスキャナである。これのおかげで、我が家にある大量の雑誌や小説、漫画などを電子化する事ができ、本棚を圧迫して、物置にも入っていた書籍類を処分することができた。今でもパソコン雑誌は最新1年分を残して、漫画雑誌は読み終えたらスキャンすることで、我が家に紙媒体で残っている書籍が増えない様になっている。しかし大量のスキャンを行った「ScanSnap fi-5110EOX2」はかなり弱っていた。そこへきて、買い換えるタイミングがやってきたのである。
 「ScanSnap fi-5110EOX2」では定期的に交換が必要なパーツが2つある。「パッドユニット」と「ピックローラーユニット」である。「ScanSnap fi-5110EOX2」では用紙が詰まった時やCCDセンサーのガラス面が汚れた際に対応できる様に、前面を手前に開けることで、原稿が通る内部にアクセスできる様になっている。2つのパーツはいずれもその部分に取り付けられている物で、簡単に交換ができる。「パッドユニット」は、原稿の入り口近くの、ちょうど原稿をセットする位置の下の方にある板バネのようなもので、原稿を適度に押さえるパーツである。そして「ピックローラーユニット」はその名の通りローラーで、原稿送りを行うパーツである。「パッドユニット」は「5万枚または1年ごと」が交換目安、「ピックローラーユニット」は「10万枚または1年ごと」が交換目安となっている。そして、「ScanSnap fi-5110EOX2」では、パソコンのタスクトレイに常駐する「ScanSnap Manager」で、スキャン枚数を確認することができる様になっている。しかも、製品購入後の総スキャン枚数だけでなく、それらのパーツを交換した際にリセットボタンを押すことで、それぞれのパーツの交換後のスキャン枚数が分かる様になっている。さらに、それぞれ交換目安の枚数を超えると、数字が赤くなって交換時期であることを主張してくるのだ。しかし、この「5万枚」や「10万枚」は「目安」というわりには、わりと正確な数値である。実際にこれらの枚数に達する直前になると、「パッドユニット」の場合は、原稿の押さえが弱くなるためか、原稿が複数枚同時に給紙してしまうマルチフィードの発生率が極端に上がるし、「ピックローラーユニット」の場合は、表面がつるつるした紙では空転して給紙できなくなったり、給紙しても途中から原稿が進まなくなったりしてしまうのである。実際にこれらの症状が発生するので、もしかしてと思いスキャン枚数を確認すると、交換目安を超えているという事はよくあるのである。
 さて、この「パッドユニット」は定価が1,995円とまだ安価なのだが、「ピックローラーユニット」は6,195円となかなかの価格なのである。補修パーツであるため、ヨドバシカメラで購入してもそれぞれ1,990円(10%ポイント還元)と6,190円(10%ポイント還元)とポイント還元分程度しか安くならない。それでも、約5万枚の時点で「パッドユニット」を、約10万枚の時点で「パッドユニット」と「ピックローラーユニット」を、そして約15万枚の時点で「パッドユニット」を交換してきた。そして、今回20万枚を超え、2度目の「パッドユニット」と「ピックローラーユニット」の両交換の時期がやってきたのである。両方買うとなると、8,180円とそれなりの価格であるため、もう一度交換するのか、本体ごと買い換えるかを決めるタイミングとなる。一度交換してしまえば勿体ないので約30万枚の時点まで本体の買い換えチャンスはない。これまでも、ScanSnapシリーズは何度もモデルチェンジしているが、「ScanSnap fi-5110EOX2」と比べてスキャン速度や解像度などはかわっておらず、小さな改善や機能追加にとどまっていたため、買い換えるほど魅力的な製品に見えず、引き続き「ScanSnap fi-5110EOX2」を使ってきた。しかし、ちょうど少し前に発売された「ScanSnap S1500」はスキャン速度の大幅な向上に加えて、「超音波方式マルチフィードセンサー」が搭載されるなど(詳細は後述)、大幅なモデルチェンジを果たしていたのである。これならば買い換えるほどの魅力を感じる製品である。ちょうど読み取り部のガラスに傷が入ったのか、スキャン結果に縦筋が入る様になっていた事と、さすがに5年で20万枚も読み取れば、十分に使ったという感じがあるため、思い切って買い換えることとした。

ScanSnap fi-5110EOX2の「消耗部品の管理」を表示したところである。5年間で総スキャン枚数が21万8897枚。ピックローラーを1回、パッドを3回交換して使ってきたが、今回両消耗品の交換目安になったところで、本体ごと買い換えることとした。

ScanSnap S1500とは?

 ちなみに、これまでの書き方だといきなりScanSnap S1500に買い換えることを決めた様だが、そうではない。「ScanSnap fi-5110EOX2」を購入した時は、家庭向けのドキュメントスキャナは「ScanSnap fi-5110EOX2」以外にに皆無であった。しかし、最近では「自炊」という言葉がはやっている様に、自分で書籍をスキャンしてiPadなどの携帯端末で読むことが流行っている。そのため、数メーカーから製品が出ている。キャノンからは「ImageFORMULA DR-2010C」、コクヨS&TからはA4サイズ対応の「Caminacs NS-CA1W」に加えてA3サイズまで対応の「Caminacs W NS-CA2N」、エプソンも「Offirio ES-D200」を発表するなど、製品は増えている。また、富士通(PFU)自体も、性能は劣るが小型でUSBバスパワー動作する「ScanSnap S1300」を発表している。「ScanSnap S1500」は非常に魅力的な製品だが、他の製品とも比較して決めることとした。しかし他の製品は、スキャン速度が「ScanSnap S1500」に大きく劣るほか、「超音波方式マルチフィードセンサー」も搭載しておらず機能面でも劣る事が分かった。また、パソコン雑誌などの特集記事を見ていると、本体形状の問題かマルチフィードが発生しやすかったり、厚めの用紙の給紙が苦手だったり、用紙外を白色にしようとすると原稿までも欠けてしまったりと、製品によって問題があり、一番欠点が少ないのも「ScanSnap S1500」だったのである。もちろん別製品では、「ScanSnap S1500」ではできないPNGがBMP形式でのスキャンが可能だったりするが、そのために欠点のある機種を買うのも考え物だ。ただでさえ同じメーカーの製品の方が使い勝手が同じであるため、ほぼ同性能なら「ScanSnap S1500」にしようと思っていたところに、スキャン速度も、スキャンソフトの使い勝手も良いというなら、これに決まりである。やはり昔から製品を出しているだけに一日の長があるということだろうか。
 Amazon.comで37,300円で購入した。スキャナとしては決して安い価格ではないが、「ScanSnap fi-5110EOX2」を使ってきて、その便利さはわかっているので、納得の価格である。さらにPDFファイルの編集ソフト「Adobe Acrobat 9 Standard」が付属しているのも大きい。機能限定版ではなく製品版と同等のものが付属しており、これだけでも35,000円程度するソフトであるため、お得感は非常に高い。

ScanSnap S1500の外見を見る

 早速製品を見てみよう。製品の箱は非常にコンパクトで、ScanSnap S1500本体の小ささを感じさせるものだ。最近のプリンタ複合機などの大きな箱を見慣れているため、本当にスキャナが入っているのかと思うほど小さい。早速SacnSnap S1500を取り出してみると、これまで使っていたScanSnap fi-5110EOX2とサイズや重量がほとんど変わらない感じだ。ただ、デザインは大きく異なり、ScanSnap fi-5110EOX2では「ビジネス向けのパソコン周辺機器」といったイメージだったが、ScanSnap S1500はシルバーで直線的になっておりシャープなイメージになっている。また直線的ながら角は面取りされたようなデザインなので、堅いという感じもない。デザインは圧倒的に格好良くなっている。
 ちなみに、付属品は「スタートアップガイド」や「安全上のご注意」、「保証書」などの最低限の書類が入った袋と、スキャン用のソフトウェアの入った「セットアップDVD-ROM」、「Adobe Acrobat 9 Standard」インストール用のDVD-ROMの他は、ACアダプタとUSBケーブル、A3用紙を2つ折りにしてスキャンするための「A3キャリアシート」のみとなっておりシンプルだ。

ScanSnap S1500の付属品である。書類が入った袋と、「セットアップDVD-ROM」と「Adobe Acrobat 9 Standardインストール用DVD-ROM」のディスク2枚、ACアダプタ、USBケーブル、A3キャリアシートとなっていえる。

 それでは前面から見ていこう。前述のようにシルバーが基本で直線的でシャープなデザインだ。全体的にはシルバーだが、それぞれ原稿台や排紙トレイの一部など、閉じた時に見える部分がシルバーになっているが、各面のパーツは少し離れており独立した形状をしているため、各パーツの隙間から内部の黒い色が見え、単調なシルバー一色ではなく、デザイン的に格好良く見える。また、これまで使ってきたScanSnap fi-5110EOX2では原稿台をたたむと、本体のへこみに収まるようになっているが、ScanSnap S1500では前面全体を覆うため、前面の途中でパーツが分かれておらずスッキリして見える。一方の背面は右側にACアダプタの接続口、左側にUSBポートがある他は、放熱用の穴が空いているだけで、こちらも非常にシンプルである。

ScanSnap S1500の収納時のスタイルである。本体は全体にシルバーになっているが、各面のパーツが独立しており隙間から奥の黒い色が見えるのがなかなか格好良い。また原稿台が本体前面の全体を覆うようになったため、前面が1枚パネルであり、美しくなった。

ScanSnap S1500の背面は、ACアダプタの接続口とUSBポートがある他は、放熱用の穴が空いているだけで、シンプルである。

 本体カバーになっている原稿台を開くと、内部は黒で統一されている。その中でアクセントになっているのが、逆L字にはめ込まれた金属パーツと、Fujitsuのロゴ、そして原稿ガイドである。真っ黒の中でこれらだけが銀色になっており、スマートながらデザイン性は高い。また、逆L字の金属パーツの途中に「Scanボタン」が配置されているため、いかにも「ボタン」という感じで独立しているのとは異なり、デザインの中にうまく取り込まれている。ちなみにScanSnap fi-5110EOX2にあった電源ボタンは無くなっている。

ScanSnap S1500原稿台を開いたところである。内部はブラックだが、逆L字にはめ込まれた金属パーツと、ScanSnapのロゴ、そして原稿ガイドが銀色でありアクセントになっている。

 さらに排紙トレイを手前に開くと、中からは全く同じL字型の金属パーツとロゴが現れる。「Scanボタン」も同じ位置だが、排紙トレイを閉じた状態では「Scanボタン」部分に押し込める透明パーツを使って、奥の「Scan」ボタンを見えるようにしていただけで、排紙トレイを開いたところに見える「Scanボタン」が、本来のボタンである。ちなみに、ScanSnap fi-5110EOX2では、排紙トレイを本体裏側に取り付け、引き出すような形だったが、本体の奥行きより若干長いため、排紙トレイをしまうとはみ出してしまう上に、本体裏側に「取り付ける」というよりは、本体を「上に乗せている」ような感じで、すぐ外れてしまい大変だった。その点で、ScanSnap S1500では排紙トレイも本体と一体化しており、非常に使い勝手は良くなった。

ScanSnap S1500排紙トレイを開いたところである。排紙トレイを開いても、中から同じデザインが現れるのがおもしろい。

 この状態から、原稿台はさらに伸ばすことができ、排紙トレイはもう一段開くことができる。A4サイズの原稿などをスキャンする場合はこの形になる。収納時の状態と比べるとかなり広がったが、これでも設置面積はそれほど大きくはない。スペック上からはわかりにくいが、うれしい改良点の一つに、原稿台の左右にある原稿ガイドが大型化した事である。本体カバーを開けることで原稿台となるが、これまで使用してきたScanSnap fi-5110EOX2の左右の原稿ガイドは、本体カバーの部分にはなく、それより下の本体部分にしかなかった。一方、ScanSnap S1500では、本体カバーと共に左右の原稿ガイドが二つに折れて閉じられるような形状に変更されたため、本体カバー側にも左右の原稿ガイドがあり、左右の原稿ガイドが縦に長くなった。そのため、セットした原稿をしっかり保持できるようになった。

ScanSnap S1500の原稿台と排紙トレイをさらに伸ばしたところである。A4サイズ程度の大きさの原稿をセットする場合はこのスタイルになるだろう。

ScanSnap S1500の左右の原稿ガイドである。原稿ガイドも原稿台と共に二つ折りになる形状に変更されたため、本体カバーの裏側にあたる部分まで長くなり、原稿がしっかり保持できるようになった。

 前面のカバーオープンレバーを手前に引くと、前面のADFカバーを開くことができ、内部のCCDセンサーのガラス面やローラーなどを見ることができる。両面にCCDセンサーがあるのが、両面同時スキャンができる事を示している。のりが残っている原稿を読んでしまいガラス面が汚れた場合や、内部にホコリが入ってしまった場合など、スキャン結果に変な筋が出てしまった場合に簡単に拭くことができる。

ScanSnap S1500の前面のADFカバーを開くことで内部にアクセスできる。両面スキャンができるだけあって、CCDセンサーのガラス面が両面に見える。スキャン結果に変な筋が出てしまった場合にガラス面を簡単に拭くことができる。


ScanSnap S1500とfi-5110EOX2を比較する

 ScanSnap S1500と、それではこれまで使用してきたScanSnap fi-5110EOX2を比較してみよう。まずはカタログ上のスペックからである。

機種名
ScanSnap S1500
ScanSnap fi-5110EOX2
発売日
2009年2月7日
2004年10月19日
両面スキャン
スキャンカラーモード
カラー/グレー/白黒
カラー/白黒
光学系/イメージセンサー
非球面レンズ縮小光学系/カラーCCD×2(表面×1、裏面×1)
非球面レンズ縮小光学系/カラーCCD×2(表面×1、裏面×1)
光源
白色冷陰極管
白色冷陰極管
スキャン解像度
ノーマル
カラー/グレー:150dpi
白黒:300dpi相当
カラー:150dpi
白黒:300dpi
ファイン
カラー/グレー:200dpi
白黒:400dpi相当
カラー:200dpi
白黒:400dpi
スーパーファイン
カラー/グレー:300dpi
白黒:600dpi相当
カラー:300dpi
白黒:600dpi
エクセレント
カラー/グレー:600dpi
白黒:1200dpi相当
カラー:600dpi
白黒:1200dpi
スキャン速度
(A4縦)
ノーマル
20枚/分(片面・両面)
15枚/分(片面・両面)
ファイン
20枚/分(片面・両面)
10枚/分(片面・両面)
スーパーファイン
20枚/分(片面・両面)
5枚/分(片面・両面)
エクセレント
5枚/分(片面・両面)
0.5枚/分(片面・両面)
スキャン可能サイズ
最小サイズ
50.8×50.8mm
50.8×50.8mm
最大サイズ
216×360mm
216×360mm
長尺読取
○(863mmまで)
A3キャリアシート対応
対応原稿厚さ
52g/m2〜127g/m2(45kg/連〜110kg/連)
52g/m2〜127g/m2 (45kg〜110kg/連)
原稿搭載枚数
最大50枚
最大50枚
マルチフィード検出
超音波センサー方式重なり検出
長さ検出
長さ検出
インタフェース
USB2.0
USB2.0
本体サイズ(幅×奥行×高)
292×159×158mm
284×146×150mm
本体重量
3.0kg
2.7kg
ドライバ
独自(TWAIN、ISIS非対応)
独自(TWAIN、ISIS非対応)
付属ソフトウェア
スキャンソフト
ScanSnap Manager V5.0
ScanSnap Manager V3.0
PDF/JPEGファイル整理・閲覧ソフト
ScanSnap Organizer V4.1(
ScanSnap Organizer V1.0
Adobe Photoshop Album2.0 Mini
名刺管理ソフト
名刺ファイリングOCR V3.1
名刺ファイリングOCR V1.2
PDF編集ソフト
Adobe Acrobat 9 Standard 日本語版
Adobe Acrobat 6.0 Standard 日本語版
OCRソフト
ABBYY FineReader for ScanSnap 4.1

 この2機種の発売日には4年4ヶ月ほどの開きがある。ScanSnap fi-5110EOX2の後は、純粋な後継製品としては、ScanSnap fi-5110EOX3、ScanSnap S500、ScanSnap S510という順で後継製品が発売され、その次が今回購入したScanSnap S1500となるため、4世代後の製品と言うことになる。2機種とも両面スキャンができるのは当然として、そのための光学系/イメージセンサーには「非球面レンズ縮小光学系/カラーCCD」が裏表に各1つずつ搭載されているのも同等だ。光源も「白色冷陰極管」で同じであり、今はやりの白色LEDにはなっていない。もちろんこの間に細かな改良はなされているのだろうが、基本的には大きくは変わっていないと言うことがわかる。最近ではイメージセンサーにCCDではなくCISセンサーが使用される事も多いが、CISセンサーもかなり改良されたとはいえ、画質的にはCCDセンサーの方が上であるため、CCDセンサーが引き続き採用されているのはうれしいところだ。唯一異なるのは、ScanSnap fi-5110EOX2では「カラー」か「白黒2値」の2種類しか選べなかったカラーモードが、新たに「グレースケール」にも対応している事である。
 スキャン解像度は、「ノーマル」「ファイン」「スーパーファイン」「エクセレント」という設定名となっており、それぞれカラーの場合150dpi、200dpi、300dpi、600dpiとなる。これは両機種共通である。つまり4年4ヶ月たっても、解像度は向上していないことになる。とはいっても、写真1枚を取り込んで修正したり編集するのならば、できるだけ高解像度で取り込みたいだろうが、ScanSnap S1500は何十枚、何百枚とある紙原稿を電子化するのが目的の機種なので、あまり高い解像度で読み取ると、ファイルサイズが大きくなりすぎてしまう。300dpiでの十分小さな文字を読み取れ、600dpiともなるとA4サイズなら4961×7016ドットになる。600dpiを超える解像度で取り込む事があるとは思えないため、高解像度に対応するために価格が上がったり、スキャンスピードが落ちるくらいならこれで十分な性能だと言えるだろう。
 ScanSnap S1500の売りの一つにスキャンスピードの高速化が挙げられる。1500dpiのノーマルや200dpiのファインではそれほど差は無い様に見えるが、ScanSnap fi-5110EOX2では解像度が上がるほど速度が低下していたのに対して、ScanSnap S1500では300dpiのスーパーファインまで同じ速度を維持している。そのためスーパーファインではScanSnap fi-5110EOX2の5枚/分から20枚/分へと4倍高速化していることになる。さらに600dpiのエクセレントでは、さすがにスーパーファインよりは遅くなるものの5枚/分となっており、ScanSnap fi-5110EOX2の0.5枚/分と比べると10倍速になっている。最近ではパソコンの処理性能もアップし、ハードディスク容量も増え、バックアップに使用するメディアも25GB〜50GBの容量のBlu-rayディスクへと移行しているため、高解像度でスキャンする機会が増えてきている。実際に私の場合も、ScanSnap fi-5110EOX2を購入した頃は、文字原稿は200dpi(ファイン)で、雑誌や漫画などは300dpi(スーパーファイン)だったが、最近では写真や絵の多い雑誌や、サイズが小さな漫画の単行本などは600dpi(エクセレント)で、それ以外は300dpi(スーパーファイン)でスキャンしている。そのため、高解像度を中心にスキャン速度がアップしているのはうれしいところだ。
 ちなみに、スキャン速度だが、ScanSnap fi-5110EOX2の後継機種を順に見てみると、ScanSnap fi-5110EOX3ではスーパーファインが5枚/分、エクセレントが0.5枚/分であり、ScanSnap S500で6枚/分と0.6枚/分、ScanSnap S510も6枚/分と0.6枚/分なので、今回のScanSnap S1500で一気に高速化したことが分かる。
 スキャン可能なサイズは最小、最大共に変化していない。原稿の厚さも同等である。ただ、ScanSnap S1500では長尺読み取りに対応している。この機能を使えば、通常は360mmまでの長さの用紙しかスキャンできないところが、863mmまでスキャンできるわけである。横幅は216mmが限度なのは変わらないので、216×863mmまでがスキャンできる。とはいっても、A4サイズが210×297mmなので、多少縦に長い原稿でも360mmまで対応していれば、問題なさそうに思えるかもしれない。しかし、例えばマンガの単行本や小説の表紙カバーは、裏から表に回り込んでいる上に、中にも折り込まれているためにかなり長くなる。これまではフラットベッドスキャナなどで、分けてスキャンするしかなかったが、これで一気にスキャンが行える様になったわけである。ちなみにセットできる原稿枚数も変更はないが、最大50枚セットできれば、とりあえずは不満はないだろう
 ScanSnap S1500のもう一つの大きな進化点がマルチフィードの検出方法である。詳しくは後述するが、新たに超音波センサー方式を採用している。これはより高価なビジネスモデルなどに採用されてきたもので、個人向けの製品に搭載されたのは初めてだ。これまでの長さを検出する方式に対して、精度が高いマルチフィード検出が行える。
 インタフェースはUSB2.0とScanSnap fi-5110EOX2と同じである。高速化されたとは言ってもUSB2.0で転送速度が不足するほどではないため、これで十分である。本体サイズは、ScanSnap fi-5110EOX2と比べると、全体的に一回り大きくなったという感じだ。重量も1割ほど増えている。それでもVHSビデオテープが188×104mmなので、設置面積は3本横に並べたよりも小さく、A4サイズよりも幅を4分の3にしたような大きさだ。A4サイズの原稿がスキャンできるのに設置面積がA4サイズより小さいのはすごいだろう。
 ドライバは独自のものでTWAINなどには対応していない。そのためフォトレタッチや画像編集ソフトで直接読み取ることができない。スキャンは専用のスキャンソフト「ScanSnap Manager」からスキャンする事になる。画像編集ソフトから直接スキャンできないのは不便に感じそうだが、実際には連続で何十枚とスキャンするため、画像編集ソフトで直接スキャンして開くという使い方は考えにくく、この方式でも問題ないだろう。
 このように、ScanSnap S1500は大きく変わらない部分と大きく変わった部分がある事がわかるだろう。従来のままでも、ドキュメントスキャナという範囲の使い方では問題ない部分はそのまま、不便だった部分は大きく改善されているため、全体的な完成度が大きく改善しているという印象だ。

 それでは、実際に並べて比較してみよう。ScanSnap S1500はScanSnap fi-5110EOX2よりサイズ上は一回り大きいが、実際に収納状態で並べて見ると違いはない様に見える。前面もScanSnap fi-5110EOX2が軽くふくらんでいたのに対して、ScanSnap S1500では平らになっているため、むしろ小さくなったようにも思えるほどだ。原稿台と排紙トレイを開いても、サイズはほぼ同じである。違いがあるとすると、前述の左右の原稿ガイドがScanSnap S1500の方が大きくなっていることと、原稿台や排紙トレイの1段目の横幅が大きくなっている事である。つまり、原稿がよりしっかりとセットできるようになっていると言うことである。

ScanSnap S1500(右)とScanSnap fi-5110EOX2(左)の収納スタイルでの比較である。スペック上はScanSnap S1500の方は一回り大きい事になっているが、実際に比べるとサイズの違いはわからない。

ScanSnap S1500(右)とScanSnap fi-5110EOX(左)の原稿台と排紙トレイを開いた状態での比較である。やはりサイズは同じように見える。左右の原稿ガイドの長さと、原稿台と排紙トレイの1段目の横幅が大きくなり、原稿をよりしっかりセットできるようになっていることがわかる。

 最後に、原稿が原稿台と排紙トレイにある状態で、横から比較してみた。ScanSnap fi-5110EOX2では原稿台から本体内を通って排紙トレイに至るまで緩やかなカーブを描いているのに対して、ScanSnap S1500では、原稿台から本体内を通るところまではほぼ直線で、本体を出たところで急にカーブしているという違いがある。一見すると全体に緩やかなカーブを描いている方が原稿の通り方としては綺麗に見える。しかし、厚めの用紙や滑りやすい用紙の原稿の場合、少しのカーブでも影響して、用紙が詰まってしまったりローラーが滑ってしまう事もありえる。そのため、ScanSnap S1500のように原稿台からスキャナ内部に至るまではできるだけ直線になっている方が望ましいのである。微妙な改良点ではあるが、少しでも精度を上げようという努力はさすがである。

原稿が原稿台と排紙トレイにある状態で、横から比較した写真である。ScanSnap S1500の方が原稿台から本体内部にかけてが直線的であり、用紙が詰まったりローラーが滑ったりしにくくなるよう改良されている。

スキャンの設定を行う

 それでは、スキャンのを行う前の設定を行ってみよう。設定は全て付属のスキャンソフト「ScanSnap Manager V5.0」上で行うことになる。ここで行った設定を元に、本体の「Scanボタン」を押すと、その設定でスキャンが実行されるというしくみである。
 「ScanSnap Manager」はタスクトレイに常駐しているので、ダブルクリックすると設定画面が開く。ちなみに、このタスクトレイのアイコンは、ScanSnap S1500が接続されて電源が入っている場合は、禁止マーク(丸に斜線マーク)が消えるようになっており、使用できるかどうか一目で判断ができる。ちなみに、設定は接続されていない状態でも行える。ScanSnap Managerの設定画面は、デフォルトでは「クイックメニュー」になっている。「クイックメニュー」では「おすすめ」「コンパクト」「きれい」の3種類から選ぶだけであり、非常に簡単で分かり易いが、少し物足りない。「コンパクト」を選ぶとファインモード(200dpi)で、「きれい」を選ぶとスーパーファインモード(300dpi)でスキャンするが、圧縮率は真ん中の「3」であり、より低い圧縮率や、エクセレントモード(600dpi)を選ぶこともできず、ファイル名も指定できない。そのため、少しでも慣れたら「クイックメニューを使用する」のチェックを外し、さらに「詳細」ボタンを押して、詳細設定の画面を表示して設定すると、より細かな設定が行える。
 詳細設定の画面にすると、6つのタブに分かれる。それぞれのタブでは、設定項目も数種類になっているので非常にシンプルで分かり易い。基本的な設定は各タブを切り替えて簡単に行える様になっている。そして、より詳細な設定は、それぞれのタブに「オプション」や「カスタマイズ」ボタンをクリックすることで開くことができる。
 一番左のタブは「アプリ選択」である。ここではスキャン後にアプリケーションの起動を行うかどうかを設定できる。「Adobe Acrobat」を選択すれば、スキャンしてPDFファイルで保存したスキャン結果を開くことができる。「名刺ファイリングOCR」を選択すれば、OCRを実行できる。そのほか、Word文書に変換やメールで送信などを選ぶことができる。おもしろいのは、「プリンタで印刷」で、これを選べば、ScanSnap S1500とプリンタを用いて、複数枚の原稿を一気にコピーできる。ここで、「アプリケーションを起動しません(ファイル保存のみ)」を選んでいれば、スキャンしてファイルに保存するだけになるため、単純に紙原稿を画像データとして電子化するだけなら、これが一番シンプルである。

「アプリ選択」タブの画面である。スキャン後に「Adobe Acrobat」で開いたり、OCRを実行したり、Word文書に変換したり、メールで送信したりといった動作を選ぶことができる。もちろんファイルに保存するだけで何もしないという選択肢もある。

 「保存先」タブでは、スキャンしたデータの保存先を設定できる。また、「ファイル名の設定」を押すと、スキャン年月日時分秒のファイル名や、自由な文字列+好きな桁数の連番というファイル名を選択できる。

「保存先」タブの画面である。保存先を選択することになる。

「保存先」タブで「ファイル名の設定」を押すと、ファイル名の形式を指定できる。スキャン日時を元にファイル名にする方法と、自由な文字列+連番という選択肢が用意される。

 「読み取りモード」タブでは、まず画質の選択が行える。前述のノーマル、ファイン、スーパーファイン、エクセレントから選択できる。残念ながら4段階からしか選べず、100dpiなどの低解像度や400dpiなどの解像度を指定することができないのは残念だが、その分わかり易い。カラーモードの選択では、「カラー」「グレー」「白黒」「カラー高圧縮」を選択できる。画像の種類によって選択することになるが、「カラー」と「カラー高圧縮」がある上に、別途圧縮率の項目があるのがややこしいと言える。写真や図などの原稿の場合は、「カラー」を選択し、圧縮率の設定(後述)を利用する方が、文字の多い原稿をで、しかも「スーパーファイン」モードの場合は、「カラー高圧縮」を選択する方がファイルサイズが小さくなると言う。とはいっても、「カラー高圧縮」では、かなり画質は荒れてしまうので、パソコンのハードディスクや、DVDやBlu-rayなどのメディアに保存する場合はファイルサイズが大きくなっても綺麗にスキャンできる方が良いので「カラー」を選択する方が良さそうだ。一方、メールに添付して送るなどの場合は、「カラー高圧縮」や「カラー」を選んで圧縮率の設定で圧縮率を高くした方が良さそうだ。また、読み取り面の選択では「両面」か「片面」を選択できる。さらに下には「継続読み取りを有効にします」のチェックボックスがある。これにチェックがある場合、原稿台にセットした原稿のスキャンが終了すると、「読み取り終了」か「継続読み取り」かの選択肢が表示される。PDFファイルで保存する場合は、続けてスキャンして1つのファイルにできるし、JPEGで保存する場合でも読み取り枚数が確認できるので、チェックを付けるのがお勧めだ。
 「オプション」をクリックすると、「文字をクッキリします」「白紙ページを自動的に削除します」「文字列の傾きを自動的に補正します」などのオプションが表示される。「文字をクッキリします」は、コントラストが強くなり文字が見やすくなるが、写真などは濃い色の部分がつぶれてしまいがちになるため、文字原稿や白黒原稿で使用した方が良さそうだ。「白紙ページを自動的に削除します」は、その名の通り白紙ページを削除してくれるため、両面と片面原稿が混在している場合に力を発揮する。ただ、白紙ページでも用紙が汚れていたり、裏移りしている場合は削除されないことがあるようだ。「文字列の傾きを自動的に補正します」は、書類などの原稿で傾いてスキャンされたものを補正してくれる便利な機能だが、雑誌などをスキャンすると、斜めに書かれたタイトル文字や写真の中の文字を基準に傾き補正をし、かえっておかしくなることもある。文字列が確実に横方向に書かれている書類などで使用するのがお勧めだ。

「読み取りモード」タブの画面である。スキャン解像度と、カラーモード、両面か片面かを選択できる。「継続読み取りを有効にします」をチェックしておけば、原稿台の原稿をスキャンし終えた後、続けて原稿をスキャンし、一つのPDFファイルにまとめることができる。

「読み取りモード」タブで「オプション」を押すと、様々なオプションが表示される。それぞれ便利な機能だが、原稿の種類によっては逆効果になる場合があるので注意が必要だ。

 続いて「ファイル形式」タブである。ファイル形式は選択できると言っても「PDF」と「JPEG」しかない。JPEGは非可逆圧縮なので、どうしてもスキャンしたデータが圧縮された時に画質が落ちてしまう。できればPNGなどの可逆圧縮形式が選択できると良かったのだが。数少ないScanSnap S1500の不満点の一つである。ちなみにPDFを選択した場合、様々なオプションが選べる。おもしろいのは、スキャンする前に原稿のキーワードになる文字列にマーカーを引いておくと、スキャン時に自動的にキーワードに設定してくれる機能である。紙原稿の電子化を目的とした機器ならではの機能である。また、オプションをクリックすると、一つのPDFファイルが大きくなりすぎないように設定ページごとに分けることができたり、パスワードをかける事ができる。

「ファイル形式」タブの画面である。ファイル形式は「JPEG」か「PDF」しか選択できないのは残念だが、「PDF」の場合、あらかじめ原稿にマーカーを引いておいた部分をキーワードにできるという便利な機能が用意される。

 「原稿」タブでは、原稿サイズを設定できる。「カスタマイズ」ボタンを押せば、1mm単位で自由なサイズを設定でき好きな用紙名を付けて10個まで保存しておけるため、雑誌や単行本のサイズなど、よく使う特殊サイズの用紙サイズは登録しておくと便利だ。また、マルチフィード検出を、「しない」「長さで検出」「重なりで検出(超音波)」から選択できる。通常は精度の高い「重なりで検出(超音波)」にしておくことになるだろうが、2枚重ねの用紙をスキャンするなど、超音波方式では問題がある場合は、他の設定にできる。このあたりも細やかである。

「原稿」タブの画面である。原稿サイズを指定する事ができる。また、マルチフィード検出の方法も選ぶことができる。

「原稿」タブで「カスタマイズ」を押すと、自由なサイズの用紙を設定できる。最大で10個だがよく使う用紙サイズは登録しておくと便利だ。

「追加」ボタンを押すと、このような入力画面が現れる。幅と長さを1mm単位で指定でき、好きな表示名で保存できる。

 「ファイルサイズ」タブでは、圧縮率を5段階から設定できる。当然、圧縮率を低くすれば画質は上がるがファイルサイズは大きくなる。用途に合わせて設定する事になるが、圧縮率1でもそれなりにJPEGノイズが発生しているため、保存容量が許すならば、圧縮率は低めが良さそうだ。

「圧縮」タブの画面である。圧縮率は5段階で指定できるが、圧縮率1でもそれなりにJPEGノイズが発生するため、保存容量が許すなら圧縮率は低めにしておきたいところだ。

 さて、これらの設定が行えるわけだが、こうした設定は名前を付けて登録しておくことができるため便利だ。毎月購入した雑誌をスキャンするなどの場合でも、その都度設定をし直す必要が無い。私の場合、パソコン雑誌やマンガ雑誌などを毎号スキャンしているが、雑誌ごとにサイズが微妙に異なるし、パソコン雑誌はPDFで、マンガ雑誌はJPEGでスキャンするなど、それなりに設定が異なるため、それぞれを登録しておけるのは手間がかからなくて良い。

スキャンを実行する

 それでは、実際にスキャンを実行してみる事にしよう。前述の設定が完了していれば、次は、原稿を原稿台にセットする事になる。ScanSnap S1500の原稿台を開くと自動的に電源が入るため、電源ボタンを押す手間すらなく、非常に分かり易く便利だ。あとはUSBケーブルさえつなげばOKだ。ちなみに電源を切るときはUSBケーブルを外すか、原稿台を閉じるだけと、こちらも分かり易い。原稿のセットは、原稿をそろえて原稿台に挿し込み、左右のガイドを用紙幅にそろえれば完了である。前述のように左右のガイドは、これまで使っていたScanSnap fi-5110EOX2と比べると大型化しているため、原稿をしっかりセットできる印象だ。
 原稿をセットしたらScanSnap S1500に唯一あるボタンの「Scanボタン」を押す。すると即座にスキャンが始まる。次々と原稿が吸い込まれ、スキャンが行われていく様はなかなかおもしろいものがある。スキャンをよく見ていると、前の原稿が排紙されるまでに次の原稿の給紙が行われている。前の原稿を排紙してから次の原稿を給紙するよりも、スキャンの間が少なくなるため、結果的にスキャンは高速になる。ちなみに大型化した左右の原稿ガイドのおかげで、ScanSnap fi-5110EOX2よりも原稿の上の方まで左右から固定できるため、スキャン中に原稿が傾いてしまう事が、少なくなった。ただ、この左右の原稿ガイドはスムーズに動かせる反面、軽い力で動いてしまうため、吸い込まれる用紙によって徐々に開いていき、用紙が傾きやすくなってしまう事があった。左右の原稿ガイドの隙間にペンなどを数本挿し込んで動かないようにして使用しているが、少し残念な部分である。もう少しガイドを堅くするか、原稿ガイドをつままないと動かせないような仕組みになっているとより使いやすかったと言えるだろう。
 スキャンすると同時に、スキャンしたデータはパソコン上で処理が進行する。ファイル形式で「JPEG」を選んだ場合、次々にJPEG圧縮され、原稿の1面ずつがJPEGファイルとなって保存されていく。保存先に指定したフォルダを見ていると、スキャンと同時に次々とファイルが作成していく様子が見られる。「継続読み取りを有効にします」にチェックを付けている場合、原稿を全てスキャンすると、画面に「継続読み取り」か「読み取り終了」か表示される。次の原稿をセットして「継続読み取り」をクリックするか、ScanSnap S1500本体の「Scanボタン」を押せば引き続きスキャンが行われるが、原稿の1面ずつが独立したファイルになって保存されるため、一端「読み取り終了」をクリックして、再度スキャンを実行しても結果は同じである。
 一方、ファイル形式で「PDF」を選択した場合は、スキャンを行いながらある程度の処理を同時に行っているようだが、まだPDFファイルとしては作成されない。原稿を全てスキャンすると、同じように画面に「継続読み取り」か「読み取り終了」か表示される。同じPDFファイルとして保存する続きの原稿がある場合はをセットして「継続読み取り」をクリックするか、ScanSnap S1500本体の「Scanボタン」を押せば引き続きスキャンが行われる。この際、継続読み取り時に、ScanSnap S1500本体の「Scanボタン」を押しても「継続読み取り」になるのが便利だ。わざわざ原稿をセット後にパソコンの操作が不要で、原稿をセット→Scanボタンという流れが分かり易い。一方、1つのPDFファイルにする全ての原稿のスキャンが終わった場合は「読み取り終了」をクリックする。すると、PDFファイルの作成に入り、しばらくするとPDFファイルができあがる。この処理にはパソコンのCPUの処理性能や、ハードディスクの速度にもよるが、ある程度時間がかかる。数十ページなら1分以内だが、200ページも300ページも一気にPDFファイルにするとなると、数分かかってしまうのは仕方のないことだろう。
 ちなみに、スキャンしながらパソコンで処理が行われると書いたが、最新のノートパソコンVPCF13AGJ(CPU:Core i7 740QM(4コア8スレッド1.73GHz)・メモリ:4GB・ハードディスク:500GB 5400rmp・OS:Windows 7 Professional)では、ファイル形式が「JPEG」でも「PDF」でもほぼリアルタイムに行われる。そのため、スキャンが終了すれば、すぐにスキャン終了のメッセージが表示されるため、次のスキャンに入ることができる。しかし、少し前のノートパソコンVGN-SZ94S(CPU:Core 2 Duo T7100(2コア2スレッド1.80GHz)・メモリ:2GB・HDD:80GB 5400rpm・OS:Window Vista Home Premium)では、ファイル形式が「JPEG」の場合はリアルタイムに処理が行われるが、「PDF」の場合は、「JPEG」より処理内容が多いのか、300dpiの「スーパーファイン」モードでスキャンしていると、スキャンの1.5倍ほどの時間が処理にかかってしまう。その結果、スキャン動作自体が終わっても、パソコン上にスキャン終了のメッセージが表示されるまで、スキャンにかかった時間の半分ほどの時間がさらにかかってしまう。せっかく高速にスキャンできるようになったScanSnap S1500のメリットが薄れてしまうので、PDF形式でスキャンする場合はそれなりの処理速度のパソコンで行った方が良さそうだ。ちなみに600dpiの「エクセレントモード」でのスキャンでは、スキャンした原稿のドット数は4倍になるが、スキャンスピードは公称値で10分の1に落ちるため、パソコン上での処理の遅延が発生することはなかった。
 ちなみにスキャン時の動作音だが、300dpi以下と600dpiではスキャン音が異なる。300dpiでは、ウィーンという機械音である。ある程度音はするが、耳障りな音というわけではなく、会話やテレビの音を邪魔するほどのものではない。ちなみにこれまで使ってきたScanSnap fi-5110EOX2と比べると音が高くなっているが、少し小さくなったように感じる。一方600dpiでは、プィィィーンと少し高めの音になる。こちらの方が音としては気になる音ではあるが、こちらもそれほど大きな音ではないので大して気にならないだろう。こちらはScanSnap fi-5110EOX2より高速化したためか、少し音は大きくなったようだ。

スキャン停止とマルチフィード

 ちなみに、ScanSnap S1500の原稿の給紙自体は非常にスムーズで、給紙後に空転することも皆無だ。マンガ雑誌のようなザラザラした紙だけではなく、写真の多い雑誌に使われるツルツルした紙でも、全く問題なく給紙・紙送りをしてくれる。これは前述のように原稿が内部で曲がらず、原稿台からまっすぐ紙が送れるように工夫されているためだろう。ScanSnap fi-5110EOX2でもほぼ直線的であったためにもともと給紙や、紙送りに失敗することは少なかったが、ScanSnap S1500ではより完璧になっている。
 もし、スキャン途中で、原稿の向きが途中で間違えていたり、順番がおかしいなどのミスを発見したときは、パソコン上で「中止」ボタンを押すか、ScanSnap S1500本体のカバーオープンレバーを引いて、前面を開けるとスキャンがストップする。どちらでも良いが、カバーオープンレバーの方が瞬間にスキャンを止めることができるため便利だ。
 スキャンを強制的に中断しても、それまでスキャンした内容は保存されている。そして、画面にスキャンがストップした事を示すウィンドウが表示され、「継続読み取り」か「読み取り中止」を選ぶことができる。そしてここからがScanSnap S1500の便利なところだ。間違いに気づくのがスキャンされる前なら、原稿を正しく直して「継続読み取り」をクリックすれば、読み取りを続けることができる。一方、間違えた部分がスキャンされてしまった場合は、「読み取り中止」をクリックするのだが、この際に、「スキャンした原稿を削除するか」という選択肢が表示される。これが意外と便利で、間違えた原稿を一からスキャンし直す場合、スキャンされてしまった部分のファイルを削除しなければならない。しかし読み取り形式を「JPEG」にしている場合は、1面ずつが画像ファイルとして保存されているため、やり直す原稿のスキャン内容のファイルを見つけて削除するのは結構面倒である。しかし、この選択肢があるおかげで、スキャンした画像を一旦消して、やり直すことが簡単に行えるのである。この辺りの細やかな配慮が行われているのは、歴史のあるScanSnapの一日の長の部分と言えるだろう。  また、スキャンしていると、原稿を複数枚同時に給紙してしまう「マルチフィード」が発生する。紙との間には静電気が発生し紙がくっついてしまう事はあるし、雑誌などを分解した際にのりが残っていてくっついていたり、綴じられていた一辺がガタガタになって他の原稿に引っかかることもある。単純に原稿の端が折れているだけでもマルチフィードは発生する。これは仕方がないことで、これをなくすことは難しい。ということは、マルチフィードが発生した際に、それを検知できれば一番良いわけである。
 これまでの機種も長さの検出によるマルチフィード判定を行っており、ScanSnap fi-5110EOX2でもその機能に何度も救われている。しかし長さによる検出の場合、スキャン途中で次の原稿が引っかかり一緒に給紙されてしまうなど、2枚がずれていれば検出できるが、ぴったりくっついて給紙された場合は検出することができない。ScanSnap fi-5110EOX2の時は、原稿を30枚や40枚ずつ数えて原稿台に置くことで、スキャン後に表示されるスキャン枚数と一致するかどうかでマルチフィードを発見できるようにしていた。しかし、この方法は原稿の枚数を数える手間がかかる上に、マルチフィードの部分もスルーして最後までスキャンされてしまうため、PDFファイルのような複数枚の原稿を1つのファイルにする場合は、やり直しにくく、JPEGの場合でもマルチフィードした部分まで削除してやり直す必要があった。
 今回、ScanSnap S1500では、「超音波方式マルチフィードセンサー」を初めて搭載している。このセンサーは、これまで業務用の高価な機種にしか採用されていなかった物で、超音波を使用して給紙された枚数を検出するものである。このセンサーのおかげで、ぴったりくっついて給紙された場合のマルチフィードでも検出できるようになった。実際に今まで5万枚以上のスキャンを行っているが、マルチフィードを検出できなかったことは一度もない。ここまで検出率が高いとは正直驚きである。これは非常に便利な機能だ。
 ちなみにマルチフィードを検出すると、画面にメッセージが表示されスキャンがストップするが、その画面にはマルチフィードとなった原稿の画像と、その前と2つ分の原稿の画像も表示されるため、どの原稿がマルチフィードになってしまい、もう一度原稿台にセットし直す必要があるのかが非常に分かり易い。また、最後に読み取った原稿を残すか残さないかという選択肢も表示される。最後に読み取った原稿と言えばマルチフィードした原稿であり、1枚目の表面と2枚目の裏面をスキャンしてしまっているので「残す」というのは変な気もするが、これはこういった場合である。高価な書籍などの場合、表紙などで2枚の紙を貼り合わせている場合がある。その場合にもマルチフィードとして検出されてしまうが、実際にはスキャンは問題なく行われている事になるため、「残す」を選択して、スキャンを継続するわけである。超音波方式マルチフィードセンサーがあまりにも正確に検出してしまうために起こることだが、その場合の対処法も抜かりが無く、さすがScanSnapである。

マルチフィードが検出された時の画面である。マルチフィードになった原稿を含めて3枚分の画像が表示されるので、どの原稿がマルチフィードになり、もう一度原稿台にセットし直さなければならないのか分かり易い。また最後に読み取った原稿を残すか残さないかも選択できる。

長尺スキャンを行う

 ScanSnap S1500では長さ863mmまでの長尺スキャンを行うことができる。スキャン方法は簡単で、スキャンを開始する際に、「Scanボタン」を3秒以上押すだけである。「Scanボタン」の青色点灯が青色点滅に変わるので分かり易い。長尺スキャンの場合、設定した原稿サイズは無視され自動認識になり、マルチフィード検出も行われない。残念なのは、長尺スキャンの場合、画質は選択でエクセレント(600dpi)が選択できない点だ。確かに600dpiで長尺スキャンを行うと、863mmでは20386ドットになってしまい、あまりにも画像サイズが大きくなるためかと思われるが、最近はCPU性能も上がり、メモリを4GBや8GB搭載する機種も珍しくなく、今後この機種を使っている間にさらにパソコンが高性能化することを考えると、必ずしも扱えないファイルサイズではないだろう。特に、長尺スキャンを使う場合でも、通常のスキャンの最大サイズ360mmを少し超える400mm程度の原稿ではそれほどファイルサイズも大きくならない。実際に長尺原稿を600dpiでスキャンしたいことも多く、完全にロックするのではなくスキャン時に「原稿サイズが大きくなりすぎる可能性がある」という警告メッセージを出すなどにしてもらいたかったところだ。ちなみに、長尺原稿は原稿台を最大まで広げても、半分以上がはみ出してしまい、曲がってしまう。そのままスキャンすると傾く危険性もあるため、長尺スキャン時は手で支えるなど、傾かないようにする必要がある。また、マニュアルには長尺スキャンの場合は1枚ずつ原稿台にセットするように書かれているが、試した限りでは、しっかり手で支えておけば5枚程度なら連続でスキャンしても問題なかった。

スキャン速度と画質を比較する

 それでは高速化されたというスキャン速度を実際に計測してみよう。今回はA4サイズのカタログであるSONYの「VAIO標準仕様モデルカタログ 2009年秋冬号」を使用している。300dpi(スーパーファインモード)でのテストでは、全22枚(44面)のスキャンを、600dpi(エクセレントモード)では、6枚(12面)のスキャンを実行し、その時間を計測している。接続したパソコンはVAIO VGN-SZ94S(CPU:Core 2 Duo T7100(1.80GHz)、メモリ:2GB、OS:Windows Vista Home Premium)で、パソコン上で「両面読み取り」をクリックした瞬間から、最後の原稿が排紙されてスキャナが停止するまでの時間を計測している。なお、パソコンでの処理の方に時間がかかることのないように、保存形式はJPEGで最も圧縮率の低い設定で、傾き補正などはかけずに実行している。

300dpi(スーパーファインモード)スキャン

 まずは300dpi(スーパーファインモード)での結果を見てみよう。これまで使ってきたScanSnap fi-5110EOX2でもそれほど遅いとは感じていなかったスーパーファインモードだが、ScanSnap fi-5110EOC2の2分11秒に対して、ScanSnap S1500では1分02秒と、2.11倍の速度になっている。これは 10.1枚/分から21.3枚/分へとアップしていることになる。公称値は20枚/分ということなので、公称値以上のスピードが出ている事になる。1枚3秒以下となるわけで、さすがに高速化したと言うだけあって、驚きの速度である。ちなみにScanSnap fi-5110EOX2との差が思ったよりも小さいが、これはScanSnap fi-5110EOX2が公称値の5枚/分に対して、10.1枚/分と倍以上の速度が計測されたためである。決してScanSnap S1500が遅いわけではない。

600dpi(エクセレントモード)スキャン

 続いて、600dpi(エクセレントモード)での結果を見てみよう。ScanSnap fi-5110EOX2で2分09秒(2.8枚/分)のところが、1分01秒(5.9枚/分)と、倍以上の速度となっている。ScanSnap fi-5110EOX2が公称値の0.5枚/分を大きく超える2.8枚/分を記録しているために差が小さく見えるが、ScanSnap S1500も公称値の5枚/分を超える速度を出しており、十分に高速である。また、これならば1枚10秒程度であるから、綺麗さを重視する場合には十分に待つ事ができる速度になっているだろう。
 このようにスキャン速度に関しては今となってはそれほど速いほうではないパソコンでも十分に公称値以上の速度が出せることが分かった。300dpiのスーパーファインモードなら、50枚100面の原稿を2分20秒ほどでスキャンできることになる。同じ作業をフラットベッドスキャナで行おうとすると、エプソンのGT-S630ならば300dpiで1枚スキャンするのに約17秒ほどかかり、原稿の交換をかなり素早く行ったとしてもプラス5秒で、1枚22秒。一度に片面しかスキャンできないので、100回同じ操作を繰り返して、2200秒なので、36分40秒もかかってしまう。しかも一度原稿台に置いたら放っておけるScanSnap S1500に比べて、フラットベッドスキャナでは原稿カバーを開けて原稿をセットし原稿カバーを閉じ、パソコンのスキャンボタンを押し、17秒ほど待って原稿カバーを開けて……の繰り返しである。一度セットするだけで、このスピードでスキャンしてくれるScanSnap S1500は、雑誌や書籍、書類の電子化には欠かせない事が分かるだろう。



 今回はドキュメントスキャナの買い換えを行ったわけだが、その進化には驚かされた。コンパクトな本体や、手軽な操作法はそのままに、スキャンスピードが大幅に上がり、さらに超音波方式マルチフィードセンサーによりマルチフィードの検出性能も大幅にアップした。確かに、保存形式がJPEGとPDFしかないなど、不満点が皆無というわけではないが、それよりも優れている点が圧倒的に多くあり、製品全体で見たときの完成度は非常に高い。価格が4万円近くと、スキャナとしては高価な部類だが、この便利さを考えれば決して高い買い物ではない、むしろ安いとまで感じてしまうほどだ。紙の電子化を考えている人は、ぜひ1台持っておいてもらいたい製品だ。またこれまでのScanSnap製品を持っていて買い換えを検討している人に取って、性能の強化点が多いScanSnap S1500は買い時の製品であるといえるだろう。同種の製品間での買い換えでありながら、非常に満足度の高い買い物であった。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
PFU http://www.pfu.fujitsu.com/
ScanSnapのページ http://scansnap.fujitsu.com/jp/