第123回
3.5インチハードディスク
Seagate Barracuda LP ST32000542A
(2011年3月31日購入・2011年07月31日著)



2TBの安価なハードディスクを探す

 ロードテスト第122回で、デスクトップパソコン「VGC-RM50」のシステムドライブをSSDへと交換した。この際、200GBのハードディスク2台のRAID 0構成から、64GBのSSDへと交換している。つまり容量的には400GBから64GBに減ってしまったわけである。以前は400GBをCドライブとDドライブにパーティションを分割して使っていた。Cドライブの容量としては、なんとか64GBでもいけるが、Dドライブの分が丸々無くなってしまっては、使い勝手が悪い。そこで、別のハードディスクを増設し、Dドライブとすることにした。これまでハードディスクを2台搭載していたところに、SSDを1台しか搭載していないため、3.5インチベイには空きがあるため問題ない。ちなみに、現在、編集用のビデオデータなどを入れている1TBのハードディスクが手狭になっていたため、これを新たに購入する2TBのハードディスクへ交換し、余った1TBのハードディスクをDドライブとすることにした。
 さて、ハードディスク選びだが、この時はSSDも購入しているため、予算の都合もあって高価な製品は選べないが、幸い2TBのハードディスクの価格は非常に安くなってきており、特に5400rpm(毎分5400回転)のハードディスクは7,000円を切っている。そこで、大阪日本橋のでんでんタウンでSSDを見て回るついでに、ハードディスクの価格も調査した。性能は求めないので、価格重視といこう。
 やはり、Western Digitalの「WD20EARS-00MVWB0」が安く、最安値で6,450円を付けている店舗もあった。5400rpmではあるが、667GBプラッタを採用しており、キャッシュメモリも64MB搭載しているため、性能は悪くなく、我が家でも何台も使用しているおなじみのハードディスクだ。今回もこの製品かと思っていたら、SeagateのBarracuda LPシリーズの「ST32000542A」が6,440円で販売されていた。最新のドライブではなく、価格が安いと言っても10円なので特に魅力的では無いようにも思えるが、このハードディスクは5900rpmと、安価なドライブながら若干回転数が速いのである。この点に興味がわき、「ST32000542A」を購入する事にした。BEST DO!にて6,440円で購入した。

「ST32000542A」のスペックを見る

 購入したドライブは何の変哲もない3.5インチハードディスクである。ここで、スペックを見てみたいと思う。先ほど、最新のドライブではないと書いたが、どの辺りが違うのだろうか。「ST32000542A」とWestern Digitalの「WD20EARS-00MVWB0」、さらにSeagateの5900rpmの最新ドライブ「ST2000DL003」と比較してみたいと思う。

メーカー
Seagete
Seagete
Western Digital
シリーズ
Barracuda LP
Barracuda Green
Western Digital
型番
ST32000542A
ST2000DL003
WD20EARS-00MVWB0
容量
2TB
2TB
2TB
回転数
5900rpm
5900rpm
5400rpm
プラッタ容量
500GB
667GB
667GB
キャッシュ容量
32MB
64MB
64MB
4KBセクタ
非対応
対応
対応

 これを見ると、最新ドライブと最も違うのは、プラッタ容量という事になる。最近では667GBプラッタを採用し、2TBのドライブの場合プラッタ枚数は3枚というのが一般的だが、「ST32000542A」は500GBプラッタを採用しているため、プラッタ枚数は4枚である。キャッシュ容量も半分の32MBである他、最近のドライブではランダムアクセス時の速度向上のために、セクタサイズが4KBになっているが、「ST32000542A」は512Bとなっている。ハードディスクの読み書き速度には回転数はもちろん重要だが、同じ回転数でもプラッタ容量が大きくなると、1回転当たりの容量も増えるため、読み書き速度は向上する。またキャッシュ容量も多少なりとも影響するだろう。

「ST32000542A」をベンチマークテストで比較する

 そこで、実際にベンチマークテストを使用して「ST32000542A」の性能を比較してみよう。残念ながら、5900rpmの最新ドライブは持っていないため、「WD20EARS-00MVWB0」との比較となる。また、今回実際に増設するのはWindows XPのパソコンであり、「WD20EARS-00MVWB0」でも4Kセクタは使用できないが、ここではハードディスクの性能比較のため、Windows 7のパソコンに接続して計測している。回転数が9.25%ほど速い「ST32000542A」と、プラッタ容量が34%多くキャッシュ容量も多い「WD20EARS-00MVWB0」なので、回転数とプラッタ容量のどちらがより効果的かが分かるだろう。また4KBセクタの効果も分かるはずである。
 接続したパソコンは、SONYのノートパソコン「VPCF13AGJ」でCPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professional 64bit版である。ロードテスト第107回で紹介した「裸族のお立ち台eSATAプラス(CROSU2)」を使用して、パソコンとはeSATAで接続しテストを行っている。ベンチマークテストにはCrystalDiskmark3.0を使用。テストデータ1000MBでテスト回数5回としてテストを行い、これを3回した平均値を求めている。



 結果を見ると、シーケンシャルリードに関しては、ほぼ同等と言って良い性能を示した。また、シーケンシャルライトに関しては、やや「WD20EARS-00MVWB0」が高速だが、その差はわずか4%弱なので、実際に使用していて差を感じることはないはずだ。回転数の高さとプラッタ容量の多さが、ちょうど相殺されているような結果である。
 続いてランダム512Kを見てみると、リード性能に関しては「ST32000542A」がやや高速、ライト性能に関しては「WD20EARS-00MVWB0」が約21%も高速である。このあたりは4KBセクタの効果が出ていると思われる。さらにランダム4Kではその差は顕著である。リード性能に関してはほぼ同等であるものの、ライト性能は「WD20EARS-00MVWB0」の方が2.55倍も高速になっている。
 以上より5900rpmで500GBプラッタの製品と、5400rpmで667GBプラッタの製品はほぼ同等の速度であると言えるだろう。回転数は9.25%の差だが、プラッタ容量は34%の差があるので、回転数の方が性能に影響が出やすいという事も分かる。ランダムライトで「ST32000542A」は性能がふるわないが、これは4KBセクタと512Bセクタの違いによるものだろう。4KBセクタの効果がはっきり分かる一方、Windows XP等の4KBセクタが生かせない環境では、この点の差はないと考えても良さそうだ。



 今回は1世代前の5900rpmドライブを購入し、最新の5400rpmのドライブと比較したが、ほぼ同等性能であることが分かった。考え方は二つあって、1世代前のドライブでは回転数が多少高速でも、最新のドライブと比べると同じレベルになってしまうとも言えるし、逆に1世代前のドライブでも、回転数が速ければ十分最新のドライブ並みの性能が出るとも言える。5900rpmの製品なら、1世代前の製品でも性能面では不満はないので、安ければ買っても損はなさそうだ。また、5900rpmで667GBプラッタの製品が同価格なら、迷わず選ぶべきだろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
Seagate http://www.seagate.com/www/ja-jp/
デスクトップ向けHDD「Barracuda」シリーズのページ http://www.seagate.com/www/ja-jp/products/desktops/