低価格なSD/microSDカード12枚の 速度を比較する (2012年4月14日著)
最近、我が家ではSDカードの枚数が増えている。デジタルカメラだけでなく、携帯電話やNetWalker、そして電子書籍リーダとして使用しているデジタルフォトフレームなど、SDカードやmicroSDカードを使う機会が増えているのである。特に私の場合、電子書籍と言っても、実際の書籍をドキュメントスキャナを使ってスキャンした、いわゆる自炊したもので、漫画や雑誌だけでなく文字だけの小説も全て画像型式なので、それなりの容量になる。一方、電子書籍リーダとして使用しているデジタルフォトフレームは、1枚のメモリカードにあまり画像を入れすぎると読み込みに時間がかかるため、8GBがベストになる。そのため8GBのSDカードを大量に持つことになるのである。そんな時、パソコンパーツショップで売られている低価格なメモリカードが役に立つのである。 家電量販店の店頭では、サンディスクやレキサー、エレコム、サンワサプライ、ソニー、パナソニック、アイ・オー・データ、東芝といった有名ブランドの製品が売られている。メーカーの信頼性が高く、製品のばらつきや相性問題の発生しにくさなどを考えれば、こちらを選ぶ方が良いだろう。しかしながら、価格はある程度高くなるため、大容量の物を買ったり何枚も買うとなると結構な出費となる。一方、パソコンパーツショップなどではノーブランドとまでは言わなくても、あまり聞いたことのない海外メーカーや、パソコン用メインメモリのメーカーのメモリカードが売られている。価格がかなり安いため、メモリカードを大量に使う私としては重宝している。最初は品質が心配だったため、消えてもまたパソコンから転送すればよい一方で容量が特に必要な、電子書籍のデータなどを入れるのに使ってきた。しかし何年使っても1枚も壊れることがなかったため、低価格といえども品質に問題はなさそうだと判断できる。また、様々な製品で使用してきたが、相性問題などが発生したこともなかったため、私としては十分な製品だと言える。今ではデジタルカメラから携帯電話まで、全て低価格なメモリカードを使用している。 しかし、低価格なだけに転送速度が気になるところだ。また、後述のような最低読み書き速度に関する表記や、メーカー独自の読み書き速度がホームページやパッケージに掲載されているが、はたしてどの程度信頼できる物なのかも気になる所だ。そこで、我が家にある低価格なメモリカードを集め、一斉にテストを行ってみた。購入した時期が古い物は価格が高いが、一般的には8GBで1,000円を切るのが目安のようだ。
今回テストに使用したのは、SDカードが8枚、microSDカードが4枚である。現在ではSDHC規格のカードに対応した機器がほとんどだと思われることから、いずれもSDHC規格のものとなっている。また価格から8GBより少ない製品でも、価格があまり下がらないことから、8GB以上の製品を集めた。詳しい製品の規格と容量、購入日とそのときの価格は以下の通りである。 |
SDSDXPA-008G-X46 |
最大書込:90MB/s |
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最大書込:12MB/s |
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最大読込:24MB/s 最大書込:19.5MB/s |
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SDカードを購入する上で、読み書きの速度というのは選ぶ上での重要な要素の一つとなる。ところが、SDカード(SDHCやSDXCを含まない2GBまでの規格の事)の際は、規格にスピードに関する部分は無かった。実際には、主に読込速度を、CDの1倍速の速度150KB/sを基準に何倍速かを記述する製品は多かったが、メーカー独自の測定で、条件が定められていなかったため、あくまで参考にしかならず、また記述のない製品もあった。そこで、4GB以上のSDカードとして、SDHCカードが規格策定されたと同時に、転送速度の目安である「スピードクラス」の表記も定められ、これを記述することが義務づけられるようになった。しかも、測定条件が一定のため、メーカーが異なっても製品が選びやすくなっている。 Classの数字がそのまま「MB/s」になっているため分かりやすい。なお、スピードクラスは、読み込み速度だけでなく、書き込み速度も必要である。これは、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどでビデオ撮影を行ったとき、そのビデオのビットレートの書き込み速度がないと書き込みが追いつかなくなってしまうなど、使用する上で書き込み速度の重要であるためと思われる。例えば、一般的にフルハイビジョンの記録に対応したビデオカメラやデジタルビデオカメラではClass 4以上が推奨されている事が多い。これは、フルハイビジョンのAVCHD方式の場合、17〜28Mbpsというのが一般的である。これはMB/sに換算すると2.125〜3.5MB/sであるため、ちょうどClass 2では2MB/sで不足するが、Class 4では4MB/sで大丈夫という事になるからである。なお、このクラス表記は製品の最低保証速度であるため、製品によってはクラス表記以上の速度である事もある。例えばClass 2は2MB/s以上4MB/s未満と言うことではなく、2MB/s以上だが、最高値は分からない事になる。 今回は、SDカードはClass 10とClass 6、microSDではClass10、Class 6、Class 2の製品でテストを行っている。購入したのが少し前の製品では価格が高く見えるが、実際にはClass 10のSDカードで700円〜800円台、Class 10のmicroSDカードで800円台と言うところだ。スピードクラスが下がれば価格は若干安くなっているが、Class 10でも価格が十分に下がっているため、大きな差はない。 このスピードクラスとは別に、メーカーではより詳しい数値がパッケージやホームページ上に記載されている場合がある。確かに最高のClass 10でも10MB/sであり、11MB/sの製品でも20MB/sの製品でもClass 10になる。そのため、それ以上の速度を持つ製品では速度を記載した方が高速であることをアピールできることから、特にClass 10の製品では、転送速度が記載されていることが多い。今回はpqiの「BSDH10-8G」が最大読込24MB/s、最大書込19.5MB/sと表記されており、KINGMAXの「KM-SDHC10X8G」では22MB/s以上と表記されているが、それ以外はクラス表記しかない。同じClass 10でも、転送速度がハッキリ書かれている物は高速なのか、テストでの検証内容の一つである。
通常のスピードクラスとは別に、UHS-Iに対応しているという表記がなされた製品がある。UHSとは「Ultra High Speed」の略で、これまでよりバスクロック等を高速化することで転送速度を向上させたインタフェースの規格である。UHSに対応したメモリカードと、UHSの対応したメモリカードリーダの組み合わせでのみ、本来の速度で転送できる。UHS-Iの「I」はローマ数字の1であり、UHS-IIも登場予定であるが、現状ではUHS-Iしか存在していない。UHS-Iでは規格上は最大104MB/sまで可能だが、UHS方式での転送に対応しており、10MB/s以上で読み書きが可能ならば「UHS-I」のロゴが付けられる。従来の転送方式でも10MB/sという速度を実現していることから、実際にはUHS転送方式に対応していながら10MB/s以下という製品は無いと思われるため、「UHS-I」のロゴは、10MB/s以上の転送速度を持つという意味よりは、「UHS方式の転送に対応している」事を示すに過ぎない。また、UHS-Iに非対応のメモリカードでも読み書きできるが、その場合は従来の転送方式となる。そのため「UHS-I」のロゴと同時に、従来のスピードクラスの表記も行われる。ただ、UHS-Iに対応しているからと言って、Class 10になるとは限らない。UHS-Iは10MB/s以上であることを保証しているが、UHS方式では10MB/s以上でも、従来方式では速度が落ちるためである。珍しいが、UHS-I対応ながらClass 6と書かれた製品も実際に存在する。 今回は、SanDiskのExtreme Pro 「SDSDXPA-008G-X46」とグリーンハウスの「GH-SDHCUA8G」の2つの製品でテストを行った。UHS-I対応製品は価格が高く、出始めと言うこともあって製品も少ない。SanDiskは複数の「UHS-I」対応製品を発売しており、その中で「SDSDXPA-008G-J35」は読込95MB/s、書込90MB/sと超高速で、是非手に入れたいところだが、8GBの容量ながら5,500円前後と価格もかなり高い。しかし、「SDSDXPA-008G-J35」の海外輸入パッケージである「SDSDXPA-008G-X46」がパソコンパーツショップなどでは手に入る。保証期間が短いなどの違いはあるが、読込95MB/s、書込90MB/sという点は同じで、2,980円と比較的安価に手に入る。UHS-I非対応の製品との速度差が見物である。また、同じUHS-Iでも半額の1,480円で手に入るグリーンハウスの「GH-SDHCUA8G」でもテストしている。こちらは、読込40MB/s、書込12MB/sとなっており、特に書き込みが遅い。UHS-I非対応のpqiの「BSDH10-8G」で書込19.5MB/sと書かれているため、これより遅い事になるが、実際の速度が気になるところだ。
それでは12枚のカードをテストしてみよう。テストはUHS-Iの転送に対応し、USB3.0接続が可能な高速メモリカードリーダ・ライタである、バッファローの「BSCRSDXU3」(ロードテスト第140回参照)を使用し、メモリカードリーダ・ライタが出来る限り足を引っ張らないような環境とした。テストはCrystalDiskMark 3.0を利用し、テストデータ1000MB、テスト回数5回でテストを実行したものを、さらに3回実行した平均値を求めている。接続したパソコンは、ソニーのVAIO「VPCF13AGJ」で、CPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professionalである。また、UHS-I対応カードの場合、UHS方式ではなく従来方式での転送をした場合の転送速度も計測するため、別のメモリカードリーダ・ライターであるバッファロー「BSCRA38U2」でもテストを行っている。この「BSCRA38U2」は、UHS-I転送に対応しておらず、USB2.0接続だが、USBの高速化技術「TurboUSB」に対応しているため、従来方式の転送速度程度なら十分にカードの性能を発揮できるはずだ。 なお、今回のテスト結果は、あくまでテストに使用したカードの結果である。製品によって速度に差が出ることはあるし、メーカーではクラス表記などの記載内容しか保証していないため、途中で内部パーツが変わることも考えられる。あくまで参考として見てもらいたい。 まずはシーケンシャルシード性能である。まず目を見張るのがUHS-I対応カードの速度だ。特に、「SDSDXPA-008G-X46」は85.61MB/sと、SDカードとは思えない転送速度になっている。メーカー公称の95MB/sには届いていないが、メモリカードリーダ・ライタの公式ホームページの製品情報のページに掲載されているテスト結果でも82.4MB/sと書かれているため、メモリカードリーダ・ライタの方がボトルネックになっている可能性もある。それを差し引いても十分すぎる高速さだ。同じUHS-I対応でも半額の「GH-SDHCUA8G」の速度は45.95MB/sとなっており、「SDSDXPA-008G-X46」と比べると物足りなく感じるが、実際には他のUHS-I非対応のカードと比べると倍以上の速度であり、十分に高速なカードと言える。またメーカー公称値の40MB/sを超えており、問題ない速度だ。低価格といえどもさすがにUHS-I対応だと言えるだろう。 UHS-I非対応のカードでは、おもしろいのが、SDカードのClass 10とClass 6、microSDカードのClass 10がほぼ同じ速度だということだ。特に速度差があると思われるClass 10とClass 6が同じというのは興味深い。また、いずれもClass 10の最低保証速度である10MB/sの倍以上の速度となっている。また、いずれのカードも23MB/sを超えたあたりで頭打ちになっているのは、従来方式のSDカードの限界がこのあたりなのではないかと想像される。ちなみに、24MB/s以上をうたっている「BSDH10-8G」と22MB/s以上をうたっている「KM-SDHC10X8G」は、それぞれ23.41MB/sと23.48MB/sとなっており、具体的な速度表記をしていない製品との差はなかった。最近では高速な製品でも十分に低価格に製造できるようになり、Class 6と表記されていてもClass 10と同等の性能が出ているのだろう。 しかし、microSDカードの方のClass 6製品は18.09MB/sと若干ながら速度が劣っている。また、Class 2対応製品では16.53MB/sと11.08MB/sと、さらに速度が劣っている。また、同じClass 2対応製品でも速度に大きな差があるのもおもしろいところだ。さすがにClass 2対応製品ではClass 10対応製品と比べると速度が劣るが、それでもClass 10の最低保証速度の10MB/sは上回っている。Class 2対応製品でも2MB/sギリギリという事はないようだ。 もう一つ興味深いのはUHS-I対応の2製品をUHS-I高速転送非対応のカードリーダ・ライタでテストした結果だ。それぞれ23.11MB/2と22.51MB/sとなっており、UHS-I非対応のClass 10対応SDカードと全く同じ速度になっている。UHS-I対応製品は対応のメモリカードリーダ・ライタを使わないと速度的なメリットはないとも言えるし、UHS-I対応製品だからといって、対応のメモリカードリーダ・ライタを使わないと遅いということはなく、非対応のメモリカードリーダ・ライタでも従来製品並みの速度は確保されているとも言える。 続いてシーケンシャルライト性能である。やはりずば抜けて高いのがUHS-I対応の「SDSDXPA-008G-X46」である。74.50MB/sというのは、他のSDカードとは一線を画している。SDカードリーダとしては最高速の部類だろう。一方同じUHS-I対応でも「GH-SDHCUA8G」は21.24MB/sと他のClass 10対応のカードと同等レベルにとどまっている。ただ、メーカー公称が12MB/sである事を考えると十分な速度が出ているとも言える。とりあえず低価格な製品でもUHS-I対応製品が非対応製品より劣ることはなさそうだ。 Class 10対応製品は「UM-SDHC-C10-32G」を除いて21MB/s台で、Class 10の最低保証速度の10MB/sの倍以上となっている。シーケンシャルリード性能を見てもそうだが、Class 10対応のカードでは20MB/sという限界の速度に達してしまっているようである。「UM-SDHC-C10-32G」に関しては17.47MB/sだが、10MB/sは大幅に上回っているため問題ないが、シーケンシャルリードと異なり同じClass 10でもシーケンシャルライト性能には製品差があるようだ。 おもしろいのはClass 6対応の2製品で、速度に大きな違い出てしまっている。「TG008G0SD26A」は21.18MB/sと、Class 10対応製品の中に混ざっても問題ない書き込み速度だ。読み込み性能でも同じ状態であったため、むしろClass 6というクラス表記がおかしいのではないかと思ってしまうほどだ。一方、「TS8GSDHC6」も読み込み速度ではClass 10対応製品と同等の速度を示していたが、書き込み速度は9.85MB/sとかなり低めだ。この速度はClass 6の6MB/sは超えるもののClass 10の10MB/sには届かないという、あるいみClass 6らしい速度だ。ただし、この製品は他の製品と比べて購入がかなり前のことなので、現在販売されている製品では速度が上がっている可能性はある。 microSDカードは、Class 10対応製品とClass 6対応製品のどちらも12MB/s台という結果となっている。「KM-MCSDHC10X8G」はClass 10対応のSDカードと比べると寂しい結果だが、Class 10の10MB/sは上回っているので表記上の問題はない。読み込み速度もそうだったが、同じClass 10対応製品でもmicroSDカードの方が速度が劣る事があるようだ。その点、Class 6対応の「TS8GUSDHC6」は優秀だと言えるだろう。一方、Class 2対応の2製品はどちらも2MB/s以上4MB/s以下という、いかにもClass 2らしい性能だ。他のカードと比べるとあまりにも寂しい結果だ。 ちなみに、UHS-I対応の2製品をUHS-I高速転送非対応のカードリーダ・ライタでテストした結果だが、「SDSDXPA-008G-X46」は21.37MB/sと、他のClass 10対応のカード比べても遜色ない性能を示している。UHS-I高速転送対応のカードリーダ・ライタなら超高速、非対応のカードリーダ・ライタでもClass 10対応のSDカードと同等の速度が出せるというある意味最強カードだ。一方、「GH-SDHCUA8G」は17.51MB/sとやや劣る結果となった。UHS-I高速転送対応のカードリーダ・ライタでも、Class 10のSDカード並みの速度しか出ていなかったため仕方のないところだろう。むしろUHS-Iの高速転送を使わない場合でも、速度の落ち込みが少ないことが良い点とも言えるだろう。 ではランダムリードの性能を見てみよう。512KB単位のランダムアクセスなので、比較的大きなサイズのランダムアクセスである。これを見ると、シーケンシャルリードとほぼ同じ結果となっていることが驚きだ。UHS-I対応の2製品の速度が若干下がっているが、それでもUHS-I非対応製品と比べると明らかに高速だ。またSDカードはClass 10対応製品もClass 6対応製品もほぼ同じ速度で、microSDはClass 6がやや劣り、Class2ではさらに遅くなる点も同じだ。また、UHS-I対応カードを、UHS-I高速転送非対応のカードリーダ・ライタでも、Class 10のSDカード並みの速度が出る点もシーケンシャルリードと同じ傾向である。 続いて、ランダムライトの512Kの結果である。ここで、急にグラフがでこぼこになっている。UHS-I対応の「SDSDXPA-008G-X46」が圧倒的に速く、5.597MB/sを記録しているのはさすがであるが、2位はなんとClass 2対応のmicroSDカード「TS16GUSDC2」である。シーケンシャルライトとほとんど変わらない速度であり、間違いではないかと思ったが、何度テストしても同じ結果であった。3位はClass 6対応のSDカード「TS8GSDHC6」である。SDカードの中ではClass 10対応製品をおさえてトップである。なにやら、シーケンシャルライトの速度がが遅い製品の方が、ランダムライトが速いという傾向があるようだ。Class 2対応のmicroSDカードのもう一方の「BMRSDH2-8G」の結果も悪くない。また全体を見ると、Class 10対応のSDカードでも最高が1.181MB/s、最低が0.715MB/sと、同じスピードクラスの製品でもランダムライトに関してはスピードクラスは当てにならないということが言えそうだ。 その中で、一つの傾向としてUHS-I対応製品の速さだ。これまで常にトップの「SDSDXPA-008G-X46」は当然として、「GH-SDHCUA8G」もClass 10対応のSDカードより高速だ。しかも、この傾向はUHS-I高速転送非対応のメモリカードリーダ・ライタでも変わらないのがおもしろい。「SDSDXPA-008G-X46」では、多少速度が落ちるものの依然トップで、「GH-SDHCUA8G」はほどんど同じ速度を記録している。これを見る限りでは、UHS-Iの高速転送によって高速だというよりは、UHS-I対応カード自体が内部的にランダムライトが高速な傾向があるのかもしれない。 続いて、ランダムリードでもより小さなデータである4Kのテストである。ここに来ると、スピードクラスによる上下が若干乱れている。まずこれまで圧倒的な速度を記録していた、UHS-I対応の「SDSDXPA-008G-X46」が初めてトップの座を明け渡している。しかも、Class 10対応とは言え、microSDカードの「KM-MCSDHC10X8G」にである。と思ったら、「SDSDXPA-008G-X46」をUHS-Iの高速転送非対応のカードリーダ・ライタを使った結果がトップであった。UHS-I対応製品でありながら、高速転送を使用しない方がスピードが速いという驚きの結果だ。同じUHS-I対応の「GH-SDHCUA8G」でも、高速転送を使用しない方がスピードが速いので、UHS-I対応製品ではその傾向があるようだ。高速転送の仕組みによるものなのかは不明だが興味深い結果だ。 Class 10対応のSDカードは2.0MB/s〜2.5MB/s程度に並んでいるが、Class 6対応のSDカード方が高速な場合があり、また、microSDのClass 10やClass 6対応製品の方がさらに速い。大きな差ではないが、非常に小さなデータの読み込み性能はClass 6とClass 10では差はないと言える。さすがにClass 2対応製品では速度が劣るが、こちらも大きな差ではない。 最後にランダムライトの4Kのテスト結果である。ほとんどの製品が0.01〜0.02MB/sという低速になっている中で、4製品だけ突出している。そのうち2製品はUHS-I対応の製品、のこり2製品はClass 2というスピードクラスではもっとも遅い製品だ。前者の場合、これまでトップの成績の「SDSDXPA-008G-X46」が1.258MB/s、UHS-I対応カードの中では低価格な「GH-SDHCUA8G」でも0.202MB/sとなっており、それぞれ他のSDカードの10〜60倍以上の性能となっている。これは圧倒的な差である。さらに、これらのカードは、UHS-I高速転送非対応のメモリカードリーダ・ライタでも同等の数値となっている。この傾向はランダムリード4Kの時もあったため、やはりUHS-Iの高速転送方式が理由と言うよりは、UHS-I対応のカードそのものがランダムアクセスに強い傾向にあるようだ。一方、Class 2のmicroSDカードが、かなり高い値を出している理由はわからない。たまたまランダムライトの速いカードがClass 2の2製品だったのか、それとも低速なカードの方がランダムライトが速いのかすらわからない。ただ、ここで言えることは、ランダムライト性能は製品による差があることと、UHS-I対応カードは、高速転送対応のカードリーダ・ライタであってもなくても高速であると言うことだ。
続いて、実際のファイルの転送にかかった時間を計り、検証してみよう。テストに使用したのはUHS-Iの転送に対応し、USB3.0接続が可能な高速メモリカードリーダ・ライタである、バッファローの「BSCRSDXU3」である。また接続したパソコンはソニーのVAIO「VPCF13AGJ」で、CPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professionalである。このパソコンにSerialATA接続した3.5インチハードディスク(5400rpm、プラッタ容量750GB)との間で、実際のファイルを転送して、転送にかかった時間を計測している。3回実行し、平均値を求めている。また、テストはパソコンからSDカードとSDカードからパソコンの双方向で実施している。テストデータには、「MPEG2動画ファイル1ファイル1.6GB」「写真データ248ファイル計918MB」「画像ファイル1887ファイル計532MB」の大小3種類のファイルサイズのテストデータを用意した。 まずは、「MPEG2動画ファイル1ファイル1.6GB」の結果である。デジタルカメラ等で撮影したビデオをパソコンに転送する場合や、パソコン上の動画ファイルをスマートフォンなどに入れて持ち出す場合を想定している。 これを見ると、カード本来の転送速度がそのまま結果に反映されている印象だ。シーケンシャルシードで85.61MB/s、シーケンシャルライトで74.50MB/sを記録したUHS-I対応の「SDSDXPA-008G-X46」がもっとも高速だ。SDカードからパソコンが32秒、パソコンからSDカードが39秒で、それぞれ49.4MB/sと40.7MB/sを記録している。ベンチマークテストよりは遅いが、従来のSDカードと比べると十分に速い。続いて、同じUHS-I対応でも低価格な「GH-SDHCUA8G」が続いている。とくにSDカードからパソコンへの転送は、カード側の読み込み速度が重要だが、ベンチマークテストでシーケンシャルリードが45.95MB/sと高速であるため、ここでも38.0MB/sとかなり高速だ。一方のパソコンからSDカードへの転送は、カード側の書き込み速度が関係しているため、シーケンシャルライトがシーケンシャルリードに比べて遅い「GH-SDHCUA8G」では、「SDSDXPA-008G-X46」の倍以上の時間がかかっている。とはいえ、UHS-Iに非対応のClass 10対応カード「BSDH10-8G」よりは高速だ。その「BSDH10-8G」は、SDカードからパソコンへが76秒、パソコンからSDカードが90秒と、SDカードの中では決して遅くないが、UHS-I対応のカードと比べると遅く感じる。そして、Class 2対応の「BMRSDH2-8G」は比べものにならないほど遅い。SDカードからパソコンへの転送は、Class 10対応のSDカードの倍程度なのでまだましだが、特にパソコンからSDカードへの転送は8分42秒と極端に遅い。「SDSDXPA-008G-X46」の13倍もの時間がかかっている。撮影したビデオの転送ならまだましだが、パソコンやBlu-rayディスクレコーダから転送するといった場合には、最低でもClass 10対応カードがないと、あまりにも待ち時間が長くなりすぎると思われる。逆に、撮影したビデオをパソコンに少しでも速く取り込みたいなら、安価でもよいのでUHS-I対応カードにするとかなり速くなりそうだ。 続いて写真データである。デジタルビデオカメラで撮影した248枚の写真(JPEG形式)の転送速度である。248枚で918MBなので、平均3.7MBのファイルである。先ほどの動画データと比べると、1つのファイルサイズが小さくなっている。SDカードからパソコンへの転送では、デジタルカメラや携帯電話で撮影した写真をパソコンにバックアップする場合を想定でき、パソコンからSDカードへの転送は、気に入った写真をデジタルカメラや携帯電話に書き戻す場合やデジタルフォトフレーム用にSDカードに入れると言った場合を想定できる。 傾向は動画データの場合と似ている。全体的に転送速度は5〜6割程度に落ちているが、「SDSDXPA-008G-X46」が最も速く、「GH-SDHCUA8G」はSDカードからパソコンはそれほど差はないが、パソコンからSDカードは多少遅く、「BSDH10-8G」はさらに遅いといった具合だ。ただ、「BSDH10-8G」でも248枚の写真が1分強でバックアップできるので、それほど待たされる速度ではない。さらに言えば、「BMRSDH2-8G」でも2分弱なので、それほど遅いとは言えない。ただし、パソコンからSDカードへの転送は、「BMRSDH2-8G」は極端に遅い。動画データの時よりは、他のカードとの差は縮まっているが、それでも「SDSDXPA-008G-X46」の7倍だ。やはりClass 2対応カードの遅さは無視できない。逆に撮影した写真をパソコンに少しでも速く取り込みたいなら、安価でもよいのでUHS-I対応カードにするとかなり速くなりそうだ。 最後に、小さな画像ファイルを転送するテストである。これは、自分で小説や漫画をスキャン(いわゆる自炊)したものを、電子書籍リーダとして利用している端末の解像度である横768ドットのサイズに縮小したファイルという事である。自分でスキャンした電子書籍データをSDカードに入れて持ち歩く際の転送時間という事になる。今回は1887ファイルで計532MBなので、1ファイルは280KB程度だが、1冊200ページの本でも30冊転送しようとすると6000ファイルになるため、容量は少ないが馬鹿にはならない。 前述の仕様用途の場合、SDカードからパソコンへの転送は発生しないのだが、とりあえずテストしている。すると、UHS-I対応製品2製品に差が無くなり、Class 10対応の「BSDH10-8G」とClass 2対応の「BMRSDH2-8G」もそれほど大きな差ではない。ファイルサイズが小さくなると、製品の速度差が小さくなるようだ。また、パソコンからSDカードへの転送も、「SDSDXPA-008G-X46」は多少速いが、「GH-SDHCUA8G」は、UHS-I非対応の「BSDH10-8G」と変わらない速度になっているし、Class 2対応の「BMRSDH2-8G」でも「BSDH10-8G」の1.6倍程度の時間ですんでいる。今回のような用途の場合は、UHS-I対応カードにする意味はあまりなく、せいぜいClass 10対応カードを選んでおけば十分高速であることがわかる。 今回は低価格なSDカードを比較し、その傾向を調べた結果いくつかのことがわかった。まずUHS-I対応のSDカードは低価格なものでも非常に高速である事、そしてランダムリード・ライトが特に高速である事である。UHS-I非対応のメモリカードリーダ・ライタでも、通常のClass 10並みの速度は出るようなので、たとえばデジタルカメラはUHS-I高速転送非対応でも、普通に高速なSDカードとして使用でき、パソコンにデータを移すときにはUHS-I高速転送対応のカードリーダ・ライタを使って、素早く転送と言ったことができる。またClass 10対応カードは製品差はほとんど無く、いずれも十分高速である事もわかった。またSDカードに関しては、Class 6対応カードでもClass 10対応カードと速度差はほとんど無いという事もわかった。実際にはClass 10対応カードとClass 6対応カードの価格差は非常に小さくなってきているので、どちらを選ぶかは悩みどころだ。一方、Class 2対応カードはやはりかなり遅いという事がわかった。Class 6やClass 10対応カードとの価格差も小さいので、できればClass 6以上がほしいところだ。 そして低価格な製品とは言いながら、いずれも十分な速度を持っており、スピードクラス表記に対して十分に余裕のある速度を持っていることも分かった。またClass10対応製品であれば、シーケンシャルリード・ライトに関しては製品間の差もほぼ無いと言っても良いため、メーカーや製品を気にせずに購入しても問題なさそうだ。その時に価格の安いもの、保証がよい物といった選び方でも良いし、気に入ったメーカーの物、さらにはカードのデザインの良い物と言った選び方でも良さそうだ。 (H.Intel) ■今回の関係メーカー・ショップ
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