第143回
デジタルカメラ
SONY Cyber-Shot DSC-HX30V
(2012年3月9日購入・2013年7月20日著)


デジタルカメラを買い換える

 ロードテスト第101回で紹介したデジタルカメラ SONY Cyber-Shot「DSC-HX5V」は画質、機能共に満足いくものであった。毎日のように持ち歩き、ことあるごとに撮影を続けてきた。気軽に撮影をする上に、このロードテスト用の写真を撮影するとあって、撮影枚数はすでに1万枚を超えてしまった。そして、このごろズームレバーの挙動がおかしくなってきた。少し前から、たまにズームレバーをいっぱいまで動かしても、少し動かしたときと同じように低速でのズームしかできないことがあった。しかし、最近ではズームレバーをズーム側に動かしているのにワイド側になったり、ワイド側に動かしているのにズームになったりと逆の動作をするようになってきた。もちろん修理も考えられるが、その間デジタルカメラが無いのも気になるし、修理金額も11,760円固定なのでと結構高い。なんとか新機種が出るのを待って買い換えることとした。
 その待った新機種というのが、同じSONYのCyber-Shot 「DSC-HX30V」だ。同じメーカなのは、これまで使ってきた機種の完成度が高く気に入っていた事と、操作性やメニュー構成に慣れていたことなどがある。この「DSC-HX30V」は型番が示すとおり、これまで使っていた「DSC-HX5V」と同じHXシリーズである。コンパクトデジタルカメラの中では薄型な機種ではないが、高いズーム倍率と豊富な機能が魅力な機種だ。今回「DSC-HX5V」の後、「DSC-HX9V」が発売され、今回「DSC-HX30V」なので、2世代後の製品となる。大きく進化点は、同じ裏面照射型CMOSの「Exmor R」を採用しているものの有効画素数が1020万画素から1820万画素に上がっていること、光学ズーム倍率が10倍から20倍に上がっていること、動画撮影機能が1920×1080ドットの60iだったのが、60pに対応し、ビットレートも17Mbpsから24Mbps(60pの場合は28Mbps)に上がっている事、液晶画面が高画質・高詳細になった事などがあげられる。それ以外にも手ぶれ補正にジャイロセンサーが搭載されたこと、動画の手ぶれ補正のアクティブモードが回転ぶれ補正にも対応したこと、動画撮影中に静止画撮影ができる様になったこと、光学ズーム以外に全画素超解像ズームが利用できるようになったこと、スイングパノラマが高画素になったこと、最大ISO感度がISO3200からISO12800に向上したことなど、細かい改良点は多数ある。またソニーストア大阪で実機を触ってみたところ、連写後の記録時間が短くなっている事がわかったのも決め手になった。「DSC-HX5V」の数少ない不満点の一つに、連写後の記録時間が長いことがあったからだ。予約を開始した2012年3月9日にソニーストア大阪で予約を行い、発売日の3月16日に送られてきた。価格は44,980円だったが、「AV機器13% OFFチケット」と「AV機器+5% OFFチケット」を使い、さらにその時ソニーストアで行っていた1,000円分の金券プレゼントや、手持ちのポイントなども使い、10,807円引きの34,173円で購入できた。また3年ワイド保証を無料で付けられるクーポンがあったので、3,000円のこの保証も付けることができた。さらに、製品登録をすることで500ポイント、販売開始前に「購入宣言」をしておき、発売開始後すぐに購入すると、1000ポイントがもらえる。さらに、この時期にちょうど行っていた特定の製品を購入して応募できるキャンペーンに当選し、10000ポイントも手に入れたので、実質22,673円だったとも言える。

外見を見る

 それでは、早速「DSC-HX30V」の外見を見てみよう。まず最初の感想としては、大きな本体と上品な色であるということだ。本体の大きさは、これまで使っていた「DSC-HX5V」と比べると、縦横厚みのすべてが一回りずつ大きくなったような印象だ。ただ、中型機と比べると十分に小さく、また光学20倍ズームを搭載しているとも思えない厚みだ。ある意味、「DSC-HX5V」からの機能アップを考えると、よくこの程度の大型化におさえたものだと思う。本体は何とも言えないシックなブラウンになっており、前面の手で握る部分と、液晶面の親指でホールドする部分だけが革張り風の加工になっているのも高級感がある。上面は金属(風?)となっている。
 それでは各パーツを見てみよう。背面は左側が液晶ディスプレイで、右側が操作パネルになっている。液晶はアスペクト比4:3の3.0インチである。液晶の周囲、特に右側に大きく黒い部分があるため、電源が入っていないと液晶ディスプレイはもう少し大きめに見える。これまで使っていた「DSC-HX5V」と比較してみると、基本的には変わっていないが、親指のホールド位置が窪みから革張りに変わっている。個人的にはこの窪みはホールドしやすくわかりやすかったため残念だ。ただ、「DSC-HX30V」も持ってみるとホールド感は良い。配置としては、十字キーの位置と「MENU」「再生」「ゴミ箱」のボタンの位置は変わっていないが、「MOVIE」ボタンの位置が変更されている。どちらが使いやすいかは、実際にビデオ撮影をした感想と併せて後述する。一番変わったのは十字キーだ。「DSC-HX5V」では、ただの4方向ボタン+真ん中の決定ボタンだったが、「DSC-HX30V」ではホイールに変更されている。このホイールは十字キーとしても使えるため、4方向に押しても、左右に回しても使えるという優れものだ。操作性は格段にアップしている。また、ボタンが回転するようになったため、ボタンに彫り込まれていたボタンのマークは、ボタン外に印字される形に変更されている。彫り込まれているのは高級感があったが見にくかったので、実用面ではこちらの方が上だ。背面から見ると、液晶上部までの高さはほぼ一緒だが、そこから上面にかけて「DSC-HX5V」が直角に曲がっているのに、「DSC-HX30V」では斜めに面取りされている分大きくなっている。逆に言うと面取りすることで、大きさを感じさせにくくしているとも言える。

「DSC-HX30V」の背面である。3.0インチの液晶ディスプレイと操作ボタンが並ぶ。革張りのホールドにより高級感が高く、使い勝手も良くなっている。

「DSC-HX30V」(左)とこれまで使ってきた「DSC-HX5V」(右)の背面である。一回り大きくなっているが、角を大きく面取りする事で、それほど大きくなったという印象はない。

 正面から見ると、レンズ部が非常に大きいことがわかる。さすがに20倍の光学ズームを搭載しているだけはある。左側のグリップは、背面の親指のホールド部分と同じく革張りとなっている。滑りにくく、しっかりカメラを持つことができる。レンズの左上にあるのはフラッシュではなく、セルフタイマーやスマイルシャッターのランプを兼ねたAF補助光のライトである。あまりにも暗いシーンの場合、フラッシュを光らせて撮影するとしても、その前のオートフォーカスがうまく合わせられないので、撮影直前まで補助光を光らせてオートフォーカスを合わせるという機能である。では、フラッシュはどこへ行ったかというと、今回はポップアップ式で右上に付いており、使用するときだけ飛び出す形だ。フラッシュが大きくなった分、距離も3.8mから7.1mにアップしている(詳しくは後述)。「DSC-HX5V」に比べると、レンズ部分が大きい事は同じだが、ズーム倍率が高くなったため、さらに大きくなっている。またレンズの位置が中心に近くなったのはうれしいところだ。中心に近い方が液晶画面とのずれが小さく、位置合わせがしやすい。レンズカバーの開き方は、左右が逆にはなったが、2段階の両開きであることは変わっていない。また前述のようにフラッシュが見えなくなっているのが大きな違いだ。

「DSC-HX30V」の前面である。光学ズーム倍率が高いため、レンズが非常に大きい。フラッシュはポップアップ式になったため見えなくなっている。

「DSC-HX30V」(左)と「DSC-HX5V」(右)の前面である。レンズ部がさらに大きくなっただけでなく、中心に近くなっている。

 上面を見ると、電源ボタンと撮影ボタン、撮影ボタンの周囲がズームレバーで、右端にモードダイヤルが並んでいる。レンズのちょうど上辺りにある小さな穴はステレオマイクである。また、左側はフラッシュが収納されている。「DSC-HX5V」と比較してみると、厚みはやや増したものの、フラッシュを除いて基本は変わっていない。電源が入ると、電源ボタンの中心か光るのも同じだ。ただ、電源ボタンの左手前にあった、連写切り替えボタンが省略されたのは、筆者としてはよく使うボタンだっただけに残念だ。ただ一般的にはあまり使われないボタンかとは感じていたので仕方がないだろう。モードダイヤルは、「DSC-HX5V」と同じく一番右に配置されているが、「DSC-HX5V」より埋め込まれたような形に変更されている。「DSC-HX5V」では、上面よりも飛び出ており、ズームレバーが近くにあるダイヤルの左側以外はダイヤルの側面部分が見えているためどこでも掴むことができた。しかし、「DSC-HX30V」では、ダイヤルの側面部分が見えているのは、手前(液晶側)だけになった。親指でダイヤルの側面のギザギザを使って回すなら使い勝手は変わらないが、その方法だと思わず回りすぎてしまうことがあったため、「DSC-HX5V」ではダイヤルの側面を親指と人差し指でつまんで回していた。しかし「DSC-HX30V」ではそれができなくなってしまったのだ。ただ、使い勝手が悪いわけではなく、実際にやってみると親指で回す方法でも目的のモードに問題なく併せられるため、問題ないと言えば問題ない。レンズ位置に合わせたのか、フラッシュを内蔵したためかはわからないが、マイクの位置が中央に寄った。また、「DSC-HX5V」では、左右それぞれ1つの穴だったが、今回は小さな穴が複数あけられており、音質が良くなっていそうだ。

「DSC-HX30V」の上面である。電源ボタンやシャッター、ズームレバー、モードダイヤルが並ぶ。ステレオマイクやフラッシュもある。

「DSC-HX30V」(左)と「DSC-HX5V」(右)の上面である。少し厚くなったが、ボタン類の基本構成や位置は同じである。

 液晶側から見て左側面にはキャップが付いている部分がある。中をあけるとminiHDMI端子が現れる。「DSC-HX5V」では底面の専用コネクタからアダプタを介してHDMI出力が可能だったが、「DSC-HX30V」では内蔵され、ケーブルが直接接続できるようになった。これは非常に便利である。

「DSC-HX30V」の左側面には、キャップが付いている部分があり、開けるとminiHDMI端子が現れる。

 底面を見てみよう。「DSC-HX5V」では端ぎりぎりにあった三脚用ネジ穴が、中央に近くなった。「DSC-HX5V」では小型の三脚などに取り付けると、非常にバランスが悪かったが、これが改善されたのは素直にうれしいところだ。レンズを上にした時の左側には、バッテリとメモリカードスロットのカバーがある。「DSC-HX5V」ではカバー全体を外側にスライドさせるとカバーが開いたが、「DSC-HX30V」ではカバーにつけられたスライドロックを横にスライドさせるとロックが外れてカバーが開く。「DSC-HX5V」の、カバー全体をスライドさせる方法の方が、大きいため作業しやすいが、反面カバンの中などで勝手に開いてしまっている事があった。その点では「DSC-HX30V」の方式の方がよいのかもしれない。「DSC-HX30」は中央にmicroUSB端子がある。「DSC-HX5V」では専用の「マルチ端子」があり、ここに付属のアダプタを挿すとminiUSB端子とHDMI出力端子になった。「DSC-HX30V」ではHDMI端子が内蔵されたので、残るUSB端子もそのまま内蔵するだけで良くなったのである。なお、これまで一貫してminiUSB端子だったが、今回からmicroUSB端子となった。microUSBはスマートフォンで採用されているが、パソコンの周辺機器としてはminiUSBの方が一般的であるため、意外な変更点だったと言えよう。

「DSC-HX30V」の底面である。三脚用のネジ穴の他、microUSB端子や、バッテリ・メモリカードスロットのカバーがある。

「DSC-HX30V」(左)と「DSC-HX5V」(右)の底面である。三脚用のネジ穴が中央に近くなりバランスが良くなった。また、専用の「マルチ端子」がmicroUSB端子に変更され、使い勝手が良くなっている。

スペックを比較する

 それでは、ここで、今回購入した「DSC-HX30V」が、これまで使ってきた「DSC-HX5V」と比べてどのくらい性能が向上したのか、スペックを比較してみよう。

型番
DSC-HX30V
DSC-HX5V
イメージセンサーサイズ・タイプ
1/2.3型
"Exmor R" CMOS
1/2.4型
"Exmor R" CMOS
有効画素数
1820万画素
1020万画素
レンズ種類
ソニーGレンズ
ソニーGレンズ
ズーム
静止画
光学:20倍
全画素超解像:40倍
光学:10倍
動画
光学20倍
光学10倍
焦点距離
(35mm換算)
静止画4:3時
25〜500mm
25〜250mm
動画16:9時(手ぶれ補正アクティブ時)
28〜784mm
30〜300mm
撮影最短距離
1cm
5cm
F値
F3.2(ワイド)〜5.8(テレ)
F3.5(ワイド)〜5.5(テレ)
液晶モニタ
サイズ
3.0インチ(4:3)
3.0インチ(4:3)
種類
エクストラファイン液晶
TruBlack
クリアフォト液晶
画素数
92.1万画素
23.0万画素
手ぶれ補正
静止画
光学式(ジャイロセンサー搭載)
光学式
動画
光学式+電子式
アクティブモード対応
回転方向対応
光学式+電子式
アクティブモード対応
テレ側は従来機種相当
顔検出
スマイルシャッター
ISO感度
静止画
ISO100〜12800
ISO100〜3200
動画
Auto:ISO100相当〜1000相当
高感度:ISO100相当〜2000相当
Auto:ISO100相当〜1000相当
高感度:ISO100相当〜2000相当
シャッタースピード
おまかせオート:4〜1/1600秒
プログラムオート:1〜1/1600秒
マニュアル:30〜1/1600秒
おまかせオート:2〜1/1600秒
プログラムオート:1〜1/1600秒
マニュアル:30〜1/1600秒
連写
約10枚/秒(最大10枚)
約10枚/秒(最大10枚)
セルフタイマー
10秒/2秒/自分撮り1人/自分撮り2人
10秒/2秒/自分撮り1人/自分撮り2人
オート撮影モード
プレミアムおまかせオート
おまかせオート
おまかせオート
撮影モード
11種類(ダイヤル式)
10種類(ダイヤル式)
シーンセレクション
15種類
11種類
スイングパノラマ
最大192度(顔・動き検出対応)
最大270度(顔・動き検出対応)
3D
3D静止画、3Dスイングパノラマ、スイングマルチアングル
フラッシュ
○(収納式)
ISO自動時(ワイド端):0.4〜7.1m
ISO3200時(ワイド端):最大到達距離10m

ISO自動時(ワイド端):0.25〜3.8m
ISO3200時(ワイド端):最大到達距離7.6m
対応メディア
メモリースティックDuo(PRO/PRO-HG対応)
SDカード(SDHC/SDXC対応)
メモリースティックDuo(PRO/PRO-HG対応)
SDカード(SDHC/SDXC対応)
内蔵メモリ
105MB
45MB
動画撮影
AVCHD
PS(28Mbps:1920x1080/60p)
FX(24Mbps:1920x1080/60i)
FH(17M:1920x1080/60i)
HQ(9M:1440x1080/60i)
FH(17M:1920x1080/60i)
HQ(9M:1440x1080/60i)
MP4
12M(1440x1080/30fps)
6M(1280x720/30fps)
3M(640x480/30fps)
12M(1440x1080/30fps)
6M(1280x720/30fps)
3M(640x480/30fps)
マイク
内蔵ステレオ
内蔵ステレオ
動画撮影中静止画撮影
○(最大13M相当(16:9モード時))
GPS
入出力端子
マイクロUSB(USB2.0)
HDMIミニ
マルチ端子(変換ケーブルでAV出力/HDMI/USB(USB2.0)に)
スピーカー
モノラル
モノラル
TransferJet
Wi-Fi
バッテリタイプ
専用バッテリ(Gタイプ)
専用バッテリ(Gタイプ)
バッテリ使用時間
静止画
320枚/160分
310枚/155分
動画
75分
75分
本体サイズ
106.6×61.9×34.6mm
102.9×57.7×28.9mm
本体質量
221g(本体のみ)
254g(バッテリ・メモリカード含む)
170g(本体のみ)
200g(バッテリ・メモリカード含む)

 イメージセンサーについては、これまで通り裏面照射型CMOSである”Exmor R”CMOSを採用している。ただ画素数が大きく向上しており、その分詳細な撮影が可能となる。一方でイメージセンサーのサイズはほぼ同じなので、画素数が多くなった分1画素あたりのサイズは小さくなる。ノイズの面ではやや不利になったはずだ。ズームは「DSC-HX5V」の光学10倍から「DSC-HX30V」では光学20倍へと倍増した。さらに静止画時には、全画素超解像ズームと呼ばれる機能を使えば40倍までズームできるようになった。光学ズームとの画質差は検証課題だ。焦点距離で見ると、静止画時にはワイド側の距離は変わっていないため、広くとれるという点では変わっておらず、純粋にさらに倍ズームできるようになっている、一方動画は、アスペクト比16:9となることからアスペクト比4:3の静止画より画角は狭くなる。しかし「DSC-HX5V」の30mmから28mmへと若干改善している。動画時もより広く撮影できるようになったことになる。ここで謎なのが、「DSC-HX30V」の焦点距離が28mm〜784mmとなっていることだ。これでは28倍ズーム相当である。この点は後述の動画機能を詳しく使ってみたパートで考えてみる。
 撮影最短距離が1cmと、より近寄れるのはうれしい所だ。「DSC-HX5V」の前に使っていた「DSC-T77」では1cmまで寄れたため、「DSC-HX5V」では退化したように感じていたが、「DSC-HX30V」で戻ったと言える。使う頻度は多くないが、動植物や料理などを撮影する時に近づきすぎてしまう事もあるため、その差にピントが合っていないという事態が防げるのは安心だ。
 液晶ディスプレイはサイズは同じながら、画素数が大幅にアップしている他、液晶自体も良い物になっている。これも後述する。手ぶれ補正機能も強化されているが、静止画に関しては強化というより、ズーム倍率が上がって手ぶれしやすくなったところを、同レベルに据え置くためといった印象だ。どの程度効果があるのかも、後で検証する。顔検出やスマイルシャッターなどの機能を搭載するのは同等だ。ISO感度に関しては最大が3200から12800までアップしているが、高くするとノイズ量が増えてしまうため、実際に3200以上で使う場面があるかは疑問だ。連写速度や最大枚数も変わっていない。オート撮影モードは、従来の「おまかせオート」に加えて「プレミアムおまかせオート」が加わっている。従来の「おまかせオート」では自動的には設定されなかった「手持ち夜景モード」と「逆光補正HDR」に対応している。これら2つは、連写して画像を合成することで、ノイズを減らしたり、色飛びや黒つぶれをおさえる機能だ。これまでは1枚撮影の範囲でできる設定が自動で行われていたが、今回は連写合成も行えるようになったわけである。ただ突然連写する事になるので驚いてしまったり、1枚撮影のつもりでいるためぶれてしまう危険性もある。また「プレミアムおまかせオート」では連写により1枚の写真を生成するモードになる可能性があるため、通常撮影時でも連写設定ができない。そのため、従来の「おまかせオート」も選べるようになっている。撮影モードやシーンセレクションはやや増えている。スイングパノラマは引き続き搭載するが、最大角度が270度から192度に減ってしまっている。下位機種で360度に対応した機種もある中で、これは残念だ。一方で10480×4096ドットの高解像度パノラマである「HRモード」に対応している。そのほか、スイングパノラマ機能を応用した3D写真撮影も可能となっている。対応メモリカードなどは同じである。
 動画撮影に関してはかなり進化している。このあたりは、より詳しく後で検証している。その際、最新ビデオカメラとの比較も行っている。前述のように、入出力端子は、従来はマルチ端子1つを搭載し、付属の変換アダプタやケーブルでHDMIやAV出力(コンポジット)、USB2.0に変換していた。それが「DSC-HX30V」ではマイクロUSBとHDMIミニ端子を直接搭載しており、変換ケーブル無しで接続できるようになっているのはうれしい所だ。コンポジット出力がなくなっているが、薄型テレビが普及した今、フルハイビジョン動画撮影対応のデジタルカメラを、わざわざ非ハイビジョンのアナログ接続をする人は少ないと思われるため、時代の流れと言えるだろう。
 バッテリは「DSC-HX5V」と同じ物を使用する。撮影枚数が微妙に増えているが、ほぼ同等と言えるだろう。本体サイズは、横幅が3.7mm、高さが4.2mm、厚みが5.7mm大きくなっており、全体的に一回り大きくなったという表現がぴったりだ。約50gの増量は大きいが、撮影時で254gなら十分に日常に持ち歩ける範囲だろう。それでは特徴的な部分を詳しく見ていこう。

電源を入れる

 それでは実際に使用してみよう。電池は「DSC-HX5V」と同じGタイプである。付属するのは「NP-BG1」とい型番の物で、別売りのバッテリ「NP-FG1」とは別の物だ。電池容量は同じだが、「NP-FG1」はインフォリチウム対応なので、電池残量が分単位で表示されるが、付属の「NP-BG1」は非対応なので、3段階の電池マークしか表示されない。安価な機種ならともかく、コンパクトデジカメの中では最上位にあたる製品なのだから、電池もはじめからインフォリチウム対応の物を付属して欲しかったところだ。この点は前機種「DSC-HX5V」の時にも思ったのだが、今回も変わっていなかったのは残念だ。ちなみに、今回からは充電器は付属せず、かわりにUSBケーブルと、AC電源をUSBポートに変換するアダプタが付属し、「DSC-HX30V」本体での充電へと切り替えられている。

「DSC-HX30V」の付属品である。充電器は付属せず、USB給電による本体充電になった。付属するバッテリは「Gタイプ」だが、付属のバッテリは別売りのバッテリとは異なりインフォリチウム非対応で、電池残量が分単位では表示されない。

 メモリカードはDS-HX5Vから引き続きSDカード又はメモリースティックDuoとなっている。SDカードはSDHCやSDXCにも対応しているので、64GB以上のSDカードも使用できる。フルハイビジョンの動画が撮影できる機種だけに安心感は高い。メモリカードもバッテリも底面の同じカバーの内部に取り付ける。
 電源を入れると、レンズが前に繰り出してくる。レンズカバーは自動で開くため手間はない。レンズが繰り出す時間が必要だと言っても、電源ボタンを押してから1秒程度しかかからず、非常に素早い繰り出しで、待たされるという印象はない。レンズ部の繰り出しは「DSC-HX5V」では2段階だったが、ズーム倍率の高くなった「DSC-HX30V」では3段階になっている。また、最もワイド側の状態で、「DSC-HX5V」は17mm飛び出していたが、「DSC-HX30V」では30mmになっている。続いて同じ10倍ズームにした状態では、それぞれ34mmと49mmである。そして「DSC-HX30V」を20倍ズームにしたときだが、これは以外で52mmの飛び出しと、10倍ズーム状態からほとんど変わっていない。全域にわたって「DSC-HX5V」より飛び出しは大きくなっているが、10倍から20倍にズームしても飛び出す長さはほぼ変化しないので、実際には20倍ズーム状態でもそれほど飛び出た感じはない。もちろん単独で見ると、いかにもズームしているという感じだが、「DSC-HX5V」と比べると、それほど大きな差はないように感じる。撮影時に前にバランスが崩れるというほどでもなく安定している。20倍ズーム機といえども、従来の10倍ズーム機と似たような感覚で使用できるようだ。
 また、構えてみるとわかるのだが、レンズがほぼ中央になったため、左寄りだった「DSC-HX5V」と比べると左右のバランスも良くなったように思う。前述の三脚用ネジ穴の位置も中央に近くなった事と併せて、細かい改良により安定感が増していると言える。

「DSC-HX30V」の電源を入れたところである。自動的にレンズカバーが開き、レンズが繰り出してくる。

「DSC-HX30V」の電源を入れた状態で上から見たところである。ズームをしていたい状態なので、それほどレンズが飛び出している印象はない。

最高の光学20倍ズーム状態である。レンズがかなり前に飛び出すが、バランスが崩れるほどではない。

「DSC-HX30V」(左)と「DSC-HX5V」(右)のワイド側の状態である。「DSC-HX5V」の2段階から3段階になっている。またワイド側でも飛び出し量17mmから30mmに大きくなっている。

「DSC-HX30V」(左)と「DSC-HX5V」(右)の最もズームした状態である。「DSC-HX30V」は20倍、「DSC-HX5V」の10倍ズーム状態であるが、思いの外差が小さいことが分かる。実測値では34mmと52mmである。

 実際に撮影をしてみると、電源オンから撮影できるまでも素早く、オートフォーカスの速度も非常に高速で不満はない。オートフォーカスの速度は売りの一つにもなっており、日中ならば最速0.13秒、暗いシーンでも最速0.21秒となっている。実際に動く物を撮影しても、「DSC-HX5V」よりもタイミングを逃しにくいと感じだ。広角側は25mmと非常にワイドに撮影ができるため、狭い室内や乗り物の中などでも撮影しやすかった。さすがに周辺部で多少のゆがみが発生してしまうが、気になるなら軽くズームすれば大丈夫だ。それよりもここまで広くとれる事は便利だと言えるだろう。昼間に撮影してみると、撮影した画像は非常に詳細で、色も鮮やかに再現されており、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能と比べても一線を画す画質だとはっきり分かる。かといって派手な色ではなく、自然なレベルでコントラストが効いており、また暗い箇所がつぶれることも、明るい箇所が白飛びしてしまうこともなく、非常に優秀だ。もちろんセンサーサイズが1/2.3型と、一眼レフなどと比べるとかなり小さく、その中で1820万画素を実現しているので、ある程度のノイズ感があり、一眼レフのように空気感まで撮影できるとまではいかないが、旅行などでスナップ写真を撮るには十分すぎる画質である。

昼間の画質を比較する

 それではここで、「DSC-HX30V」と、これまで使ってきた「DSC-HX5V」と画質を比較してみよう。センサーサイズはほぼ同等だが、画素数が1820万画素と1020万画素で大きく異なる。そのため詳細感では「DSC-HX30V」が上だが、ノイズの面では画素当たりのサイズが大きくなる「DSC-HX5V」が有利だ。果たして画質はどの程度の違いがあるのだろうか。

DSC-HX30V
DSC-HX5V
全体像
アップ1
アップ2

 一番上の「全体像」の写真は、撮影した画像全体を400×300ドットになるように縮小した写真である。全体の色合いなどを比較できる。これをみると、同じシリーズの製品で、同じ裏面照射型CMOS「Exmor R」を採用しているだけに、色調やコントラスト、明るさなどにほとんど違いが見られない。空の色と水の色もほぼ同じで、奥の建物の色が若干「DSC-HX30V」の方が濃く見える程度だ。また、広角側の焦点距離は同じく25mmであるため、どちらも非常に広くとれているのだが、よく見ると微妙にとれる範囲が異なっている。同時にシャッターが切れるように並べて設置しているので、手前にあるライトの位置が異なるのは無視して良いのだが、右側を同じ所まで入るようにすると、左側の土手の入る大きさが若干違っている。実験の精度が低いため何とも言えないが、小さな範囲で違いがあるのかもしれない。
 続いて「アップ1」の写真は、同じ写真だが、今度は縮小せず写真から400×300ドットを切り出したものである。「DSC-HX30V」の方が画素数が高いため、同じドット数で切り出すと大きく見えるが、細部の映り具合の比較ができる。だだ、これだけでは何なので、「DSC-HX5V」と同じサイズになるまで、やや縮小して切り出したのが「アップ2」である。同じ範囲を利用する場合や、紙に印刷する場合はむしろ同じ大きさ同士で比較した方が良いとも言える。「アップ1」同士で比較すると、「DSC-HX30V」が特にノイズが多くなっているようには思えない。日中の屋外であるため、光量が十分で、1画素のサイズが小さくなった影響が受けにくいとも考えられる。一方画素数が上がったことで、潰れがちだった鉄塔の細かい部分が見えるようになり、斜めに通っている棒がしっかり2本に見えるなど、解像感は確実に上がっている。また「DSC-HX30V」の「アップ2」と比較してみると、建物の階段などがはっきりと描画されており、若干ながら「DSC-HX30V」の方がくっきり見える印象だ。印刷などをすると細部までしっかりと表現され、より綺麗に見えるだろう。

ズームの操作性は?

 一方ズームだが、ズームの速度は高速で、実際に計ってみると20倍まででも2.6秒程度でズームできてしまう。ズームレバーも大きめなので操作しやすく、ちょうど良い倍率に合わせやすい。もちろん光学式手ぶれ補正が搭載されているため、ブレはかなりおさえられている。さらに「DSC-HX30V」では、ジャイロセンサーを新たに搭載しているため、20倍までズームしてもそれほどひどいブレにはならずに撮影できる。20倍ズーム状態で「DSC-HX5V」の10倍ズームと同じか、ややぶれにくいというレベルまで補正できるのは驚きだ。もちろん20倍ともなるとぶれやすいが、三脚などで固定しなくても、少し気をつけるだけで手持ちでも手ぶれのない写真が撮影できるのは驚きである。

DSC-HX30V
DSC-HX5V
広角時
(1倍
ズーム時)
最大
光学
ズーム時

 実際に最大までズームした写真を見ると、「DSC-HX30V」の方が大きく寄れている事がわかる。さすがに10倍と20倍では大きな差がある。また上記の広角側の写真と同じ位置からのズームなので、20倍ズームのすごさが分かるだろう。ここまでズームできれば、いろいろと重宝しそうである。

超解像ズームを検証する

 また「DSC-HX30V」には、新たに光学ズームのさらに2倍の40倍まで全画素超解像ズームという機能が使える。今はやりの超解像技術を採用したズームで、光学ズームほどでは無いものの、デジタルズームよりは解像感を保ったままズームができる。もちろん記録画素数も下がらない。

全画素超解像ズーム40倍
光学ズーム20倍を2倍拡大
全体像
アップ1
アップ2
アップ3
アップ4

 実際に40倍全画素超解像ズームで撮影した物と、20倍光学ズームで撮影した物を2倍に拡大した画像を比較してみよう。全体像は、写真全体を400×300ドットになるように縮小したもので、アップ1〜4はそれぞれ、縮小を一切せずに、一部分を400×300ドットに切り出したものである。アップ1を見ると、道路標識のノイズがなくなり、曲線部分のジャギーも無くなっている。続いてアップ2を見ると、同じくノイズが無くなっている。しかし、全体に、べた塗りになり、絵画調になっている。また、ガードレールや柵などが直線的では無くなっている。アップ3を見ると、同じく絵画調になっているほか、細いケーブルの一部が消えている。アップ4は明らかにノイズが少なくなり、綺麗に見える。これらを見ると、ややべた塗りの絵のようになってしまいがちだが、ノイズやジャギーが減り、全体に綺麗に見える。アップで見るとこういった感じだが、実際に高解像度の画面で見たり、印刷すると全画素超解像ズームの方が解像感があるような、全体にノイズによるざわつきが少ないようなイメージを受け、綺麗に見える。光学ズームと同じレベルと考えるとガッカリするが、デジタルズームよりは綺麗にズームでき、十分に使用できるレベルである事がわかった。ズームに関しては、本体サイズから想像も付かない優秀さだ。

暗い場所での使い勝手は?

 暗い場所での画質はどうだろうか。「DSC-HX30V」は裏面照射型CMOSである「Exmor R」を採用しているため、元々暗いシーンは得意な方だ。しかし、同じ「Exmor R」を採用する、これまで使ってきた「DSC-HX5V」と比べると、CMOSのサイズがそのまま画素数がアップしているので、1画素当たりのサイズが小さくなり、光への感度が弱くなっていると思われる。結果、画素数はアップしてもノイズ量は増えている可能性もある。撮影した写真を見る限りでは、明るくノイズが少ない写真が撮影でき、十分な画質に思えた。夜の屋外や暗い室内でも、目で見るよりも明るく撮影できている。しかし、ここはあえて厳しく、「DSC-HX5V」と「DSC-HX30V」を比較してみたいと思う。
 ちなみに今回からフラッシュが収納式となり、使用時だけポップアップするようになった。フラッシュが不要なときは隠れているため見た目にもスマートなだけでなく、大型になったため「DSC-HX5V」より強力になっているのもうれしいところだ。「DSC-HX5V」ではワイド側でISO自動の時で0.25〜3.8mだったのが、「DSC-HX30V」では0.4〜7.1mになっている。かなり強力になっている。フラッシュの使用時は自動でポップアップするため、フラッシュの状態を意識することなく使用できる。ただ、フラッシュが必要だと判断すると突然飛び出してくるため、両手でカメラをホールドしていると、左手の人差し指のあたりが突然せり上がって驚くことになるのはご愛敬だ。またロックが外れて飛び出すのではなく電動式なので、収納も自動で行ってくれうるのもうれしい所だ。フラッシュが必要ないと判断する明るさだったり、フラッシュを「発行禁止」に設定した場合、フラッシュが使用できないシーンモードや連写設定にした場合などは、即座に収納してくれる。

「DSC-HX30V」のフラッシュ使用時である。フラッシュを使用する設定と状況になると自動的にポップアップしてくる。電動であるため収納も自動で行われ便利だ。

オート設定での画質を検証する(やや暗い場所)

 それでは、やや暗い場所での画質をみていこう。撮影場所は、阪神電鉄梅田駅である。改札のある側ではなく、トンネルにつながっている側のホームの端で撮影している。地下駅であるため、蛍光灯の光はあるものの、地上駅と比べると薄暗い印象だ。一般の室内での撮影に近いと思われる。

DSC-HX30V
ISO感度:オート(ISO320)
シャッタースピード:オート(1/30秒)
DSC-HX5V
ISO感度:オート(ISO400)
シャッタースピード:オート(1/30秒)
全体像
アップ1
アップ2

 まずは、設定を「おまかせオート」にした状態での撮影である。ISO感度やシャッタースピートなどはオートとなる。同じ場所から撮影したのだが、「DSC-HX5V」では自動的にISO400になったのに対して、「DSC-HX30V」ではISO320に設定された。シャッタースピードに関してはどちらも同じく1/30秒であった。撮影された写真は、ほぼ同じ明るさだ。つまり、「DSC-HX30V」では一段低いISO感度での同じ明るさで撮影できるという事である。前述のように不利と思われた「DSC-HX30V」の方が、逆に光に対する感度は高いということは驚きである。
 これまでと同様、写真をそのまま400×300ドットに縮小した写真と、一切縮小せずに400×300ドットで切り出した画像2枚を掲載した。同じ400×300ドットに切り出しているのに、写っている範囲が異なっているのは、画素数が異なるためである。これを見る限り、どちらもノイズ量に大きな違いはないようだ。ライトの周りのノイズが「DSC-HX30V」の方がやや少なく見えるのは、ISO感度が低い設定で撮影できたためだろうか。どちらも地下駅とは思えないほど少ないノイズで撮影できており、十分すぎるほど合格点と言えよう。

DSC-HX30V
ISO感度:ISO1600
シャッタースピード:オート(1/160秒)
DSC-HX5V
ISO感度:ISO1600
シャッタースピード:オート(1/125秒)
全体像
アップ1
アップ2

 続いて、シーンセレクションで「高感度」に設定し、ISO感度がISO1600になるようにして撮影を行った。すると、どちらも同じ程度の明るさにとれているにもかかわらず、「DSC-HX30V」はシャッタースピードが1/160秒に、「DSC-HX5V」は1/125秒に設定された。つまり、「DSC-HX30V」の方が、同じISO感度ならシャッタースピードが一段速くなるようだ。前述のISO感度オートの時と同じく、DSC-HX30の方が光への感度は高いようだ。
 さて同じく全体像1枚とアップ3枚の画像を見てみよう。全体像を見ると、どちらも発色も良く、非常に綺麗に撮影できているように見える。アップの写真を見ると、確かにISO感度をオートにしたときのISO400よりはノイズが増えているが、それでもそれぞれの質感を損ねるほどではなく、比べてみないと分からないほど十分に綺麗に撮影できている。「DSC-HX30V」の方が、やや乗車口の金属ステップのノイズや、ライトの周囲のノイズが少なく、質感がより綺麗に表現されているように見える。ノイズ量では不利かと思われていた「DSC-HX30V」だが、比較してみるとむしろ優れていることが分かり安心である。

DSC-HX30V
手持ち夜景モード
ISO感度:オート(ISO160)
シャッタースピード:オート(1/30秒)
DSC-HX30V
ISO感度:オート(ISO400)
シャッタースピード:オート(1/30秒)
全体像
アップ1
アップ2

 ちなみに、「DSC-HX30V」には「手持ち夜景」というモードがある。これにすると、最大6枚の連写を行い、合成することでノイズ量を減らしてくれる。今回は「手持ち夜景モード」にすることで、シャッター速度は同じながら、ISO感度をISO160まで下げる事ができた。
 これまで同様全体像1枚と、縮小しないで切り取ったアップ写真2枚で比較してみるよう。まず全体像を見ると「手持ち夜景モード」の方が、やや暗く写っていることがわかる。これはこれまで使っていた「DSC-HX5V」でも同様であったため、やや暗めに写る傾向はあるようだ。アップ写真を見ると、手持ち夜景モードにしなくてもISO400であり、裏面照射型CMOSの採用と併せて十分ノイズが少なかったことから大きな差はない様に見えるが、前照灯のライトケースの側面部分のノイズなど、細かい部分のノイズがさらになくなっている。より暗い店内などでは差が顕著になる可能性もある。また、後で夜景でもテストしているので、そちらでは大きな差が出るかが見物である。

オート設定での画質を検証する(夜景)


DSC-HX30V
ISO感度:オート(ISO3200)
シャッタースピード:オート(1/4秒)
DSC-HX5V
ISO感度:オート(ISO3200)
シャッタースピード:オート(1/4秒)
全体像
アップ

 続いて夜景である。夜景で設定を「おまかせオート」にすると、「DSC-HX30V」と「DSC-HX5V」のどちらもISO感度はISO3200まで上がり、シャッタースピードは1/4秒にまで下がった。この点では同等と言える。写真全体を400×300ドットまで縮小した「全体像」と、縮小せずに400×300ドットに切り取った「アップ」写真を見てみよう。「DSC-HX30V」の方が画素数が上なので、同じ400×300ドットに切り取っても大きく写っている。
 全体像を見ると、写っている明るさなどは同等レベルに見えるが、色合いが異なっている。「DSC-HX30V」では白っぽく、「DSC-HX5V」では黄色っぽくなっている。10枚撮影したが、10枚ともこの色合いだった。目で見た感じは「DSC-HX30V」に近く、暗いシーンでも正しい色合いになるようになったのとも考えられる。アップ写真を見ると、ISO3200でかなり暗いシーンにもかかわらず、ノイズは非常に少ない点では共通しているが、「DSC-HX30V」の方がより解像感があり、ベランダの桟なども綺麗に写っている。暗いシーンでの画質も向上している事がはっきりとわかった。

ISO感度による違いを検証する


全体像
アップ
ISO感度
ISO400

シャッタースピード
オート(1秒)
ISO感度
ISO800

シャッタースピード
オート(1秒)
ISO感度
ISO1600

シャッタースピード
オート(1/1.6秒)
ISO感度
ISO3200

シャッタースピード
オート(1/4秒)
ISO感度
ISO6400

シャッタースピード
オート(1/6秒)
ISO感度
ISO12800

シャッタースピード
オート(1/13秒)

 ISO感度を上げていくとどうなるのかを実験してみた。「プログラムオート」設定にすることでシャッタースピードはオートでISO感度のみマニュアルで設定した。ISO400ではシャッタースピードは1秒に設定されている。これは「プログラムオート」の場合、最長が1秒となっているためだ。ISO800にすると、同じシャッタースピード1秒ながら、明るくとれている。そして、ISO1600まで上げると、シャッタースピードは1/1.6秒とあまり速くなっていないが、より明るくとれるようになっている。ここからISO3200、6400、12800と上げても、明るくはならないが、シャッタースピードが1/4秒、1/6秒、1/13秒まで高速になる。ISO12800の1/13秒であれば、手持ちであっても気をつければ手ぶれ無しで撮影できるだろう。「DSC-HX5V」ではISO3200が限界だったので、夜景が明るく手軽に撮影できるようになったわけである。
 撮影できた画像を縮小せずに400×300ドットに切り取った「アップ」の写真を見ていくと、確かに、ISO感度を上げるほどノイズ量が増えていることが分かる。一方でISO1600くらいなら、白い壁が多少ざらつくが、空部分のノイズは少なく、全体として十分に低ノイズと言える。ISO3200では空部分にまでノイズが乗り、白い壁のノイズも大きくなっているが、実用的な範囲だ。そして、ISO6400ではISO感度もかなり高くなっているため、ノイズと言うよりも全体にざわついた感じになっている。またISO6400以上は、自動的に「全画素超解像」技術および重ね合わせ連写が行われるためか、解像感が低くなっている。ベランダの桟などがぼやっとした感じになっている。ISO12800ではさらにノイズが増え解像感が低下している。しかし、実際にL判写真用紙などに印刷してみると、ISO6400でもほとんど気にならないレベルだった。ISO12800でも写真としては十分に綺麗に写っているレベルで、逆に言うと、何の処理もしないままISO感度だけを上げていくと、ノイズで見られたものでは無くなってしまう恐れがある。より高いISO感度の設定を用意するだけでなく、実用的な範囲の画質になるように工夫されている点はさすがである。

手持ち夜景モードでの画質を検証する(夜景)


DSC-HX30V
手持ち夜景モード
ISO感度:オート(ISO3200)
シャッタースピード:オート(1/4秒)
DSC-HX30V
ISO感度:オート(ISO3200)
シャッタースピード:オート(1/4秒)
全体像
アップ

 もう一つ手持ち夜景モードでも撮影を行い、「おまかせオート」モードとの比較を行った。。ISO感度やシャッタースピートはオートだが、どちらのモードでもISO3200でシャッタースピード1/4秒に設定されている。「全体像」を見ると、撮影できている明るさはほぼ同じだが、「手持ち夜景」の方が草の色がより濃く出ているなど、コントラストがはっきり出ているようだ。一方「アップ」を見ると、たしかに「手持ち夜景」の方がノイズは少なく見えるが、その代わりベタッとしたような、解像感のない画像になってしまっている。これまで使ってきた「DSC-HX5V」でもそうだったが、あまり暗すぎると「手持ち夜景」の効果がいまいちになることがあった。やや暗めの室内くらいが一番効果を発揮するようである。

長時間露光で撮影すると?

 「DSC-HX30V」では、シャッタースピードは「おまかせオート」モードでは1/4秒が最長、「プログラムオート」モードでも1秒が最長だが、マニュアルモードでは30秒までの長時間露光が設定できる。1秒以上では、1.3秒、1.6秒、2秒、2.5秒、3秒、4秒、5秒、6秒、8秒、10秒、13秒、15秒、20秒、25秒、30秒が選択できる。もちろん、これほどの長時間では手持ちでの撮影は、どんなに注意してもぶれてしまうため、三脚を使用したり、手すりの上に置くなど、固定した状態で撮影しなければならない。また人物を取る場合は、よほど注意して制止しておいてもらわないと人物ブレを起こすため、基本的には風景を撮ることになる。しかし、それさえクリアできれば、高感度モードでは撮影できないような幻想的な写真が撮影できる。

DSC-HX30V
マニュアルモード
ISO感度:ISO800
シャッタースピード:30秒
DSC-HX30V
ISO感度:オート(ISO3200)
シャッタースピード:オート(1/4秒)
全体像
アップ

 30秒の長時間露光だと、昼間に撮影したかのような明るさになる。それでいて、ISO感度をただ上げたのとは異なり、夜なのに光が特に幻想的に光る独特の写真が撮影できるのである。ありふれた夜景も、長時間露光で撮影すると美しい夜景へと一変するのである。またアップを見ると、低いISO感度で撮影しているため、ノイズがかなり少なく、細部まで綺麗に明るく写っていることが分かる。長時間露光は、場所によって細かく露光時間やISO感度を設定しないと、真っ白に飛んだ写真になってしまったり、意外と暗く写ったりと、何度か試行錯誤を繰り返さなくてはならないし、撮影後、処理待ちの時間が数秒から数十秒かかってしまうが、時間があるときに1枚撮影しておくとおもしろいだろう。

連写機能とセルフタイマーの使い勝手は?

連写機能をを見ていこう。「DSC-HX5V」の電源ボタンの横にあった、1枚と連写の切り替えボタンが「DSC-HX30V」では省略されている。ではどこで設定するかというと、背面の十字ボタンの左の「セルフタイマー」のメニュー内に統合されている。「1枚撮影」「連写」「セルフタイマー10秒」「セルフタイマー2秒」「自分撮り1人」「自分撮り2人」「セルフタイマー連写」から選べる。セルフタイマーと連写が同時に設定できないのではと懸念したが、ちゃんと「セルフタイマー連写」という選択肢がありほっとした。ちなみにセルフタイマー連写では10秒後に10連写をする。「DSC-HX5V」では連写でセルフタイマーを設定すると、5枚撮影されていたが、連写モードでは10枚まで撮影できるのになぜ5枚止まりなのか気になっていた。「DSC-HX30V」では、最大の10枚まで撮影してくれる。ちなみに「DSC-HX5V」ではセルフタイマーの設定は1回ごとに解除されていたが、「DSC-HX30V」では解除されなくなった。連写モードが統合されて、連写設定が1回ずつ解除するわけにはいかないため、セルフタイマーも解除されなくなったためと思われる。「DSC-HX5V」の時は、1回セルフタイマーで撮影し、もう一回という時にうっかりセルフタイマー設定をするのを忘れていきなり撮ってしまう失敗があったため便利かと思われたが、逆にセルフタイマーを解除し忘れると、しばらくして普通に撮影する時にセルフタイマーになってびっくりするという問題が発生してしまった。どちらが良いかは微妙なところだ。
 その連写モードだが、最高で10枚/秒で最大10枚まで撮影してくれる。このあたりは「DSC-HX5V」と同じである。10枚/秒では速すぎるという場合に、10枚/秒の「High」の他に、2枚/秒の「Low」があるため、これならば0.5秒に1回で5秒間撮影できることになる。ちなみに「DSC-HX5V」にあった5枚/秒の「Mid」はなくなっている。実際、「High」と「Low」しか使用していなかったので、問題ないだろう。ただ、最大10枚というのは「DSC-HX5V」から増えておらず、できればもう少し増やして欲しかったところだ。とはいえ、ただでさえ画素数が上がって1枚あたりのファイルサイズが増えている上に、さらに枚数を増やすとなると、バッファ用のメモリの容量をかなり増やさないといけなくなるため、コスト的には難しいのだろう。連写はシャッターボタンを押している間撮影されるので、途中で手を離せば好きな枚数だけ連写できる。とはいえ「High」ではちょっと長押しすると10枚までフルで撮影されてしまうため、途中で止めるのはかなり難しい。それほどまでに高速だと言うことだ。筆者の場合、連写は動きのある被写体に対してだけでなく、スナップ写真の場合は常に使用している。1枚撮影では手ぶれしてしまって失敗写真となる事もあるが、連写しておけば何枚か手ぶれしていても、手ぶれのない写真も確保できる可能性が高くなるし、後で良い表情の写真を選ぶことができるからだ。ここまで高速だと、相手に連写する間待ってもらうという手間をかけずに連写ができるため便利だ。
 連写で便利になったのが、メモリカードへの記録時間が短縮されたことだ。連写撮影した場合、連写が終了すると画面にサムネイル用の枠が10個並び(10枚撮影した場合)、そこにサムネイルが表示されつつメモリカードに記録されていく。メモリカードへ記録が完了するまで次の撮影や再生への切り替えはきかない。「High」設定でも「Low」設定でも、連写が完了してからしかメモリカードへの記録が始まらないため、連写後は必ず待ち時間が発生することになる。これは「DSC-HX5V」でも「DSC-HX30V」でも同じだ。ただ、このメモリカードの記録時間がかなり高速化されている。そこで、実際の記録時間をテストしてみた。

カード
書き込み速度(実測)
DSC-HX30V
DSC-HX5V
UHS-I対応Class 10 SDHCカード
74.5MB/s(UHS-I転送)
21.37MB/s(非UHS-I転送)
9.64秒
17.95秒
Class 10 SDHCカード
21.27MB/s
9.73秒
17.88秒
Class 2 SDHCカード
8.97MB/s
10.12秒
18.09秒

 テストは連写を行い、連写が完了した時点から、記録画面が表示され、それが消えて撮影可能状態に戻るまでの時間を計測した。3回行った平均値としている。メモリカードによる差もテストするため、UHS-Iにも対応したClass10のSDHCカード、Class10のSDHCカード、Class2のSDHCカードの3種類を用意した。それぞれの実際の書き込み速度もベンチマークテストを使って計測している。
 結果を見ると、44〜46%も時間が短縮されている事がわかった。待ち時間半減はなかなかである。一方で「DSC-HX5V」ではメモリカードに高速な物を使用しても待ち時間は変わらなかったが、「DSC-HX30V」でも同様の結果となった。SDカードの高速転送規格UHS-Iには対応していないとのことなので、UHS-I対応カードでも、従来の転送方式だとClass10のカードと同じ速度であることから、この2つでは待ち時間は同じというのはうなずけるが、実測値で半分以下の速度だったClass2カードとの比較でもほとんど待ち時間が変わらないのは残念である。フルハイビジョンの動画撮影にはClass4以上が必要だが、静止画を撮影する際はメモリカードの書き込み速度は気にする必要はなさそうだ。(もちろんパソコンに画像を転送するときの時間には差が出るだろうが)

液晶ディスプレイを比較する

 ちなみに撮影する上で一番良かったのが、液晶ディスプレイが高画質化したことだ。「DSC-HX5V」の23万画素から「DSC-HX30V」では92.1万画素にアップし、一目で詳細になったのが分かる。23万画素というのは、中位モデルに採用されているのと同じで、当時からビデオカメラの上位機種には90万画素クラスの液晶ディスプレイが採用されていただけに、「DSC-HX5V」の数少ない残念な点の1つだった。「DSC-HX30V」ではその弱点が無くなっている。高詳細なので綺麗に見えるだけでなく、スナップ写真を撮影する際に人物の表情が確認できたり、ズームする対象物が確認しやすかったりと、使い勝手が大きく良くなっている。さらに「TruBlack」液晶となり、コントラストが大幅に良くなったため、発色が良くなった。「DSC-HX5V」を使っている時は気がつかなかったが、一度「DSC-HX30V」に慣れてから「DSC-HX5V」の液晶を見ると白くかすんで見えるほどの差だ。白飛びしたり黒つぶれしないため、撮影がしやすい他、撮影した画像の再生時も綺麗に見える。液晶ディスプレイは大きく進化した点と言えるだろう。
 そこで、実際に液晶ディスプレイに同じ写真を表示した状態で比較してみることとした。

DSC-HX30Vの液晶
DSC-HX5Vの液晶

 まず、一番上の液晶ディスプレイ全体を見てみよう。「DSC-HX5V」の方が青みがかかって見えるが、実際には暗いというイメージだ。コントラストも「DSC-HX30V」の方高く、黒が引き締まっているのに潰れていない。次に画素数のアップがどの程度の差になるのか、写った写真の一部と、メニューの文字の部分を拡大して比較してみた。2枚目を見ると、「DSC-HX5V」では各ドットの隙間が見えるほどで、快速の「速」の字や、日根野の「根」の字も潰れて、よく分からない。一方、「DSC-HX30V」ではこれらの文字もはっきり見える上に、快速の下の「Rapid Service」の英語文字も読めそうなほどだ。3枚目を見ても解像度の違いは一目瞭然で、DEC-HX30Vの方が文字の輪郭が綺麗で、文字自体がくっきりしている印象だ。ここまで違うとさすがに撮影時にも違いを感じるほどで、画素数がアップしたのは素直に喜びたい点だ。

「MRモード」の使い勝手は?

 撮影として新たに「MRモード」が搭載されている。「MRモード」は簡単に言えば設定した内容を保存できるもので、3つまで保存できる。保存できる内容はシーンやフラッシュモード、撮影画素数、ホワイトバランス・フォーカス・顔検出の設定、動画の画質や手ぶれ補正モード、さらにはグリッドラインの有無や全画素超解像ズーム・デジタルズームのオン/オフ、風音低減や、赤目軽減、目つぶり通知の設定、さらに画面表示のモードまで登録しておけるのである。おすすめの設定を登録しておいても良いし、家族で使うときそれぞれが使いやすい設定を登録しておくという方法もある。簡単に、モードダイヤルから無くなった、「逆光補正HDR」と「手持ち夜景」モードを登録しても良い。ただ、気になるのは「MRモード」へ移行した際の動作だ。例えば「おまかせオート」で被写体にズームした状態で、やはり「MRモード」で登録した設定の方が良いと考えて「MRモード」に切り替えると、ズームが解除されてしまうのだ。逆に「MR」モードから「おまかせオート」などへ移行した場合はズームは解除されない。確かに、登録する内容に「全画素超解像ズーム」や「デジタルズーム」のオン/オフに関する設定があるため、例えば全画素超解像ズーム状態で、全画素超解像ズームオフで登録されているモードに切り替えるとややこしいため、ズームが解除されるのかもしれない。それでも光学ズームをオフにする設定はないため、せめて光学ズームだけでも解除されないで欲しかった。細かい点だが、せっかく被写体に合わせておいたのが1からになるのは不便だ。

「DSC-HX30V」の「MRモード」の選択面である。あらゆる設定を一度に登録しておけるので、おすすめの設定を登録しておいたり、使う人に合わせて登録しておいても良いだろう。

「スイングパノラマ」の使い勝手は?

 スイングパノラマ機能は「DSC-HX5V」から引き続き搭載している。シャッターボタンを押してから、自分を中心に右に回転(スイング)すると、パノラマ写真として合成してくれる機能だ。高速連写を利用して、スイングしている間に連写を行うことで、スムーズに連続した写真となる。使い捨てカメラのパノラマのようにただ横長な写真ではなく、180度反対側が同じ面に写っているという写真が撮影できる。写真一枚ではどうしても写る範囲が狭く、雰囲気が伝わらないときに、スイングパノラマ機能を使うと、広く撮影ができる。しかも、「顔・動き検出対応」なので、連写した写真を等間隔で合成するのではなく、間隔を自在に変えて、顔や動いている物は可能な限り1枚で使うことで、顔が途中で分割されたりといった事がないようになっている。スイングは、できるだけ高さを変えずにスムーズに行う必要があるが、それほど気を遣わなくてもある程度は許容される。スイングする速度も、速すぎると警告メッセージが出て、遅すぎるとスイングしきる前に連写枚数上限に達してしまうため、角度が小さくなってしまう。ただ思いの外簡単にできるので、慣れれば1回で成功するようになる。右方向のスイングだけでなく、上下左右の4方向のスイングが選べる。スイングパノラマモードの時に、十字キーの方向を押すだけで変更できる手軽さもうれしい。このあたりは「DSC-HX5V」ですでに完成していたため、おおきな改善点はないと思われていた。しかし残念なことに「DSC-HX30V」では撮影可能角度が減ってしまったのだ。具体的には「DSC-HX5V」の270度から192度まで減っている。しかしながら、スイングパノラマで撮影した画像サイズを見てみると、ワイド設定の場合、「DSC-HX5V」では左右スイングで7152×1080、上下スイングで4912×1920ドットだったが、 「DSC-HX30V」でも同じく左右スイングで7152×1080、上下スイングで4912×1920ドットになっているのである。実際に撮影してみても大きく変わったようではないが、確かに撮影できる角度が減っている。そこで両機種で撮影した写真をよく見比べると、「DSC-HX30V」の方が、ややズーム気味になっているようである。たしかに、焦点距離が大きくなれば、同じドット数で撮影できる範囲は小さくなるため、その分撮影できる角度も小さくなる。ただ、実際は比べてみないと分からないレベルの差であるため、その程度で270度から192度まで小さくなるほどかどうかは疑問だ。そもそも静止画撮影時の焦点距離は変化していないのに、スイングパノラマの時だけ焦点距離が異なるのも謎である。変わりと言っては何だが、撮影した写真の上下端に近い部分の横線が曲がるのが少しマシに見えるようではある。このほか、HRモードにすると、10,480×4,096の高解像度になる。カメラを縦にして横に動かすことで、長い辺を縦方向に使用することができ、解像度を高くすることができるというものである。逆に横方向が短い方の辺になってしまうので、角度は小さくなる。実際に撮影できる写真の解像度も、縦が4倍高解像度になっているのに対して、横は1.5倍程度にしかなっていない。とはいえ、これまではパノラマでない側の解像度がフルハイビジョンと同じ解像度止まりだったが、ここまで高解像度になるとあとで切り取って印刷する事もできる解像度になっているため、場所や場合によって通常のスイングパノラマと使い分けると便利だろう。

「DSC-HX30V」の「スイングパノラマ」で撮影した画像である。使い捨てカメラなどにあったパノラマ写真と異なり、実際には反対側にある風景が同じ面に写る。写真一枚ではどうしても写る範囲が狭く、雰囲気が伝わらないときに便利だ。この写真でも、立っている位置の左右に建物が2棟あるのではなく、180度反対側の建物が写っている。


「背景ぼかし」機能の使い勝手は?

 その他のおもしろい機能としては「背景ぼかし」機能がある。一眼レフのデジタルカメラでは背景が綺麗にぼけることで、被写体が際だたせたり、奥行き感が表現できるが、コンパクトデジカメでは、そういった撮影は不可能である。そこで、「背景ぼかし」機能の場合、1回のシャッターで2枚連写して、合成することで背景を綺麗にぼかす事ができるというわけである。実際にやってみると、非常に難しい。一応撮影と処理は行われる物の、合成された写真を見ても背景がぼけていない事も多かった。背景と被写体の色や近さ、被写体の動きなどに影響されているようだが、桜の花などで実験してもなかなか難しい。ただ成功率は低いが、成功すると非常に綺麗に背景のぼけた写真が撮影できる。実用性はやや低めだが、試してみても悪くない機能だと言える。

「背景ぼかし」モード
「オート」モード
「DSC-HX30V」の「背景ぼかし」モードで撮影した画像(左)と「オート」モードで撮影した画像(右)である。「オート」モードでも背景は若干ピントが合わなくなるが、「背景ぼかし」のすると、花だけにピントが合い、背景は完全のぼけるので、花が際だって見える。


「逆光補正HDR」機能の使い勝手は?

 便利なのは「逆光補正HDR」である。逆光になっている場合や、暗い室内と明るい窓の外を同時に撮影する場合、普通に撮ると前にいる被写体が暗くなってしまう。被写体に明るさを合わせると、今度は背景が白く飛んでしまう。そんな時に「逆光補正HDR」モードで撮影すると、露出を変えて3枚の写真を連写し、合成することで、暗く写る部分は露出を高く、明るく写る部分は露出を抑える事で、自然に白飛びも黒つぶれもない写真が撮影できるのである。これは精度がなかなか高く、高速な連写性能によって、3枚の連写も一瞬で終了する。撮影後に4秒ほどの処理時間が発生するが、たったそれだけで逆光でも気にすることなく撮影できるのは驚きと言える。この「逆光補正HDR」機能は、これまで使っていた「DSC-HX5V」にも搭載されていたが、こちらは「露出の異なる「2枚」の写真を連写して合成する」となっており、「DSC-HX30V」では「3枚」からの合成なので、より自然になっている。細かな点でも改良され、より完成度を高めているのはうれしいことだ。

「逆光補正HDR」モード
「オート」モード
「DSC-HX30V」の「逆光補正HDR」モードで撮影した画像(左)と「オート」モードで撮影した画像(右)である。「オート」モードでは、建物に明るさを合わせたため、空が完全に白飛びしているほか、建物の高い部分の一部も白飛びして空と同化してしまっている。しかし「逆光補正HDR」モードなら、建物の高い部分も綺麗に見え、空も雲まで綺麗に見えている一方、建物も暗くなっていない。


再生時の使い勝手は?

 再生は本体の再生ボタンを押すだけで再生モードに入れる。再生後の拡大もできるため、液晶ディスプレイが高解像度になっている事と併せて顔の表情や手ぶれ度合いを細かく確認できる。また、「DSC-HX5V」では上下左右のカーソルボタンだったので、写真を送るときはボタンを何度も押さなければならなかったが、「DSC-HX30V」ではカーソルボタンがホイールも兼ねているため、左右に回すだけで写真を送ったり戻したりできるようになった。これは非常に便利である。目的の写真が素早く見つけられるため、大量に写真撮影をしても安心である。

動画撮影機能を比較する

 それでは「DSC-HX30V」で大きく進化した動画撮影機能を特に詳しく見ていこう。比較対象として、これまで使ってきた「DSC-HX5V」に加えて、ほぼ同時期に発売されたソニーのデジタルビデオカメラの上位機種「HDR-CX720V」と、中位機種「HDR-CX590V」とも比較してみよう。これまでのデジタルカメラと比べどの程度進化したかを見ると共に、どのくらいデジタルビデオカメラに迫っているかが確認できるはずだ。

型番 DSC-HX30V DSC-HX5V HDR-CX720V HDR-CX590V
イメージセンサー 1/2.3型
”Exmor R”CMOS
1/2.4型
”Exmor R”CMOS
1/2.88型
”Exmor R”CMOS
1/3.91型
”Exmor R”CMOS
有効画素数 N/A(センサーは1820万画素) N/A(センサーは1020万画素) 614万画素(16:9) 502万画素(16:9)
レンズ Gレンズ Gレンズ カールツァイス「バリオ・ゾナーT*」 Gレンズ
フォーカス 自動 自動 自動/手動(ダイヤル・タッチパネル) 自動/手動(タッチパネル)
F値 F3.2〜5.8 F3.5〜5.5 F1.8〜3.4 F1.8〜3.4
ズーム 20倍 10倍 光学10倍
エクステンデッド17倍
光学12倍
エクステンデッド20倍
焦点距離(35mm換算) 28.0〜784mm
(手ぶれ補正アクティブ時)
30〜300mm 26.0〜260.0mm 26.8〜321.6mm
液晶 3.0型(4:3)
92.1万画素
エクストラファイン液晶(TruBlack液晶)
3.0型(4:3)
23万画素
クリアフォト液晶
3.0型(16:9)
92.1万画素
エクストラファイン液晶(TruBlack液晶)
3.0型(16:9)
92.1万画素
エクストラファイン液晶(TruBlack液晶)
タッチパネル
最低被写体照度 スタンダード N/A N/A 6lux 6lux
ローラクス N/A N/A 3lux 3lux
ナイトショット ○(ナイトショットライト内蔵)
手ぶれ補正 光学式(電子式併用)
アクティブモード搭載
回転ぶれ補正対応
光学式(電子式併用)
アクティブモード搭載
(テレ側は従来機種相当)
光学式(電子式併用)
(空間光学方式)
(アクティブモード搭載)
光学式(電子式併用)
アクティブモード搭載
回転ぶれ補正対応
ホワイトバランス オート オート/太陽光/曇天/蛍光灯1/蛍光灯2/蛍光灯3/電球/ワンプッシュ/ワンプッシュ取込 自動/ワンプッシュ/屋外/屋内 自動/ワンプッシュ/屋外/屋内
ホワイトバランスシフト
明るさ調整 ○(自動/手動) ○(自動/手動) ○(自動/手動) ○(自動/手動)
AEシフト
逆光補正 自動 自動
おまかせオート 44シーン 8シーン 180シーン 180シーン
顔認識
その他 過去フレーム情報参照によるノイズ除去
記録モード AVCHD PS:1920×1080/60p(28Mbps)
FX:1920×1080/60i(24Mbps)
FH:1920×1080/60i(17Mbps)
HQ:1440×1080/60i(9Mbps)
FH:1920×1080/60i(17Mbps)
HQ:1440×1080/60i(9Mbps)
PS:1920×1080/60p(28Mbps)
FX:1920×1080/60i(24Mbps)
FX:1920×1080/24p(24Mbps)
FH:1920×1080/60i(17Mbps)
FH:1920×1080/24p(17Mbps)
HQ:1440×1080/60i(9Mbps)
LP:1440×1080/60i(5Mpbs)
PS:1920×1080/60p(28Mbps)
FX:1920×1080/60i(24Mbps)
FX:1920×1080/24p(24Mbps)
FH:1920×1080/60i(17Mbps)
FH:1920×1080/24p(17Mbps)
HQ:1440×1080/60i(9Mbps)
LP:1440×1080/60i(5Mpbs)
MP4 12M(1440×1080/30fps)
6M(1280×720/30fps)
3M(640×480/30fps)
12M(1440×1080/30fps)
6M(1280×720/30fps)
3M(640×480/30fps)
MPEG-2 PS 720×480/60i(9Mbps) 720×480/60i(9Mbps)
写真同時記録 ○(1347万画素相当) ○(2410万画素相当) ○(2040万画素相当)
マイク 2ch
(ドルビーデジタル2.0クリエーター搭載)
2ch
(ドルビーデジタル2.0クリエーター搭載)
5.1ch
(ドルビーデジタル5.1クリエーター搭載)
アドバンスドサウンドプロセッサー搭載
5.1ch
(ドルビーデジタル5.1クリエーター搭載)
アドバンスドサウンドプロセッサー搭載
ズームマイク
風音低減 手動 自動 自動
録音レベル調整 ○(2段階) ○(2段階) ○(2段階)
マイク入力 ステレオミニジャック ステレオミニジャック
ビデオライト
連続撮影時間 1時間15分
(1回最大29分)
1時間15分
(1回最大29分)
1時間50分(付属バッテリ)
7時間35分(最大バッテリ)
2時間00分(付属バッテリ)
8時間20分(最大バッテリ)
実撮影時間 N/A N/A 55分(付属バッテリ)
3時間45分(最大バッテリ)
1時間00分(付属バッテリ)
4時間10分(最大バッテリ)

 順に見ていこう。イメージセンサーは4機種ともソニーお得意の裏面照射型CMOSセンサーである”Exmor R”CMOSを採用しており共通だ。イメージセンサーサイズは「DSC-HX30V」の方が大きく、デジタルビデオカメラの最上位機種「HDR-CX720V」よりも大きい。ただ、画素数が多いため、実際の1画素当たりのサイズは「DSC-HX30V」の方が小さくなってしまうだろう。ノイズ面ではデジタルビデオカメラより不利となる。ただ、中位機種の「HDR-CX590V」はセンサーサイズがかなり小さいので、「DSC-HX30V」でも中位機種とそれほど変わらないレベルには達しているかもしれない。有効画素は「HDR-CX720」が614万画素、「HDR-CX590V」が502万画素である。フルハイビジョン1920×1080ドットは約207万画素なので、それより多くの画素から映像を作り出すことで画質を向上させている。一方「DSC-HX30V」は残念ながら動画撮影時の有効画素数が公表されていない。静止画撮影時の有効画素数は1820万画素で、4896×3672ドットの写真が撮影できる。しかしデジタルビデオカメラではビデオ撮影に合わせてアスペクト比16:9のイメージセンサーを使うが、デジタルカメラでは写真に合わせてアスペクト比4:3のイメージセンサーであるため、アスペクト比16:9のビデオを撮影するには無駄が出る。左右をそのままにアスペクト比16:9にすると、4896×2754ドットとなる。これは約1348万画素である。「HDR-CX720V」の倍となるが、実際には手ぶれ補正が電子式と併用であるため補正エリアが必要である事を考えると、もう少し有効画素数は減る。そもそも実際にイメージセンサーを全て使っているかは不明だが、デジタルビデオカメラより多くの画素からフルハイビジョンを生成している可能性もあり、それなら先ほどの、イメージセンサーの1画素当たりのサイズが小さいという不利な点を多少補える可能性もある。
 レンズは「DSC-HX30V」はソニーの「Gレンズ」である。このレンズも良いレンズなのだが、「HDR-CX720V」では、さらに上のカールツァイス社の「バリオ・ゾナーT*」を採用しており1ランク上だ。ただ「HDR-CX590V」は「Gレンズ」なので、デジタルビデオカメラに劣るわけでもない。ただ、気になるのはF値に大きな差がある事だ。デジタルビデオカメラはF1.8〜3.4であるのに対して「DSC-HX30V」はF3.2〜5.8。デジタルビデオカメラと最望遠時と「DSC-HX30V」の最広角時の明るさが同じくらいなのだ。前述のイメージセンサーの違いと合わせて、明るく撮影できるのはデジタルビデオカメラの方だ。
 フォーカスに関する部分がデジタルカメラとデジタルビデオカメラの違う点だ、どちらもオートフォーカス機能を搭載しているのは当たり前として、「HDR-CX720V」と「HDR-CX590V」は手動フォーカスにも対応する。一方の「DSC-HX30V」はオートフォーカスだけだ。写真撮影時はマニュアルフォーカスが使えるが、動画撮影時はできない。「DSC-HX5V」でも同じであり、今回は動画機能が大きく進化したためこの点がどうなっているか楽しみにしていたが、残念ながらオートフォーカスだけである。一般的にはオートフォーカスだけで十分だが、かなり暗い場所だとオートフォーカスが正常に働かない事もあり、その際はマニュアルフォーカスが重宝するだけに、残念である。
 ズームはデジタルビデオカメラより強力だ。「HDR-CX720V」は光学10倍でエクステンデッドズームでも17倍だ。「HDR-CX590V」でも光学12倍、エクステンデッドズーム20倍である。一方「DSC-HX30V」では光学20倍である。本体内部でズーム動作をしなければいけないデジタルビデオカメラに対して、レンズを前に繰り出すことができるデジタルカメラは有利なようだ。ただし、ワイド側の焦点距離はデジタルビデオカメラの方が若干有利だ。とはいえ「DSC-HX30V」は「DSC-HX5V」よりは改善しているので、使いやすくなっている。
 ちなみに、「DSC-HX30V」は光学20倍ズームだが、焦点距離は28.0〜784mmとなり28倍ズームになっているという謎がある。メーカーによると、センサーの中の使用する画素の大きさを変化させることで光学ズーム以上の倍率になっているという。前述のようにイメージセンサーをフルに使っているとすると、4896×2754ドット(約1348万画素)から、フルハイビジョンの動画1920×1080ドット(約207万画素)を生成していることになる。逆に1348万ドットの中心部分207万画素だけ使えば、その分ズームしたような状態になるわけだ。この計算なら、さらに6.5倍ズームが可能で20×6.5で130倍ズームになる。実際にはイメージセンサーをフルに使っているかわからないし、そもそも手ぶれ補正が電子式と併用である以上、手ぶれ補正をするための余裕が必要なはずだ。また1画素からすべての色情報得られるわけではないので、207万画素の映像をセンサーの207万画素分を使って作り出すとかなり汚くなることを考えると、もっと多くの画素を使用する必要があるだろう。とはいえ、こういった方法で、20倍の所を28倍に40%高くするくらいは可能そうだ。
 液晶ディスプレイは、前述のように「DSC-HX30V」では高画素化と高画質化が図られたが、ちょうとデジタルビデオカメラと同じ液晶と画素数になっている。サイズも同じである。ただし、ビデオ撮影がメインのビデオカメラではアスペクト比が16:9になっているのに対して、写真撮影がメインの「DSC-HX30V」ではアスペクト比は4:3で、ビデオ撮影時には上下に黒い余白ができてしまう。実際にはビデオカメラよりやや小さく、やや画素数が低くなる。ただ、逆に写真撮影時は「DSC-HX30V」が有利になるので、これは仕方のないことだ。
 手ぶれ補正に関しては、電子式を併用した光学式で、アクティブモード対応である。しかも「DSC-HX30V」ではワイド側だけでなくズーム側でもアクティブモードが働くようになり、回転ぶれにも対応している。これは、「HDR-CX590V」と同じであり、ビデオカメラに追いついたと思ったら、最上位機種はさらに強力な空間光学方式の手ぶれ補正となっている。実はデジタルカメラの動画撮影時の手ぶれ補正機能は、常にビデオカメラの1歩後を追っている形だ。ビデオカメラにアクティブモード(ワイド側のみ)が搭載され、しばらくしてデジタルカメラにも搭載されたと思ったらビデオカメラはズーム側にも対応したアクティブモードになっていた。そしてデジタルカメラもズーム側のアクティブモードに対応したと思ったら、ビデオカメラは回転ぶれ対応に、そして今回こそ追いついたと思ったら、ビデオカメラは空間光学方式に移行したのである。デジタルカメラはビデオカメラには一歩及ばないという考え方もできるし、1世代前のビデオカメラと同じ性能を有しているとも言える。
 明るさ調整機能こそ、「DSC-HX30V」も備えているが、そのほかホワイトバランスの手動設定や、ホワイトバランスシフト、AEシフト機能は備えていない。逆光補正に至っては、ビデオカメラが手動から自動になった一方、「DSC-HX30V」は機能そのものが搭載されていない。細かい設定のマニュアル設定はビデオカメラと違ってほとんどできないと言えるだろう。またお任せオートでの認識されるシーン数にも大きな開きがある。ただ「DSC-HX5V」では顔認識機能すら搭載されていなかったが、さすがに「DSC-HX30V」では搭載された。大きな進歩と言えるだろう。
 記録モードに関しては「DSC-HX30V」では大きくビデオカメラに近づいた。もちろんMP4フォーマットの設定がある一方、MPEG2によるスタンダード画質の設定がないなど、それぞれ違いはあるが、最高画質に関しては進化が見られる。ビデオカメラではビットレートはずいぶん前には17Mbpsが最高だったが、最近では24Mbpsが主流で(60iの場合)、さらにインターレースではなくプログレッシブの60p撮影が可能なのも魅力だった。「DSC-HX5V」ではフルハイビジョン動画撮影ができるとは言っても、最高ビットレートは17Mbpsで60p撮影には非対応と、数世代前のビデオカメラ並みだった。それが、「DSC-HX30V」では最高ビットレート24Mbpsの設定ができ、60pの撮影もできるようになった。さらに動画撮影時に写真を撮影できる機能も追加され、この辺りは最新のビデオカメラにも引けを取らない性能となったのはうれしいところだ。
 音声記録は、ステレオでズームマイクなどにも対応しない。5.1チャンネル記録で、ズームマイク機能を備えるデジタルビデオカメラとは差が付けられている。ただ、本体サイズが小さなデジタルカメラにそこまで求めるのは酷というものだろう。「DSC-HX5V」では搭載されなかったが「DEC-HX30V」では手動ながら風音低減機能と、2段階の録音レベル調整機能を備えているだけでも上出来と言える。
 連続撮影時間に関しては、バッテリの小さな「DSC-HX30V」が劣るのは仕方のないところだろう。さらに、「デジタルカメラ」として販売する上での制限で、29分で撮影がストップしてしまう。再度撮影を開始することはできるが、連続で撮影する事ができないのは不便な場合もあるだろう。一方デジタルビデオカメラの場合はバッテリが無くなるか記録メディアを使い切るまで撮影でき、しかも別売りのバッテリならさらに撮影時間が延ばせる。このあたりはデジタルカメラとデジタルビデオカメラの大きな差と言えるだろう。
 これをみると、「DSC-HX5V」ではとりあえずフルハイビジョン動画撮影機能を搭載したと言ったイメージだったのが、「DSC-HX30V」ではデジタルビデオカメラの機能を一部取り込んで、 デジタルビデオカメラとしての使い勝手にも追求した印象だ。一部機のにおいては、デジタルビデオカメラの中位モデルと同等の性能を備えるまでになっている。とは言え基本はデジタルカメラであることと、本体サイズの制限からか、どうしてもマニュアル的な使い方は難しいようだ。オート撮影で使う分には、デジタルビデオカメラとして使う分にも不満がなさそうなレベルであることは確かだ。

動画撮影の使い勝手は?

 それでは動画撮影の使い勝手を見てみよう。モードダイヤルに、ずばり「動画撮影」があるため、そのモードにすると、画面の表示がアスペクト比16:9のワイド表示となり、焦点距離も動画撮影のものとなるため、実際に撮影できるエリアが確認できる。この状態で、液晶の右にある「MOVIE」ボタンを押すと録画が開始される。もう一度「MOVIE」ボタンを押すと録画が終了しスタンバイ状態になる。ボタンを押してから録画が開始されるまでは一瞬で、タイミングを逃すことはない。デジタルビデオカメラなどと同じ感覚だ。録画をストップした後は1〜2秒程度「記録中」と表示されるが、その後は再び撮影を開始できるため問題ない。一方、写真の撮影モードからでも、「MOVIE」ボタンを押すとビデオ録画が開始できるようになっているのは便利だ。こちらはモードが切り替わって録画を開始するため、「MOVIE」ボタンを押してから録画開始まで1.5秒ほどかかるが、十分高速と言えるだろう。もちろん突然表示がアスペクト比16:9となり、焦点距離も変化するため驚くが、写真を撮っていて急にビデオ撮影をしたくなったときにも手間はかからず便利だ。
 しかし、問題もある。この「MOVIE」ボタンが押しにくいのである。ボタンの位置的に、カメラをホールドした状態からだと力が入りにくく押しにくいのだ。「DSC-HX5V」では、シャッターボタンでも録画のスタート/ストップが行えたので便利だったが、「DSC-HX30V」ではできなくなっている。なぜ便利な方法がわざわざ使えないよう変更されたかというと、動画撮影中の写真同時記録という機能が追加されたからだ。写真同時記録にシャッターボタンを使うため、録画スタート/ストップと兼用できなくなったというわけだ。とはいえ、スタンバイ状態では写真撮影はできないため、せめて録画スタートだけでもシャッターボタンで行えると便利だったのだが。「DSC-HX5V」のクセで、ついシャッターボタンを押してしまい、撮影タイミングを逃すことがあった。
 撮影自体は非常に快適である。撮影中にズームが行えるし、高画素の液晶ディスプレイのおかげで、対象物も見やすい。また、アクティブモードに対応した手ぶれ補正のおかげで、撮影しながら歩いたりしても、撮影された動画ではかなりぶれが軽減され見やすい映像になっている。また60pモードに対応したことで、よりなめらかな映像が撮影できるようになっている。もちろん、裏面照射型CMOSの採用により、暗いシーンでも明るく撮れるのは写真撮影と同じで便利である。デジタルビデオカメラとしても十分に通用する性能を持っていると感じるが、残念なのがズームの速度である。最もワイド状態からズーム状態まで、実測値で8.4秒かかるのである。静止画撮影時は2.6秒程度であったため、3倍以上の時間がかかるわけである。これは「DSC-HX5V」の時にもそうだったのだが、なぜ遅くなるのかは不明だ。ちなみに、これは撮影中の場合であり、スタンバイ中は静止画撮影時と同様の速度でズームが可能だ。そのため被写体に近づいておいてから撮影を開始する場合は特に不満はない。しかし、撮影を始めてからズームすると遅すぎるため、例えば遠くに行ってしまう被写体をズームで追いかけたり、逆に向かってくる被写体をだんだん引いてきて撮ろうとすると、ズームが追いつかない事があった。ビデオカメラと違ってズームのモーター音が聞こえるため、できるだけ小さくして録音されないように低速でズームするのかもしれないが、少し遅すぎるように感じる。静止画の場合も可変速なので、ビデオ撮影時も同様にしておいて、音が入りたくないときは低速、ズームスピードを優先するときは高速と、ユーザーが調整できる方が良かったのではないだろうか。それ以外はほぼ完璧に近いだけに、残念な点である。

動画撮影時のズーム性能を検証する

 ここで、動画撮影時のズーム性能を検証してみよう。前述のように、動画撮影時は28mm〜784mmで実質28倍ズームが可能である。ズーム時にどの程度安定して撮れるかが検証内容となる。

DSC-HX30Vのズーム性能
YouTubeでより大画面で再生

 今回は、三脚などは使わず、手持ちの状態で撮影している。手ぶれ補正のアクティブモードはオンの設定である。これを見ると、まずズーム性能の高さが分かるだろう。28倍ともなると、ワイド側では見えるか見えないか位の小ささで映っている物を画面いっぱいまで寄ることができる。また、その状態でも比較的安定した状態で撮影できることも分かるだろう。テレ側でも効果があり、回転ブレにも対応する光学式手ブレ補正(アクティブモード)とジャイロセンサーの組み合わせにより、28倍ズームでも手持ちで撮影可能なレベルになっているのは驚きである。しかも、多少手ぶれに気を遣う程度でこのレベルである。ただズーム倍率を高めているだけでなく、実用的なレベルで撮影できるのは安心である。

暗いシーンでの動画の画質を比較する

 ところで、撮影していて思ったのが、暗いシーンでのノイズの少なさだ。裏面照射型CMOSを採用しているとはいえ、これまで使っていた「DSC-HX5V」の場合は暗いシーンではある程度ノイズが乗ってしまっていた。しかし「DSC-HX30V」では暗いシーンでもノイズが少ないように感じるのだ。また、音質も向上しているように感じた。そこで「DSC-HX30V」と「DSC-HX5V」で画質の比較をしてみることとした。阪神梅田駅の最も三宮側に立って電車が入線する映像を撮影した。阪神梅田駅は地下駅で、ホームの端から地下区間側を撮影する事になるためかなり暗いシーンである。2台のカメラを横に並べて撮影したため、多少向きがが異なるが、ノイズ量や音の違いは分かるだろう。それぞれの撮影した動画と、2機種の映像を並べて比較した動画を掲載した。また、その動画から切り出した静止画と、停車している車両を撮影した別の動画から切り出した静止画の2枚でもより詳しく比較してみた。

DSC-HX30Vで撮影
YouTubeでより大画面で再生

DSC-HX5Vで撮影
YouTubeでより大画面で再生

「DSC-HX30V」と「DSC-HX5V」で撮影したものを並べて
YouTubeでより大画面で再生


DSC-HX30V
DSC-HX5V
全体像
アップ1
アップ1

DSC-HX30V
DSC-HX5V
全体像
アップ1
アップ1

 まずビデオを見ると、特にトンネル側を撮影した際に、「DSC-HX5V」ではザラザラとしたノイズが多く発生しているのが、「DSC-HX30V」ではかなり綺麗になっている。ソニーの公式ページの「DSC-HX30V」の特徴を見ていると「過去のフレーム情報を参照してノイズを除去する」と書かれており、この機能の効果がかなり大きく現れていると言えるだろう。また、それぞれの動画を聞き比べると、音質がかなり向上している事がわかる(音質を聞き比べる場合は、YouTubeの画質設定で720p以上を選択する方が良い)。現在使っているデジタルビデオカメラ「HDR-SR11」はやや古い機種だが、5.1チャンネル記録ができるだけでなく、音質が良く、後で撮影した動画を見た際に実際に聞いた音に近い音で記録されていた。ところが、「DSC-HX5V」では、音が軽いというか、雑という感じで、リアルな感じでは無かった。ところが、「DSC-HX30V」ではかなり改善されている。デジタルビデオカメラ「HDR-SR11」ほどではないが、かなり音が細やかになり、実際の音に近く記録されている。これはうれしい改良点だ。実際に、前述のように、マイク用の穴が「DSC-HX5V」では左右1つずるだったのが、「DSC-HX30V」では12個ずつ開けられており、内蔵するマイクが大型化や高音質化しているように見られる事が証明されたわけである。
 静止画から切り出した写真を見てみよう。まずはトンネル側の写真である。縮小せずに450×253ドットに切り出した写真の1枚目を見てみると、「DSC-HX30V」ではムラムラとした色のノイズがあるが、「DSC-HX30V」では見られず、やはり「DSC-HX30V」のノイズの少なさが分かる。また右側の「30」の制限速度表示も「DSC-HX30V」の方がかなりはっきりしていて見やすい。2枚目の線路の写真も、「DSC-HX30V」の方がジョイント部がはっきりしていて、より綺麗に撮影できていることが分かる。
 停車している電車の方を見てみよう。全体像を見ると同じように見えるが、「DSC-HX30V」の方が若干色が濃くなり、コントラストが強く撮影されている。実際にはこのぐらいの濃さで、より色再現力が高まったと感じる。一方、地下駅とはいえある程度明るさがあるため、ズームした写真を見ても、ノイズ量などに大きな差は見られない。
 動画撮影に画質に関しては、単に記録ビットレートの向上や60pモードへの対応だけでなく、暗いシーンでのノイズの大幅な軽減と音質の向上が見られるなど、たしかな違いを確認できた。よりデジタルビデオカメラに近い性能を手に入れたと言えるだろう。



 今回は同シリーズの最新機種への買い換えと言うことで徹底比較を行った。光学ズームが20倍になった点に注目が行きがちだが、実際には液晶画面の見やすさや向上、様々な機能の搭載、各種端子の改善、手ぶれ補正の強化など、様々な点が改善・強化されている。大きな点ではなくても、例えばISO感度がより高い設定が追加されたり、逆光補正HDRの合成枚数が2枚から3枚になるといった、細かな点まで細やかに改善されている。また動画撮影機能に関しては、かなりの機能追加があったほか、画質と音質も大きく向上し、デジタルビデオカメラとして使用する場合にも、基本的な部分では違いが分からないレベルまで進化している。「DSC-HX5V」でも非常に高かった完成度が、「DSC-HX30V」では細かな不満点を改善しより完成度を高め、さらに最新の機能もこれでもかという位に搭載している。コンパクトデジタルカメラとしては最高レベルであるのは確かで、4万5000円という価格も決して高くない。デジタル一眼よりもう少し手軽な機種を探している人には非常におすすめであるのはもちろん、高倍率ズームや高性能なコンパクトデジタルカメラを探している人にも、おすすめの機種と言える。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
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サイバーショットのページ http://www.sony.jp/cyber-shot/