第149回
SerialATAインタフェースボード
AREA 
SD-PESA3-2RL
(2012年5月31日購入・2014年2月3日著)



SerialATAポートが足りない

 ロードテスト第147回で購入したデスクトップパソコン「MDV-AGZ8000B」は、性能の高さと拡張性の高さで非常に満足であった。特にドライブに関しては、5インチベイが3基、3.5インチベイがワンタッチ取り付け可能な4基と通常の2基あり、拡張性はかなり高めだ。5インチベイには元から搭載されていたBlu-rayディスクドライブの他に、前のパソコンに増設していたBlu-rayディスクドライブも取り付け、さらにハードディスクのリムーバブルケースであるセンチュリー「二代目 技あり!楽ラック CWRS2-BK」(ロードテスト第150回参照)を取り付けている。また、3.5インチベイには、元から搭載されていたハードディスクの他に、システムドライブ用のSSDと、前のパソコンに増設してあったハードディスク4台を取り付けている。つまり9基のベイがフルに埋まった状態なのである。
 しかし問題が発覚した。「MDV-AGZ8000B」のマザーボード上のSerialATAポートはSerial ATA(6Gbps)ポートが2ポートとSerial ATA(3Gbps)のポートが4ポートの合計6ポートしかないのである。つまり6台しか機器を接続できないのだ。そこで、SerialATAのインタフェースボードをPCI Expressスロットに増設する事としたのである。

SerialATAインタフェースボードを選ぶ

 とりあえず製品を探してみよう。3ポート不足しているので、1枚のカードで3ポート以上というのが望ましいが、探してみると2ポートまでの製品しか見あたらない。内部(SerialATA)が2ポートと外部(eSATA)が2ポートという製品はあるが、これも計4ポートの内2ポートの排他利用である。実際、インタフェースボードを増設するPCI ExpressスロットはPCI Express X1である。Gen1とGen2、Gen3の世代があるが、Gen1では2.5Gbps(実効データ転送速度は250MB/s)、Gen2で5Gbps(同500MB/s)、Gen3で8Gbps(同1GB/s)となる。SerialATA 3Gbpsの場合の転送速度は300MB/sでSerial ATA 6Gbpsの場合の転送速度は600MB/sにもなる。Serial ATA 6Gbpsポートの場合2ポートでも、PCI Express x1 Gen.3の転送速度すら超えてしまうので、2ポート以上は転送速度を考えると現実的ではないのだろう。今回は3ポート以上はあきらめて、2ポートのインタフェースボードを購入することとした。
 さまざまな製品があり、価格もまちまちだったが、選んだのはAREAの「SD-PESA3-2RL」である。比較的安価な価格で売られていること、Serial ATA 6Gpbsのポートを2基搭載していることに加え、接続したドライブをブートドライブとして使用できる事、今は使う気はないがRAID 0/1に対応していること、ホットスワップに対応していることなど、一通りの機能を搭載しているのが気に入った。接続はPCI Express X1 Gen.2であり、「MDV-AGZ8000B」はGen.3に対応しているので速度的にはややもったいないが、PCI Express X1 Gen.2でも500MB/sの転送速度なので、SSDを含む2ポート同時アクセスでも行わない限り、速度が落ちることはないだろう。今回もシステムドライブ用のSSDはマザーボード上のSerial ATA 6Gpbsポートに接続しているので、「SD-PESA3-2RL」に接続するのはせいぜい、シーケンシャルリードが100〜200MB/s程度のハードディスクである。これならば大丈夫だろう。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で3.380円(10%ポイント還元)で購入した。

「SD-PESA3-2RL」を増設する

 少し派手目の箱に入った「SD-PESA3-2RL」だが、箱から取り出してみると、黒い基盤の小さなボードであった。高さも抑えられており、LowProfileのスロットにも取り付けられるよう交換用のブラケットも付属している。肝心のSerial ATAポートはブラケット部と反対側に、ボードと水平に取り付けられていた。これだとケーブルを接続した際に、カードの後ろ側にまっすぐ出ることになる。ボード上に垂直にポートがあると、ケーブルが隣接する拡張カードと干渉したりするが、「SD-PESA3-2RL」の形ならば安心だ。また今回は使用しなかったが、アクセスランプ用の2ピンのコネクタがあり、ケーブルまで付属しているのは驚きである。

「SD-PESA3-2RL」のパッケージである。少々派手目だが、一般的な製品パッケージだ

「SD-PESA3-2RL」である。黒い基盤の小さめのボードである。

「SD-PESA3-2RL」は、ブラケット部と反対側にSrialATAポートが並んでいる。ボードと水平に取り付けられているため、ケーブルがカードの後方からまっすぐ伸びることとなり、他の拡張カードに干渉しにくい。

「SD-PESA3-2RL」の付属品である。LowProfile用のブラケットに交換も可能だ。ケーブルはアクセスランプ用の2ピンケーブルである。

 それでは、増設作業を行ってみよう。「MDV-AGZ8000B」の拡張スロットは、背面のブラケット部のネジ止め部分が、本体より外側に飛び出ているため、外側からネジを外すことができるようになっている。とはいえ、ボードを本体内に収めるのだから、背面のブラケット部が外側から取り外せたところで、どうしようもない。「MDV-AGZ8000B」は正面から見て左右両側のパネル全体が外せるようになっているが、内部にアクセスする場合は左側面のパネルを外す事になる。これは、背面のネジを2本外すと簡単に取り外せる。
 一方、ブラケット部だが、「MDV-AGZ8000B」ではネジを取り付ける部分全体を、一度に固定できる金属板で挟むように固定する構造となっている。そのため、増設したボードは通常通りネジ止めをしても良いのだが、ネジ止めをしないこともできる。実際、「MDV-AGZ8000B」では、重量のあるグラフィックボードはネジで固定されていたが、それ以外のカバーはネジ止めされていなかった。とりあえず、全体をおさえている金属板を取り外す。これは7つあるネジ穴の真ん中4番目のネジを外す。これで、金属板を外すことができる。前述のように背面ブラケット部のカバーはネジ止めされていないので、増設するスロットのカバーを外す。今回は2・3段目を仕様しているグラフィックボードのファンから少し離す意味で、5段目のスロットに増設することとした。カバーを外したら、「SD-PESA3-2RL」をPCI Express x1スロットに挿し込む。ある程度力を込めてしっかり奥まで挿し込む。その後ブラケット部のネジを止め、金属板を元に戻し、それもネジ止めして増設作業自体は完了である。

今回増設するパソコン「MDV-AGZ8000B」のケース左側のパネルを外した状態である。右側が本体前面である。

「MDV-AGZ8000B」の拡張スロット部分である。真ん中の大きなパーツはグラフィックボードで、その上に1基と下に2基のPCI Express x1スロットがある。その下は2基のPCIスロットである。

「MDV-AGZ8000B」のブラケット部のネジ止めをする部分全体が金属板でおさえられている。この板を外すには、3本あるネジの内一番右のネジを外す。

ブラケット部側から見るとこのようになっている。ネジを外すと、金属板を外すことができる(写真下)。

使われていない拡張スロットのブラケット部のカバーはネジ止めされていないので、金属板を外すとカバーも外すことができる。

「SD-PESA3-2RL」を増設したところである。排熱を考え、グラフィックボードからは1つ離れたスロットに増設した。

 続いてドライバを組み込む必要がある。こちらは、付属のCD-ROMからインストールする。特にトラブルもなく正常に動作したようなので、ケーブルを挿してハードディスクを接続してみよう。コネクタがL型になっていないまっすぐのタイプのケーブルなら、そのまま素直に背面に向かって伸びていくので取り回しはしやすい、ただ、コネクタ自体はロック機構が無いため、ロック付きケーブルを使ってもロックできず、引っ張られると抜けてしまうという点は残念だ。
 接続自体は何の問題もなく行えた。パソコンを起動すると、ブートドライブとしても使用できるため、Windowsの起動前に認識画面が表示される。2台分表示され、それぞれ接続しているハードディスクの型番の他に、SerialATAの6Gbps接続か3Gbps接続かといった情報も表示されるため、SerialATA 6Gbps対応の製品がしっかり6Gbpsで接続されているかの確認もできて便利だ。Windowsが起動すると、マザーボード上のSerialATAポートに接続した場合と何の変わりもなく使用することができた。異なるのはホットスワップに対応していることで、そのためここに接続したハードディスクに関しては、通知領域の「ハードウェアの取り外し」に表示される。ロードテスト第148回で紹介する、リムーバブルハードディスクケースは、その用途から、ホットスワップできることが望ましいため、「SD-PESA3-2RL」に接続する事で対応でき便利であった。

「SD-PESA3-2RL」にSerialATAケーブルを接続したところである。コネクタがL字になっていないまっすぐのケーブルだと、取り回しがしやすい。

外した金属板やネジを元に戻して増設作業が完了である。「SD-PESA3-2RL」は外部からアクセスするコネクタやLEDランプなどは無いため、ブラケット部はすっきりしている。


ベンチマークテストで性能を検証する

 それでは、ベンチマークテストを使用して、「SD-PESA3-2RL」に接続した場合と「MDV-AGZ8000B」のマザーボード上に直接接続した場合で速度を比較してみよう。使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。どちらの場合も、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)に接続しているが、PCI Express x1スロットに挿した「SD-PESA3-2RL」に接続した場合と、マザーボード上のSerialATAポートに直接接続した場合での比較となる。比較検討のために仕様したドライブは、Seagateのハードディスク「ST3000DM001」とCFDのSSD「CSSD-S6M64NMQ」の2台である。Seagateの「ST3000DM001」は3TBのハードディスクで、1TBプラッタで7200回転と現時点で非常に高スペックなハードディスクであり、一般向けとしてはかなり高い性能を示す。ただ、それでも200MB/s前後であるため、より高速なドライブとして、SSDでもテストしている。この「CSSD-S6M64NMQ」はCrucialの「RealSSD C300」という、大人気だったSSDのOEM品で、製品は同じ物だ。SerialATA3.0(6Gbps)に対応しており、読み込み速度は300MB/sを超える。ただ64GBと容量が少ない製品である事から、書き込み速度が遅いため、ハードディスクも同時にテストしているという訳である。


 それでは、もっとも速度が速いシーケンシャルアクセスの速度を元に検証してみよう。まず、ハードディスク「ST3000DM001」のシーケンシャルリードでは「SD-PESA3-2RL」に接続した場合とマザーボード上のSerialATAポートに接続した場合で、誤差と言えるほどの差しか無く、全くの同速度を示した。192MB/s台という事で、PCI Express x1 Gen2の実効データ転送速度は500MB/sなので、ここが数字上はボトルネックにはならないが、PCI Expressスロットに挿した拡張ボードを経由することで何らかの影響があるかと思ったが、心配する必要はなかった。一方、シーケンシャルライト性能には大きな差が出た。本来は191.10MB/s程度出るはずが、133.47MB/sしかでないのである。実に約30%も速度が低下している。結果にばらつきがあるわけではなく、3回テストしていずれもこの程度の速度になる。原因ははっきりとは分からないが、今回は使用していないものの「SD-PESA3-2RL」にRAID機能が搭載されている事が何らかのロスを生んでいる可能性もある。
 よりリード性能が高い、SSD「CSSD-S6M64NMQ」のテスト結果も見てみよう。こちらはマザーボード上のSerialATAポートに接続した場合362.73MB/sに対して、「SD-PESA3-2RL」に接続すると348.83MB/s。約3.8%低下しているが、大きな差ではないだろう。最新のSSDと比べるとやや遅めの性能だが、それでも350MB/s近い性能が出ているため問題ない性能だ。微妙な差が出ているのは、PCI Express x1 Gen2の実効データ転送速度は500MB/sであることから、ここがボトルネックになっているとは考えにくく、マザーボード上のSerialATAコネクタに接続するより、PCIExpressに挿したカードを経由している事による差か、搭載するチップの性能差と考えられる。書き込み速度の方も問題ないレベルである。またSerialATA 3Gbpsのポートの300MB/sを超えているため、SerialATA 6Gbpsポートを持たないパソコンに増設することで速度アップを図ることもできそうだ。


 ついでにランダム512Kとランダム4K、ランダム4K QD32の速度でも比較してみよう。ランダム512K、ランダム4K、ランダム4K QD32のいずれのテストでも共に、「SD-PESA3-2RL」に接続した場合とマザーボード上のSerialATAポートに接続した場合で、速度差は見られなかった。ハードディスク「ST3000DM001」ではシーケンシャルライト性能に差があったが、ランダム512Kでは同じ速度になっている。一方。SSD「CSSD-S6M64NMQ」の場合、ランダムリード4Kで速度差があるのは気になるが、原因は不明だ。とはいえ、全体を通して、「SD-PESA3-2RL」は特に遅いと言うことはなかった。



 今回はSerialATAポートが付属していたため、PCI Express x1接続のインタフェースカードを増設して対応した。コストパフォーマンス重視で安価な製品を選んだが、特別増設しにくい、コネクタを接続しにくいということもなかった。さらにベンチマークテストでマザーボード上のSerialATA 6Gbpsのポートに接続する場合とほとんど変わらない性能を示し、安価な製品だからと言って速度面で妥協しなければならないことも無かった。非常に満足度の高い製品だ。今回のようにSerialATAポートに足らない人だけでなく、マザーボード上のSerialATAポートが3Gbpsにしか対応していない人の速度アップにもおすすめできる製品だ。



(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
AREA http://www.area-powers.jp/