第152回
USB3.0&UHS-I高速転送対応メモリカードリーダ
バッファロー 
BSCR15TU3BK
(2012年8月17日購入・2015年7月25日著)



高速なメモリカードリーダを購入しよう

 ロードテスト第138回でUSB3.0接続が可能で、UHS-I高速転送対応のSDカードと組み合わせる事で超高速な読み書きが可能な、SDカードリーダ/ライター「BSCRSDXU3BK」を購入した。SDカードが非常に高速に読み書きできて重宝していたのだが、ちょっとした不注意から物理的に壊してしまった。そこで、新たに同種の製品を購入することとした。
 「BSCRSDXU3BK」はすでに生産が完了していたが、後継機種として「BSCRD04U3」が登場している。見た目は同じであり、SDカードとmicroSDカードにしか対応しないがコンパクトなので、この製品でも良いかと考えていた。しかし、ホームページを見ると、この製品は「9倍速」と書かれている。パソコンとデジカメを直接ケーブルでつないでデータ転送を行う場合を「1倍速」として計算しているようなので、「9倍」という事が具体的に何MB/sの事を示すのかは分からず、あまり意味はないのだが、気になったのは「12倍速」と書かれた「BSCR15TU3」という製品がラインナップされていることだ。何MB/sかは分からないが、「9倍速」より「12倍速」が高速なのは明らかだ。「BSCR15TU3」SDカードだけでなくメモリスティックやコンパクトフラッシュ、xDピクチャーカードまで対応した製品で、本体も大きく価格も高くなる。しかし、SDカードにフルハイビジョンの動画を何時間も撮影する事が多いため、転送時間は結構馬鹿にならない。少しでも高速になるならと思い「BSCR15TU3」を購入することとした。ブラックとホワイトの2色がラインナップされているが、ブラックの「BSCR15TU3BK」を購入した。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で2,910円(10%ポイント還元)であった。

「BSCR15TU3BK」の使い勝手を検証する

 それでは、「BSCR15TU3BK」を見てみよう。まずは外見である。色はつや消しのブラックで上品な感じである。本体サイズは85×49×13mmで重量は35gである。「BSCRSDXU3BK」が69×33×15mmで17gであったため、縦横が16mmずつ大きくなって、やや薄くなり、重量は倍増である。とはいえ、多種のメモリカードに対応している割には大きくないと言える。前面はメモリカードスロットが2段になっているが、上段にSDカード、xDピクチャーカード、microSD/メモリースティックMicroといった厚みの薄いカードのスロット3種、下段にコンパクトフラッシュとメモリースティック/メモリースティックDuoという、最初の3つより厚みがあるカードのスロットを2種搭載することで、本体の厚みを少しでも薄くしようという努力が見られる。 
 miniSDカードに関しては、SDカードサイズのアダプタを利用しなければならないが、microSDとメモリースティックMicroに関しては専用のスロットを、メモリースティックDuoはメモリースティックスロットに直接挿せるようになっており、できる限りアダプタ無しで対応できるように工夫されている。小さいながら、各スロットの縁、または上面に、スロットに挿し込めるメモリカードのマークが書かれているため、どのスロットに挿すのか迷わずにすむ。側面にはメモリカードスロットはない。
 また、SDカードはUHS-Iの高速転送に、メモリースティックも8bit転送に、コンパクトフラッシュも最高速のUDMA7転送に対応している。それぞれのメモリカードの高速転送規格に軒並み対応することで、できる限り高速な転送が行える製品となっている。
 背面はmicroUSB端子があり、ここに付属のケーブルを接続する。もちろんUSB3.0対応である。「BSCRSDXU3BK」では本体にUSB端子を内蔵していたが、「BSCR15TU3BK」は一般的なUSBケーブルで接続するタイプである。直づけではなく、形状も一般的なmicroUSBなので、別途短めや長めのケーブルを使用したり、現在ではまだ存在しないようだが、巻き取り式ケーブルなどを使用することもできるだろう。付属のケーブルは54cmとなっている。USB3.0対応であるためケーブルが太く、取り回しはやや不便だ。

「BSCR15TU3BK」のパッケージである。12倍速であることが強調されている。

「BSCR15TU3BK」である。本体はつや消しブラックで上品だ。

これまで使っていた「BSCRSDXU3BK」(上)と「BSCR15TU3BK」(下)の比較である。大きくなっているが、「BSCRSDXU3BK」はSDとmicroSDのみ対応だったことを考えると、「BSCR15TU3BK」は数多くのカードに対応しながらコンパクトと言える。

「BSCR15TU3BK」の前面である。各種カードスロットは全てこの面に集約される。上段が左からSDカード、xDピクチャーカード、microSDとメモリースティックマイクロ(M2)兼用で、下段が左からコンパクトフラッシュ、メモリースティックとなる。SDカードとxDピクチャーカードの間には小さいがアクセスランプも並んでいる。

「BSCR15TU3BK」の背面である。USB3.0対応のmicroUSB端子が配置される。

 それでは実際に使用してみよう。付属のケーブルで接続すると、自動的にドライバが組み込まれ使用できる状態になる。このまま使用しても良いのだが、バッファロー独自のソフトウェア「TurboPC EX」を使用することで、より高速に転送できる。以前あった「TurboUSB」とは異なり、パソコン搭載のメモリーをキャッシュとして利用することにより読み書き速度を高速化する仕組みだ。そのため、「BSCR15TU3BK」への転送だけでなく、ハードディスク間の転送なども「TurboPC EX」が効いた状態になる。また、転送中を示す画面がWindows標準のものから変更される(?)。
 パソコンの「コンピュータ」には5つのスロットそれぞれのドライブが表示される。メモリカードスロット間の転送が行えると言うことなので、独立して認識しているようだ。SDカードを挿してみると、奥までは挿し込めず、少し飛び出た状態となる。microSDやメモリースティックなどでも同様だ。パソコンや携帯電話のスロットなどでは、完全に中に収まり、取り出すときは一度押し込むと飛び出してくる仕組みのものもあるが、「BSCR15TU3BK」では少し飛び出た状態になるので、その部分をつまんで引っ張る事になる。奥まで押し込みすぎないように注意が必要だ。アクセスランプはSDカードとxDピクチャーカードのスロットの間にあるが、非常に小さく、リセット用の穴のようなサイズで、光も弱いため、正面から見ないと判別できない。ただ、それほど頻繁に見なければならないものでもないため、変に光が強すぎて目に入るよりは良いだろう。

「BSCR15TU3BK」の速度をテストする

 それでは、速度をテストしてみよう。今回は「BSCR15TU3BK」の速度をテストするため、3枚のSDカードを用意している。UHS-I対応製品は価格が高く、出始めと言うこともあって製品も少ないが、SanDiskは複数の「UHS-I」対応製品を発売しており、海外輸入パッケージなら比較的安価に手に入る。国内版の「SDSDXPA-008G-J35」の海外輸入パッケージである「SDSDXPA-008G-X46」がテストに使用した1枚目のカードである。「Extreme Pro」シリーズに属し、読込95MB/s、書込90MB/sと、UHS-I対応の製品の中でも特に高速な製品と言える。UHS-I非対応のメモリカードリーダで使用した場合はClass10となる。もう一つ、SanDiskのUHS-I対応カードでも、「SDSDXPA-008G-X46」よりも低速な「SDSDX-016G-X46」でもテストを行った(こちらも海外輸入パッケージ)。こちらは「Extreme」シリーズに属し、読込45MB/s、書き込み45MB/sという製品だ。この2枚に加え、UHS-I非対応のpqiの「BSDH10-8G」も比較対象として加えている。3枚の詳しいスペックは以下の通りである。

メーカー
SanDisk
SanDisk
pqi
型番
Extreme Pro
SDSDXPA-008G-X46
Extreme
SDSDX-016G-X46
BSDH10-8G
写真番号
公称スピード
UHS-I
スピードクラス
Class 10
Class 10
Class 10
メーカー独自
最大読込:95MB/s
最大書込:90MB/s
最大読込:45MB/s
最大書込:45MB/s
150倍速
最大読込:24MB/s
最大書込:19.5MB/s
容量
8GB
16GB
8GB
購入日
2012/01/06
2012/08/10
2011/12/27
価格
2,980円
1,590円
790円

 一方、カードリーダ・ライタとしては、今回購入した「BSCR15TU3BK」 と、これまで使用してきた「BSCRSDXU3BK」に加え、UHS-I高速転送に対応しておらず、USB2.0接続だが、USBの高速化技術「TurboUSB」に対応しているため、USB2.0接続でUHS-I高速転送非対応のメモリカードリーダ・ライタとしては高速な部類に入る「BSCRA38U」でもテストを行った。また、「BSCR15TU3BK」はTurboPC EXを使用した場合と使用しない場合でそれぞれテストを行っている。使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。接続したパソコンは、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/チップセット:Intel Z77 Express/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)である。


 それでは、シーケンシャルリードの性能を見てみよう。「SDSDXPA-008G-X46」の速度は、TurboUSB EXを使用しない場合、「BSCR15TU3BK」では90.03MB/sと、これまで使っていた「BSCRSDXU3BK」の91.77MB/sをやや下回る速度となった。また、メーカー公称値の95MB/sには届かない結果である。しかし、TurboUSB EXを使用すると、一気に97.52MB/sまで上がり、公称値を超える。「BSCR15TU3BK」はTruboUSB EXを使用することを前提で他製品より高速とうたっているのでこれは正しい結果なのだが、TurboUSB EXを使用しない場合は速度がアップしていないのは残念だ。ただ、これはSDカードの場合だけなので、より高速な製品が存在するコンパクトフラッシュなどを使用する場合は差が出ることも考えられる。ちなみに、USB2.0対応のメモリカードリーダ「BSCRA38U」とは、UHS-I対応とUSB3.0接続といった点での違いから、大きな差が出ている。UHS-I対応でも、やや低速な「SDSDX-016G-X46」での結果は、TurboUSB EXを使用しない「BSCR15TU3BK」でも、公称値を超える46.72MBを記録しており、カードの性能は発揮しているようだ。「BSCRSDXU3BK」を微妙ながら上回っているが、一方TurboUSB EXを使用しても、思いの外速度は伸びない。メインメモリをキャッシュとして使用することで高速化する機能なので、そもそもキャッシュを使うほど高速でない製品では、速度も伸びないという事だろう。ちなみにこのレベルでも、USB2.0でUHS-I高速転送非対応の「BSCRA38U」に対しては十分に高速だ。一方、UHS-I高速転送非対応の「BSDH10-8G」は、どのメモリカードリーダを使用しても速度は変わらない。TurboPC EXを使えば若干速度が向上しているが、ベンチマークテストレベルでのわずかな差は、実際に使用する上では差は感じないだろう。「BSCR15TU3BK」はUHS-I高速転送対応のSDカードのような、高速なメモリカードでは真価を発揮すると言える。


 続いて、シーケンシャルライト性能である。こちらは「SDSDXPA-008G-X46」の速度は、TurboPC EXを使用しない「BSCR15TU3BK」でも、「BSCRSDXU3BK」を2.9%上回る速度となっており、さらにTurboPC EXを使用すると12.4%上回る結果となり、「BSCR15TU3BK」の性能の良さが分かる結果となった。またカードの公称値90MB/sに近い値が出ている。当然USB2.0対応の「BSCRA38U」と比べて、圧倒的な差である。やや低速な「SDSDX-016G-X46」では「SDSDXPA-008G-X46」ほどでは無いものの、「BSCR15TU3BK」の速度は非常に高速で、TurboPC EXを使用すると、公称値の45MB/sに近い速度が出せる。「BSCRSDXU3BK」からは4.8%高速になる。一方、シーケンシャルリードと異なり、UHS-I高速転送非対応の「BSDH10-8G」を使った場合でも、「BSCR15TU3BK」の方が高速で、TurboPC EXを使った場合では16.1%、使わなくても9.4%速くなる。「BSCR15TU3BK」はUHS-I対応やUSB3.0対応というだけでなく、全体に高速なチップが使われているなどの違いがあるのかもしれない。


 ランダムリードの512Kの結果は、よりおもしろいものとなった。「SDSDXPA-008G-X46」を使用した場合、TurboPC EXを使用しない場合でも「BSCR15TU3BK」は「BSCRSDXU3BK」より6.8%高速で、TurboPC EXを使用すれば17.9%も高速になる。このことから「BSCR15TU3BK」は、単にTurboPC EXというソフトウェアに頼って高速化しているだけではない事と、TurboPC EXはランダムリードのようなデータサイズが小さい方がキャッシュの効果が高いという両面が分かった。確かに、TurboPC EXの説明には、小さなデータをまとめて読み書きすることでロスを削減すると書かれているため、この効果が出たと考えられる。ハード面の高速化と、高速化ソフトウェアにより、かなり速くなっているといえる。このことは、やや低速な「SDSDX-016G-X46」を使用した場合でもはっきりと見て取れる。また、UHS-I高速転送非対応の「BSDH10-8G」ですら、TurboPC EXの効果が分かる結果となった。


 ランダムライト512Kでもランダムリード512Kと似た結果となっている。「SDSDXPA-008G-X46」の結果を見ると、「BSCR15TU3BK」は「BSCRSDXU3BK」より、TruboPX EXを使用しない場合3.3%、使用した場合16.0%高速で、特にTurboPC EXの効果が高い結果となった。メインメモリをキャッシュとして使用することで、小さなサイズのデータが効率よく書き込めているという事だろう。やや低速な「SDSDX-016G-X46」なUHS-I高速転送非対応の「BSDH10-8G」では、メモリカードリーダの違いによる差は見られなかったが、TurboPC EXの効果はランダムリード512Kよりもはっきり現れている。この差は結構大きく、またソフトウェアだけでここまで高速化させているのは驚きである。


 ランダムリード4Kの結果は少々特殊だ。一見すると、「BSCR15TU3BK」は「BSCRSDXU3BK」よりかなり高速になっており、買い換えの効果が見られるようだ。その一方でUSB2.0接続でUHS-I高速転送非対応のメモリカードリーダ「BSCRA38U」と速度の差が見られず、また、TrboPC EXの効果も皆無である。むしろ、理由は不明だが「BSCRSDXU3BK」の速度が、遅かったのが元に戻ったという印象だ。とは言え、「BSCRSDXU3BK」では弱点だったランダムリード4Kの遅さが解消されているのはうれしいことだ。


 ランダムライト4Kは、メモリカードリーダの違いによる速度差が見られない結果となった。UHS-I対応のメモリカードを使えば高速になっているように見えるが、UHS-I高速転送非対応のメモリカードリーダ「BSCRA38U」でもUHS-I対応カードの方が高速なのは同じである。一見すると「BSCR15TU3BK」の意味は無いようにみえる。しかし、TurboPC EXを使用した場合、全てのメモリカードで大幅に速度が向上しているのである。「SDSDXPA-008G-X46」では4.30倍、「SDSDX-016G-X46」では5.12倍、「BSDH10-8G」はなんと370倍になっているのである。これは機器の性能というより、TurboPC EXというソフトウェアのおかげだが、ソフトウェアも含めた 「BSCR15TU3BK」という製品全体の性能という点では、圧倒的に高速と言えるだろう。



 今回は、現状のバッファロー製のメモリカードリーダー・ライターとしては最高速の製品を使用したわけだが、実際にその名に恥じない性能を示している。今回はSDカードでしか調査をしていないが、より高速な製品が存在するコンパクトフラッシュなどを使用すれば、より高性能ぶりがわかるだろう。一部にはソフトウェアのTurboPC EXの効果とも言えるが、これも、この製品であるために使えると考えると、パッケージとしての「BSCR15TU3BK」の性能の評価としても良いだろう。かといってソフトウェアをインストールしていないパソコンの接続しても十分に高速なので、安心だ。確かに一般的なメモリカードリーダー・ライターより高価で、そもそもパソコンにメモリカードスロットのあることが多い今、わざわざ購入するのもためらわれるかもしれないが、転送時間を短縮できるという意味は大きい。デジタルカメラやビデオカメラで撮影した写真やビデオの転送の遅さが気になっている人には、おすすめと言えるだろう。



(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
バッファロー http://buffalo.jp/
メモリカードリーダー・ライターのページ http://buffalo.jp/products/catalog/supply/peripheral/cardreader/