第167回
USB3.0対応 1000BASE-T対応USBハブ付き有線LANアダプタ
ELECOM
LAN-GTJU3H3
(2013年6月22日購入・2017年1月21日著)



USB接続の有線LANアダプタを探す

 ロードテスト第114回で、紹介したノートパソコン ソニー VAIO「VPCF13AGJ」は非常に便利に使っているのだが、最近になって有線LANポートの接触が悪くなってきた。我が家は無線LANルータも導入しているが、パソコン間でのデータ転送が多いため、速度と安定性を重視して有線LAN接続している。しかし、コネクタにちょっと触れるだけで接続が途切れるようになってしまった。ケーブルが原因の可能性もあるので買い換えてみたが、改善されない。このノートパソコンはリビングの机で使っている関係で、食事のたびに近くの棚に移動しなければならず、そのたびにLANケーブル部分に負担がかかっていたと考えられる。そこで、なんとかして有線LANポートを復活させることとした。
 とはいえ、修理に出せばしばらく使えない期間が発生する上、結構な修理費を取られてしまう。そこで別途USB接続の有線LANアダプタを使うことした。これまではUSB2.0接続で100BASE-TX(最大100Mbps)という製品ばかりであった。しかし、「VPCF13AGJ」内蔵の有線LANポートは最大1Gbpsの1000BASE-T、いわゆるGigabit Ethernetであり、転送速度を考えると、これは譲れない。少し前にUSB接続の1000BASE-T対応製品が出ていたが、USB2.0接続であった。USB2.0の最大転送速度は480Mbpsである。もちろん最大転送速度と実際の転送速度はかなりの差があるためはっきりとは言えないが、やはり480Mbpsでは、ここがボトルネックになり1Gbps(1000Mbps)の有線LANポートの性能をフルに出すことは難しいだろう。しかしUSB3.0が普及するにつれて、USB3.0対応の1000BASE-T対応製品が出てきだした。USB3.0の最大転送速度は5Gbpsで、これならばボトルネックは解消されると言える。
 しかし、実は問題がまだあるのだ。「VPCF13AGJ」にはUSB3.0ポートが2基とUSB2.0ポート(eSATAと供用)が1基ある。常にマウスと外付けハードディスクがつながっており、外付けハードディスクはUSB3.0ポートに接続する事になる。この状態で有線LANアダプタをUSB3.0ポートに接続するとUSBポートがすべてふさがってしまう。ドキュメントスキャナやフラットベッドスキャナをつなぐこともあるし、別の外付けハードディスクやUSBメモリを接続することもある。USB3.0ポートに最低でも1基の空きは必須だ。USBポートが不足すると言えばUSBハブをつなぐのが一般的だが、どの有線LANアダプタを見てもハブ経由での動作は保証しないという。USBハブを経由するとバスパワー電流が分散される上に、USBハブ自身も電力を消費するためと思われる。かといって有線LANアダプタは直接つなぐとすると、今度は外付けハードディスクがUSBハブ経由となる。バスパワー動作がぎりぎりの外付けハードディスクがUSBハブ経由で動作するとは思えない。せっかくのUSB3.0接続の1000BASE-T対応有線LANアダプタがあっても、あと一歩のところで手詰まりとなってしまった。残るはACアダプタ付きのUSBハブにして、バスパワー電流をAC電源から確保する方法しか無いが、ACアダプタが付くとなるとかなりややこしくなる。
 しかし、同じような人が結構いるのか、便利な製品が出てくるものである。ちょうど購入を検討していた時期に、ELECOMから「LAN-GTJU3H3」という製品が発売されたのである。この製品、USB3.0接続の1000BASE-T対応有線LANアダプタなのだが、そこに3ポートのUSBハブ機能を備えているのだ。つまりUSB3.0ポート1基を1000BASE-Tの有線LANポートとUSB3.0ポート3基にできるというのである。もちろんハブや有線LAN用のチップが電力を消費するので、バスパワー電流は少なくなるが、マウスくらいなら動作するだろうし、接続するドキュメントスキャナやフラッドスキャナ、別の外付けハードディスクはいずれもAC電源から電源供給するため、バスパワー電流は使わないので問題ない。この製品ならなんとか使い勝手を落とさずにいけそうだ。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で3,980円(10%ポイント還元)で購入した。

「LAN-GTJU3H3」を使用する

 それでは、「LAN-GTJU3H3」を見てみよう。本体は80×50×15mmの箱形である。ブラックボディで見た目は悪くない。スリムな有線LANアダプタよりは大きいが、有線LANアダプタ単独の製品でもこのくらいの大きさの製品はあるし、逆にUSB3.0のハブでもこのくらいのサイズの製品はある。2つの機能がくっついている割には小さいと言えるだろう。本体からは短いUSBケーブルが出ている。直づけなので長いものとの交換はできないが、USBハブ機能もあるのだからそれほど本体から遠くに置く場面も少ないだろうし、逆に抜けてしまう心配が無いので好印象だ。パソコン側のコネクタの裏側には突起があり、これをUSBハブ側のUSBポートに挿し込むことで固定でき、持ち運びの際にも便利になっている。本体は、USBケーブルと反対側がLANポートで、USBケーブルを左側、LANポートを右側とすると、手前側にUSBポートが来る。各ポートはある程度離れているので、少し大きめのUSBメモリなどを使用しても隣接ポートをふさぐことはなさそうだ。中が青に塗られており、USB3.0対応であることを主張している。
 では、実際に使用してみよう。ただのUSBハブならUSBポートに差し込むだけで自動的にドライバが組み込まれるが、有線LANアダプタ機能もあるため、付属のCD-ROMからドライバを組み込む必要がある。 これはウィザードに従って数手順で終了する簡単なものだ。注意としては、ドライバをインストールしてから「LAN-GTJU3H3」を接続するという事である。
 初期設定も完了し、使用できるようになったらLANケーブルを接続してみる。無事にインターネットに接続でき、家庭内の同じネットワークにある他のパソコンのデータを開くこともできた。ポート内の左右に組み込まれたLEDでも、右側がオレンジに点灯しリンクが確立したことを確認し、左側が緑色に点滅し、データを転送している事が確認できた。続いてUSBポートを使用してみよう。なお、スペック上は本体で350mAを使用するとの事なので、USB3.0のバスパワー900mAをロス無く使えたとすると、残り550mAはUSBポートで使用できることになる。まずはマウスを接続してみると問題なく動作した。またここにUSB3.0対応のUSBメモリを挿し込んだが無事に使用でき、長時間アクセスを行っても安定していた。このくらいは大丈夫なようだ。一方外付けハードディスクや、USB2.0接続のモバイルBlu-rayドライブは、電源ランプが付いたり消えたりしてしまい、正常に使用する事ができなかった。やはりバスパワー電流が不足するようだ。しかし、マウスとUSBメモリが同時に使えるくらいのバスパワー電力はあるようなので、使い勝手上は問題なさそうだ。

「OWL-EDR35/U3」のパッケージである。USB3.0接続で高速有線LANでなおかつUSBポートがある事が示されている。本来はLANポートの無いウルトラブック、タブレットPC、Mac Book Airがターゲットの製品だ。

「LAN-GTJU3H3」本体である。黒い四角い本体は80×50×15mmと比較的小さい。短いUSBケーブルは直付けだ。

「LAN-GTJU3H3」を見ると、USBケーブルと反対面にLANポートが、側面にUSB3.0ポートが3つある。

USBケーブルの裏側には突起があり、これをUSBポートに差し込むことでケーブルを固定できる。持ち運びに便利だ。

「LAN-GTJU3H3」をパソコンに接続したところである。右側面にUSBポートがある場合、LANケーブルはパソコンの後方に、USBポートは右側にあるため使いやすい。

別方向から見るとこのような感じである。LANポートにはオレンジ色のリンク確立を示すLED(左)と、アクセス中に点滅するLED(右)がしっかり内蔵されている。


「LAN-GTJU3H3」の性能は?

 それでは、実際の速度はどうなのだろうか。転送速度を計測するために、「VPCF13AGJ」ともう一台 マウスコンピュータの「MB-W800S-SH」を用意した。「VPCF13AGJ」のスペックはCPUがCore i7-740QM(4コア8スレッド/1.73GHz/TurboBoost時2.93GHz)、メモリ8GB(4GB×2/PC3-10600 DDR3 SDRAM)、システムドライブに128GB SSD(Crucial M4/Serial ATA 3Gbps接続)、OSがWindows 7 Professional となっている。一方「MB-W800S-SH」のスペックは、CPUがCore i7-4710MQ(4コア8スレッド/2.50GHz/TurboBoost時3.50GHz)、メモリ16GB(8GB×2/PC3-12800 DDR3L SDRAM)、システムドライブに240GB SSD(Intel 530/Serial ATA 6Gbps接続)、OSがWindows 8.1Proである。この2台をLAN接続し、それぞれのSSD上の共有フォルダを、もう一方のパソコンから「ネットワークドライブの割り当て」でドライブ化した。そしてハードディスクのベンチマークテスト「CrystalDiskmark3.0」を使用して、読み書きの速度をテストすることで、転送速度を測る方法とした。使用形態に合わせ「LAN-GTJU3H3」は「VPCF13AGJ」に接続し、「LAN-GTJU3H3」のLANポートとパソコン内蔵のLANポートの両方で、一方「MB-W800S-SH」は内蔵のLANポートで固定している。2台のパソコンはクロスケーブルで接続し、間にハブやルーターを介さないことで、それらの影響を排除した。また、共有フォルダはSSD上に作成することで、できる限りドライブの読み書き速度の影響を少なくしている。これでも正確なLANの転送速度では無いが、実際に使用する上での転送速度はある程度検証できるだろう。


 グラフの「MB-W800S-SH→VPCF13AGJ」は「MB-W800S-SH」上でベンチマークテストを実行し「VPCF13AGJ」上の共有フォルダにアクセスするという事を表している。「VPCF13AGJ→MB-W800S-SH」はその逆である。まずテスト全体を見ると、なぜか「MB-W800S-SH→VPCF13AGJ」 方が、「VPCF13AGJ→MB-W800S-SH」の場合と比べて転送が遅いのが気になるが、これは「VPCF13AGJ」内蔵のLANポートでも同じ傾向なので、とりあえず今回はおいておくことにしよう。内蔵のLANポートと、「LAN-GTJU3H3」で比較してみると、「LAN-GTJU3H3」がUSB接続のアダプタながら検討していることが分かる。「MB-W800S-SH→VPCF13AGJ」の読み込み(シーケンシャルリード)では内蔵LANポートより高速だし、「VPCF13AGJ→MB-W800S-SH」の書き込み(シーケンシャルライト)も、内蔵LANポートに近い性能である。また、94.36MB/sは754.88Mbpsであり、1000BASE-Tの理論値が1000Mbpsである事を考えると、かなり良い数字と言える。一方で気になるのが「MB-W800S-SH→VPCF13AGJ」の書き込みと「VPCF13AGJ→MB-W800S-SH」の読み込みでは内蔵LANポートと比べて大きく速度が劣る事だ。それぞれ約75.9%と約74.2%となっている。そして、MB-W800SのデータをVPCF13AGJに書き込むのと、MB-W800SこれはのデータをVPCF13AGJ上で読み込むのという事は、どちらも「MB-W800S-SH」から「VPCF13AGJ」へのデータ転送を表している。なぜかこの方向に関しては速度が遅いのである。「MB-W800S-SH」は変わっていないのだから、「LAN-GTJU3H3」は送信は内蔵LANポート並の速度が出るが、受信に関してはやや遅いということになる。「LAN-GTJU3H3」に内蔵されたチップのせいなのか、VPCF13AGJのUSB3.0ポートのせいなのか、LANアダプタをUSB接続するとこうなるものなのか、理由は不明だが、受信は少し劣ることとなる。
 とはいえ、送信は750Mbps以上、受信でも600Mbps以上の速度が出ている事となり、通常に使用では問題ないレベルだろう。インターネットに接続するのなら、この転送速度があれば十分だし、パソコン間のファイル転送や、ネットワークハードディスク(NAS)を使う場合も多少の影響はあるだろうが、USB2.0接続の有線LANアダプタなどと比べれば十分快適だろう。



 今回は有線LANポートの故障によって、USB接続の機器で代用した形だが、USB3.0対応製品の登場により1000BASE-T程度であればUSB接続でも問題ないことが分かった。またUSBポートを1ポート使ってしまう点も、USBハブ機能付きの製品の登場で問題が無くなった。今回のように有線LANポートが壊れた場合や、そもそも有線LANポートの無いモバイルパソコンなどで、USBポートも不足している場合には良い選択肢になるだろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
ロジテックのページ http://logitec.co.jp/
LAN-GTJU3H3の商品ページ http://logitec.co.jp/products/lan/langtju3h3/index.php