第173回
USB3.0対応 128GB USBメモリ
グリーンハウス PicoDrive J3
GH-UFD3-128GJ
(2013年12月25日購入・2017年2月1日著)



ストレージ容量が足りない

 ロードテスト第170回で、モバイルノート(ネットノート)パソコンのハードディスクをSSD化した。一般的な動作が高速化しただけでなく、電車の中やカフェなどで使用していて、すぐに電源を入れたり切ったりできるため非常に便利になった。しかし問題点がある。元々搭載されていたハードディスクは500GBだったのだが、換装したSSDは250GBなのである。SSDはハードディスクに比べて容量が少なく高価なので、これは仕方が無い。500GBクラスのSSDとなると3万円を超えてしまい手が出ない。実際に、普段の使用では250GBもあれば十分だ。しかし旅行に行く際に旅行先で使用するデータを持って行ったり、旅行先でデジタルカメラやビデオカメラのデータを吸い出したり、また友人と会う際に見せたい動画や画像を持ち出そうとすると、足りなくなることが多いのだ。そこで、そういった時だけ使用する外部ストレージを考えることとした。
 もちろんモバイルハードディスクなら500GB〜1.5TBの容量があるし、500GBなら6000円前後でも手に入る。速度も十分だし、最もポピュラーな方法だろう。しかし、持ち歩くには少し大きくて重いのが気になる。そこでここは大容量のUSBメモリを利用することとした。

大容量なUSBメモリを探す

 USBメモリといえば、一般的には16〜32GBくらいで、大きくても64GBまでだろう。実際、メーカーのラインナップも64GBまでという所は多い。しかし64GBでは少々心許ない。調べてみると、機種数は64GB版と比べて大きく減るが、128GBと言う製品もいくつか存在することが分かった。また容量が大きいのだから、ある程度速度は速くないと使いづらいが、かといって速度を求めすぎると1万円台後半になってしまう。そこで、とりあえずUSB3.0に対応していて価格の安い製品を実際に店頭で見て選ぶこととした。国内の周辺機器・アクセサリメーカーの製品は高価なので、海外のメモリメーカーなどが作る製品が狙い目である。そういった製品は家電量販店よりパソコンパーツショップの方が売っているので、日本橋のでんでんタウンのパーツショップを見て回ることとした。
 回ってみて良さそうだったのが、グリーンハウスのPicoDrive J3シリーズの128GB版「GH-UFD3-128GJ」である。価格は8,980円である。グリーンハウスは以前SDカードを安く手に入れたが壊れることなく使え、速度的にも不満がなかったメーカーだ。「GH-UFD3-128GJ」は読み込み150MB/s、書き込み36MB/sをうたっている製品だ。USB2.0対応の128GBの製品が7000円台だったが、USB2.0では速度は30MB/s台が限界と思われ、速度的には「GH-UFD3-128GJ」が圧倒的に便利だ。ロードテスト162回で紹介したサンディスクのSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」は16GB版でも読み込み190MB/s、書き込み55MB/s、64GB版に至っては読み込み190MB/s、書き込み170MB/sをうたっていたが、これよりは価格が安い分劣る形だ。とは言え、読み込み速度は大きく劣る事はないため、一度データを入れてしまえば閲覧は高速に行えるはずだ。また、8GB〜32GBの書き込み速度は12MB/s、64GBでは22MB/s、128GBで36MB/sとなっており、これでも最大容量の製品であるため高速にはなっているのだ。書き込みは家でゆっくり行い、外で閲覧するときは読み込み速度が重要なので、これでも大きな不満はないはずだ。これ以上に高速な製品は1万円を大きく超えるため、価格と性能のバランスを考えればベストな選択肢と言えよう。PC 1'sで8,980円で購入した。

「GH-UFD3-128GJ」を使用する

 それでは早速PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」を見ていこう。外見は直線的で凝ったデザインでは無いが、USB端子と反対側は上から見ると角が丸くなるようになっており、逆に端子側は側面から見て上から下に丸くなるようなデザインとなっている。USB端子はスライド式で収納されており、前面のスライドスイッチをスライドさせてUSB端子を出すことになる。キャップ式と比べてキャップをなくす心配も無く、また片手で端子を出せるので便利だ。この辺りはSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」と同じである。しかし、スライドスイッチのスムーズさが全く違う。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」では、軽い力でスライドし、しかもスライドさせていくと、USB端子が完全に飛び出る直前になるとバネの力でピョンと勢いよく飛び出すし、逆に収納される直前も、勢いよく収納されるこの感覚が心地よい。それに対してPicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」のスライドスイッチは、ギシギシという感じで、スムーズさが無い。言い換えればSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」はコロが付いていて、PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」は付いていないような、そんな違いがある(実際には付いていないのだが、それくらいの差があるという事)。スライドスイッチを少し押し込んでスライドさせるのだが、この押し込むのもはっきりせず、スライドスイッチがたわんだだけにも感じるが、何となく押し込んでスライドさせていく事になる。この辺りはチープに感じるが、実際に安価なだけに仕方のないところだろう。出てきたUSB端子は中が青く塗られているのがUSB3.0対応を主張しているようだ。USB端子はスライドこそ少しスムーズさに欠けるが、出してみるとしっかりしており、ぐらつくこともなく、USB端子に挿すときに押し込まれてしまうようなこともない。
 大きさは、59.5×21.6×10.0mmで、流行の超小型USBメモリと比べると大きいが、一般的なサイズのUSBメモリと比べて特に大きいわけではない。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」も71×21×11mmなので、やや長さが短いと言った感じだ。128GBもの大容量メモリを搭載していながら、本体が小型のままなのはうれしい所だ。

PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」のパッケージである。高速転送150MB/sをうたっているが、これは読み込み速度で、書き込みは36MB/sとなる。

PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」本体である。凝ったデザインでは無い。真ん中に大きくUSB端子を出し入れするスライドスイッチがある。

PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」を横から見たところである。USB端子側は、上から下に丸くなっており、上下がわかりやすい。

PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」のUSB端子を出したところである。スライドスイッチはスムーズさに欠けるが、キャップ式と比べて便利だ。

PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」USB端子を出して横から見るとこのようになる。厚みもそれほど無いので、薄型のパソコンでも安心だ。

サンディスクのUSB3.0対応のUSBメモリSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」(上)とPicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」(下)である。幅は同じくらいで長さは短い。

 それでは実際にパソコンに挿し込んでみよう。USB3.0ポートに挿し込むと自動的にドライバが組み込まれすぐに使えるようになった。USBメモリなので当然と言える。ただ、使ってみて、驚くことが分かったのである。なんどPicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」にはアクセスランプがないのである。これまで安いUSBメモリや超小型のUSBメモリにもアクセスランプは内蔵されていただけに驚きである。これでは、実際に読み書きが行われているか確認が取れないし、取り外す際にアクセスが止まったかを確認することもできない。価格を抑えるためかもしれないが、驚きの仕様である。残念なポイントだ。

「GH-UFD3-128GJ」の速度をテストする

 それでは、肝心の転送速度ををベンチマークテストを利用して比較してみよう。今回購入したUSBメモリPicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」の他に、少し前に購入した高速USBメモリであるサンディスクのSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」、さらにかなり前に購入したUSB2.0対応のpqiの「TravellingDisk U230」でも比較としてテストを行った。 使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。いずれのテストも、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/チップセット:Intel Z77 Express/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)標準搭載のUSB3.0ポートに接続して行っている。


 まずはシーケンシャルアクセス性能を見てみよう。PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」は読み込み146.8MB/s、書き込み36.20MB/sと、公称値の読み込み150MB/s、書き込み36MB/sとほぼ同等の速度が出ている。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」と比べれば遅いものの、読み込みは77.7%、遅いと言われる書き込みも57.4%の性能となっており、価格を考えれば十分高速だ。また「TravellingDisk U230」と比べると、読み込みで3.9倍、書き込みで4.9倍の性能となっており、圧倒的だ。やはりUSB3.0対応で最新製品だけあるといえる。また、読み込みの146.8MB/sは、2.5インチハードディスクでは実現できていない速度なので、ある意味外付けハードディスクを購入するより読み込みは快適だと言える。


 続いてランダムアクセス性能である。まずは512Kの比較的大きなサイズのランダムアクセスである。。PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」は読み込みが118.9MB/sとなっており、シーケンシャルリードとからの速度低下が19.0%と小さい。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」では32.1%落ちたのと比べると小さく、結果、SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」に近い性能を示している。非常に高速だと言えるだろう。一方、書き込み速度は読み込み速度と正反対で落ち幅が大きい。わずか0.514MB/sしかなく、シーケンシャルライトの70分の1になっている。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」とは比べるまでもなく、「TravellingDisk U230」よりも遅くなってしまっている。ここまで急激に遅くなる原因は不明だが、低価格で大容量にするためにメモリにTLCを使用していると思われ、これが原因とも考えられる。SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」は速度重視でMLCを、「TravellingDisk U230」は古い製品なので、まだTLCがなくMLCを採用しているのではと推測され、この辺りで差が出た可能性はある。何はともあれ、PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」は大きなファイルを書き込む場合はそれなりに速いが、小さなファイルを書き込む場合は注意が必要だと言えるだろう。


 続いて比較的小さな4Kのランダムアクセス性能である。PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」の読み込み速度は7.46MB/sで、3製品中最下位だが、これは「TravellingDisk U230」がなぜか非常に高速なためで、同じUSB3.0のSanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」に大きく離されているわけではない。十分な速度と言えるだろう。一方書き込み速度はは相変わらず非常に遅く、SanDiskExtreme「SDCZ80-016-X46」と比べて175分の1の速度しか出ていない。一方で「TravellingDisk U230」とはほぼ同じ速度になっており、ランダム512Kの時よりはマシだとも言える。いずれにしても小さなファイルを書き込む速度は期待しない方が良さそうだ。



 今回は容量不足を補う方法としてUSBメモリを使用してみた。PicoDrive J3「GH-UFD3-128GJ」はスライドスイッチの作りや、アクセスランプがない点に安っぽさを感じ、またランダムライトが遅いという弱点はある。一方で読み込み速度やシーケンシャルライトの速度は十分に高速で、家で時間のあるときに書き込んでおいて、持ち出して外で見るというような使い方なら問題にならない、むしろ非常に快適に使えるはずだ。また、128GBと大容量ながら、本体サイズが小さく、価格も9000円を切るという点を考えれば、コストパフォーマンスは非常に良い事がわかる。用途にも寄るだろうが、安くて大容量のUSBメモリを探している人にはお勧めできる一品だ。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
グリーンハウス http://www.green-house.co.jp/
グリーンハウスのUSBメモリのページ http://www.green-house.co.jp/products/pc/usbmemory/

32GB版
64GB版
128GB版