第162回
USB3.0対応USBメモリ
サンディスク SanDiskExtreme
SDCZ80-016-X46
(2012年12月12日購入・2016年1月25日著)



高速なUSBメモリを探す

 USBメモリは頻繁に使うものではないが、時々必要になり、データーの受け渡しや移動に便利である。しかし最近その転送速度が気になる様になってきた。USB2.0対応の8GBのUSBメモリをずいぶん前に買ったままずっと使い続けてきたのだが、USB2.0対応と言うこともあり、読み込み速度はせいぜい30MB/s台後半、書き込み速度は安価な製品だけあって10MB/s以下という有様だ。しかし当時はこれが標準的だったのだ。SSDはまだ一般的ではなく、そもそもUSB3.0も無かったため、ハードディスクでも読み込み速度は同程度であった。SDカードも20MB/sの読み書き速度が最高という状態だ。しかし、最近ではUSB3.0対応が一般的になり、ハードディスクはポータブルタイプでも100MB/sを超え、SSDも一般化してきた。また20MB/s程度の読み書き速度で止まっていたSDカードも、UHS-Iという高速転送規格に対応し、カードリーダもUSB3.0接続になった事で、一気に50〜100MB/sという読み込み速度を持つ製品が増えた。持っている製品の読み書き速度の底上げが行われた結果、USBメモリの遅さが気になりだしたのである。
 幸い、最近ではUSB3.0対応のUSBメモリも一般的になり製品も増え価格も下がっている。この辺りで高速なUSBメモリを購入することとした。
 しかし、USB3.0対応と言ってもピンからキリまである事がわかった。例えば16GBの容量の製品でも1000円台の、USB2.0対応製品と変わらない価格のものから、8000円台のものまで様々だ。雑誌の特集などを見てみると、USB3.0対応と言っても、読み込み速度が30MB/s台の製品から100MB/s以上の製品まで速度に結構なばらつきがある。さらに書き込みの方も、2チャンネルアクセスなどを行う事で高速に書き込める製品もあるなど、様々である。当然、高価な製品は速度が速い。製品が色々ありすぎて、難しいので、実際に店頭で見て選ぶこととした。国内の周辺機器・アクセサリメーカーの製品は高価なので、海外のメモリメーカーなどが作る製品が狙い目である。そういった製品は家電量販店よりパソコンパーツショップの方が売っているので、日本橋のでんでんタウンのパーツショップを見て回ることとした。

USBメモリを選ぶ

 各パーツショップを回って様々な製品を見てきたが、このなかで良さそうなのは、サンディスクの「SanDisk Extreme」という製品だ。読み込み速度が最大190MB/sをうたっており、他のUSB3.0対応製品と比べて抜きに出ている事、そしてサンディスクというメーカー自体もメモリカードメーカーとして信頼性が高いことがある。一般的に信頼性が高いだけでなく、私自身がサンディスクのSDカードを使用しており、その品質の高さが気に入っている事もある。実はこの「SanDisk Extreme」は日本のサンディスクのホームページには掲載がない。というのも、国内での販売はないのである。しかし、パーツショップやAmazon.comなどでは海外の並行輸入品が出回っているため、比較的簡単に手に入れることができるのである。また、SDカードなどを例にすると、国内向けに製品が売られている場合でも、並行輸入品の方が半額〜3割くらいの価格で売られており、お得だ。そのため、他のそれほど高速でないUSBメモリと比べても、何割か高いだけとなっており、高速なUSBメモリが安く手に入るというわけである。
 しかし、ここで悩みどころがある。それが容量である。単純に必要な容量と言うことであれば、現在の8GBでも問題ないため、SanDisk Extremeの中で最低の16GBの製品でも問題ない。しかし、実は書き込み速度に大きな違いがあるのだ。

容量 型番 読み込み速度 書き込み速度
16GB SDCZ80-016G-X46 最大190MB/s 最大55MB/s
32GB SDCZ80-032G-X46 最大190MB/s 最大110MB/s
64GB SDCZ80-064G-X46 最大190MB/s 最大170MB/s

 これを見ると、読み込み速度は同等だが、書き込み速度は1ランク上がるごとに、2倍、3倍となっている。これはおそらく、搭載するメモリチップが増え、同時アクセスするチャンネル数が多くなるためで、SSDなどにも見られる傾向だ。そのため、容量だけでなく書き込み速度考えて、製品を選ばなくてはならない。価格は16GBが2,000円前後、32GBが4,000円前後、64GBが8,000円前後と、容量の差がそのまま価格に反映されている。さすがに64GBは高いが、32GB程度なら購入できないことはない。しかし、今回は16GBでも十分であると思われる事と、書き込み速度は55MB/sでもそれほど遅いわけではなく、またこれまで使ってきた製品と比べると圧倒的に速いことなどから、価格重視で16GBの「SDCZ80-016G-X46」とした。BEST DO! 日本橋店で1,940円であった。

「SDCZ80-016G-X46」の外見を見る

 それでは早速「SDCZ80-016G-X46」を見ていこう。パッケージは紙箱である。黒に「SanDisk」のロゴが大きく入り、いかにも高級モデルであると言っているようだ。製品を取り出してみると、意外と小さいことに驚く。高速モデルはどうしても大きくなると思っていたのだが、横幅や長さはこれまで使ってきたUSBメモリ「pqi TravellingDisk U230」と変わらない。もちろん、最近ではより小型のUSBメモリも出てきているため、平均からすれば大きめの製品になるのだろうが、それでもこれまでと比べて大きくなっていないのはうれしいところだ。これは持ち運びの面でも便利だが、隣接するUSBポートと干渉しにくいという点でもうれしい点だ。幅21mm×長さ71mm×厚み11mmで、厚みに関してはすこし厚いという印象だ。全体に平べったくなく、板状のUSBメモリを膨らましたような形状だ。USB端子がスライド式なのは非常に便利だ。使用時にフタを外すよりも手早いし、フタをなくす心配も無い。USB端子は前面にあるスライドレーバーで出したり収納ができる。USBコネクタを出すときはスライドさせていくと、最後の方だけ勢いよく飛び出す様になっており、収納時もスライドさせていく最後にカチャッと勢いよく収納される独特の感覚がある。バネの力が加わるような感覚だが、スライドレバーが大きい事と併せて、非常に軽く出し入れできる。作りがしっかりしているのは、さすがに高性能な製品だけあると言えるだろう。
 コネクタを出すと、コネクタ無いが青く塗られているのがUSB3.0対応である証である。とはいえ、USB3.0に対応していて高速である以外は、普通のUSBメモリと変わらないため、USB端子にさせば自動的にドライバが組み込まれて使えるようになる。速度は遅くなるがUSB2.0ポートでも使用できる。

「SDCZ80-016G-X46」のパッケージである。黒をベースにした紙箱で高級感がある。

「SDCZ80-016G-X46」である。USB端子を収納した状態である。黒い本体にSanDiskの赤いロゴで光沢感があり、こちらも高級感がある。全体に丸みがある形状で、正面に大きくUSB端子を出し入れするスライドレバーがある。

「SDCZ80-016G-X46」のUSB端子を出したところである。スライド式で軽い力で出すことができる。

「SDCZ80-016G-X46」を横から見たところである。厚みは11mmと少し大きめではあるが、円柱に近いので意外と手にはなじむ。

「SDCZ80-016G-X46」(上)と、これまで使っていた「pqi TravellingDisk U230」(下)の比較である。「pqi TravellingDisk U230」のキャップをした状態でのサイズはほとんど同じである。またUSB端子がスライド式なので、キャップをなくす心配が無い。

「SDCZ80-016G-X46」(左)と「pqi TravellingDisk U230」(右)を横から見たところである。さすがに厚みはあるが、横幅が大きいよりは隣接するUSBポートに干渉する心配が無いので安心だ。

「SDCZ80-016G-X46」の速度をテストする

 それでは、肝心の転送速度ををベンチマークテストを利用して比較してみよう。今回購入したUSBメモリ「SDCZ80-016G-X46」の他に、これまで使ってきたUSB2.0対応の安価なUSBメモリpqi「TravellingDisk U230」、さらに64GBのSSDをUSB3.0対応外付けケースに入れたもの、UHS-I対応の高速なSDカードとUSB3.0対応メモリカードリーダーの組み合わせたものの4種類で比較している。また「SDCZ80-016G-X46」はUSB2.0接続の場合でもテストを行っている。
 SSD+外付けケースは、SSDがCFDの「CSSD-S6M64NMQ」、外付けケースが玄人志向の「GW2.5BM-SU3/BK」である。使用するSSDは以前デスクトップパソコンに使用していたものの不要になったもので、Crucialの「RealSSD C300」という、大人気だったSSDのOEM品だ。SerialATA3.0(6Gbps)に対応しており、読み込み速度は300MB/sを超える。ただ64GBと容量が少ない製品である事から、書き込み速度が70MB/s前後と遅い。SDカード+カードリーダーは、SDカードがSanDiskの「Extreme Pro SDSDXPA-008G-X46」(ロードテスト第138回参照)、メモリカードリーダはバッファローの「BSCR15TU3BK」(ロードテスト第152回参照)である。SDカードは、最新のUHS-I高速転送に対応しており読み込み最大95MB/s、書き込み最大90MB/sを誇る。一方のメモリカードリーダもUHS-Iに対応し、USB3.0にも対応している高速なものである。
 使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。いずれのテストも、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/チップセット:Intel Z77 Express/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)に接続している。パソコン内蔵のテストは、マザーボード上のSerialATA 6Gbpsポートに接続してテストを行った。どの製品も、「MDV-AGZ8000B」標準搭載のUSB3.0ポート又はUSB2.0ポートに接続した。


 まずはシーケンシャルアクセス性能を見てみよう。「SDCZ80-016G-X46」は読み込みは公称値通りの結果が、書き込みは公称値を上回る結果となっている。16GB版なので書き込みはそれほど高速ではないが、読み込み速度に関してはさすがの結果だ。SSD+外付けケースの結果とほぼ並んでおり、外付けSSD並の速度が出ていると言える。確かにSSDは64GB版であるため書き込み速度が遅く、もっと容量の大きい製品なら書き込み速度が上がるが、それは「SDCZ80-016G-X46」似も言えることである。またこれまで使ってきたUSB2.0対応のUSBメモリ「TravellingDisk U230」では読み込みが37.59MB/s、書き込みが7.369MB/sなので、実に5倍と8.56倍の速度になっている。書き込み速度は遅いとは言っても63MB/sというのは十分に高速だし、「TravellingDisk U230」と比べれば圧倒的な差である。また、SDカード+メモリカードリーダの場合は、書き込み速度は「SDCZ80-016G-X46」をやや上回るが、読み込み速度は90MB/s台にとどまり、「SDCZ80-016G-X46」が圧倒的に高速だ。この結果を見ると、これまでのUSBメモリの常識からは考えられないほど高速で、また、高速なSDカードやSSDの外付け化を行った場合と比べても十分な速度を有しているため、他の方法を使えばもっと高速なのではという心配も無いほどのレベルに達している。ちなみにUSB2.0接続で使用した場合、読み込み速度、書き込み速度のどちらも43MB/s台でストップしている。このあたりがUSB2.0の限界のようだ。USB2.0対応のメモリカード「TravellingDisk U230」に対して、読み込み速度ではそれほど差が無いが、書き込み速度はUSB2.0接続でも十分なアドバンテージがある。


 続いてランダムアクセス性能である。まずは512Kの比較的大きなサイズのランダムアクセスである。シーケンシャルアクセスとの比較で、読み込み速度が78%、書き込み速度は30%まで低下している。特に書き込み速度が遅いのは気になるところだ。またSSD+外付けケースでは93%と90%と速度低下が10%以内なのとは対照的である。「TravellingDisk U230」でも書き込み速度は低下しているが、読み込み速度はそれほど変わっていないので結果的に差は縮まっている。とはいえまだ差は大きいとは言える。またSDカード+カードリーダでも書き込み速度が大きく低下しており、シーケンシャルライトでは「SDCZ80-016G-X46」より高速だったか、ランダム512Kライトでは下回ってしまっている。「SDCZ80-016G-X46」の低下がSDカード+カードリーダほどでないのはせめてもの救いだろう。


 続いて比較的小さな4Kのランダムアクセス性能である。書き込み速度は512Kよりがんばっている結果で、SSD並に戻っている。また、「TravellingDisk U230」の154倍の速度となるなど 、書き込み速度は比較的速い。一方読み込み速度ではSSD+外付けケースの半分となっているだけでなく、「TravellingDisk U230」にも劣る結果となるなど、少し寂しい速度だ。一方でSDカード+カードリーダの読み込み速度は「SDCZ80-016G-X46」の半分以下になるなど、製品によってランダムアクセスの低下度合いに差があるのは確かなようだ。読み込み速度は「TravellingDisk U230」より遅いとはいえ、十分な数値で、書き込みも高速であるなどバランスの取れた結果だとも言える。



 今回は初のUSB3.0対応のUSBメモリで、しかもかなり高速な製品を購入してみた。実際に速度面ではこれまでの製品とは比べものにならないほど速く、また、他の方法をとっても「SDCZ80-016G-X46」より低速な場合が多く、SSDを利用しても大きな差にはならない。これならば、コンパクトで手軽な「SDCZ80-016G-X46」は速度と使い勝手の両方を兼ね備えた製品と言えるだろう。その上、製品自体の質も良いのも気に入った。また、今回は16GBの製品だったが、より容量の多い製品なら書き込み速度もグンと上がる。それでいて手に入れやすい価格になっているなど、多方面から魅力的な製品と言えるだろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
SanDiskのページ(日本)
(USBメモリの掲載無し)
http://www.sandisk.co.jp/
SanDiskのページ(アメリカ)
(USBメモリのの掲載あり)
http://www.sandisk.com/
SanDiskのUSBメモリのページ http://www.sandisk.com/products/usb/drives/

16GB版
32GB版
64GB版