秋田駒ケ岳 (あきたこまがたけ)

(1,637m、秋田)  184座

秋田駒ケ岳の最高峰・男女(おなめ)岳


1日目:八合目〜阿弥陀池避難小屋〜男女岳〜男岳〜八合目
2日目:国見温泉〜馬場ノ小路(ムーミン谷)〜男岳分岐〜横岳〜大焼砂〜国見温泉

和賀岳からの続き
1日目:2010年7月20日(火)

八合目〜阿弥陀池避難小屋〜男女岳〜男岳〜八合目

中里温泉500−555アルパこまくさ631−700八合目〜733片倉展望地〜810阿弥陀池避難小屋818〜841男女岳〜854避難小屋〜918男岳〜1035八合目1040−アルパこまくさ−国見温泉(泊)

 秋田駒は花の名山として知られるが、私はまだ登ったことがない。それは「この山は歳をとってからでも登れる」と思い、日本200名山の最後の山に取っておいたのである。しかし、それまで待ち切れず今回、和賀岳と一緒に登って来ることにした。

 この秋田駒は、「山情報−ヤマレコ」によれば、『〜全国に数多い駒ヶ岳のなかで最も高山植物の豊富な山として知られる。山頂一帯に咲くヒナザクラやタカネスミレ、コマクサ、エゾツツジなどの数百種類の高山植物群は、1926年(大正15年)2月、秋田駒ヶ岳高山植物帯として国の天然記念物に指定された』、と書いてある。

 その天然記念物の中でも最も代表的なコマクサは、日本一の群落ともいわれ、今がちょうど見頃のはずである。

 昨日は和賀岳を登って山麓近くの中里温泉へ泊まり、朝5時に宿を出発。
 まずは田沢湖駅をめざして行くが、天気が気になった。天気予報では『曇り、降水確率30%』と報じているが、どんよりした空はいつ降って来るか分からない。

 田沢湖手前でついに雨が降って来た。それも本降りである。今日は八合目からまず笹森山を往復し、最高峰の男女おなめ岳(女目岳とも書く)、男岳おだけから馬場ノ小路(ムーミン谷)のお花畑を散策し、避難小屋へ宿泊。明日は乳頭山へ縦走する予定だが、雨ではコース変更も考えなくてはならない。

「アルパこまくさ」へ6時前に着いた。雨も降っているがガスが濃く、視界が5、60mしか利かなかった。
 バス停の軒先で先客3人が話し込んでいた。その中の一人、東京から来たという御仁は、今日中に乳頭山まで縦走するといい、ガラガラの1番バスに一人で乗って行った。

 私はここで作戦を変更。避難小屋泊まりで乳頭山まで縦走するのを断念。速攻で最高峰の男女岳のみを往復して来ることにした。

 大きなザックからアタックザックに変更して、次のバスを待っていると視界が少しずつ広がった。時間がたてばもっと良くなるかも知れない。

 
 2番バスはたった2人を乗せて出発。7時ジャストに八合目へ着いた。
 バスから降りるとガスで何も見えなかった。運転手に登山口を聞くと、「あっちだ!」と、そっけない。

 まずは水場があったので一口飲んで行く。後ろにボンヤリと見えるのが避難小屋だろうか。

 やっと案内板が立った登山口をみつける。ここはもう観光地化されていて人工的(コンクリ)な登山道だった。それを登って行く。雨の日はこういう人工的な道も助かる。

 すぐにハイマツが現われた。一気に高山へ来た感じである。道端にハクサンチドリが咲いていた。

 10分か15分も歩くと、自然の登山道になった。やはり山は自然の登山道の方がいい。
 その登山道を進んで行くと、突然、開けた所へ出て強風にあおられた。ガスの中にボンヤリと標識が立っていた。ここが片倉展望地だった。

 ここにはベンチが幾つかあった。晴れていれば絶好の展望台だろうが、今は進むべき方向さえ分からない。ロープ伝いに半周ほどすると登山道があった。

 道の両脇が花畑になってきた。ハクサンボウフウのような白い花やヤマハハコ、マルバシモツケなどが咲いていた。雨に濡れたハクサンシャジンが可愛い。


(ハクサンボウフウ?)

(ヤマハハコ)

(マルバシモツケ)

 やがてコマクサが生えそうな砂礫になって来たが、コマクサは見当たらなかった。

 昨日、和賀岳で帽子を吹き飛ばされてしまい、雨具のフードが目の上まで来るので視界が狭い。特に上部の視野が狭く、時々、手でフード持ち上げる。

 昨日も和賀岳でハクサンシャジンを沢山見て来たが、ここにもいっぱい咲いていた。エゾシオガマも咲いていた。


(ハクサンシャジン)

(登山道)

(ハクサンシャジン)

(エゾシオガマ)

(シロバナトウウチソウ)

(オヤマソバ?)

 やがて木道になった。周りにはニッコウキスゲも咲いていたが、トウゲブキの方が目立つ。ヨツバシオガマも咲いていた。

 木道を進んで行くと水面が見えて来た。阿弥陀池だ。せっかく阿弥陀池まで来たのに展望がないというのは何とも悔しい。

 昨日はこの木道で、強風にあおられて池へ落ちた人がいるという。今日も風が強くバランスを崩しそうになるが、「こんなところで池へ落ちてたまるか!」と踏ん張る。

 すぐに水場(写真左)を見つける。避難小屋へ泊まる予定だったので、この水場が気になっていたが、水は涸れていなかった。
 水場があるということは、この辺に避難小屋があるはずだが、小屋は見えない。
 ここから左手の木道(真っ直ぐ行くと横岳)へ入ると、ボンヤリと小屋が見えて来た。手前にある立派な建物が公衆トイレで、「故障で使用不可」と書いてあった。
 並んで建つ小さい方が避難小屋である。小屋には誰もいなかった。ここでしばし休憩。

 いよいよ山頂を目指して出発。模擬丸太の階段を登って行く。周りの斜面はお花畑になって来た。

 時々、突風でバランスを崩す。身の危険さえ感じるほどだった。


(男女岳への登り)

(周りはお花畑)

 下を向いて階段を登っていると、突然、目の前に人の足が現われてビックリした。今日中に乳頭山まで縦走するといっていた御仁が下って来たのだ。
「声をかけたんだけどねぇ・・・」と恐縮そうに言った。ここは風が強いので声が届かなかったのだろう。

 御仁は、「縦走は止めた。男岳を登ってからここへ来た。男岳にはニッコウキスゲが咲いているから、ぜひ行った方がいい」と勧められた。
 私も男岳へ行くことにしよう。ここでしばらく話し込む。

 御仁と分かれて、2、3分で山頂だった。メチャクチャ風が強く、吹き飛ばされそうだった。耐風姿勢で山頂の写真を撮った。
 この時、カメラのレンズに水が入ってしまい、以後、すべてピンボケのようになってしまい、まともな写真が撮れなくなった。

 再び避難小屋へ戻り、今度は男岳を目指して行った。


 男岳の登りでエゾツツジがいっぱい咲いていた。(写真を何枚も撮ったが、ほとんどパーになってしまった)。


(エゾツツジ−1)

(エゾツツジ−2)

 横岳との分岐へ出ると強風雨にあおられた。右側の男岳を登って行くと、南斜面にニッコウキスゲの群落があった。しかし、ガスが濃く遠くは見えなかった。それでもさかんにシャッターを押した。


(ニッコウキスゲ)
 男岳は鳥居と神社が建った山頂だった。男女岳よりもこっちの方が貫録があると思った。
 ここも写真を撮っただけですぐに下山。横岳との分岐で若者3人組に会った。

 もうここからは下ることに専念する。こんな悪天候の日に怪我でもしたら元も子もない。

 八合目へ10時35分に到着。40分発のバスに乗り込んだ。乗ったのは私一人だけだった。

 秋田駒は山頂へ立ったものの、何とも不完全燃焼である。肝心のコマクサは一輪も見られず、乳頭山の縦走もままならず、何ともやり切れない思いだった。

 乳頭山縦走の後は田沢湖キャンプ場でキャンプをする予定だったが、昨日キャンプをした人が強風でテントごと飛ばされたという。今も雨は止まない。もう、キャンプも諦めて帰ることにする。
「アルパこまくさ」で温泉に浸かり、昼食を摂ってから盛岡ICへ向かって走り出した。

 しかし、しかし、ここからが本当の花紀行が始まるのである。

 雫石の手前で、家へ今日帰ることを伝えると、家内から「明日は秋田県は晴れるわよ! 今、天気予報で言ってたから・・・」と言われる。

 このまま帰るのも悔しい。もし明日が晴れるなら・・・、明日に賭けてみようか・・・。そんな思いで急遽、国見温泉へハンドルを切った。コマクサを見るなら国見温泉から登るといい、と聞いたことがあったからだ。

 国見温泉は予約なしで行ったが、森山荘(写真左)へ泊まることができた。明日こそコマクサ紀行と行きたいものだ。