アポイ岳−3/3


標高500〜600mなのにハイマツが生えている。

固有種のアポイクワガタ

 七合目を過ぎ、ガレ場のような所に珍しい花があった(写真:右上)。初めはミヤマクワガタかと思ったが、色が違う。 ミヤマクワガタは赤紫色をしているが、この花は青色である。それが群落になって咲いていた。 これは家へ帰って調べたら、アポイ岳固有種のアポイクワガタだった。

 ここからは花が多くなった。岩場が多くなり、その岩場の間にサマニユキワリやアポイアズマギクなどが咲いていた。
 しかし、太平洋から直接吹き付ける風雨が強く、もうゴアの雨具を着ていても下着まで濡れてしまい、靴の中もグジャグジャだ。山に登って海風に吹かれるなんて初めてだ。

 八合目からはサマニユキワリが一層多くなって来た。これだけのサマニユキワリを見れば、もう充分満足だ。

 八合目からはアッという間に山頂(写真左)へ着いた。しかし山頂にいたのは、わずか10秒か20秒だった。山頂の写真を2枚撮って、すぐに幌満お花畑へ向かって下って行った。

 こちらはダケカンバとハイマツがミックスしたような森林帯で、いかにも熊がいそうな感じだった。それに海側の尾根なので一層風雨が強い。こんな雨は屋久島以来だ。

 幌満お花畑まで意外と遠かった。強風雨のせいかも知れないが、道を間違えたかと心配になった頃、やっと着いた。

 しかし、何ということか。期待した花は全く咲いていなかった。いや、咲いていないのではなく、花がないのだ。こんな所が”お花畑”などとは言えない。ここは期待が大きかっただけにショックも大きかった。こんな所に長居は無用!

 ここから馬ノ背をめざして行く。森林帯なので少々薄気味悪かったが、所々に初めて見るエゾオオサクラソウ(写真右)が咲いていた。それがせめてもの救いだった。

 小さなカーブを曲がった時、熊がいた。しかもこっちを向いた。一瞬、全身の血液が凍りついた。「ついに会ちゃったよ・・」。
 そして、ハッと思った時、無意識に5、6歩逃げていた。しかし「逃げてはいけない」と思い直して、熊の方へ向き直った。

 5、6分じっとしていたが、一向に動く気配がない。そこでホイッスルを思い切り吹いてみたが、それでも動かない。
 恐る恐る近づいて行くと、またもや木の根っこだった。ガックリと全身の力が抜けた。あ〜あ〜、疲れるナア・・・。

(左の写真、中央にある黒いヤツ)

 ちょうど熊の頭だと思った所にあった草が、風で揺れたので頭が動いたように見えたのだ。
 そんな訳で今回は2回も熊が出たかとビックリさせられた。

 麓まで下って登下山届を見ると、今日登ったのはやはり私一人だけだった。こんな雨の日に登るバカはいないということだろう。

 駐車場へ着くと、駐車場は川になっていた。靴でジャブジャブと歩いて行かないと車に乗れない。
 急いでアポイ山荘の「アポイの湯」へ飛び込んだ。ここは余りにも立派な施設で驚いた。それにこんな雨の日も大勢の人で賑わっていた。地元の人達が骨休みに来ているようだ。

 この日は荻伏の宿へ泊まり、翌日は天気が悪いので楽古岳を登るのを諦め、えりもの宿をキャンセルして帰京した。