杁差岳−3/3

2007年8月12日(日)

頼母木小屋515−545大石山−633鉾立峰638−715杁差岳740−810鉾立峰815−913大石山− 1005頼母木小屋(昼食)1110−1138頼母木山1142−1223地神北峰1240−1318丸森峰1330− 1456水場1525−1737登山口(飯豊山荘泊)

 朝4時起床。まだ寝ている人が多かったので、静かに外へ出ると満天の星だった。
 すでにヘットランプを点けて食事の準備をしている人達がいた。私も部屋へ戻って荷物をまとめ、外で朝食の準備を始める。

 5時15分小屋を出発。小さいアタックザックで杁差岳へ向かった。朝は涼しくて気持ちがいい。
 大石山との鞍部を目指して下って行くと、お花畑が広がっていた。ムラサキ色のタカネマツムシソウがあざやかだった。


頼母木小屋から大石山(左端)へ向かう途中から見た杁差岳。


(タカネマツムシソウ)

(ハクサンフウロ)

(イブキジャコウソウ)

 私が写真を撮っていると、後から単独の若い女性が追い付いて来た。女性が1人で飯豊へ来るというだけで、山の実力を窺い知ることができる。剣豪なら「御主、できるな!」というところだろうか。彼女には先に行ってもらった。

 さわやかな朝の稜線歩き。しかも花がいっぱいだ。飯豊はやっぱりこうでなくちゃあ・・・。
 30分ほどで大石山へ着いた。ここは足の松尾根との分岐になっており、ザックが1つデポしてあった。


大石山から少し下った所から見た鉾立峰と杁差岳

頼母木小屋を振り返る(手前のピークにポツンと見える)

 ここからも花が多かった。朝露でズボンの裾がビッショリだった。朝露に濡れて咲いている花も一層可憐で美しい。

 鉾立峰との鞍部で水分補給。今、鉾立峰を2人のパーティーと先ほどの女性が登っているのが見えた。ここから見ると杁差岳より鉾立峰の方が尖峰で迫力があり、魅力を感じる。この鉾立峰の方が200名山にふさわしいのではないか、とさえ思った。

 鉾立峰の登りで、しっとりと汗をかいた。しかし、さわやかな風が吹き渡って心地よい。今日は荷物が軽いせいもあるが、昨日のようなカメさんではない。(もともと足は遅いのだが)

 鉾立峰は覚悟していた割にはアッという間に着いた。山頂で二王子や杁差岳の写真を撮り、展望を楽しんだ。

 登って来る時は杁差岳よりもこの鉾立峰の方が200名山にふさわしいのではないか、と思ったが、ここから見る杁差岳は堂々として貫禄があった。やはりこの鉾立峰は杁差岳の前衛の山でしかないようだ。

(写真は鉾立峰から見た杁差岳)

 鉾立峰を下り、いよいよ杁差岳への登りという所に、マツムシソウの群落があった。余りにも綺麗な花畑に、思わず歓声を上げる。

 杁差岳避難小屋は綺麗な小屋だった。せっかくなので中を覗いて見ると、中も小綺麗で、こんな小屋なら泊まってみたいと思った。頼母木小屋より小さく感じるが、宿泊定員は同じらしい。

 それにしても「足の松尾根」からフル装備で水まで持ってここまで来るのはシンドイだろう、と思った。
 小屋の周りにはマツムシソウがいっぱい咲いていた。まるで小屋の主人が栽培しているのかと思うほどだった。


杁差岳小屋

杁差岳山頂

 小屋から杁差岳の山頂までは、ほんの一息だった。7時15分山頂着。頼母木小屋からちょうど2時間だった。
 山頂には先客が3人いた。その中に途中で追い越された単独の女性(JOさん)もいた。
 山頂からは鉾立峰から頼母木小屋、頼母木山、地神山、遠くに飯豊本山まで見えた。反対側には二王子岳がどっしりとした山容を見せていた。しばし展望を楽しむ。

 さて、ぼちぼち下ろう。7時40分下山。
 花を見ながら歩き、鉾立峰で一本。

 やはり8時を過ぎると日差しが強くて暑い。今日は絶対にヘバる訳にはいかない。そのためには充分な水分補給と休憩を取らなくてはいけない。大石山の途中でも休憩し、頼母木小屋へ10時5分到着。

 まずは頭からホースの水を被り、顔を洗い、水をゴクゴク飲んだ。ここで早お昼にする。
 ビールを飲み、軽い食事の後コーヒータイム。

 11時10分小屋発。
 ここは下山といっても、頼母木山、地神北峰への登りになる。これが最後の登りだと思うと気合も入る。イイデリンドウを愛でながら、一歩一歩登って行った。

  頼母木山の地蔵さんに手を合わせ、地神北峰まで来ると標識の脇にザックが置いてあったが人影がない。山頂は日差しが強いのでどこか日陰で休もうと思い丸森尾根を10mも下ると、そこに傘を差して道端で休んでいる人がいた。なるほどこのクソ暑い日差しを除けるには、傘という手があったのか、と感心した。私も近くの日陰で大休止。ここは風通しがよくて最高だった。

 丸森峰からやっと森林地帯に入り、日差しは避けられるようになったが、風がない。
 水場へ14時56分着。やっと着いた。もう汗だくだった。残っていたペットボトルの水を頭から被り、冷たい水を飲んでペットボトルに入れた。
 冷たい水を飲んだせいか、少し生き返った気がする。後から3人が水場へやって来た。

 その3人が出発したので、私も重い腰を上げた。
 途中、ガレた急な斜面があり、左にトラバースするのをそのまま真っ直ぐ下ってしまった。下ってから道がないので慌てる。

 親指ほどの石を足場に、周りの心元ない草木に掴まりながら、必死で登り返した。先日、某大山岳部が北岳で浮き石に乗ってバットレス側へ滑落した遭難事故が脳裏をよぎる。ここで掴んだ草木が抜けたら一巻の終わりだ。必死で登り切った。あ〜あ、疲れた。かなりのエネルギーを費やしてしまった。

 飯豊山荘の屋根と駐車場が見えた時はホッとした。登山口へ17時37分着。
 飯豊山荘のご主人が、到着が遅いので心配していたそうだ。
 夕食に“熊汁”が出た。クマ肉を食えば元気が出そうだが、熊から仲間だと思われても困るのだが・・・。

【エピローグ】
 今回の山旅は、とにかく暑くて参った。昨日は甲子園の球児が4人も熱中症で倒れたという。
 反省の一つとして、荷物が大き過ぎたことが上げられる。同じ小屋泊まりでありながら、私よりはるかに小さく、コンパクトにまとめている人が多かった。今後は、軽量・コンパクト化に努めなくてはいけない。

 暑さを除けば、鮮やかなイイデリンドウを見ることができ、杁差岳もいい山だった。杁差岳にあんなにマツムシソウが咲いているとは知らなかった。ぜひ周りの人達に教えてあげよう。

 《えぶりさしは、いい山だぞ〜〜!》


杁差岳のお花畑