宝剣岳 (ほうけんだけ)

雪稜と雪煙

登頂歴
  C1996年9月16日 木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜空木岳縦走
  B1979年12月31日〜1980年1月1日 吹雪のため宝剣岳のみ登頂
  A1974年12月31日〜1975年1年1日(初めての冬山・宝剣岳のみ登頂)
  @1971年7月 木曽駒ケ岳〜宝剣岳


初めての冬山・宝剣岳

1975年1月1日

 私が初めて行った冬山が、宝剣岳と木曽駒だった。
 氷雪技術がない我々がこの山を選んだのは、ロープウェイで簡単に山頂近くの千畳敷まで登れること、 そして、そのロープウェイ駅にある「千畳敷山荘」(現在はホテル千畳敷)が正月も営業していることだった。さらに積雪量が北アルプスに比べて少ないということもあった。

 とにかく正月を山で迎えられるだけでいい。もし吹雪くようなことがあったら、一歩も外へ出ずにさっさとロープウェイで下ってしまえばいい。そんな思いで出かけて行った。

 その初めての冬山で、最初に感動したのが元旦の初日の出だった。ご来光は山荘の前から見ることが出来るため、宿泊者全員が玄関先へ出て初日の出を待った。宿泊者の中には家族連れも多かったが、その大半が初日の出を見ることが目的だったようだ。

 その待望のご来光、つまり1975年1月元旦の初日の出が、何と富士山の山頂から昇ったのだ! 全く予期せぬ出来事に感激! 富士山の山頂がオレンジ色に染まり、やがて眩しい光線が走り始めると、 周りから一斉にバンザーイ! という歓声が上がり、続いて、
「明けましておめでとうございます!」
 とお互いに年始の挨拶を交わし、やっと正月を山で迎えられた嬉しさを実感し、富士山の山頂から初日の出が昇るというロマンに酔った。
 まずは、その時の様子を御覧下さい。

左の写真を拡大して
富士山頂から昇る初日の出を御覧下さい。
写真が4枚入っています。
 当時は、この千畳敷山荘が初日の出を見る絶好のポイントであることを知っている人は少なく、 小屋も比較的空いていた。しかし、今では全国からカメラマンやマニアが集まり、半年も前から予約が必要だという。

(初日の出に染まる宝剣岳)

 我々は雪山の初心者なので、「天気が悪ければ絶対に行動しない」という鉄則を設けていたが、幸い好天に恵まれた。まさにピーカンだった。

(千畳敷から乗越浄土へ向かう前に、ハイ!ポーズ!)

(まるで白いベールに覆われたような斜面)

 乗越浄土までは、しっかりと付けられたトレールを辿って行った。眩しいほどまでにキラメク 新雪を踏め締めながら、蒼い空に聳え立った岩稜を目指して行く。我々は冬山の魅力を満喫しながら乗越浄土へ立った。

 しかし、そこは雪ではなく氷が一面を覆っていた。10センチもある青氷に思わず身震いし、10本歯のアイゼンでも滑ってしまうのではないかと不安だった。

(宝剣岳をバックに。サア!宝剣を登るぞ!)
(宝剣岳山頂。写真を撮った後にこの岩に攀じ登った)

 この時の下りで、晴れていても風が吹いただけでトレール(踏み跡)が簡単に消えてしまうことを知った。特に斜面をトラバースしている場合は、風によって 上部の雪がサラサラと流れ、それが窪んだ足跡を埋めてしまうのだ。これが雪山の怖さであることを初めて知った。

(ホワイトアウト直前)

 2年後に行った時は、ホワイトアウトに近い状況を体験し、その怖さを思い知らされた。

 この千畳敷カールで、正月に山岳ガイドが引率するパーティーが雪崩で遭難している。ここを登る場合は、雪崩に充分注意する必要がある。

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