不帰ノ嶮かえらずのけん 〜48年ぶりのリベンジ〜 2/3

 1日目:八方尾根〜唐松山荘
 2日目:唐松山荘〜唐松岳〜不帰ノ嶮〜天狗山荘
 3日目:天狗山荘〜鑓温泉〜猿倉

2日目:2024年8月20日(火)

唐松山荘〜唐松岳〜不帰ノ嶮〜天狗山荘

唐松山荘602〜630唐松岳〜736不帰ノ嶮・二峰南峰745〜810二峰北峰815〜948鞍部〜1031一峰1040〜1115キレット1120〜1429天狗ノ頭〜1501天狗山荘

 朝、起きて外へ出てみると、空はどんよりしているが、唐松岳はもちろん剱岳まで見えた。このまま晴れてくれるといいのだが・・・。天気予報は、相変わらず9時から雨となっている。

 私が思案していると、昨日、夕食の時に隣に座った中年のご婦人が声を掛けてきた。

「9時から雨でも、それまでに不帰を越えてしまえばいいのよ!」と言う。このご婦人は単独で、今日中に鑓温泉小屋まで行くという。

 5時半からの朝食を済ませ外へ出ると、何と唐松岳が朝日を浴びて輝いているではないか。

「こんないい天気で下山する理由はない!」と気合が入る。

 先ほどのご婦人と一緒に6時2分に小屋を出発。

 ご婦人は、「不帰ノ嶮を行くので、連れがいると心強い」と言いながら、
「私は足が遅いのでマイペースで行きます」
 と言ってスタスタと先に行ってしまった。凄いオバさんだ。

 道端にはトウヤクリンドウが多く、コマクサもあった。

 待望の不帰ノ嶮も見えて来た。ただ、どれが三峰でどれが二峰かは分からない。
 振り向けば、重量感あふれる五竜岳が朝日に輝いているではないか。

 唐松岳の山頂には3人の先客がいたが、先ほどのオバさんはいなかった。良く見ると遥か下の方を歩いているのが見えた。


(唐松岳山頂)

(山頂からの不帰、奥が天狗、尖った山が白馬鑓ケ岳)

 山頂にいた3人が、不帰を見ながら、「あんな所を行くなんて気が知れないね!」と言っているのが聞こえてきた。

 あまりのんびりもしていられない。ここでヘルメットを被って、いよいよ不帰だ。
 まずは唐松岳を下って行く。

 途中に、「この先、不帰ノ嶮」の表示があり、少々緊張するが、昨日、八方尾根から見た不帰に比べ迫力は感じない。

 ほとんどピークを巻いているので安心して歩ける。これが本当に不帰か?と思うほどだ!

 いくつかのアップダウンを繰り返し、下ってきたピークを振り返る。(たぶん三峰の一番北のピークだと思う)

 南アルプスのようなハイマツに覆われたボッテリした山を登っていくと、そこが不帰二峰の南峰だった。

 ここからは、二峰の北峰と一峰が並んで見えた。今、その北峰のテッペンに立った2人が見えた。そして、「ヤッホー」と声が聞こえてきたので、私も「ヤッホー」と声を返す。


(正面のピークが二峰の北峰、左が一峰) → 北峰をズーム
 

(テッペンにいる2人が見えますか?)

 ここで日焼け止めクリームをたっぷり塗り、水分を補給する。
 ここまではほとんどピークを巻いているので危険な所はなかったが、最難関だという北峰へ行くと思うだけで緊張する。

 歩き出して10分ほどで霧雨が降ってきたが、すぐに止んだ。そして再び太陽が戻って来た。

 だんだん北峰へ近づいて行く。左手に一峰が見え、奥に天狗の大下りが見える。

 ついに北峰へ到着。8時10分。

 ここまでは鎖場はなく、特に危険な所はなかったが、ここからの下りが正念場。不帰ノ嶮の最難関と言われている。


 ストックをしまい、さて下ろうか、と振り向いた瞬間、思わず身震いする。なんと絶壁にある大きな岩に鎖があるではないか。その鎖に掴まってトラバースするようだ。思わず「一発目からこれかよ・・・!」と唸ってしまった。


 ハングした岩に抱きついてトラバース。下は絶壁です。(私はここが一番緊張した)

 この鎖場を下ると、さらに鎖場が連続する。


 途中で若い女性2人のパーティーとすれ違い、さらにツアーらしい4人のパーティーとすれ違う。

 また嫌らしい鎖場が現れた。「ヤバー!」

 これは登りではない。下りで谷底はガスって見えない。でも鎖はある。

 ネットに、「ここは登りでも下を見ない方が良い」と書いてあった。槍や穂高、劔だって垂直の鎖場は多い。三点支持で慎重に下って行く。

 ここは、むしろ鎖のない岩場やガレ場の方が気を使う。

 鎖場も平坦になって来た。ここを過ぎると、一峰と天狗の大下りが見えてきた。

(手前が一峰、登山道が見える。鞍部が不帰キレット、奥が天狗の大下り。実際は大登りになる)

 有名な「空中ハシゴ」が現れた。

 そのハシゴを通過した時、単独の青年が登ってきた。そして、「不帰ノ嶮はどこですか?」と訊かれる。

 不帰の説明をして、「ここから二峰の北峰までが不帰の最難関だから気を付けて!」と言って分かれる。

 一峰の登りから振り返って見た二峰・北峰。さすがに凄い所を下ってきた。

 やっとキレットへ着いた。安堵、安堵! もういやらしい所はないだろう。

 休憩していると霧雨が降ってきたが、雨具を着るほどではない。もうここまで来れば雨具を来ても歩ける。

 ここからは道端に咲いている花を愛でながらガレ場を登っていく。

 天狗の大下りにも鎖場があった。垂直の鎖もあったが、鎖のないところ(左の写真)の方が嫌らしい。

 天狗の頭へやっと着いた。先ほどから降り出した霧雨が、急に大粒になってきたので雨具を着込む。

 ここから天狗山荘はもう近い。一気に下って行く。

 山荘の近くにはウルップソウの咲き殻がいっぱいあった。紫色の花をさがしたが残念ながら見つからなかった。

 天狗山荘へ15時1分着。
 受付で、「今日の宿泊者は△△さんだけです。天気が悪いのでキャンセルが多くてねえ・・・!」と言われる。外にいる人はテント泊だという。
 実は一昨日の八方の宿も私一人だった。今日も一人とは・・・。まあ、ゆっくり眠れるだろう。

 受付を済ませ、売店で生ビールを注文、最高にうまい!!

 実は昼メシ抜きでここまで来た。ここへ13時までに着く予定だったので、唐松山荘で弁当を頼まなかったのだ。生ビールでお腹いっぱいにしよう。

 売店で記念に不帰ノ嶮がプリントされたTシャツを購入した。

 夕食近くなって素泊まりの女性が来た。テント泊の予定だったが、ポールを忘れてしまったので素泊まりにしたという。
 今宵の宿泊者は2人になった。