袈裟丸山−2/2

 雨量計の周りは花の競演だった。「お〜、すげぇ〜」と歓声を上げながら写真に夢中になった。しばし時間を忘れる。

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 ここから一旦下ると、涸れ沢のなだらかな登りになった。次第に登りにくくなり、涸れ沢から出て右側の道を登って行く。しかし、左手の方がアカヤシオが多いので左側へ移った。
 ますますアカヤシオが多くなった。時々登山道から外れて写真を撮った。

 道は不思議と下りになった。なぜ下るのだろうと思いながらも進んで行くと、ひょっこりと避難小屋のところへ出た。地図を見ると小丸山を登らずトラバースして来たことに気づく。小丸山を登り損なってしまって残念だが、帰りに登って帰ろう。

 避難小屋の脇で休憩。コンビニのオニギリを1ケ食べ、水分を補給。避難小屋は4〜6人なら寝られそうだ。ナベやヤカンなども置いてあった。

 ここからは急登になった。一気に登ると視界が開け、前袈裟と後袈裟が見えた。前袈裟は平凡な山だが、後袈裟は特徴ある山容をしている。絶対にあそこまで行くぞ! と気合が入る。


前袈裟

後袈裟

 前袈裟の登りも楽ではなかった。ぬかるんだ道を木の根や岩に掴まりながら登って行った。残雪もわずかにあった。この時期まで残雪があるとはさすがに足尾の山だと思った。

(右の写真は前袈裟の登りから見えた後袈裟。右奥のピークは奥袈裟だろうか)

 最後の急登でアゴが出た。やっと登り詰めた所が山頂かと思ったが騙された。奥にわずかに高いボッテリしたのが見えた。だらだらと登ってやっと前袈裟へ着いた。10時53分。登山口から2時間58分だった。

 広い山頂の周りには、弁当を広げている人達が大勢いた。私もここで昼食にしたかったが、どうしても後袈裟まで行きたいので我慢した。水分を補給して一服。

 山頂には「袈裟丸山」と書いてあったが、正しくは前袈裟である。ここが1878mで、後袈裟は1908m。ここより30m高い。

 11時5分、前袈裟を出発。

 足を一歩踏み出すと、一面がシャクナゲだった。花は咲いていないが、こんなにシャクナゲが多いとは驚いた。花時はさぞかし見事だろうと思った。

 5分も下ると展望が開ける。正面に後袈裟、中袈裟、奥袈裟と連なって見え、その奥に見えるのは庚申(こうしん)山、鋸尾根と皇海(すかい)山だろう。さらに遠くには日光白根山まで見えた。


前袈裟からの後袈裟

たぶん右から庚申山、鋸尾根、皇海山だと思う。

 鞍部のところが少し崩れていた。クサリを支えている鉄棒がグラグラしていたり抜けているものもあったが、クサリに掴まらなくても下ることが出来た。しかし山に慣れていないハイカーは来ない方が無難だろう。

 ここからは一気の登りになった。最初はガレ場だが、すぐに笹が道を覆い、ヤブ漕ぎのような急登になった。疲れている身体には、地獄の急登である。そこを笹を掻き分けながら一歩一歩登って行く。笹が膝上程度なのが救いだ。


 やっと山頂へ着いた。山頂には20人ぐらいが休んでいた。

(写真左は後袈裟山頂から返り見た前袈裟)

 ここでオニギリ1ケを食べて腹ごしらえ。隣にいた単独行から、「シロヤシオが見たいが、どこかいいところがあったら教えて下さい」と聞かれたので、丹沢の檜洞丸をお勧めしておいた。

 私はここが袈裟丸連峰の最高峰かと思っていたが、実は奥袈裟が最高峰だと聞かされガッカリした。でも「奥袈裟まで行く人はほとんどいない」と知って諦めがついた。

 それに、この袈裟丸連峰には「袈裟丸」という山は存在せず、一般的には袈裟丸といえば前袈裟のことを言うそうだ。前袈裟には一等三角点があるからだという。         


 前袈裟12時50分発。
 飛ばして下って行くと、また団体さんに追い着いてしまった。このツアーは道をゆずってくれない。しかもペースが遅く、イライラしながら下って行った。途中でわずかに道幅が広くなったところで一気に抜いた。ヤレヤレ、下りとはいえ2、30人も抜くとシンドイ。

(30人ぐらいの団体さん。正面奥が小丸山)

 避難小屋まで下って一瞬立ち止まって思案した。登りに小丸山を巻いてしまったので、帰りに登って帰ろうと思っていたからだ。しかし、今から登る気がしなくなった。結局、巻き道を行くことにした。

 賽ノ河原を過ぎてから、ミツバツツジの写真を撮りながら下った。
 登山口へ14時50分着。


満開のアカヤシオ

 今回は賽ノ河原から上のアカヤシオを見て来たが、もっと早い時期にツツジ平から賽ノ河原あたりのアカヤシオを見てみたい。またシャクナゲが咲く頃にも登ってみたいと思った。