農鳥岳  2日目


2007年8月6日(月)

 白根御池小屋450−517二股530−840八本歯のコル850−1045北岳山荘(昼食)1150− 1243中白峰1256−1415間ノ岳1426−1520農鳥小屋着(泊)

 朝4時50分発。
 今日も快晴である。暑くなる前に稜線へ出たい。目指すは八本歯のコルである。
 小屋から20〜30mほど行くと池があり、周りがキャンプサイトになっていた。そこを通り過ぎると二股と草すべりとの分岐があった(写真左)。イブキトラノオがいっぱい咲いていた。 ほとんどの人が草すべりを行くが、ヘソ曲がりの私は左の二股へ向かって行く。

 グンナイフウロや白いナデシコなどがいっぱい咲いている、なだらかな道を歩いて行く。
 30分弱で二股へ着いた。ここには仮設トイレがあり、電動モーターの音が聞こえて来た。

 4人の先着パーティーが北岳の写真を撮っていた。私も朝日を浴びたバットレス(胸部岩壁)の写真を撮った。

  

雪渓の所が二股(手前は仮設トイレ)

朝日に輝く北岳バットレス(右)、正面が八本歯のコル

 ここで日焼け止めクリームをたっぷり塗って、5時30分発。
 しばらくは左岸(右側)を行くが、やがて雪渓を登るようになった。しかしすぐに左岸の夏道へ出るようになる。その夏道へ出た時、左手後方から朝日を浴びた。

 30分も歩くと暑くなり、薄手の長袖シャツを脱いだ。
 今日は人が少ないので後ろからアオられることもない。今朝一番のバスで来る人は、やっと広河原へ着いた頃だろう。いくら健脚でも早々には追いつくまい。

 ほとんど左岸を登って行く。グンナイフウロがいっぱい咲いていたが、私の好きなハク サンフウロが見当たらない。やっと、そのハクサンフウロが咲いていた。

  

グンナイフウロ

ハクサンフウロ

シナノキンバイ

 それにしてもどうして雪渓を登らないのだろうと思った。左手には雪渓がぎっしり詰まっ ているのに、誰一人として歩いていない。それにトレースもなさそうだった。昔、ここを2回下ったことがあったが、2回とも雪渓を下った記憶がある。今年は雪が少ないのだろうか。

 ハクサンイチゲの群落を過ぎると、右手に小さな流れがあった。あまり冷たくないが、ゴク ゴク飲んだ。これが失敗だった。

 そこから10mほど進んで右へトラバースすると、大きな沢があり音を立てて流れていた。そこで若者が5人ほど休んでいた。沢に手を突っ込んでみるとかなり冷たい。ここで水を飲めば良かったと思いながらも、「飲まなきゃ損」とばかりに荷物ほ放り出して水を飲んだ。 ついでに一服。

 この辺まで来ると下りの人が多くなって来た。昨日、北岳山荘へ泊まった人達だろう。

「八本歯のコル40分」の標識が出ると、丸太の階段になった。1つ目を登ると目の前にバットレスが立ちはだかった。思わず息を呑む。

 バットレスの右奥に甲斐駒ケ岳が見えた。感激だ! 振り返って見れば鳳凰三山がどっしりと横たわっていた。

  

目の前に迫るバットレス

右奥に甲斐駒ヶ岳が見えた。

 8時40分、八本歯のコル着。正面に中白峰がガスの中から時々顔を出し、右手に北岳山荘が見えた。 まだまだ遠い。

  

中白峰方面。

連続する丸太の梯子。

 10分ほど休んで出発。また丸太の階段というか梯子である。その梯子を登っていると、ヘリが近づ いて来てバットレスの真上を旋回し始める。事故でもあったのだろうか。
(北岳から北岳山荘へ向かって下山中のN大生が、浮石で滑落したらしい)

 山頂との分岐で一服。
 ここから北岳の山頂へ向かう人が多かった。ここから山頂まで40、50分だろう。ちょっともったいない、 という思いもあったが、それを振り払うようにトラバース道へ向かって行った。

 トラバース道からは花の写真を撮りながら行った。実は密かにキタダケソウが咲いていないかと期待していたのである。普通、キタダケソウは6月下旬から7月上旬に咲くが、ある人のHPに8月1週にキタダケソウを見た、と書いてあったからだ。

 5、6m歩いては立ち止まり、周りをキョロキョロしたが、結局は見つからなかった。

(写真左:トラバース道のお花畑)

 10時45分、北岳山荘着。小屋の後ろへ回り、日陰で昼食にすることにした。湯を沸かし焼ソバとスープ、コーヒーでランチタイム。

 今日は途中でヘバったり、ビールの誘惑に負けてしまった場合は、この北岳山荘へ泊まってもいいと思っていたが、ビールの誘惑に耐え、このまま農鳥小屋まで行くことにした。

 まずは中白峰をめざして行く。出発した時はガンガン照りだったが、5分もするとお天道様が雲に隠れ、少し歩きやすくなった。

 後ろから歩いて来るご夫婦の鈴がウルサイ。こんな稜線に熊はいないんだから、ティシュペーパーをちぎって鈴の中へ詰め込めば静かになるのになぁ・・・。人に迷惑を掛けていることに気付かないのだろうか。これだけ暑いと、チリンチリンという音が一層暑っ苦しく感じる。

 中白峰の頂上で、昨夜、隣に寝た方と会った。ここから初めて間ノ岳が見えた。だいぶガスも上がって来た。あまりノンビリしてはいられない。夕立があると困るからだ。

 中白峰からは、また花が多くなって来た。幾つかのピークを登ったり巻いたり。間ノ岳が大分近づいて来た。
 山頂まであと5分か10分という時、雷の音が聞こえて来た。
 14時15分、間ノ岳着。3人の先客がいたが、その中に昨夜、隣に寝た方がいた。ここでも会った。

 雷が怖いのですぐに出発する。早く小屋へ着いてビールが飲みたい。
 5人パーティーを追い越して下って行く。あと1時間でビールだ!ビールが待っている。

 下りの途中で、やっとガスが切れて農鳥岳が姿を現わした。

【拡大してご覧下さい】
  

中白峰の登りから返り見た北岳

間ノ岳

間ノ岳の下りから見た農鳥岳

 15時20分ごろ農鳥小屋着。
 この小屋の評判はインターネットで知っていたが、まさにその通りだった。狭い部屋に生ぬるいビール。

 荷物を置いてすぐに奈良田の民宿を予約してもらった。一人なので割り増しでも相部屋でもいいという条件でお願いしたが、すぐに「民宿えびな屋」が予約できたとのことで安堵した。これで明日は奈良田温泉へ浸かってゆっくり眠れる。

 外で山を見ながらビールを飲んだ。こうしてボーとしている無の時間がいい。富士山がガスの中から ボンヤリと見えた。

 この小屋はすべてが到着順で、夕食も朝食も到着順だった。しかも狭い食堂なので3回に分けて食事をするため、到着が遅かった私は一番最後の組だった。
 食事の内容は、私が知っている限り、全国でワースト3に入る。1位は八海山の小屋、2位が鳥海山の山頂小屋、3位がこの農鳥小屋だと思った。

 そんな小屋だから部屋に電気もないし、トイレも旧式でペーパーも置いていない。黙っていても客(登山者)が来るから、企業努力など縁が無いのだろう。

 この夜も満天の星だった。昨夜(白根御池)より、はるかに星が多かった。明日も暑くなりそうだ。