奥大日岳−3/4

2010年8月5日(木)

大日小屋542〜558大日岳603〜615大日小屋630〜827奥大日岳835〜845分岐〜最高点〜856分岐〜1024新室堂乗越1040〜1058キャンプ場〜1150室堂

 今朝は3時半に目覚まし時計の音で起こされた。昨日、一緒に飲んだ10人のパーティーが4時出発と言っていたので、彼らの目覚まし時計だろう。すぐに止めるでもなく、部屋の全員を起こしてしまうというのはいかがなものか。私は、小屋泊まりで早立ちの場合は目覚まし時計は掛けないようにしている。
 そして、パッキングは夜のうちに済ませて廊下などに置き、枕元にはヘッドランプと水だけを置いて静かに部屋を出るようにしている。それが小屋泊まりのマナーだと思うのだが、いかがだろうか。

 4時になるのを待って外へ出た。玄関の真っ正面に剣岳がシルエットになって浮かび上がっていた。右手に見える2つのピークは奥大日岳だろう。左手奥には毛勝三山が見えた。


(シルエットに浮かび上がる剣岳)

(剣岳から朝日が昇る。右手前の双耳峰に見えるのが奥大日岳)

 朝食後、空身で大日岳を登って来ることにした。登り20分、下り10分だという。


(大日小屋から見た大日岳)

(大日岳の登りから小屋を振り返る。背後が中大日岳)

 山頂には背丈ほどもある大日如来像があるかと思ったが、何と奥大日岳にあったのと同じ10センチほどの像が岩の隙間に置かれているだけだった。ここは信仰登山の対象だったと聞いていたが、信仰登山の面影はない。

 それに山頂の標識の所にテントを張っている不届き者がいた。大日様の写真を撮るのもテントが邪魔だった。この辺はキャンプ禁止だと思うが、寄りに寄って山頂に張らなくてもいいだろう。それも若者なら目をつぶってやるが、中高年のオジさんだった。まったく困ったものだ。

 ここから見る剣岳や奥大日岳、さらには毛勝三山がすばらしかったが、逆光で写真は撮れなかった。

 大日岳の山頂に立つことができ、もう心残りはない。早く小屋へ戻って室堂へ引き返そう。


(大日岳の下りから中大日岳、奥大日岳方面)

 大日小屋へ戻って6時30分出発。
 普通なら「小屋から下山」と書きたいところだが、ここは登り返しになるので下山とは言えない。ここからもう一度気合を入れて中大日岳を登って行った。
 途中から、水晶岳、手前に黒部五郎岳が見えた。

 一つ目のピークを登り切ると、朝のさわやかな風が吹き渡って来た。そして昨日、ガスの中を歩いて来た木道を下って行く。正面に奥大日、やや左に剣岳が聳え立っているが、いずれも逆光で黒くしか見えない。

 最初の計画では室堂から縦走し、今日は称名滝へ下る予定だったが、室堂からの往復にして正解だった。今日のこの展望を見ずに下山では悔しくてたまらなかっただろう。

 七福園を過ぎると奥大日岳がクッキリと見えるようになって来た。

 奥大日岳への登りで、単独の女性に追い越された。軽装だがメチャクチャ足が速い人だった。富士登山マラソンか丹沢の12時間耐久レースにでも出ている人ではないかと思った。

 振り向けば大日岳と小屋が見えた。


(奥大日岳の登りから見た大日小屋方面)

 正面のピークを左手からトラバースしながら登って行く。梯子を登り、鎖を登ってピークに立ったが、さらにその奥にピークがあった。しかし、このピークは登らず右の二重稜線のようになった窪地を歩いて行く。

 ガレ場の急登を登り切ってなだらかな道を行くと、正面に2つの丸いピークが見え、左の方に大勢の人が見えた。奥大日の山頂だ! 昨日登った山頂だが、昨日とは全く違ったイメージだ。山は見る角度によって大きく変化する。奥大日岳へ8時27分着。

 昨日は見えなかった剣岳が目の前にドガーンと見えた。まさに岩の殿堂だ。右手の一服剣から前剣、左手の早月尾根の岩峰の一つ一つが手に取るように見える。ここから剣岳を見たいために、わざわざ登って来る人も多いと聞く。そういう私もここからの剣を楽しみにしていた一人であるが、はるばるやって来た甲斐があった。


(奥大日岳山頂からの剣岳)

 さて、次は奥大日の最高点である。山頂から新室堂乗越の方へ10分ほど下った所に標識がある。標識には通行止めと書いてあるが、踏み跡はしっかりしている。その分岐へ荷物を置いて早速登って行った。

 なだらかな斜面を登ってピークへ立ったが、標識も三角点も無かった。そして20mほど先にケルンが積んであるのが見えた。どうもそれが最高点のようだ。ケルンが積まれたピークにも標識さえ無かったが、ここがまぎれもなく大日連峰のテッペンだと思うと嬉しかった。


(最高点からの山頂〔右側〕)

(最高点からの剣岳)

 もう心残りはない。急いで帰ろう。分岐へ戻り室堂を目指して下って行った。

 地獄谷が近付いて来ると、登山道はお花畑になって来た。「チングルマ&イワカガミ・ロード」とでも名付けたいほどだ。実はこの大日連峰が「花の百名山」だったとは知らなかった。昨日、大日小屋で初めて知ったが、「花の百名山」の名に恥じない、花が多い山だった。

 私は「この山はマイナーな山だ」と思っていたが、奥大日岳から下って来る途中で120〜130人とすれ違った。この山は「花の百名山」であり「剣岳の展望台」ということもあって、かなり人気があるようだ。