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蓮華温泉ロッジ500〜700天狗の庭〜845白馬大池〜1145小蓮華岳1240〜1316三国境〜1428白馬岳〜白馬山荘(泊) |
〔白馬大池・小蓮華岳・白馬岳をめざす〕
夜中に風の音で何度も目が覚めた。その都度、外を眺めて見たが雨は降っていなかった。
4時になるのを待って静かに部屋を出た。外は雨も風もなくホッとした。軒下で湯を沸かし、朝食を摂った。
台風は進路がズレたかも知れないと思いながらも、紅く染まった朝焼けが気になった。
ロッジの前から、雪倉岳と朝日岳の稜線がクッキリと見えた(写真右)。
5時ジャストにロッジを出発。先週、朝日岳付近で熊が出たというので、熊除け鈴を付けて行く。
6時少し前に雲の間から薄日が差し込んで来た。何とかこのまま降らずに持ってくれるといいんだが・・・。たとえ雨が降っても槍が降っても、雪倉と朝日は絶対に行くつもりである。
森林帯から抜け出して少しガレた所へ出ると、シモツケソウやアザミなどが沢山咲いていた。ザックを下ろして写真を撮っていると、昨夜同部屋だった単独の人が追いついて来た。この方は昨日、針の木岳から下って来て、これから白馬、五竜、鹿島槍まで縦走するという。かなりの健脚である。
その健脚な御仁と挨拶を交わし、先に行ってもらったが、そこから20〜30メートルほどで天狗の庭へ着いた。7時ジャスト。
そこからは雪倉岳と朝日岳がバッチリと見えた。写真を撮りながら、「これが見納めにならなければいいが・・・」と雨が降って来ないことを祈った。
白馬大池まであと1時間ぐらいという所でパーとガスが切れ、小蓮華岳の全容が見えた。ボッテリした雪倉に比べ、いかにもアルペン的で山肌が荒々しかった。白馬岳はこの小蓮華岳の陰にあるためまだ見えない。
私が写真を撮っていると、下って来たオバさんから、 「これ、何んていう花ですか」と聞かれる。 「チングルマです」と答えると、 「違うでしょ! チングルマはもうワタスゲになっているから!」 と、きつい言葉が返ってきた。私は言葉が出なかった。それほど自信があるなら初めから聞くな、つ〜の! |
たしかに花が終わっているものもあったが、まだ沢山咲いていた。オバさん! その足元に咲いているの白い花を、チングルマって言うんですよ。
この後、山仲間のSさんに会った。Sさんは大雪渓から登って蓮華温泉へ下るという。ここで一服しながら、しばし憩う。
Sさんと別れて雷鳥坂を登って行くと、タテヤマリンドウやツガザクラ、コイワカガミなど背丈の低い花がいっぱい咲いていた。コマクサ(写真右)も5、6株あった。
(今回撮った花の写真はすべて最後のページで紹介しています) 振り返ると、頚城(くびき)山脈が遠くに見えた。右手から妙高山、火打山、焼山と並んで見えた。山頂にコブがあるような独特な山容をしている妙高山は、どうしてももう一度登りたいと思った。 |
時々、ガスがサーとかかるが、またすぐに晴れて来る。このまま雨さえ降らなければ、ガンガン照りよりは助かるのだが・・・。そんな思いでいたが、時間とともにガスは濃くなるばかりだった。 |
二つのピークを持った山が鹿島槍ケ岳。(拡大可) |
そして、ふと上部を見ると、見晴らしの良さそうなピークがあり、そこで写真を撮っている人がいた。私もあそこまで行こう! と急いで行くと、そこから白馬岳の山頂部がほんのわずか見えた。杓子(しゃくし)岳と白馬鑓(やり)は重なって一つの山にしか見えない。
その白馬と杓子の間に槍が見えた。ん、槍? 槍がこんな近くに見えるはずがない。では何だろう。針の木岳か、それとも剣岳だろうか。
登山道から大雪渓を見下ろしていると、ガスが這い上がって来るのが分かる。ガスが濃くなる前に、早く山頂まで行ってしまおう。
それから2、3分も経たないうちに、またガスに覆われてしまった。
2、3のピークを越えてやっと最後のピークを登り切ると、またその奥に同じようなピークがあった。ガックリと力が抜けた。
さらに小さなピークを越え、もう小蓮華岳の山頂へ着くはずだと思っていた時、下って来た青年がいたので聞いてみると、「下りで10分かかった」という。もうイヤ!とそこへ腰を下ろしてしまった。腹もへった。シャリバテだ。
一息入れてから山頂へ向かった。ナデシコやヨツバシオガマが咲いていた。やっとの思いで小蓮華岳(2,769m)の山頂へ立った。11時45分着。4人の先客が雨具を着込んでいた。
視界は残念ながら利かない。むしろガスは一層濃くなり湿めっぽくなって来た。
(タカネナデシコ) |
(ヨツバシオガマ) |
(小蓮華の山頂) |
私は山頂から白馬側へ10メートルほど下った所へ座り込んで昼食にした。湯を沸かしてラーメンを食べ、食後はコーヒーブレイク。コーヒーを飲んでいる時、ついにパラパラと落ちてきた。一瞬あせったが、すぐに止んだ。この雨は大雪渓から立ち上る上昇気流が降らせる局地的なものだと思い、雨具も着なかった。
〔ドジなオジさん、目から火花!〕
小蓮華山頂12時40分発。
ここからは下りばかりだと思っていたが、小さな登り返しがあった。13時16分、三国境(みくにさかい)の標識が立った所へ着いた。三国境とは長野、新潟、富山の県境である。明日はここまで下って来るので、ガスられた時のために標識をしっかりと確認した。そして、そこへ座ろうとした時、横に出ている
標識に頭を思い切りぶつけてしまった。目から火花が散った。本当にドジなオジさんである。
〔白馬の山頂へ28年ぶりに立つ〕
ここからは白馬山頂まで1時間、小屋までプラス10分のコースである。せめて小屋へ着くまでは雨が降らないでほしいと祈るばかりである。
ここからは、いよいよ白馬岳の登りになる。岩と石とガレがミックスした急登である。瓦礫に花が咲き終わったウルップソウがいっぱいあった。夕張岳で花が咲き終わったユウバリソウを見たのを思い出す。
視界は20メートル位しかないが、イワギキョウやトウヤクリンドウ、イブキジャコウソウなどの花がいっぱい咲いていた。
岩尾根を登ると右手の空がパーと明るくなり、視界が開ける。やっぱり富山県側は晴れていた。やっと白馬岳山頂の写真が撮れた。
(左の写真は、左が白馬岳、右が旭岳) |
14時28分、白馬山頂(2,932m)へ着いた。27年か28年振り、3度目の白馬山頂である。2回とも雨だったが、 今日はかろうじて薄日が差している。やっと雨が降っていない山頂へ立つことが出来た。 大雪渓はガスっていたが、富山県側も新潟県側もまずまずの眺望だった。 |
白馬山荘へ到着すると、そのままレストランへ行って生ビールを飲んだ。日本にたった一軒しかない3,000 メートルの雲表に建つ展望レストランである。たとえ銀座のド真ん中にあってもおかしくないほど立派なレストランだ。
ここでビールを飲み、時間を潰してからチェックインした。
夕方になって大雪渓側も晴れて来た。杓子岳と白馬鑓がクッキリと見え、やがて夕日に照らされて茜色に染まった。
(夕日に輝く杓子岳と白馬鑓) |
(夕日) |
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