白馬岳・雪倉岳・朝日岳 (3日目)

2004年8月6日(金)

白馬山荘445〜502白馬岳510〜620鉱山道分岐〜725避難小屋738〜824雪倉岳845〜1133水平道1140〜1338朝日小屋(泊)

〔再び白馬山頂へ〕
 3時に目が覚めた。非常口を開けて空をみると雨が降っていた。しかし、良く見るとそれは雨ではなく、濃い霧で庇から雫が落ちていたのだ。いずれにしても視界は数十メートル。これ ではご来光どころではない。

 自炊場で朝食を作る。しかし、食欲がなく半分も食べられなかった。残りをザックに入れて4時45分に小屋を出た。
 白馬の山頂へ5時2分に到着。しかし今日は何も見えない。ガスっている山頂に長居は無用。早々に出発する。5時10分発。

〔オジさん転ぶ〕
 ガスの中に冷たいものがわずかに混じって来た。厚手のシャツが湿っぽくなってきた。雨具を着ようか迷ったが、そのまま行くことにした。

 岩場の下りで滑って転んでしまった。左膝のお皿の所から出血し、ズボンがにじんでいた。応急処置をして、ここで雨具を着込む。ガスは一層濃くなって来た。
 三国境へ5時45分着。5、6人の先客が一斉に雨具を着込んでいるところだった。ここは休憩せずに素通りする。

〔雪倉・朝日をめざす〕
 しばらくすると新潟県側のガスが切れて来た。
 三国境からこの雪倉方面へ来る人は少ない。白馬へ登った人のほとんどは、白馬鑓温泉か白馬大池 方面へ下ってしまい、雪倉・朝日へ向かう人は槍や穂高などアルプスの主な山を登った人か、 よほどの変わり者ぐらいだろう。

 登山道の脇には、いたるところにタカネマツムシソウが咲いていた。

 6時20分、鉱山道を右手に見送った。
 鉢ケ岳は右側をトラバースして行く。

 鉢ケ岳のトラバース道へ入るとが然、お花が多くなった。マツムシソウや赤紫色のカライトソウ、 シナノキンバイ(写真)、薄紫色のハクサンシャジンなど、山全体が花で埋め尽くされているようだった。
 しばらく行くと、クルマユリの群落があった(写真)。
 花の写真を撮っていると、なかなか前へ進まない。

 避難小屋へ7時25分着。
 小屋の石垣によりかかって、昨夜同部屋だった新宿から来たというオジさんが朝食を摂っていた。

「小屋の中へ入らないんですか」と声をかけ、一人で小屋の中へ入って行く。小屋へ入ると、すぐ隣にトイレがあるため、かなりトイレの匂いがした。奥の方に大きなザックが一つ置いてあった。
 トイレの匂いを少々我慢しながら一服し、7時38分に出発。

〔日本二百名山の雪倉岳山頂に立つ〕
 ここからは雪倉岳の登りとなる。いよいよ雪倉岳だと思うと疲れなんか感じなかった。カメラをザックの中に仕舞い込んで登って行く。インターネットで、『ここは山頂かと思うとその奥にまたピークがあって 騙された』というのを見ていたので覚悟が出来ていた。

 ついに雪倉岳(2,611m)の山頂へ立った。8時24分。白馬から3時間と14分。
 山頂には「雪倉岳」と刻んだ石が斜めに設置してあった(写真右)。ここは標識が立っていないので記念写真を撮るのに苦労する。山頂にいた人達は、斜めになった雪倉岳の文字が見えるように身体をひねりながら写真を撮っていた。

 山頂で朝食の残りを食べた。捨てずに持ってきて良かったと思った。ミカンがうまかった。一服していると、時々上空に青空が見えるようになって来た。みんな雨具を脱いでいたが、私は着込んだままだった。

 山頂8時45分発。
 トリカブトが群落をなして咲いていた。久しぶりにトリカブトを見て嬉しかった。しかし、もうカメラを出すのが面倒なので写真は撮らなかった。

 約1時間ほど歩き、涸れた沢の所で休憩していると、後から来たご夫婦が、
「水はないんですねぇ・・・」と、がっかりしたように隣へ座り込んで来た。すると、また後から来たご夫婦も同じことを言って座り込んだ。
 飲み水が無くて困っているのかと思い、「水なら分けて上げますよ」と言うと、「水は持ってますが、冷たい沢水が飲みたかったんです」、と疲れ切った声で言う。

 そして、「水場まであとどの位かかりますかねぇ・・・?」と聞かれる。
「多分、2、30分位だと思いますよ。ツバメ岩を越えると溢れるほどあるそうですから・・」と答える。
 実は、蓮華温泉へ泊まった時、朝日岳から下って来た人達から水場の情報を得ていたのである。

 ここから数分も歩くと小さな沢があった。しかし水は淀んでいて、とても飲めるモノではなかった。先ほどのご夫婦がこの水を飲まなければいいのだが・・。
 ツバメ岩を過ぎると、地図上に「常水」と書かれた水場があった。豊富な水で最高にうまかった。

 ここから木道になった。木道が2列になった所で昼食にした。湯を沸かすのが面倒なので、予備食に持って来たパンと缶コーヒーで済ませる。パンは手軽でいい。

 水平道分岐へ11時33分着。写真を撮って一息入れ、11時40分発。
 木道を20メートルほど行くと、スミレの群落があった。ザックを下ろしてカメラを出す。カメラを持って歩きたいが、雨がわずかに落ちているのでカメラを濡らしたくない。またザック にしまう。

〔ハクサンコザクラの群落に、思わずヤッター!〕
 そこからさらに20メートルほど行った時、待望のハクサンコザクラがあった。思わず「あった、あったぞー、ハクサンコザクラがあったぞー!」と声を張り上げてしまった。やっとハクサンコザクラに会えて嬉しい。今回の花紀行の最大の目的がこのハクサンコザクラを見ることだったのだから。

 最初は数えるほどしか咲いていなかったが、登って行くにしたがって群落をなして来た。つい「ヤッター」と歓声を上げてしまった。もう咲いていないだろうと諦めていたが、花は雪解け順に咲いているようだ。

 私と前後して歩いていた単独のオバさんがいた。一緒に休憩しながら、先週、この水平道に熊が出没 したらしい、という話をすると、彼女は7、8年前に来た時、この木道で熊のウンコを見たと言った。

 途中で一服していると、追い越して行った団体さんが20メートルほど進んだ時、「水だー」と 大声を上げた。私も急いで後を追う。何のことはない、すぐ近くに沢があったのだ。どうせならここで休めばよかったと思った。水をカブガブ飲んで、もう一度休み直す。

 この水場から小屋までは10分か20分くらいだった。広々とした朝日平の中に建った朝日小屋へ13時38分に到着。

 やっと憧れの、遥かなる小屋へ着いた。
 早速、缶ビールを買って外のテーブルで飲んだ。五大陸の最高峰の幾つかを登ったというご夫婦と、兵庫県から 来たというOさん、昨日白馬山荘で同部屋だった新宿から来たというオジさんの5人で、山談義となった。

 山はこういう時が一番楽しい。一日の行動を終え、心地よい疲労感と満足感に浸りながら酒に酔う。
 山の好きな人達と尽きない会話。最高のひとときだった。

〔夕日に感激!〕
 ここから見る日本海へ沈む夕日が最高に美しいと聞いていたが、ガスがかかってしまい期待できそうもなかった。 天下のNHKも「小さな旅」の収録に来ていたが、諦めて小屋へ入って行った。

 しかし、この後、何とガスが切れたのである。ちょうど夕食の時間(4時45分ごろ)で、食堂の窓からすばらしい夕日を見ることが出来た。