白馬岳・雪倉岳・朝日岳 (4日目)

2004年8月7日(土)

朝日小屋530〜630朝日岳650〜841五輪の森〜928花園三角点〜白高地沢1130〜1330兵馬の平〜1420蓮華温泉−平岩−豊科IC

〔ずうずうしいオバさん〕
 夜中の2時ごろトイレに起きた時、久しぶりに満天の星を見た。
 3時半ごろ目が覚めてしまった。外で一服しながら時間を潰す。

 朝食は5時からであるが、4時半から食堂の前へ並んだ。私は女性の次、つまり2番目に並んでいたが、 食堂が開く5分前ごろになって、オバさん3人が私の前へ割り込んで来た。私がムーとした顔をすると、最初に並ん でいたオバさんが、「仲間なので入れて下さい」という。まあ、大目に見てやるか・・・。

 しかし、この後がいけない。食堂が開き、奥のイスから詰めて座ろうとした時、私の前に割り込んだオバさんが、
「ここは11人のパーティーの席ですから隣のテーブルへ行って下さい」と言う。しかし、隣のテーブルも生存競争が激しく、すでに空席はなさそうだったので、
「私は2番目に並んでいたんですよ!」と言って、そのまま席に座ってしまった。さすがにオバさんもそれ以上は何も言わなかったが、どうも後味が悪かった。

 この11人のパーティーのリーダーはどう考えているのだろうか。たった1人のオバさんを並ばせて、後から10人が割り込む。そんなことが許されるのだろうか。山屋として、また社会人として恥ずる行為で情けない。この時のリーダーかメンバーがこれを見ていたら、ぜひコメントを頂きたい。

 少し嫌な思いをしてしまったが、外はクッキリと晴れ上がっていた。
 小屋の女主人、ゆかりさんに小屋をバックにシャッターを押してもらい、記念写真を撮った(写真右)。

〔日本三百名山の朝日岳に立つ〕
 5時30分、朝日小屋を出発。
 ここからもハクサンイチゲやチングルマなどお花が一杯咲いていた。

(写真左は、朝日岳への登りから返り見た朝日平と小朝日岳)

 山頂近くなって、久しぶりに朝日を浴びた。
 6時30分、朝日岳(2,418m)の山頂へ到着。山頂には30人位いた。朝日を浴び、実に爽やかだった。

 白馬岳と旭岳が雲海の上に並び立っていた。白馬の山頂には少し雲がかかっていたが、尖峰の旭岳が目を惹いた。遠くに剣岳が雲海に浮かんでいた。
 雪倉岳はここより200メートルほど高いはずだが、余りにも近すぎて目立たなかった。

【朝日岳山頂からの展望】

(左が白馬岳、尖峰が旭岳)

(左から雪倉岳、白馬岳、旭岳)

〔いよいよ五輪尾根を下る〕
 6時50分、朝日岳山頂を出発。
 いよいよ問題の下りである。魔の下りになるか、それともここもお花が多いと聞くので楽しい下りになるか。
 下りも評判通り花の道だった。ハクサンフウロやハクサンイチゲ、ミヤママツムシソウなどがいっぱい咲いていた。左手に富山湾が見えた。

 日本海へ続く栂海新道との分岐へ7時14分着。ここは素通りする。すぐに水場があった。流れは細いが冷たくてうまい。

 ハクサンフウロがが然多くなり、リンドウやハクサンコザクラも群落をなしていた。

(写真左はお花畑。右はハクサンフウロ)

 すぐに水が豊富な沢があった。ここが、昨日、新宿から来たオジさんが家へ持って帰ると言っていた”うまい水”らしい。

 花園三角点まであと10分ぐらいで着くだろうと思っていたが、なかなか着かない。森林地帯を登り返した所に「五輪の森」という標識があった。(8時41分着)

 そこから少し行くと花園三角点らしき所があった。標識には「○○ガレ」と書いてあったが前の文字は読めない。
 ここがきっと花園三角点だろうと思って一服していると、昨日、一緒にビールを飲んだOさん達が下って来た。
「ここが花園三角点ですか?」と聞かれ、
「多分、そうだと思いますよ」と答える。
「じゃあ花園三角点9時着とメモっておこう!」 と言ってメモをとっていたが、実は、ここは花園三角点ではなかった。

 9時20分、木道の三叉路があった。ウッドデッキの休憩所があったので、ここが間違いなく花園三角点だろうと思った(写真左)。

 さらに木道を進んで行くと、ヤブの中に花園三角点と書かれた標識と石の三角点があった。9時28分着。やっと本当の花園三角点だった。

 ここはコースタイムがおかしいのではないかと思った。朝日岳の山頂から2時間となっているが、2時間40分もかかっている。私一人が遅いとは思えないのだが・・・。    

 途中で単独のオバさんが休んでいた。私も腰を下ろす。昨日、水平道で一緒に歩いたオバさんである。今朝5時に小屋を出て来たという。

 遠くに蓮華温泉の赤い屋根が見えた。ここからさらに下って登り返すことがハッキリと分かる。あまりにもしんどそうなので見ないことにした。

 オバさんより一足先に下り始める。もっとスピードを出したいが、登り返しがあるので少しセーブしながら下って行った。

 白高地沢の河原へ着いた(多分10時半頃だったと思う)。ここで持って来た水でラーメンを作って食べ、食後はコーヒーブレイク。(川の水は飲めそうにない)
 私が食事をしている間にも30〜40人が降りて来て、ここで昼食を摂っていた。

 白高地沢を11時30分発。
 ここは洪水がある度に橋が流されるらしいが、上流に鉄パイプで造った橋が掛かっていた。その橋を渡ったところで道がなくなってしまった。赤いペンキが付いているが、とても登れるものではない。しばらく行ったり来たり していると、遠くにいた人が、「下で〜す。旗がある所で〜す」と教えてくれた。200メートルほど下流に黄色い旗が立っていた。

 もし、ここに誰もいなかったら、かなり苦戦していたに違いないと思った。せめて標識か、旗をあと1、2本追加してほしいと思った。

 雷が鳴り出した。ここは森林地帯なので落雷の心配はないと思うが、やはり不気味だった。
 空があっという間に黒い雲に覆われ、日没後のような暗さになった。稲妻が走り、炸裂音が連発する。

 立派な瀬戸川橋があった。橋の手前でついに雨が降って来た。しかし私は、どうせ蓮華温泉で温泉に浸かって着替えるので濡れてもいいと思い、雨具を着なかった。
 橋を渡って5、6分も行くと、小さな沢があった。冷たい水がうまかった。貧乏人は水があると飲まないと損するような気になっていけない。

 最後の急登にあえいでいる時、ついにザーと降って来た。ずぶ濡れになって登って行く。最初は気持ち良く、ボウシも脱いだ。頭からシャワーを浴びているようで爽やかだった。
 急登を登り切ると、尾瀬ケ原のような湿原へ出た。そこが兵馬の平だった。13時30分着。
 雨も小降りになったが、またすぐに降って来た。

 木道を歩いて行くと、前のパーティーが立ち止まっていた。ちょうどカーブになっていて先が見えない。こんな雨の中でどうして立ち止まっているのだろう。熊でもいて身動きとれないのだろうか。
「どうしました?」と、2、3回声を掛けたが誰からも返事がない。

 今度は少し大きな声で、
「道を空けて下さ〜い!」と怒鳴ったが、それでも立ち止まったまま誰も何も言わない。
 仕方なく、木道から下りて脇を歩いて行き、すり抜けようとした時、やっとリーダーが私に気づき、「ハーイ、道を空けて−!」とパーティーに声を掛けた。だが、木道の一本道では簡単には空けられまい。

 リーダーたる者は、後から来る人のことを考え、立ち止まる場所も考慮すべきだろう。
 それに、リーダーがパーティーのトップを歩くなら、パーティーの最後尾はサブリーダーではないのか。私が何度声を掛けても最後尾にいた女性は知らんぷりだった。

 今朝の食堂での出来事といい、今回のことといい、団体さんを連れて歩くリーダーは、リーダー教育でも受けた方がいい。

〔雷雨の中、ずぶ濡れで歩く〕
 この後、バケツをひっくりかえしたような雷雨になり、さらに風呂桶をひっくりかえしたような豪雨になった。
 その豪雨の中をずぶ濡れになって歩いていた。まるで滝に打たれて修行している僧のようで、少しは雑念が払われたかも知れない。

 蓮華温泉へ14時20分着。ずぶ濡れだったが、とにかくへばらずに元気に下って来ることが出来た。
 到着してからお風呂へ入るまでの数分の間に、全身にガタが来た。歩いている時は何でもなかったが、立ち止った瞬間から寒くて寒くて全身の震えが止まらなかった。すぐに風呂へ飛び込んだから良かったものの、もし風呂がなかったらと思うとゾッとした。やはり雨の中を濡れて歩いてはいけないことを、イヤというほど教えられた。

〔お花は日本一だった〕
 今回の花紀行は、実に満足できるものだった。
 白馬は花が多いことは知っていたが、雪倉と朝日がこんなに花が多いとは思わなかった。
 この3日間で図鑑に載っている花はほとんど咲いていたような気がする。咲いていなかった花を探す方が大変なくらいだ。

 私が知っている限り、今までに一番花が多かったのは白山であるが、その白山に比べこの三山はどの山も勝るとも劣らなかった。つまり三山を歩くということは白山を3倍したことになり、いかに花が多く、見ごたえがあったかがお分かり頂けるかと思う。
とにかく、今回の花紀行は最高だった。いつの日かまた行ってみたいものである。

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