土砂災害

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土砂災害防止法では急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりの3現象を土砂災害と定義しています。

風化と侵食

絵1 早春の渓流 水量の増加と侵食

絵1 早春の渓流 水量の増加と侵食

凍結と融解の繰り返しによる岩片や岩塊の剥落及び小崩壊

絵1 渓流による侵食

春の雪解け水で増水した渓流が山地斜面の裾を激しく洗っています。渓流沿いでは流水による侵食によって急斜面が形成されています。渓流沿いは最も侵食の激しい箇所の1つであり、山間部では山肌を下刻して、多くの場合V字型の谷地形を形成しています。

渓流沿いの山地斜面は土砂の供給源であり、渓流が土砂を下流に運搬します。


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斜面崩壊

絵2 斜面の崩壊

絵2 斜面の崩壊

絵2 裏山の崩壊

崩壊するおそれのある急傾斜地で、高さが5メートル以上、傾斜度が30度以上で、崩壊により危害を生じるおそれのある「急傾斜地崩壊危険箇所」(人家5戸以上あるいは官公署、学校、病院等の公共的な施設のある箇所)は全国に11万カ所以上(平成14年度公表国交省)あります。

絵2のように、川があり水田地帯が広がるような場所では、水害を避けるために山際に集落が形成されているのをよく目にします。また、都市部では段丘崖を背にして人家が密集している場合も少なくありません。

急斜面の末端部は大雨や地震によって崩壊して被害を受けやすい箇所です。

斜面の崩壊と堰止湖

絵3 斜面崩壊と堰止湖

絵3 斜面崩壊と堰止湖


絵4 善光寺地震による堰止湖

絵4

善光寺地震による堰止湖 遠景は北アルプス

国土地理院の数値地図(注)を使用してカシミール3Dで作図


(注)この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平17総使、第431号)

絵3 斜面崩壊と堰止湖

絵2は斜面の崩壊によって生じた堰止湖を描いています。堰止湖は満水状態ですが、まだ越流はしていません。浸透した水が崩壊土砂の間から湧き出ているため、崩壊個所の下流では若干の流水が認められます。

堰止湖の水位上昇とともに、崩壊土砂にかかる水圧も上昇し、崩壊土砂内に浸透していきます。絵では崩壊土砂内の浸透水が湧水となって流れ出しています。時間の経過とともに、崩壊土砂の上面を越流したり、あるいは湧水量が増加し、堰止湖の決壊の可能性が増大していきます。

斜面崩壊⇒河川閉塞⇒湖の生成⇒湖の決壊⇒洪水の発生という被害パターンは大雨や地震によって発生しています。また、決壊とともに土石流が発生することがあり、下流に甚大な被害を及ぼすことがあります。

絵4 善光寺地震による堰止湖

善光寺地震で生じた堰止湖を再現しています。

善光寺地震は江戸時代の末期の1847年に発生した地震であり、地震⇒斜面崩壊⇒河川閉塞⇒湖の生成⇒湖の決壊⇒洪水の発生というパターンの代表的な例です。


善光寺地震についてはこちら


崩壊した土砂が河川を閉塞すると、閉塞部上流側では水位が徐々に上昇し、堰止湖(天然ダム)ができます。上流側に人家があると人家が湖に没したり流失するような被害が発生します。さらに水位が上昇して閉塞部の土砂にかかる水圧が増大すると水圧に耐えられなくなり決壊します。水圧に耐えられたとしても閉塞部を越流するようになると軟らかい崩壊土砂は侵食によって急速に削り取られ、やがては決壊します。決壊は鉄砲水となって下流に大洪水をもたらすことになります。


地震の震動で斜面が崩壊することはめずらしいことではなく、関東大地震では丹沢山塊が至るところで崩壊してはげ山のようになりました。また、相模原市緑区鳥屋では崩壊土砂によって串川が塞き止められて上流500m位まで湖のようになりました。

土石流の発生

絵5 渓流を高速度で流れ下る土石流

絵5 渓流を高速度で流れ下る土石流


絵6 谷の出口に広がる平坦地(里山 油絵:F8号

絵6 谷の出口に広がる緩傾斜地(里山)


絵7 土石流の被害

絵7 土石流の被害

絵5は、渓流を高速度で下る土石流を描いています。砂礫を含む土石流は、流の先端に石や礫が集中し、その流速は流路の勾配が大きいほど速く、一般には1秒間に3~10m程度です。土石流は直進性が大きく少々の障害物は乗り越えて直進し、斜面の勾配が3度程度になって停止するようです。土石流の規模が大きい場合は時として集落全体を飲み込むようなこともあります。沢沿いや谷地形開口部の周辺は土石流の危険が大きく、住宅地として適していません。谷の一部を埋めたような造成地でも同様です。


絵6は、狭い谷間を抜け、開けた緩傾斜地を流れ下っている渓流を描いています。渓流沿いには大きな礫が転がり、最大の礫は人の背丈ほどありそうです。

渓流周辺に堆積しているのは土石流堆積物です。豪雨の際、山が崩れて渓流に流入した土砂や岩塊、あるいは渓流の堆積物自体が土石流となって移動し、この付近に堆積したものです。この広い谷は何度も土石流を経験しているようですが、樹齢30~40年程度の杉林があり、沢沿いの石には苔が生育していることから考えて、少なくともここ30年以上は土石流の発生はありません。土石流が頻繁に発生すると草も生えない川原となることがあります。土石流に襲われる可能性のある土地が森林や小規模の畑・果樹園・シイタケの栽培などの里山として利用されている限りでは土石流が発生したとしても大きな被害を受けることはありませんが、住宅が侵入すると人の犠牲を伴う大きな被害が生じる恐れがあります。


絵7は、住宅が土石流によって被害を受けた状況を表現しています。谷の出口は土石流の通り道であり堆積場所です。

国土交通省の調査によると、(人家5戸以上あるいは官公署、学校、病院等の公共的な施設のある箇所)は全国に約9万渓流(平成14年度公表)あるとされており、土石流の被害を受ける可能性のある土地に多くの人家が存在しています。

豪雨によって山地斜面が崩壊して大災害となった例には明治22年の十津川水害があります。十津川水害では十津川およびその上流や支流が崩壊土砂によって堰き止められて53箇所の新湖と呼ばれる堰止湖が発生しました。この災害によって生活手段がたたれ、2,500人以上の村民が北海道に移住しました。


「十津川水害と北海道移住」についてはこちら