災害・地震などに関する一般的読み物


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 シリーズ日本の歴史災害 6冊
 地震一般(地震の科学、地震予知、警告) 29冊
 震災、被災、復興 24冊
 防災、耐震、建築物 18冊
 その他(地震周辺、地球科学、自然災害など) 34冊

  お薦めBOOK
 このマークは特に印象に残った本につけました。3つの小説(ドキュメンタリー作品)も含まれています。 
  新刊
   概ね、2年以内に出版された本です。

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【シリーズ日本の歴史災害】 

昭和二年北丹後地震表紙 シリーズ日本の歴史災害 1
昭和二年 北丹後地震 ―家屋の倒壊と火災の連鎖― 蒲田文雄著 古今書院(2006/3) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 京都府の北部、天橋立のある丹後地方が大地震に襲われました。地震の発生は雪のある寒い時期の夕食時であり、家屋はかまどの火や暖房の炭火を抱えたまま倒壊しました。そして何が起こったのか!その後の地震学の成果は?防災は!
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十津川水害と北海道移住表紙 シリーズ日本の歴史災害 2
十津川水害と北海道移住 ―明治22年吉野郡水災誌は語る― 蒲田文雄・小林芳正著 古今書院 (2006/1) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 山岳重畳の地が記録的な大雨に襲われ、山地斜面の崩壊や崩壊土砂による河川の閉塞と決壊などによって宅地や耕地が流出しました。災害から2ヶ月にして2,500人もの生活手段を失った被災者は冬を前にした北海道に移住しました。 
 詳細はリンクこちら


濃尾地震表紙 シリーズ日本の歴史災害 3
濃尾地震 ―明治24年内陸最大の地震― 村松郁栄著 古今書院(2006/5) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 明治24年にマグニチュード8.0という日本の内陸における最大の濃尾地震が発生し、岐阜県と愛知県を中心として7千人以上の死者が出ました。本書は当時の体験記や日誌および全国に向けて発せられたアンケート調査結果を通じて濃尾地震の全容が示されています。アンケート調査からは震度分布が求められ、震動の最大値や長周期地震動が現在の地震学の立場で考察されています。
 まえがきの最後には『「敵を知り、己を知って百戦危うからず」といわれるが、敵は地震動であり、己は我が家わが町である。濃尾地震の地震動は敵の最強の部隊である。これに負けない我が家わが町を築きたいものである。このような観点からこの本は書かれた。』とあります。


磐梯山爆発 表紙 シリーズ日本の歴史災害 4
磐梯山爆発 ―明治21年地形が変わった― 米地文夫著 古今書院(2006/8) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 磐梯山の明治21年の噴火は極めて激しい水蒸気爆発によって山体の一部が吹き飛んだといわれてきました。筆者は当時撮影された写真やスケッチおよび書き残された資料を基にして、大崩壊に至った経緯を明らかにしていきます。まず、山腹で小崩壊が発生して、次いで時間的な経過の中で連鎖的・多段階的に磐梯山の一つの峰(小磐梯山)が大崩壊を起こしました。犠牲者は噴火や水蒸気爆発から連想するような熱を持った降下物によるものではなく、その大半は山体崩壊による岩屑なだれが河谷に流れ込んだために発生した洪水的な様相の泥流によるものでした。岩屑なだれは磐梯山に限ったような特異な現象ではなく、日本全国に見られる成層火山に共通するタイプの現象であるとして、磐梯山爆発から学ぶべき防災対策について説いています。

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手記で読む関東大震災表紙 シリーズ日本の歴史災害 5
手記で読む関東大震災 武村雅之著 古今書院(2005/11) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 本書は二部構成であり、第一部は「解説 その時に生きた三人の証言と現代」、第二部は「手記を読む」で構成されています。松本ノブの手記には震災の年に生まれた長女を背負い満4歳の長男の手を引いて迫る火炎に追われに追われて逃げに逃げる状況や行方不明の夫を心配する心情が坦々と綴られています。そして、「然し子供はまだ幼年なれば、さ程に強く記憶に残らぬと思い、せめて其の時の有様のあらましなりとも子供に語り継いで、人様から受けた御恩に報ゆる様にして貰いたいとの願いから、当時の記憶をたどりつつこれを書いたのでございます。」とあり、誰から何をもらったかが御見舞金品受納目録として挙げられています。一人の市民であり母である人の手記に凝縮された震災を見る思いです。

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シリーズ日本の歴史災害 6
昭和二八年 有田川水害 藤田崇・諏訪宏編 古今書院(2006/12) 3,000円
A5判
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

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【地震一般(地震の科学、地震予知、警告】 

新刊
新版 活動期に入った地震列島 岩波科学ライブラリー 138 岩波書店 (2007/12) 1,200円 

 南海トラフで発生する巨大地震は地震活動期のピークで発生する現象であり、活動期に入ってから数個のマグニチュード7級の地震の発生を経てマグニチュード8級の巨大地震の発生に至るという。西南日本は1995年の兵庫県南部地震(M=7.3)で地震活動期に入ったと警告しています。
 本書の内容は@地震のしくみと震災、A兵庫県南部地震と地震活動期の始まり、B新たな地震観測体制と観測・研究成果などです。


新刊
地震予知の科学 日本地震学会 地震予知検討委員会編  東京大学出版会 (2007/5) 2,000円 

 1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を契機として展開された地震・測地観測網によって、地震予知につながる重要な発見が相次いでいるという。本書は、この10年で明らかになったこと、想定東海地震の予知情報を出すための監視作業の現状などを通して、地震予知はどこまで可能かを解説しています。将来の地震予知は天気予報の降水確率のような数値地震予報であり、これを目指して日々の観測や研究が行われているとしています。


スロー地震とはなにか 川崎一朗著 NHKブックス 日本放送出版協会 (2006/3) 1,020円 

 海洋プレートは海溝やトラフと呼ばれる海底の凹地から年間数cmの速度で日本列島の下に沈みこんでおり、プレートの境界ではひずみが蓄積されていきます。ひずみの蓄積が限界に達するとそれが大地震として開放されます。ところがひずみの蓄積に見合うだけの地震が発生しておらず、日本海溝沿いでは40%程度であるという。
 本書はスロー地震の発見を機軸とし、「10年前には誰も予想しなかった発見や理解の進展」が語られ、スロー地震の研究は地震予知の核心に迫る大きなステップと位置づけられています。
 新しい発見の興奮、断層の滑り速度と状態依存の摩擦則、水とスロー地震の関係など興味深い内容です。


巨大地震 ―首都圏直下地震の被害・防災シュミレーション― 坂篤郎・地震減災プロジェクトチーム監修 岩波新書 (2005/10) 743円 

 首都を襲う地震にはどのような地震があるのか?東海地震は?東南海・南海地震は? これらの被害想定からどのようなことが見えてくるのかが解説されています。企業防災としての事業継続計画の重要性が示され、国・自治体の対策の進行状況が解説され、ボランティアや個人の備えが最大の防災力となるとしてその取り組みが紹介されています。


日本の地震災害 伊藤和明著 岩波新書 (2005/10) 700円 

 「地震と噴火の日本史」(下記の紹介参照)の延長で20世紀以降に起きた地震災害編として位置づけら、地震防災の参考となるような情報を読み取り役立ててほしいとの立場で記述されています。関東大震災の猛火や津波および流言、北丹後地震や北伊豆地震における地震断層の出現と村々の壊滅、東南海地震や三河地震などの戦争に消された大震災など19の地震が7つの項目に分けて、その災害概要が記述されています。


公認 地震予知を疑う 島村英紀著 柏書房 (2004/2) 1,400円 

 過去の地震において多くの前兆現象が認められ、観測を強化するならば前兆現象が捉えられると考えられていました。しかし、観測が強化され前兆現象を吟味すればするほで曖昧模糊としてつかみ所がなく直前予知の困難さが明らかになってきました。
 本書は直前予知が難しいにもかかわらず予知を前提とした大規模地震対策特別措置法のもたらす問題点を指摘し、政府による地震対策の危うい「いま」を知ってほしいと地震対策を批判し警告しています。


ボタン関東大震災 大東京圏の揺れを知る 武村雅之著 鹿島出版会 (2003/5) 2,300円 

 日本の歴史上最大の被害を出した関東地震は十分研究されてきたのでしょうか。関東地震の個性は浮き彫りにされてきたのでしょうか。地震の個性を知り、他人事ではなく自分のこととして実感できるならば、人は地震に興味持ち正しい知識を得ることができ、そして、それが震災対策の第一歩に繋がると筆者は考えます。80年もの前の地震波形記録や体験談、あるいは当時の調査報告書などを現在の知見で再検討し、地震の大きさ、被害の特徴、超一級の余震、地盤と震度分布など地震の個性を探ります。その成果の一つとして、関東地震の震度分布図(旧東京市15区)が綴じ込まれています。


ボタン地震学がよくわかる 誰も知らない地球のドラマ 島村英紀著 彰国社 (2002/9) 1,800円 

 現代の地震学の前線において、科学者は何をしているのか、研究者しか知らない話が紹介されています。早さが命の津波予報と泣き所、群発地震のなぞ、ダムの貯水と地震、宏観現象(地震の前兆)と心理学的調査、高層ビルの耐震性など、通常は考えることのないことや常識と思っていることについても、わかっていないことが内在しており、時には科学の危うさを知る必要があると指摘しています。


ボタン地震と噴火の日本史 伊藤和明著 岩波新書 (2002/8) 700円 

 歴史の中には世を震撼させるような大災害がしばしば発生してきたが、過去の災害をさまざまな角度から見直してみると、そこには現代への教訓が数多く含まれるとして、歴史の教訓を地域の環境認識や災害への備えに役立ててほしいという立場で執筆されています。日本書紀が語る古代の地震、歴史に見る火山の大噴火、巨大地震と大津波、地形を変えた内陸直下地震、大都市直下の大地震が各章のタイトルであり、19世紀末までの日本の歴史に登場する地震や噴火が紹介されています。


ボタン活断層 大地震に備える 鈴木康弘著 ちくま新書 (2001/12) 680円

 阪神淡路大震災は都市直下に位置する活断層が引き起こした震災であり、日本には多くの活断層を抱えています。筆者は活断層の問題の本質として、活断層の理解が不十分であっても常に最新の知見によって軌道修正しながら対策を考えていかなければならないこと、活断層の防災戦略は全国一律ではなく、活断層の個性の違いや地域の特性に即した取り扱い方が必要であることを挙げるとともに、活断層とは何か解説し、活断層とどのような付き合い方が必要であるか、活断層対策とは何かを提起し、防災のための社会的合意形成が必要であることを説いています。


ボタン地震のはなし 茂木清夫著 朝倉書店 (2001/10) 2,900円

 前地震予知連絡会会長の著書であり、地震観測網を整備すればある程度の地震予知は可能であるとの立場で書かれています。下記の「地震を考える」と重複する部分もありますが、地震活動の静穏化あるいは空白域などは地震の前兆現象としての特徴であることが外国の例を含む最新のデータを用いて解説されています。また、解説に図が多く用いられているのも特徴です。


ボタン東京大地震は明日起こる 川西勝 中公新書 (2001/8) 680円

 筆者は新聞記者として1995年の兵庫県南部地震に遭遇し、聞き取り調査やその後の追跡調査など踏み込んだ取材を経験しています。東京は直下型地震が迫っており、いつ起こってもおかしくない状態にあること、また、首都圏に隣接する神奈川県西部地震も同様であると述べ、首都圏の防災対策の現状についても解説しています。しかし、これらは前置きであり、筆者の主題とするところは兵庫県南部地震の教訓を生かすことです。住宅の耐震補強や日常生活の中でできる地震対策の重要性を述べ、地震に備える必要があることを説いています。


ボタンあした起きてもおかしくない大地震 (21世紀地震アトラス) 監修・執筆 島崎邦彦ほか 集英社 (2001/7) 1,300円 

 第一部「規模・履歴・対策」と第二部「震災・ひと・社会」よりなり、第一部では首都圏直下地震や東海地震など発生の可能が大きい地震について、被害想定と対比させて解説しています。カラー図面やカラーイラストが多く用いられており、視覚的に捉えやすい構成になっています。第二部は、主に震災を社会的な立場で捉え、防災対策や医療対策などの解説、倒壊の原因や避難所などでの暮らしについての分析、都市型地震の危険性の指摘やこれに対する提言などが述べられています。


ボタンせまり来る巨大地震 竹内均編集 ニュートンプレス (2001/2) 1,300円

 東京を大地震が襲ったらどうなるかについて、東京での過去の震災や阪神淡路大震災のデータを用いてカラーグラフィックで詳しく紹介されています。都道府県別に過去の地震被害と将来の予測が収録されています。筆者は「全国いたるところで、地震がいつ発生してもおかしくない。家屋の補強に教訓を生かせ!、身を守るため事前に備えよ!」など、防災の重要性について説いています。地震予知に対しては否定的です。


お薦めBOOK
徹底検証 東京直下大地震 溝上恵著 小学館文庫 (2001/1) 476円

 本書は「東京直下地震」の切迫性の科学的根拠を明らかにし、地震が起こった場合の被害状況を予測・検証することによって、来るべき時に備えることが重要であるとの立場で、首都圏を襲う地震について解説しています。ケーススタディでは、東京都防災会議編集の「東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書」に示された被害想定を基にして、目の前にどのような惨状が出現するかを小説風のタッチで再現し、各々個人が地震発生に際してどのような異常事態に直面するかを具体的に示しています。また、南関東を襲う可能性のある地震を整理し、それぞれ科学的根拠を示して警告しています。首都圏に生活の場をもつ人はぜひ読んで頂きたい1冊です。


ボタン地震は妖怪 騙された学者たち 島村英紀著 講談社+α新書 (2000/8) 780円

 地震予知を含めた地震の研究は地球そのものの研究と一体であり、地球の研究が進むことが地震予知につながると筆者は考えています。本書は、観測された不思議な現象を妖怪にたとえ、地震学者と妖怪との戦いを描いています。筆者いわく、『・・・ じつは、この妖怪にはもっと深い嫌疑がかけられている。それは大地震に「立ち会った」ばかりでなく、大地震を引き起こしたのではないかという嫌疑である。プレートの押し合いで起きた大地震そのものも、この妖怪が起こしたのかもしれないのである。 ・・・・ しかし、それがなにものであるか、私たちはまだ知らない。 ・・・ 』


ボタン地震予知を考える 茂木清夫著 岩波新書 (1998/12) 700円

 地震予知は難しい問題であるが、ある程度可能であるとの立場で書かれています。地震予知連絡会により地域指定が行われていますが、その後多くの地震がこの指定された地域内で起こっており、長期予測が妥当であることを示しているとしています。「大規模地震対策特別処置法」に関する国会での質疑が紹介されており、この法律の問題点が指摘されています。


お薦めBOOK
大震災以後 「科学」編集部編 岩波書店 (1998/3) 2,600円

 本書は、阪神・淡路大震災の’総括・教訓・提言’を総合的にまとめたもので、岩波書店の総合科学雑誌「科学」に連載されたシリーズ「大震災以後」を基にし、その後の社会情勢や最新の研究成果が含まれています。執筆者は建築、地質、地震、災害、都市防災などの分野の13名の専門家であり、多角的な視点は大震災の教訓をいかにして将来につなげていくかを示唆しています。


ボタン東海地震の予知と防災 土隆一(東海地震防災研究会世話人代表)編 静岡新聞社 (1997/3) 1,600円

『本書は1984年(昭和59年)以来、毎年静岡市で開かれている「東海地震防災セミナー」の講演をもとに、地震学、地質学、耐震や防災を専門とする10人の執筆者が、地震予知や過去の地震の教訓などを解説しています。地震活動の特徴など、専門的(研究的)なものも含まれていますが、全体的には防災に視点がおかれており、防災を喚起しています。


ボタン揺れる大地 ―日本列島の地震史― 寒川旭著 同朋舎出版 (1997/1) 1,942円

 遺跡、廃寺跡、城跡などの調査によってぞくぞく発見される大地震の爪跡(断層、地割れ、液状化の痕跡)。考古学的手法や放射能年代から地震の発生年代が絞り込まれ、さらには古文書との対比から地震が特定されています。プレートの境界で発生する巨大地震(南海地震・東海地震・関東地震)から始まり、活断層によって発生する内陸部の地震が時代をさかのぼりながら紹介されています。「日本という国で、どれだけ多くの地震が発生し、当時の人たちと、どんなかかわりを持っていたかを知っていただきたいというのが、私の願いである。」として、地震考古学の成果が地震発生当時の歴史上の人物や事件を織り交ぜながら語られています。


ボタン地震の科学 パリティ編集委員会編(力武常次責任編集) 丸善梶@(1996/9) 1,600円

 「地震の科学」と題されているように、地震に関する科学的解説書であり、一般の読者を対象としています。災害を引き起こす地震現象を正確に理解することが災害軽減につながるという考えを基本とし、地震学の基礎、地震予知と観測、地震災害と防災について解説されています。


ボタン新版 日本の危険地帯 -地震と津波- 力武常次著 新潮選書 (1996/5) 1,200円 

 過去の地震の研究成果より、地震と津波の危険地帯を示し、過去の地震の再来や被害想定について解説されています。また、現代の都市に潜む被害の問題や地震の前の宏観現象を取り上げるなど広範囲にわたって述べられています。巻末には都道府県別の地震カタログが掲載されており、あなたの生活圏の地震歴を知ることができます。地震学者が地震の危険性を指摘しても一般の反応は低調であり、筆者は「読者諸氏が在住地域の地震・津波危険度をもう一度見直して地震対策を強化されることを望みたい。」と述べています。


ボタン活断層 松田時彦著 岩波新書 (1995/12) 700円

 地震を活断層として捉え、活断層の性質についてやさしい言葉で解説されています。活断層の調査から歴史的に繰り返して活断層が活動していることが分かっていますが、過去長年にわたって活動していない活断層を要注意断層としてし、地域ごとの活断層の分布や要注意断層が記載されています。筆者は、「自分の地域に活断層があるのかないのかを知っておくことは地震を意識することであり、潜在的に防災につながる」と指摘しています。


ボタン大動乱の時代 −地震学者は警告する- 石橋克彦著 岩波新書 (1994/8) 700円

 首都圏巨大都市群を襲う大震災を警告しています。前半は、幕末から大正関東地震までを歴史と絡ませて地震がドキュメンタリー風に記述されており、切迫感が表現されています。後半は、地震が迫っている根拠および地震によって大震災が発生する背景を指摘し、「ふたたび迫る動乱の時代」、「大動乱の時代をどう迎えるか」の章へ続きます。


ボタン地震はどこに起こるのか 島村英紀著 講談社 (1993/12) 800円

 地震の全容がやさしく書かれています。筆者の製作した海底地震計の話、海底地震計による地震観測から得られた新しい発見と謎解きについて語られています。地震の研究が進むにつれて地震予知や地震動の大きさの予測が難しいことが分かってきており、最後の章ではアメリカのパークフィールドの予知の例を紹介して実用的な予知が難しいことや東海地震の警戒宣言の問題点を指摘しています。


ボタン地震考古学 寒川旭著 中公新書 (1992/10) 700円

 遺跡からぞくぞく発見される大地震の爪跡(断層、地割れ、液状化の痕跡)から地震の発生年代を限定し、古文書との対比から地震を特定し、更に、古文書の発見されていない地震や有史以前の地震を発掘していきます。筆者は地震考古学を提唱し、地震考古学からどのようなことが判明するかを解説し、「地震考古学は、地震の歴史を考えるとともに、私達の将来の生活を守る学問分野と言える。」と述べています。


ボタン東京は60秒で崩壊する! −巨大地震がもたらす世界経済破綻の衝撃− P.ハッドフィールド著 竹内均監訳 赤井照久訳 ダイヤモンド社 (1991/6) 1,456円

 著者はイギリス人のジャーナリストであり、地震に関する対策やその行政あるいは日本的解決法などの問題点をストレートに指摘し、東京圏が地震に襲われた場合の世界的影響について警告しています。地震の発生によってほとんどの会社の株価が下がる中で、保険会社、証券会社、建設会社、鉄鋼会社、東京とそれ以外に拠点を置く会社などの株価がどう変動するかを予想をしています。


ボタン地震発生のしくみと予知 尾池和夫著 古今書院 (1989/6) 2,000円

 地震による災害、地震の発生のメカニズム、地震活動の特長などについて解説されており、地震直前の前兆を捉えること(直前予知)はある程度可能であることが山崎断層に関する観測結果を主体にして解説されています。これまでの予知計画や東海地震の警戒宣言についても述べられています。


お薦めBOOK
地震と建築 大崎順彦著 岩波新書 (1983/8) 700円

 地震の際に地盤はどのような影響を建物に及ぼすのか、建築物を地震から守る耐震設計はどのような考え方がなされ、今後の耐震設計はどのような方向に進むのか、などの問題が工学的な立場で解説されています。地震の実態が把握しやすく書かれており、地震が分かる本とでも言うのでしょうか。初版は古いですが、アンコール版として発行されています。

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【震災、被災、復興】

鵜飼康子著 「津波」表紙 新刊
津波〜ASIAN TSUNAMI〜 鵜飼康子著 早稲田出版(2008/12) 1300円+税

早稲田出版http://www.waseda-pub.com/top.htm

 スマトラ沖地震によって発生した津波によって、28万人以上がなくなりました。当時、タイ国のピピ島にいた著者は津波に飲まれ重傷を負います。津波来襲時および津波に飲み込まれたときの状況が詳細に記述されています。

 この本の紹介はリンクこちら 3枚の絵も参照ください。 

新刊
津波てんでんこ−近代日本の津波史− 山下文男著 新日本出版社(2008/1) 1600円+税

 明治以来日本を襲った津波のうち、死者100人以上の被害を出した津波には明治三陸大津波、関東大地震津波、昭和三陸津波、東南海地震津波、南海地震津波、チリ津波、日本海中部地震津波、北海道西南沖地震津波があります。これらの八つの津波被害を振り返り、生死を分けた行動などが紹介されています。津波の場合は家族を助けようとする行動によって共倒れになること多く、死者数を増幅させる結果になっているという。非情のようでも、親でも子でも、てんでんばらばらに、一分一秒でも早く逃げると言うことが共倒れを防ぐ方法であるとし、本書のタイトル「津波てんでんこ」はこの教訓に由来し、共倒れ現象の多かった明治三陸大津波の被災地である岩手県の方言で表現されたものです。

高層難民 渡辺実著 新潮新書(2007/4) 680円

 近代都市が巨大地震に遭遇すると、今まで経験したことのない深刻な「高層難民」、「帰宅難民」、「避難所難民」が発生すると筆者は警告しています。都市の合理性・経済性・快適性が優先された結果、超高層マンションが増え続いています。地震に強いといわれる超高層マンションの問題点を示し、住人が大量の高層難民になる可能性を指摘しています。「高層難民」、「帰宅難民」、「避難所難民」は避けられない事実として、リスクを軽減するために何が必要かを説いています。


ボタンTSUNAMI 津波 高嶋哲夫著 集英社文庫(2005/12) 819円+税
ボタンM8 エムエイト   高嶋哲夫著 集英社文庫(2004/10) 743円+税

両書ともフィクションであり、阪神・淡路大震災のとき高校三年であった被災同級生の瀬戸口、亜希子、松浦が登場し、主人公または準主人公として活躍します。

「M8 エムエイト」は阪神淡路・大震災から10年後に発生する東京直下地震を対象としています。東海地震判定会は「東海地震注意情報」を既に出し、更に警戒レベルを「予知情報」に切り替えようとしているさなか、ポストドックターの瀬戸口はコンピュータシミュレーションにより東京直下地震の発生を確信します。政府は東海地震対応のため静岡に自衛隊を順次出動させようとしている。静岡県知事からの支援要請により東京都は東京消防庁の消防機材とともに人員を派遣することになろう。これでは東京が危ない。瀬戸口は元大学教授とともに東京直下地震の発生を警告するために奔走し、議員秘書の亜希子を介して国会議員、都知事と接触します。

「TSUNAMI 津波」では東海地震・東南海地震・南海地震が連動して発生し、これらの地震と津波により死者30万人という被害が発生する構成です。静岡県内の市役所職員である黒田慎介を軸に、同市所在の原子力発電所および海水浴客やサーファーの集う海岸、愛知県常滑市の中部一の高層ビル展望室、伊勢湾内の米国原子力空母、静岡県牧之原の日本防災研究センター、総理官邸の危機管理センターなどを舞台として同時的にストーリーが展開します。


ボタン復興計画 越澤明著 中公新書(2005/8) 840円

 郷土の誇りとされる川越の蔵の町並み、城崎温泉の情緒ある風景、杜の都仙台のケヤキ並木、横浜の海辺の山下公園、ライトアップされた姫路城とマッチする一直線の大手前通り、鳥取の旧袋川の桜土手、飯田のりんご並木あるいは東京の銀座さえ大火、震災、戦災の復興によって生まれたものであるという。本書は復興計画の廃止・縮小という苦難と挫折を繰り返しながらも災害が緑の良好な環境と災害に強い町並みを造りだしてきた歴史を紹介し、災害復興計画の重要性を示しています。条例名や組織名などに起因する難解さはありますが、それが中身を濃くしているともいえそうです。


ボタン阪神・淡路大震災10年 −新しい市民社会のために− 柳田邦男編 岩波新書(2004/12) 700円

 「震災はいかなる問題をさらけ出したのか、人びとはどのようにして喪失後の行きかたを構築するのか、人間らしい暮らしのできるまちの再建とはどのようなものであり、そのための取り組みはなされているのか、といった本質的で普遍性をもった問題については、この国全体の人びとが情報を共有していかなければ、震災の体験を被災地以外の地域の人びとの新しいまちづくり、村づくり、国づくりに結びつけていくことはできない。」として、総論を柳田邦男が、各論を「震災10年 市民検証研究会」の三人のメンバーが執筆を担当している。


ボタン善光寺地震に学ぶ 赤羽貞幸・北原糸子編著 信濃毎日新聞社 (2003/7) 1,600円

 江戸時代末期に発生した善光寺地震は山地斜面の崩壊・河川の閉塞が特徴的であり、堰止湖の発生と決壊という二次災害が震災を拡大させました。本書は善光寺地震がどのような災害をもたらし、人々がこれに対してどのように行動したかを資料をもとにして描いています。「家業改張」などから推定される復興の痕跡、現在でも見られないような積極的な救済活動、瓦版や絵図による地震情報の伝達など、人々の行動を知ることは現代の地震対策に活かすことにつながります。また、地震学の立場からは善光寺地震クラスの地震は今後必ず再来し、比類ない災害が予測されると指摘されています。


ボタン写真で見る関東大震災 小沢健志 ちくま文庫 (2003/7) 1,000円

 「現在までに収集できた関東大震災の直後の当時の出版物から、できるだけ鮮明な写真画像を選び、再編集して”眼で見る関東大震災”の全容を見直し、将来起きるであろう大地震に備える関心と理解を持つことができればと、今回の写真集を企画したのである。」とその目的が述べられており、250枚の写真掲載されています。写真は13の項目に分類され、項目ごとの比較的短い解説文が写真の理解を助けてくれます。


ボタン三宅島 島民たちの一年 三谷彰 (岩波ブックレットNO.542) 岩波書店 (2001/8) 440円

 2000年6月26日、三宅島に緊急火山情報が出された。地震、噴火、降灰、噴石、有毒ガスの噴出、泥流、崖崩れ、火砕流による災害を経験し、約2ヵ月後の9月1日に全島避難が決定された。三宅島社会福祉協議会職員の筆者は被災、避難と長期の避難生活を通して生活再建を模索する中で、災害に処するために何が必要で、何をよりどころとして生きていくかを問いかけます。


ボタン被災地・神戸に生きる人びと -相談室から見た7年間- 牧秀一 (岩波ブックレットNO.540) 岩波書店 (2001/7) 440円

 震災直後から「よろず相談室」を主宰した筆者は被災弱者を通して「被災地の行政は何をしてきたか」を語っています。「私たちは、同じ悲運を背負った多くの人びとのそれぞれの苦難の歴史を学ぶべきであろう。そこから、復興の視点をどこに置くべきなのか、深く傷ついた人々が最も必要としているのは何で、周辺にいる者がすべきことは何なのかを知ることができるはずである。」は筆者の言葉です。


ボタンドキュメント 崩壊からの出発 −阪神大震災5年・「生活再建」への挑戦− 渡辺実・小田桐誠著 社会思想社 (2000/9) 1,600円

 被災者の生活再建の全般的な調整を目的とした「神戸市生活再建本部」の記録です。避難所や仮設住宅での生活の第一線で係わった人々(避難所代表者、神戸市仮設住宅班職員、仮設住宅自治会役員、救護責任者(看護婦)、生活支援アドバイザーなど)が登場し、被災者の負ったリスクを解決するため、どのように考えどのように対処行動したかが綴られています。

ボタンお薦めBOOK
地震の社会史 安政大地震と民衆 北原糸子 講談社学術文庫 (2000/8) 1,050円

 安政大地震で多数発行されたかわら版からは災害直後であるにもかかわらず活力に満ちた社会状況が生まれ、地震による世直りに対する歓迎や期待ばかりでなく、ある種の至福感さえ窺えると言う。筆者は大地震に遭遇した人々が災害をどのように捉え、どのように生き抜いたかを資料を示しながら分析していきます。災害などの緊急の際にはお救い小屋という仮設住宅が短時間で建設できるよう、常時から用意(資材と人員の確保)されていたということには驚きます。なお、この本書は研究的な内容が多いために少々難解です。


ボタンお薦めBOOK
倒壊 −大震災で住宅ローンはどうなったか− 島本慈子 筑摩書房 (1998/12) 1,800円

 阪神淡路大震災の被災者を扱ったノンフィクションです。住宅の破壊、倒壊、火災によって、二重ローンや土地を売却してもローンか残るようなマイナスからの再出発を余儀なくされる人々、マンションの修復か解体・建て替えかを巡る対立、火災保険の支払い拒否など、震災によって生じる問題を通して政策の矛盾点を浮き彫りにしています。


ボタン生者と死者のほとり −阪神大震災・記憶のための試み− 笠原芳光+季村敏夫 人文書院 (1997/11) 1,900円

 阪神淡路大震災について22人の筆者がそれぞれの立場で語っています。内容は雑多ないし多彩であり、観念的あるいは情緒的(芸術的?)なもの含まれています。震災を観念として捉えようとする編者の試みかもしれません。


ボタン都市崩壊の科学 朝日新聞大阪科学部編集 あさひ文庫 (1996/1) 573円

 本書は朝日新聞に連載された「追跡・大震災」(平成7年3月3日〜9月29日までの27回)を基にした阪神淡路大震災の記録です。ガスや電気、病院や医療器具、クラッシュ症候群、耐震基準、ライフライン、新幹線や高速道路など広範囲に及んでおり、どこでどんなことが起こり、何が問題で、どんな解決策があるのかを拾い出し、地震対策の重要性を提起しています。


ボタン大地震 生と死 佐藤稔 草思社 (1995/10) 1,748円

 阪神・淡路大震災の被災者を追ったノンフィクションです。消防署や警察署の署員、自衛隊隊員、新聞記者、行政機関職員、あるいは政治家の動きを織り交ぜながら、家族を失った人々を通して、震災が語られています。多くの死者が発生した現実を背景として、生きるということは何か、またはどう生きるべきかを問いかけているようです。


ボタン記憶よ語れ −阪神大震災− 吉村昭他45名 轄品社 (1995/8) 1,600円

 阪神大震災直後の1月〜3月に新聞、雑誌や週刊誌に掲載された阪神大震災に関する小論集であり、まえがきもあとがきもありません。吉村昭他45名の執筆者はその時何を思い何を感じたかが本書のテーマです。主に小説家、作家などを中心にして執筆されており、中には被災者も含まれています。震災に対する恐怖や怒り、震災に遭遇しても淡々とした日本人の冷静さ、美談や感動などさまざまです。震災の縮小や防災のためには私権の制限が必要だとする人は多い。


ボタン災害救援 野田正彰 岩波新書 (1995/7) 602円

 精神病理学を専攻する著者は、『被災者は、災害によって粉々になってしまった生活の秩序を、もう一度、生きる意味を発見することによって再構成しなければならない。』、そして『緊急の外傷への手当てと物質的な救援は、被災者たちが再び精神的に立ち直ることができてこそ意味を持つ。』と述べており、物優先の救援を批判し、精神的な救援の重要性を説いて、災害救援のありかたを問いかけます。破壊に対して心から惜しまれる文化を持ち、人と人との関係の豊かな社会でありたいと。


ボタン神戸発 阪神大震災以後 酒井道雄 岩波新書 (1995/6) 650円

 本書は、阪神・淡路大震災直後(約4ヶ月後)の現場からの報告であり、10人の執筆者がそれぞれの立場で現場の問題を提起しています。執筆者は病院婦長、新聞記者、ジャーナリスト、大学講師や助教授であり、地域社会を引っ張っていく立場の人々であるとともに自らも被災者でもあります。視点を被災者の人権、地域社会や地域経済に置き、震災直後の混乱から復興に至る時期に何が重要であり何が必要であるかを示し、行政の対応の問題点などを提起ています。


ボタン大震災 復興への警鐘 内橋克人・鎌田慧 [同時代ライブラリー221] 岩波書店 (1995/4) 825円 

 本書は、地震発生から約1ヶ月後の両著者の対談がもとになっています。現在進行している避難所の生活や仮設住宅への転居、そして今後の復興計画などについて、著者が感じ、恐れている問題や矛盾を指摘し、強権的で市民の合意や理解の得られないような復興計画に警鐘を鳴らしています。


ボタン地震に伴う法律問題 Q&A 近畿弁護士会連合会編 商事法務研究会 (1995/3) 1,456円 

 平成7年1月17日、兵庫県南部地震が発生して大被害を被りました。地震に伴う法律相談は多岐にわたり、適切な法律相談を実施するためには担当弁護士用のQ&Aが必要とされました。本書は弁護士用のQ&Aが基となり、一般の人にも読みやすいように書き直されたものです。問題解決の具体的な指針として役立つよう、被災からわずか2ヵ月後に出版されています。


ボタン奥尻 その夜 朝日新聞「奥尻 その夜」取材班 朝日新聞社 (1994/3) 1165円

 平成5(1993)年7月12日の午後10時17分に「平成5年北海道南西沖地震」(マグニチュード7.8、死者202人、不明28人)が発生し、地震による直接的な被害に加えて津波による被害が大きかった。本書はこの地震による大災害の実相を、地震発生当夜の人々の行動から立体的に描きだしたものです。登場する人々には自衛隊員、消防団員、イカ釣り漁船船長、警察官、老人ホームの寮母、警備員、医師、看護婦、会社員、役場職員、高校生、教諭、旅行者に加え、支庁長、知事、首相などにも及んでいます。


お薦めBOOK
三陸海岸大津波 吉村昭 中公文庫 (1984/10) 514円

 明治29年の明治三陸地震津波、昭和8年の三陸地震津波および昭和35年のチリ地震津波を題材としたドキュメンタリー作品です。取材で得られた証言や資料を多用し、再構成することによって、津波はどんな様相を呈して襲ってきたのか、そしてその惨状はどのようなものであったか、どのような社会的影響を与え、どう対策が取られたかなどが描かれています。特に、明治三陸地震津波は22,000人もの犠牲者を出した津波であり、津波の恐ろしさを伝える意味で貴重な作品です。


お薦めBOOK
関東大震災 吉村昭 文藝春秋 (1977/8 第1刷) 448円  

 大正12年(1923)9月1日に発生した関東大地震を題材としたドキュメンタリー作品であり、菊池寛賞受賞作です。この地震により、東京墨田区の本所被服廠跡に約4万人の市民が避難し、約3万8千人の人が焼死または窒息死したことに象徴されるように、東京、横浜は大火災にみまわれました。情報が途絶した中で、社会主義者および朝鮮人が暴動を起こし放火しているという流言蜚語が非常な勢いで拡大し、深刻な社会事件を誘発しました。この作品は政府の対策、警察や軍隊の行動、被災地域以外の住民の動きなど震災の社会的影響を克明に描いており、大きな教訓が汲み取れます。

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【防災、耐震、建築物】

ボタン津波防災を考える −「稲むらの火」が語るもの− 伊藤和明著 (岩波ブックレットNo.656) 岩波書店 (2005/7) 480円

 「稲むらの火」は稲むらに火を放つことによって村人を高台に集め、津波から村人を救ったという物語であり、戦時中から戦後にかけて尋常小学校で使用する国定教科書に載っていました。筆者は「未来を背負う子供たちに対する防災教育がきわめて重要である」として「稲むらの火」のような人の心を打つ教育、情緒や情感に訴えかける教育の重要性を指摘し、「稲むらの火」が教材となった経緯や津波被害を通して津波防災とは何んであるかを述べています。


ボタン免震住宅のすすめ −大地震から”家”と”家族”を守るために− 深堀美英著 講談社ブルーバックス (2005/6) 820円

 1995年の兵庫県南部地震、このとき被災地周辺に2棟の免震ビルが建っていました。免震建築が地震に強いことが実証され、これを契機として急速に導入が始まりました。この免震技術は戸建住宅にも応用され普及が徐々に始まってきています。本書は免震技術の原理、歴史を解説しつつ、地震の恐怖から開放されるだけでなく長期間使用できる質の高い免震住宅は社会資産や環境保護との観点からも必要だとしています。最新技術の紹介は読みやすい内容でまとめられています。


地震 タテ横ななめ 今村遼平著 電気書院 (2004/9) 1,900円

 一般の読者を対象として、筆者と後輩との対話形式で記述されており、地震波の性質から避難行動や地震への備えまで、極めて広範囲です。著者の代表的な著作の1つに「これだけは知っておきたい 安全な土地の選び方」(鹿島出版会)があるように、地震動を増幅する軟弱な地盤や液状化しやすい地盤の見分け方などについて分かりやすく解説されています。 


お薦めBOOK
東京大地震は必ず起きる 片山恒夫著 文春新書 (2002/10) 680円

 兵庫県南部地震によって安全神話が崩されました。この反省に立って、地震対策の原点は構造物の耐震対策にあるとし、『「我が家を壊れにくくし、火災を出さない」ことを徹底すれば、都市の震災は大幅に軽減する』と指摘しています。そのためには、自宅の耐震診断や耐震改修の必要性を説き、耐震改修を促進するための提案を紹介しています。その他、防災ボランティア、救急医療体制、ライフライン、地震保険など、主に都市防災について解説されています。

ボタン地震からわがこを守る防災の本 国崎信江著 内野真(絵) (有)編集工房一生社 (2001/6) 1,700円

 子供の身近にいるのは母親であり、子供を守る責任は大きく、防災意識が重要であるとの立場で書かれています。内容は広範囲であり、救急法も含まれています。著者は「小さい子供を守りたいと願う」二人の子供の母親です。子供は社会から守られるべき存在ではありますが、地震のような緊急時は母親や身近な人の防災意識の重要性が痛感されます。


ボタンマンションは大丈夫か -住居として資産として- 小菊豊久著 文春新書 (2000/8) 690円

 これからマンションを購入しようとしている人に向けて、どのような視点から選べばよいのか、すでに居住している人に対しては、いかに財産であるマンションの価値を保守し高めるのかについてアドバイスしたいとし、マンションの耐久性、耐震性、断熱性、遮音性、安全性など寿命を伸ばす条件や長期修繕計画の重要性などについて解説されています。また、マンションの間取りの原型の誕生やマンションブーム、大衆化などが歴史的な視点で解説されています。


ボタン木造建築を見直す 坂本功著 岩波新書 (2000/5) 740円

 本書は、木造建築である伝統構法のしくみや歴史が紹介されており、伝統構法の流れをくむ木造在来工法のなりたちやしくみおよび木材の特質などが解説されています。また、筆者は阪神・淡路大震災に際し、「無数に倒壊した木造住宅があった反面、それらに囲まれて外観無被害の木造住宅があるのを目のあたりすると、あらためてその理由を明らかにする必要を感じた。」とし、在来工法に必要な耐震・耐風、老朽化対策などについて述べています。


お薦めBOOK
地震とマンション 西澤英和/円満字洋介著 ちくま新書 (2000/12) 680円

 被災マンションの復旧に携わった筆者たちは次のように問いかけています。「過去の震災では、被災した建物を修復・補強して速やかに復旧する努力がなされてきたが、今回の被災した大量のマンションや木造住宅は公費解体という全く異なった方向に動いた。復旧技術が確立しているにもかかわらず、修復可能なものまで解体した震災後の混乱した状態はなぜ生じたのだろう?」 この疑問に答え、具体的な復旧のやり方を紹介しています。文章の流れが明快であり、イラストも見やすく見事です。耐震補強と関連して解説されていますので、特にマンションに住んでいる人には読んで頂きたい。


ボタン考え直そう、地震防災 茂木清夫著 (岩波ブックレットNo.465) 岩波書店 (1999/8) 440円

 国や自治体の防災対策はどうあるべきか、住民はその施策をどう生かすかといった地震防災対策のあり方を主題とし、都市の過密化、建物や鉄道の安全性、首都移転や臨海副都心のあり方、ハザードマップの利用など幅広い問題を通して、筆者の考え方が住民に視点をおいて述べられています。


ボタンコンクリートが危ない 小林一輔著 岩波新書 (1999/5) 700円

 60〜70年を経過したコンクリート構造物が現在でもその機能を維持している一方で、山陽新幹線高架橋をはじめとする比較的新しいコンクリート構造物が劣化しているのは、高度成長期の骨材資源の枯渇や欠陥セメントの大量供給などに起因するとし、2005〜2010年頃にはコンクリート構造物が次々と崩壊すると警告しています。兵庫県南部地震で戦前のコンクリート建築物が強かったことを考えると、ある期間に造られたコンクリート建築物は設計基準の問題ばかりでなく劣化の問題も絡んでくることになり、将来の地震に対する安全性が懸念されます。分譲マンションへの対策がとりあげられています。


ボタン決定版 震災自衛マニュアル −大震災が教えた生死の分かれ目− 中濱慶和・松島悠佐共著 大村書店(1999/4) 1,800円 

 震災に対する実戦的実用書です。阪神・淡路大震災の教訓をもとに、事前の防災対策、地震が起こった時の行動、避難などについて述べられています。地震の発生が「屋内にいるときだったら」のように多くの状況を想定して、どう対処すべきかコメントされています。一度このような実用書を読んでおくことは、日頃の備えや地震発生に際してどう行動するか、実践とイメージ造りの参考になります。


ボタン地震学者の個人的な地震対策  神沼克伊著 三五館 (1999/2) 1,400円

 筆者の例を示し、大地震に遭遇したときにどのような行動をとるのかを日ごろから考えておくこと、日常生活の中で無理のない地震対策を実行することを薦めています。兵庫県南部地震の教訓を示すとともに、地震予知は、あくまでも研究の段階であり、地震予知とは無関係に震災対策を立案すべきであるとし、国家や地方自治体に対しては「危機管理体制に整備や人命優先の処置が取れる体制」を求めています。地震予知の将来像として、GPS観測網から得られる情報を天気予報の天気図のように日常的にテレビで放映する時代が来るとし、情報を示すことが地震対策につながると指摘しています。


ボタン地震から暮らしを守る町づくり −大震災から学んだ74の提言− 日本建築学会 彰国社 (1998/8) 2,000円

 兵庫県南部地震に直面し、建築学会「兵庫県南部地震特別委員会」が建築および都市の防災性向上に関する提言としてまとめたものであり、前半は74の提言と短い解説、後半は公開シンポジュウムにおける防災や復興の基本的な考え方の解説およびパネルディスカッションが記載されています。兵庫県南部地震からどのような教訓が得られ今後どのような形で生かしていくべきかという全体的な方向性が示されており、大震災が被災者やその周辺に及ぼす影響を把握することができます。


ボタン耐震建築の考え方 (岩波科学ライブラリー51) 神田順著 岩波書店 (1997/6) 1,200円

 良い建築は安全(safety)、機能(function)、造形(aesthetics)、経済(economy)のバランスが取れていることが重要であるとし、アルファベットの「頭文字をとって、改めて並べ直すとS・A・F・E(安全)となりました。」と述べられており、耐震性を前提にしながらも耐震建築にはバランスを考慮した考え方が大切であることを巻頭で示唆しています。安全性の確率による定量化、総費用最小化の原理などがやさしい言葉で解説されおり、耐震安全性は省資源や環境保全も考慮する必要があると指摘しています。


ボタン阪神・淡路大震災の教訓 石橋克彦著 (岩波ブックレットNO.420) 岩波書店 (1997/1) 388円

 将来の大地震に備えるためには、阪神・淡路大震災は「どんな地震による災害であったか」という正しい認識が必要であり、安全神話や誤解が同じ過ちを繰り返すと警告しています。近い将来に発生が懸念される地震について解説し、防災に関しては、自然の摂理に逆らわない文化を創造することが、おのずから震災軽減につながると述べています。


ボタンあなたもできる地震対策 −兵庫県南部地震での地盤災害の復旧現場から− 地質ボランティア  せせらぎ出版 (1995/10) 777円

 兵庫県南部地震に際し、地盤災害の実態と仕組みを明らかにし、被災地の復興を支援した「地質ボランティア」が、崩壊、地すべり、液状化などの代表的な被害例と対処方法を紹介しています。土石流、地すべり、崖崩れなどを予測し、その原因を考えることは、現在住んでいる場所が安全であるかどうか、宅地としてどのような場所を選択するのがよいかを教えています。


ボタン地震に強い住まいづくり<第二版>/阪神大震災の教訓から 海野哲夫著 彰国社 (1995/5) 1,650円

 地震、耐震、地盤、基礎、工法など広範囲にわたる解説と『「大丈夫」とはどういうことなのか』を軸にして、筆者の考え方が述べられております。まえがきでは、『”地震に強い住まいづくり”と題した小著は、耐震工学についての話を中心にしているが、本当に強い住まいとは、もしかするとそこに住む人々の、心構えの強さに帰するのかも知れない。』と述べています。地震対策の困難さを示すと共に、経済的に可能な範囲で安全な宅地と耐震性のある住宅に暮らそうとする意識が重要であると指摘しています。


ボタンコンクリートのはなし(T)、(U) 藤原忠司・長谷川寿夫・宮川豊章・河合徹 編著 技報堂出版 (1993/6) 各1,800円

 コンクリートの研究に携わった人たちが解説するコンクリートの入門書です。(T)ではコンクリートの歴史や性質などの基本的なことがらを中心として述べられています。アルカリ骨材反応や中性化などによるコンクリートの劣化問題およびコンクリートの補修や補強についても解説されています。(U)では、透水性コンクリートや海洋コンクリートなど用途別に開発されたコンクリートを紹介するとともにコンクリートの将来について述べられています。

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【その他(地球科学、地震周辺、自然災害など)】

新刊
貝が語る縄文海進 ―南関東、+2℃の世界― 松島義章著 有隣新書 (2006/12) 1,000円 

 約9,000年前から急劇な海面上昇があり、約6,500年前には現在の海面を越え、約6,000年〜5,500年前には最高位に達しました。海面が最も上昇した時期が縄文時代(早期末〜前期)であることから、海面の上昇に伴う海進を縄文海進といいます。本書は、縄文海進によって地層中に埋もれた貝化石の種類や分布状況を調べ、当時の生息場所の特徴、海陸の分布、堆積年代などから海面の激しい変動や黒潮の消長、海水温の変化を明らかにしていきます。縄文海進最盛期直前から最盛期に掛けてのおよそ2000年間は、日本列島沿岸は全く黒潮あるいは対馬暖流の洗う環境となって、完新世の中で最も温暖な海況となっていたと指摘しています。


環境理学 表紙 環境理学 -太陽から人まで- 野上道夫編著 古今書院 (2006/5) 3,200円
A5版
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 本書の内容は大学の教養レベルで理解できるよう意図されており、その対象は地球科学、地球環境に興味ある一般人、環境問題に関わる人々および大学生です。
 地球温暖化問題は人類最大の課題とされていても気候変動の原因について明快な結論は得られていないという。貝殻などの酸素同位体、有孔虫などの化石、南極の氷床からの雪氷コアなどの分析よって無氷河時代や氷河時代、氷河時代の氷期と間氷期など過去に激しい気候変動があった事実が紹介されています。自然に対する正しい理解こそが地球温暖化の問題を解決する唯一の道であるとの立場で太陽の活動、ミランコビッチサイクル(地球の歳差運動・地軸の傾き・離心率)、大洋と大陸の分布状況や深層水の循環など新しい研究結果をもとにして解説されています。


地形と人間 表紙 地形と人間 池田碩編著 古今書院 (2006/4) 2,800円
B5版
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 大学生や市民を読者と想定し、地形学の啓発および教育を念頭に置いたテキストとして編集されています。
 人間は地形に適応しつつより効率的な利用方法を求めながら生活圏を拡大してきました。本書はこのような地形と人間のかかわりをテーマとしています。日本の6地域として京都盆地、近江盆地と琵琶湖、奈良盆地、大阪平野、瀬戸内海と沿岸低地、南九州の活火山と巨大カルデラおよび、外国の6地域としてロッキー中部のグレートベースン、ハワイ諸島、アイスランドの火山、セーヌ川とパリ、アフリカ東部の大地溝帯、中国の長江流域が取り上げられています。 


宇宙 地球 地震と火山 表紙 宇宙 地球 地震と火山 木庭元晴編著 古今書院 (2006/4) 2,600円
B5判、カラー図版
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 宇宙、地球、地震と火山の三部で構成された自然科学の入門書です。宇宙の部では宇宙の地平線・ハッブルの法則の解釈・インフレーション宇宙論から「宇宙は時間の流れのなかでつくられたのではなく時間とともにつくられた」と説き、地球の部では超大陸の形成と分裂・生物の大量絶滅・火山活動をプルームテクトニクスで説明されるとして最新の宇宙観・地球観が示されています。参考ウェブサイトのURLアドレスが数多く掲載されております。


ボタン地球の内部で何が起こっているのか? 平朝彦・徐垣・末廣潔・木下肇 光文社新書 (2005/7) 850円 

 日本が主導的に実施する大規模な国際プロジェクト(IODP統合国際深海掘削計画)に最新鋭の地球深部探査船「ちきゅう」が投入され、海底掘削の成果が期待されている。プレート境界巨大地震はなぜ起こるのか?、プレート沈み込み境界で地殻がどのように進化するのか?、地下生物圏はどのような広がりを持っているのか?、生命はどのようにして誕生したのか?、メタンハイドレートの資源利用と地球環境への影響は?、アジアの風土はどのようにして作られたのか?、人々はどこから来たのか、そしてどこへ行くのか?
 本書は地球科学の最先端の課題をIODPの活動によって解明していこうとする道筋が解説され、今後解明されていくであろう課題が夢として語られています。IODPによる地球の発見が地震や津波、地球温暖化や砂漠化などに対する人間社会の対応に指針を与えてくれるとしています。


ボタン人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学 広瀬弘忠著 集英社新書 (2004/1) 700円 

 災害心理学の立場から、災害を紐解いていきます。災害時における心的活動性と身体的活動性の時間的変化から驚愕状態、虚脱状態、災害後のユートピア、愛他行動、災害症候群などを説明しています。
 人の心は危険に対してある程度鈍感にできていて、人間はなかなか動こうとしない動物である。異常行動のようなパニックは多くの災害や事故ではあまり起こらない。人類がアフリカの故郷を捨て全世界に広がったのは災害や病気などからの避難行動の結果である。災害によるダメージは若い者ほど、富める者ほど小さい。等々災害の核心に迫った言葉が詰まっています。 


ボタン活火山富士 大自然の恵みと災害 読売新聞特別取材班+小山真人 他著 中公新書ラクレ (2003/8) 720円 

 本書は、読売新聞静岡版で2002年7月〜11月連載された「活火山富士」が基になっています。富士山のハザードマップ(災害予測図)作成の意義と現状を話題の根底として、十勝岳、桜島、三原山、磐梯山、三宅島などの災害例や富士山の噴火史を参考にしながら防災に対する諸問題を探ります。
 ハザードマップの作成に当たっては災害情報だけでなく火山の自然情報や火山から受けている景観・温泉・湧水などの恩恵に関する情報を含めた総合的自然ガイドマップにすることが住民に役立つマップとなり、富士山のように平穏期の長い火山ではこのような視点が特に重要になるとしています。この視点から本書の副題は「大自然の恵みと災害」となっており、富士山山麓を巡る見どころの紹介もあります。

ボタン火山災害 ―人と火山の共存をめざして― 池谷浩著 中公新書 (2003/2) 760円 

 最近でも、有珠山や三宅島のほか、北海道駒ヶ岳、岩手山、浅間山、伊豆大島、雲仙普賢岳、桜島など多くの火山でその活動が報告されており、まさに今われわれは火山国に暮らしている。その火山国日本に暮らす限り火山と共存することが必要不可欠である。雲仙普賢岳の災害対策を担当した筆者は、雲仙普賢岳の災害や最近身近に起こった事例を示して、日本人は火山とどのように共存していくべきか、そしてどうすれば安全かつ安心して生活ができるかを提言しています。


ボタンひらめきと執念で拓いた地球の科学 竹内均著 ニュートンプレス (2002/9) 1,400円 

 「現在は過去をとくかぎである」と述べたジェームス・ハットン、「大陸移動説」を唱えたアルフレッド・ウェゲナー、「雪は天からの手紙である」という言葉を残した中谷宇吉郎、「バン・アレン帯を発見」したジェームズ・バン・アレン、「天災は忘れたころにやってくる」という警句を残した寺田寅彦など16人の地球物理・地質学者が取上げられており、業績と生い立ち、社会や時代の背景などが述べられています。


ボタン火山はすごい -日本列島の自然学- 鎌田浩毅著 PHP新書 PHP研究所 (2002/6) 740円 

 阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島(雄山)の日本を代表する5つの火山が取り上げられています。著者が経験した火山のすごさを話題とし、火山の正体や予測を超える現象などを解説しています。エピローグでは、『噴火が青天の霹靂とはならないことを、私は願っている。火山学を始めとし、地球科学が、社会の役に立つときがやってきたのだ。』と述べ、地球科学への興味が防災に繋がるとしています。


ボタン寺田寅彦は忘れた頃にやってくる 集英社新書 (2002/5) 680円

 東京帝国大学教授、実験物理学学者、随筆家であり、夏目漱石や正岡子規との付き合いのあった寺田寅彦がどんな人物であったかを軽快な文章で綴り、混迷する21世紀の世の中に忘れてはならない人物として「寺田寅彦は忘れた頃にやって来る」として登場させています。「天災は忘れた頃にやって来る」という余りにも有名な諺・警句を言い出した寺田寅彦の魅力を追い、災害に関しては『津波と人間』や関東大震災を体験した感想なども紹介しています。


表紙_日本の山はなぜ美しい 日本の山はなぜ美しい ―山の自然学への招待― 小泉武栄著 古今書院 (2002/2初版第4刷) 2,600円
四六判
白馬岳・木曽駒ケ岳の自然観察ルートマップ付
出版社古今書院http://www.kokon.co.jp/

 「日本の山では、森林限界を越えたとたん、急に視界が広がり、じつに多彩な景観が展開する。さまざまの植物群落、残雪、砂礫地、岩壁と崖錐、湖と水の流れ、そこには登山者を惹きつけるありとあらゆるものがそろっている。単純素朴だが、私が調べたいと思ったのは、この複雑で多様性に富む高山帯の景色であった。」「なぜこんなに美しい景色があるのであろうか」という筆者の感動と疑問が本書の出発点です。
 世界のほかの地域では見られないような複雑で多様性に富んだ美しい高山帯の景観は冬季の強風による吹きさらしと雪の吹きだまりの形成、消雪時期の違い、地質分布と植生分布の関係、山地斜面の形成期の違いによる植物の進入速度と順序などによって生み出されたものだという。
 たとえばコマクサは氷河時代を背景として現在に生き続けてきた一種の生きた化石であり、きわめて特殊な土地条件でのみ出現します。このような現象の中に山の自然のなぞが隠されているという。


ボタン富士山宝永大爆発 永原慶二著 集英社新書 (2002/1) 740円 

 今から約300年前の1707年(宝永四年)、富士山中腹から噴火し、その火山灰は偏西風にのって江戸の町まで及びました。筆者は、噴火が降砂の堆積ばかりか堤防決壊による大洪水のような二次災害が被害を拡大させ長期化させていったことを紹介しており、噴火による災害の実相、幕府・藩の対策、住民の苦闘、社会矛盾など、巨大災害をめぐる地域社会の社会史を追跡しています。長期化する大災害と復興の歴史書です。


ボタン流言とデマの社会学 廣井脩 文藝春秋 (2001/8) 700円 

 「電話がコレラを運ぶ」などの明治時代の流言から、「所沢ダイオキシン」、「0-157」などの最近の風評被害の実態に至るまでの流言が紹介されていますが、主体は地震や噴火など自然災害に関する流言であり、流言がどのような社会的・心理的背景で生まれ拡大するかを分析しています。関東大震災の際の流言のうち、日本人による朝鮮人の大量虐殺に至った事件が詳しく紹介されております。関東大地震の際はラジオがまだ存在しなかった時代であり、情報化の進展が著しい現在とは状況が異なるものの、規模の小さい流言は雲仙普賢岳の噴火、伊豆大島の噴火のときも広がった事実が紹介されています。


ボタンQ&A 火山噴火 日本火山学会編 講談社 (2001/4) 860円

 日本火山学会のホームページの「火山学者に聞いてみよう!」に寄せられた質問と回答をもとにした、111の質問とこれに対する回答集です。最初の章の「あの山は大丈夫?」は富士山、岩手山、有珠山など最近話題になっている火山についての質問とこれに対する回答であり、最終章の「火山の災害から身を守るには?」では噴火予知や火山ガスに対する事故防止などが解説されています。


ボタン自然・人間・危機と共存の風景 星野芳郎 講談社+α新書 (2001/3) 780円

 人の手の入らない恐ろしい原生林、道の両側に続くやさしい森などの自然を基盤として、常に手をかけなければならない田畑や庭園などの自然が成り立っている。人は自然の中の食物循環に組み込まれ、この自然の中でしか生きることはできない。花鳥風月の美しい自然観とは別に、ありのままの素顔の自然を認識することなしに自然と人の共存をはかることはできないとし、「雨が大地を刻む美しい日本列島」、「地震と火山の巣としての日本列島」などをはじめとして、日本列島、地球、宇宙を視野に入れた筆者の自然観が述べられています。


ボタンマンション -安全と保全のために- 小林一輔・藤木良明著 岩波新書 (2000/2) 780円 

 マンションの維持・管理の手引書であり、解説書です。大規模修繕工事の進め方をはじめとして、維持管理に必要な要点が具体的に解説されています。管理組合の重要性を説き、住環境を良好に保ちトラブルを避けるためには日頃の広報活動、管理情報の収集、規約違反者などの問題に対する積極的な対応などが挙げられており、管理組合の基本的な考え方から具体的な環境改善工事例まで紹介されています。マンションを快適で安全な空間として維持・管理していくための指標になると思われます。


ボタン土石流災害 池谷浩著 岩波新書 (1999/10) 700円 

 土石流とは何か、どのような状況下で発生するか、命を守るための知識や対策について解説されています。地震による土石流やその特徴についても記されており、関東大震災での根府川(小田原の南西)の土石流や長野県西部地震での御嶽山の土石流などが紹介されています。震災は地震という自然現象によって発生するのと同様に、土石流災害は土石流という自然現象によって発生します。震災も土石流災害も自然現象と人間の生活との関わりによって発生することから、防災の原点としては同じと考えることができます。


ボタンヒトの誕生 二つの運動革命が生んだ<奇跡の生物種> 葉山杉夫著 PHP新書 (1999/6) 660円 

 ヒトが類人猿と決別してヒトとなったのは、六千五百万年前に樹上で生活を始めたこと、および五百万年前に地上に降りて二本足歩行を始めたことの二つの運動革命があったがためであるという。ヒトはどのようにして奇跡的且つ特異な存在となりえたかという進化過程が解説されています。生命誕生から繰り返される大絶滅をくぐり抜け、恐竜の絶滅、アフリカ大陸の地殻変動などの偶然がヒトを誕生させたという「奇跡のヒト」の物語です。 


ボタン山の自然学 小泉武栄著 岩波新書 (1998/1) 740円(第8刷) 

 北は礼文島から南は屋久島の宮之浦岳まで、全国の山々をとりあげ、岩石が違うとなぜ、違う植物が育つのだろうか?次々と浮かぶ疑問に答える形で話が展開していきます。氷河時代の生き残った植物群、温暖な縄文時代に消滅した針葉樹林、風食による裸地の形成と高山植物の生存、現在の気候に合わず消えるブナ林、移動する砂礫地を求めて生育するコマクサ、地質が決める植物群落、土石流によって育つシオジやサワグルミ、地質条件と残雪が生み出すお花畑など自然の造りだす不思議な現象が解説されています。


お薦めBOOK
生命と地球の歴史 丸山茂徳・磯崎行雄共著 岩波書店 (1998/1) 740円

 45.5億年前に誕生した地球は、マグマオーシャンとプルームテクトニクスの支配後、40億年前のプレートテクトニクスの開始、27億年前の磁場の誕生、19億年前の超大陸の誕生およびその後の超大陸の離合集散の繰り返しなど急激な変化を経験しています。筆者は最新の研究成果を基に、磁場の形成や超大陸の誕生およびその離合集散をプルームテクトニクス(地殻、マントルおよび核までが連動して影響し合うという新しい地球観)によって捉え、その地球史が生命史に深く係わってきた歴史を解説しています。地震はプレートテクトニクスによって説明されますが、本書は歴史的視点で、大きなスケールでプレートテクトニクスを説明しています。


ボタン地盤の科学 土木学会関西支部編 足立紀尚他 講談社 (1995/9) 1,140円

 「地盤」はどのような構造をしており、どのような性質を持っているのでしょうか。そして、人間の生活にどのようなかたちで関わっているのでしょうか。本書は「地盤」を人間が生活している場として捉え、地盤の形成、地盤環境、地震や火山などの災害、地盤の探査、地盤の利用状況などが紹介されています。執筆者は地盤と係わりの大きい8名の専門家です。


ボタン桜島大噴火 橋村健一 かごしま文庫-L 春苑堂出版(1994/1) 1,457円

 古文書から桜島の噴火の歴史をたどり、文明大噴火・安永大噴火、そして明治以降も大正大噴火・昭和大噴火と何度も噴火を繰り返しており、当時の被害の状況や人々の避難行動、あるいは移住や村の復興の状況などの苦難の足跡が紹介されています。桜島島内および桜島周辺地域には鹿児島市をはじめとして73万人が住んでいるといい、筆者は火山と人との共存を重視しています。桜島を知ることが減災につながるとして、大噴火に備えるための対策や提言で締めくくられています。


ボタン崩れ 幸田文 講談社文庫 (1994/10) 388円

 年齢七十二歳の筆者は崩れという非日常的な光景に魅せられるかのように、静岡県の大谷崩れ、富山県の鳶山崩れ、富士山の大沢崩れ、長野県の稗田山崩れ、および桜島や有珠山を次々と訪れます。そして、例えば、『そろりそろりと登れば、足もとのフウロソウが目に入る。目の底にはもっと強く残っている。大沢谷の姿がある。谷とはなんだろう、とそればかり思う。両側から窪められたところ、刳れたところ、はざま、物の落ち込むところ、そして何よりも、岩石を運ぶ道筋だと思った。』というように、文学者の目で崩れを捉えていきます。


ボタン発掘を科学する 田中琢・佐原真編 岩波新書 (1994/10) 602円

 各分野の16人の専門家によって執筆されており、残存脂肪分析法、酵素抗体法、年輪年代法、寄生虫、花粉、プラント・オパールなどの分析によって古代人の生活状況を復元する新しい研究が紹介されており、何を食べていたか、土器は何処で生産されたか、建築物がいつ建てられたかなどが分かってきました。また、遺跡の発掘現場に見られる地震の痕跡の研究では、地震の発生が検証されたり、地震について記載された古文書が発見されていない地域で大地震が発生していたことが判明したりしていることが紹介されています。


ボタンヒマラヤはどこから来たか −貝と岩が語る造山運動− 木崎甲子郎著 中央新書 (1994/6) 660円

 1億5千年前、全ての大陸が集まって1つの超大陸を構成していました。この超大陸は分裂し、インドはアフリカ大陸、南極大陸から離れて北へ移動し、1億年後にユーラシア大陸に衝突します。プロジェクトチームは、チベット周辺の山脈、ヒマラヤ山脈などの劇的な変貌を水準測量、地形判読、断層や堆積物の調査、花粉分析、淡水貝化石調査などをもとにして、大きなスケールのドラマを解明していきます。


ボタン南の海から来た丹沢 -プレートテクトニクスの不思議- 神奈川県立博物館編 有隣堂新書 (1991/12) 980円

 夏にもなると丹沢の表尾根は首都圏からの日帰り登山者で賑わいます。この丹沢の起源は南の海に存在した海底の高まりであり、海底の岩盤であるプレートによって運ばれ、日本列島と衝突しました。更に伊豆半島も衝突し、丹沢を隆起させたと考えられています。伊豆半島の衝突が現在も続いており、火山の噴火や地震などの現象を起こしています。小田原周辺では西相模湾断裂と呼ばれる断層が定期的な周期で活動して大地震を起こしているとし、芦ノ湖の逆さ杉は地震に伴う山津波によって巨大樹が立ったまま湖中に滑り込んだ結果であろうと解説されています。


ボタン日本列島の誕生 平朝彦著 岩波新書 (1990/11) 631円

 海洋底は動き、大陸は分裂するという動的な地球観のプレートテクトニクスが次第に実証され体系化される過程で、日本列島はいつ、どのように誕生したのかという地史が書き改められ、疑問が解き明かされていきます。筆者は四国太平洋側に分布する四万十帯という堆積物よりなる地層を研究し、放散虫化石の年代決定、残留磁気による地層形成位置の推定などから、四万十帯は赤道域で噴出した岩石や堆積した岩石が日本列島に付け加わった付加体であることを確信するに至ります。四万十帯の謎解き、日本最古の岩石の由来、日本海と日本列島の形成、日本列島への丹沢や伊豆半島の衝突などがアジア全体を視野に入れて解説されています。


お薦めBOOK
闇を裂く道 吉村昭 文春文庫 (1990/7) 552円

 東海道線の熱海と三島を結ぶ丹那トンネル(7,804m)の工事を題材とした小説で、難工事に挑んだトンネル技術者や坑夫を描いています。丹那トンネルは完成まで7年間の予定で大正7年(1918)に起工されましたが、凄まじい湧水や土圧に遭遇し、多くの人命を失いながらも16年の歳月を要して完成に至りました。また、トンネルが大量の湧水を引き込んだため、丹那盆地に渇水問題をもたらすことにもなりました。丹那トンネルは活断層である丹那断層を横断しており、奇しくもトンネル掘削中に丹那断層を震源とする北伊豆地震(M=7.3)が起こり、掘削したばかりの坑道が2m余りくいちがを生じました。 


お薦めBOOK
誕生と観察の記録 昭和新山 三松正夫著 三松正夫記念館発行 (1988/5) 1,455円

 成長する昭和新山を絶えず見続け・観察した記録が本書に著されています。著者は当時北海道壮瞥町の郵便局長であって専門家ではありませんでしたが、昭和新山に取り付かれたような熱心な観察と調査が専門家に絶賛されるような成果を生み出しました。三松ダイヤグラムと呼ばれる昭和新山の成長過程を示した図は世界的にも有名です。
 本書は第一部の誕生の記録と第二部の昭和新山生成日記で構成されています。日記には生々しい火山活動の様子がスケッチとともに示されており、落石や有毒ガスなどの危険を冒して火傷を負いつつ実施された調査観察には驚かされます。著者にとっては恐ろしくも美しい魅惑の世界であり、日記には「美しい」や「美麗」という単語が散在しています。

ボタン地下核実験探知 ブルース A. ボルト 小林芳正監訳 古今書院 (1986/5) 2,700円

 1974年米ソ間に150キロトン以上の地下核爆発だけを禁止するという部分的地下核実験停止条約が調印されました。本書はこれにまつわる核爆発地震の科学研究およびその裏話ついて述べられています。地下核実験の探知・識別技術とは核爆発地震と自然地震との識別技術であり、地震観測網、地震アンテナ(地震計アレー)などの整備に加え、表面波マグニチュードと実体波マグニチュードを比較する識別法など多くの地震学的識別法が核実験を通して試みられてきました。その他、放射能による環境被害、監視網を逃れるトリック、核爆発の平和利用の可能性、核地震による自然地震の誘発などの諸問題がどのように取り扱われたかをエピソードを交えて述べられています。


ボタンこれだけは知っておきたい 安全な土地の選び方 今村遼平著 鹿島出版会 (1985/10) 第四刷(1997) 2,800円

 安全な土地に住むためにはどのような点に注意する必要があるでしょうか?土地を山地・丘陵、台地、低地に分け、それぞれの土地に特有な災害である山崩れ、土石流、液状化、不同沈下、洪水、津波などについて解説し、土地選びにのポイントが示されています。また、危険な土地に住まざるを得ない場合であっても、その危険性を認識することが重要であると述べられています。


お薦めBOOK
地震・プレート・陸と海 深尾良夫著 岩波ジュニア新書 (1985/4) 780円

 本書は、「固体地球科学」の入門書であり、若い世代を対象としています。「海はなぜ深い?山はなぜ高い?」などの説明を通して、大陸移動、地震や火山などのダイナミックなメカニズムが解説されています。”ハット”するような明快な解説とその流れの巧みさには驚きます。


ボタン火山の話 中村一明 岩波新書 (1978/1) 640円

 伊豆大島、ハワイ諸島、アイスランドの火山を例に、火山の形状や噴出物の特徴などを観察することからどのような活動の歴史が読み取れるかを防災を意識しつつ解説されています。プレートテクトニクスの立場では、火山はどのように理解されるかを解説し、箱根や富士山の側火山の分布は大島と同様に一定の方向に集中しているのはプレートが日本列島に潜り込む方向に由来していると説明されています。

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