地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

震災の碑

建立時期と建立頻度および碑数と建立者の関係を示すグラフ

関東大震災は日本史上最大の震災であったことから、東京都・神奈川県などに多くの震災の碑が残されています。

関東大震災の碑の建立状況からその特徴を挙げると次のようになります。

  1. 建立時期 右上の図に示すように、一周忌(一周年未満を含む)および三回忌(二周年)までの建立実績が圧倒的に多い。その他、七回忌、十三回忌など法事と関連した年および十周年に多い。十三回忌を過ぎると建立基数は少なくなる。
  2. 建立者 右下の図に示すように町内・地区といった比較的狭い地域の有志(共同体)である場合が最も多い。職場・同業者あるいは団体や市町村などの自治体がこれに次ぐ。
  3. 碑の名称と目的 名称は供養・慰霊・追悼・記念(紀念)などが多いが、その他多種にわたる。記念碑とされても慰霊を目的とした碑もあるので、目的別に慰霊と記念(慰霊以外)に別けるとその基数の割合はほぼ3対1で、死者を弔う意味合いの碑が大勢を占める。なお、記念碑の代表的な碑としては避難記念碑や復興記念碑がある。
  4. 設置場所 公園や広場および道路に面した場所であることが多い。寺院の場合でも墓地ではなく本堂や本殿に近い広場である場合が多い。

上記の特徴、とくに資金のない震災から間もない時期に建立が集中している事実から慰霊に対する地域共同体の強い意志を読み取ることができます。

震災の碑の存在は地域共同体(町内や町村)の連帯を意味し、震災は個人の問題を超えて地域共同体の問題として捉えられていることを示していると思われ、そこには同情や助け合いの精神が働いていたであろうと想像できます。このような環境で建立された震災の碑は個人の墓碑とは本質的に異なり広く外に向かって開かれています。それには犠牲者に対する慰霊と同時に震災がここにあったことを将来に伝えたいという強い願いが込められています。

当時の被災者の願い思うと、震災の碑は被災者から現在へ伝える防災のメッセージにほかならないように思われます。