2013/7作成 2016/5更新
地震・防災関連用語集
カテゴリ:地震
震度階級(震度階)は体感や被害の大きさに対応するような地震動の激しさの程度を階級で表したものであり、気象庁の震度階級が用いられています。震度7は震度階級の最上位の階級であり、地震動の強さの程度が最大にランクされます。震度は震度計で計測された加速度振動を数値処理して算出された計測震度が用いられます。
表 気象庁震度階級の変遷 | |||
1880年頃 最初の震度階級 4階級 |
中央気象台震度階級 (関谷震度階級) 7階級 |
1948年の福井地震を契機とし、翌年から適用 8階級 |
1995年の兵庫県南部地震を契機として、翌年10月から適用 (計測震度使用) 10 階級 |
-- | 0無感覚 | 0無感 | 震度0 |
微震 | Ⅰ微震 | Ⅰ微震 | 震度1 |
弱震 | Ⅱ弱震(弱き方) | Ⅱ軽震 | 震度2 |
Ⅲ弱震 | Ⅲ弱震 | 震度3 | |
強震 | Ⅳ強震(弱き方) | Ⅳ中震 | 震度4 |
Ⅴ強震 | Ⅴ強震 | 震度5弱 | |
震度5強 | |||
烈震 | Ⅵ烈震 | Ⅵ烈震 | 震度6弱 |
震度6強 | |||
Ⅶ激震 | 震度7 |
右の表に気象庁震度階級の変遷を示します。
藤井陽一郎著「日本の地震学」(1967)によると、気象庁の震度階級の基礎になったのは、「微、弱、強、烈」の4段階の震度階級で、明治十三年(1880年)には既に工夫されていたらしいと述べられています。石本巳四雄「地震とその研究」(1935)には関谷震度階級として表の2列目に示す7階級の震度階級が記載されています。
1948(昭和23)年の福井地震はマグニチュード7.1でしたが、規模の割りに被害が大きく、福井平野では全壊率100%に達する集落が多数発生しました。この地震が契機となり、気象庁の震度階級に新しく震度Ⅶが加わり、震度は0~Ⅶまでの8階級になりました。
初めて震度Ⅶとされたのは福井地震から46年6ヶ月後の1995(平成7)年の兵庫県南部地震(マグニチュード7.3 阪神・淡路大震災)でした。当時、震度Ⅶは気象庁の職員が現地調査*1を実施してその結果から決定することになっていましたので、発震直後の速報値ではテレビの画面に震度Ⅶが表示されることは本来ないことでした。最大震度Ⅵの地震として速報値が発表*2されたことは、震度Ⅶよりもランクの低い震度の地震であったと認識された可能性があり、救援活動の初動に遅れが生じた原因になったのではないかとの批判がありました。これにより、翌年の1996(平成8)年からは震度計を用いた10階級の計測震度が用いられるようになりました。
計測震度が採用され、最初に震度7が観測されたのは2004(平成16)年の新潟県中越地震(マグニチュード6.8)でしたが、発震後数日は震度7は発表されませんでした。電気系統の復旧によって川口町に設置されている震度計に保持されていた震度情報が気象庁に入電したため、震度が7であることが発震日から7日後に確認されました*3。その次に震度7が観測されたのは、2011(平成23)年の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)であり、宮城県栗原市で観測された震度7が速報値として発表されました。
そして、2016(平成28)年の熊本地震では一連の地震の中で前震(マグニチュード6.5)と本震(マグニチュード7.3)でそれぞれ震度7が観測されるということが起こりました。本震の震度7は熊本県が設置した2か所の震度計で観測されていましたが、通信トラブルで気象庁に送られなかったことから、前震の最大震度が7で本震の最大震度が6強という状態*4が本震の4日後まで続きました。
平成28年5月現在、震度Ⅶあるいは震度7が観測された地震は、兵庫県南部地震、新潟県中越地震、東北地方太平洋沖地震および熊本地震の4つの地震です。兵庫県南部地震は現地調査による震度Ⅶですが、それ以後は計測震度の震度7です。
なお、震度階級に震度7(Ⅶ)ができたのは福井地震以後であり、当然のことながら、福井地震以前は震度7(Ⅶ)相当の地震動があっても震度Ⅵに含まれていました。過去の地震の震度を比較する場合、福井地震を境に基準が異なることに注意が必要です。
兵庫県南部地震を契機として震度観測点が整備・増強され、震度観測点は気象庁の他に地方公共団体や防災科学研究所を含めて4,384ヶ所*5になります。震度観測点の整備により、比較的狭い範囲の激しい地震動を震度7として拾い出すことが可能になり、震度7の出現頻度は震度観測点数の充実とともに高まるものと思われます。
全国の4,300ヶ所以上の観測点における計測震度は各管区気象台等、都道府県庁または(独)防災科学技術研究所等に電話回線や防災行政無線等を使用し集約・処理され、地震発生から数分後には、気象庁へ提供されます。計測震度はリアルタイムの情報として重要であることから、電話回線の被害を想定し、静止気象衛星ひまわり経由で送信が行われています(2013年時点430ケ所)*6。
なお、震度7は震度階級の最上位の階級であり、激震という環境下での計測とそのデータの送信は今後ともトラブルが付いて回る可能性がありそうです。
*1 概ね200m四方において倒壊家屋が30%に及んでいれば震度Ⅶと判定されることになっていたが、建物の耐震性は時代によって変化する。
*2 実は震度Ⅵもすんなり報道されたのではない。当時の震度は体感による観測と並行して計測震度による観測を開始されていました。神戸気象台の震度計が震度6を記録しましたが、通信専用回線にトラブルが発生したため、気象庁からの「神戸震度6」の正式の情報が報道されたのは地震発生から約30分後でした(中森弘道阪神・淡路大震災における初動情報 阪神・淡路大震災の社会学 第1巻 第1章)。
*3 報道発表資料 平成16年10月30日15時00分 「平成16年(2004年)新潟中越地震について(第18報)」より
*4 ある一連の地震(前震・本震・余震)において本震の最大震度より前震あるいは余震の最大震度が大きいことはちぐはぐな感じを受けるが、震源断層の挙動と震度観測点の位置関係の違いなどによっては起こり得ないことではない。
*5気象庁Webページ 知識・解説>地震・津波の観測監視体制>地震・津波の観測点分布>震度観測点(2016/5閲覧)
*6 田中省吾他(2013)2-3 衛星震度データ変換装置 気象衛星センター 技術報告第59号 p39-41