地震・防災関連用語集
カテゴリ:地震
地震観測網の整備などが進んで地震に近代科学*が適用されるようになる時期より以前に起きた地震を古地震といい、古地震の中で史料として残されている地震を歴史地震といいます。
史料に残らない時代でも遺跡の液状化現象跡、活断層による地層のずれ、津波堆積物の分布など地形・地層中に残された地震の痕跡から地震の規模を推定することができ、放射年代、テフラや年輪を用いた年代、土器や陶器などの遺物による年代などから地震の発生した時期を絞り込むことができます。史料が残るような時代であれば、地震の痕跡と史料を対比してより詳細な地震像が浮かび上がってきます。
理科年表の「日本付近の主な被害地震年代表」の1番目にはわが国の歴史に現われた最初の地震として、「日本書紀」に記述されている416(允恭5)年8月23日の地震が挙げられています。この地震はいつどこで地震動があったかは分かっても被害については記述がなく地震の全体像は漠然としています。同表2番目には599(推古7)年5月28日に大和で倒潰家屋が生じた地震が挙げられ、マグニチュード7.0と推定されています。
歴史地震を史料に残された地震と定義するならば416年の地震が最も古い歴史地震になります。
*近代科学
日本での地震観測は1875(明治8)年より、内務省地理局において始まりました。これが現在の気象庁の地震観測の始まりです。1885(明治18)年には東京気象台に新型の地震計が採用され、新型の地震計に統一した地震観測網の整備が進められました。1887(明治20)年には震度別地震回数が統計的に集計され、統計にもとづいた検討が加えられました。これは近代科学としての地震の研究が始まったことを意味しています。なお、同年東京気象台は中央気象台と改称されました。(藤井陽一郎 日本の地震学 紀伊国屋新書 1967 による)
「この分野では1885年より以前の地震を意味することが暗黙の了解となっている。」(中村操)とあり、歴史地震とは1885(明治18)年より以前の史料に残された地震を指すとしています。(1855 安政江戸地震 報告書」 中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会 第4節のコラム「地震史料集について」による)