地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

活断層

活断層の定義

最近の地質時代に繰り返して活動し、将来も活動して地震を発生させると考えられる断層を活断層と呼びます。

最近の地質時代とは、現在の地殻変動と同じ運動が継続している地質時代であり、一般には第四紀後期(第四紀中ごろ 70~30万年)以後を指します。

第四紀中ごろまで活動し、その後停止している断層も一般には活断層に含めますが、再活動する可能性は低いと考えられています。

現在の地殻変動

定常的な地殻変動の図

定常的な地殻変動の図

右の図はGPSの観測で捉えた地殻変動(国土地理院 東海地方の地殻変動 1998年1月から2000年1月までのデータを使用した年間移動速度)であり、単に2年間のデータが示す図からでも東西方向の圧縮を受けている様子がわかります。

第四紀は東西圧縮の時代と言われ、第四紀初頭頃からほぼ一定の速度で地殻変動が継続してきたと考えられていましたが、第四紀後期から断層運動が激化、現在に向かって変位速度を増している例が中央構造線などで見出されています。

活断層の元となる断層

中央構造線は日本内陸の最長の活断層であり、第四紀後期に著しく動いている部分は紀伊半島中央部以西であり、陸域では九州南西部まで追跡され、その長さは500km越えます。中央構造線は中生代ジュラ紀から白亜紀にかけて形成された大規模な横ずれ断層を起源としており、現在のプレート運動と同じような運動の始まった第四紀初頭頃から活断層として動いていると考えられています。このように、活断層は日本列島の形成に伴う地質時代に形成された無数の断層のうち、現在の圧縮応力によるひずみを開放するのに適した断層が活断層となって活動していると考えられ、数ある断層の中の一部が活断層に該当します。一部に該当するといえども日本列島の内陸部には大小2,000を超える活断層が存在しているとされています。活断層は一般には第四紀後期(第四紀中ごろ 70~30万年前)以後に繰り返して活動している断層を指しますが、その起源は第四紀初頭頃(約200万年前)まで辿れることになります。

活断層と地震

圧縮による力が地下の岩盤に加わり、徐々に歪が蓄積されて岩盤が耐えられなくなると大規模な破壊が起きます。すなわち、活断層が動くことによって地震が発生します。大地震が起こると地下の破断面が地表に出現することがあり、地震によって地表に出現した断層を"地震断層"と呼び、これと区別して地下深部の震源域に想定した断層を"震源断層"といいます。

地震断層としては濃尾地震(1891)の根尾谷断層、北丹後地震(1927)の郷村断層、北伊豆地震(1930)の丹那断層、鳥取地震(1943)の鹿野断層などが有名です。これらの地震断層は、震源断層の延長が地表に現れた断層とされています。一方、鳥取県西部地震(2000年 マグニチュード7.0)は既知の活断層が知られていなかったため、「未知の活断層で発生した地震」とも言われ、亀裂などの地変も小規模でした。これらの地変はトレンチ掘削調査で地震断層(活断層)であることが確かめられました。

一般に、大都市のような平坦低地は現在の河川の堆積物である泥~礫によって被われており、地下の岩盤に活断層が存在していたとしても地表では確認できません。活断層が活動しても地表まで変形が及ばないか、あるいは変形が地表まで及んだとしても短期間のうちに堆積物によって覆い隠されて地形として残っていないためです。地下の見えない断層を”伏在断層”と呼ぶことがあります。首都圏では厚い堆積層に被われているため、将来大地震を起こすような未知の活断層が存在しないとは限りません。活断層が活断層として認識されるためには史料に地震の発生と断層の出現が記録として残されていること、過去の地震で一定以上の変位・地変が累積してそれが地形として保存されていること、あるいはトレンチ調査や物理探査(反射法地震探査)など詳細な調査によって確認されていることが必要です。

「文部科学省の地震調査推進本部 地震調査委員会」は、平成8年(1996)以降、断層帯(断層系含む)を評価し、過去の活動、将来の活動、将来の発生確率(長期評価)などを発表しています。今までの活断層の調査によると、活断層の活動間隔は短くても1,000年前後、断層によっては数万年かそれ以上であるとされています。

参考資料

日本の活断層と地震 岡田篤正・安藤雅孝 日本列島の形成 平朝彦・中村一明編 岩波書店 82-93 1986

*トレンチ掘削調査

伏島祐一郎他 200年鳥取県西部地震断層のトレンチ掘削調査 活断層・古地震研究報告 No.2p.183-208 2002