地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

プレスリップ

地震は断層が動くことによって発生しますが、地震波を放出するような急激な破壊に突入する前にゆっくりとしたすべりが発生するのではないかと考えられています。この前兆的なすべり現象をプレスリップといいます。

1944年の東南海地震が発生したとき、静岡県の掛川付近で水準路線測量が実施されていました。このときの測量原簿の調査からプレスリップと思われる地殻変動が起こっていたことが指摘されました。これについては異論もあり確定的とは言えないにしても岩石試験による破壊過程の研究からはプレスリップが起こると考えられています。

大きな地震であればあるほどプレスリップの量が大きくなるので海溝型の巨大地震の場合は前駆的な現象として捉えられるのではないかと期待されています。

東海地震ではプレスリップの検出が直前予知の柱に設定されており、ひずみ計の有意な変化の程度によって、東海地震観測情報、東海地震注意情報、東海地震予知情報が出されることになっています。東海地震予知情報は警戒宣言とほぼ同時的に出される情報であり、発表基準は「東海地域におけるひずみ計3箇所以上で有意な変化がプレスリップによるものと認められた場合等」となっています。

プレスリップであると判断する基準は、

  1. 地殻変動の一定期間の変化量がプレート境界に置いた低角度断層で説明可能なこと
  2. 異なる観測点の変化が同期しており、時系列の関数系が同一とみなせること
  3. 時間的変化に加速度的傾向が認められること

の3つです。

東海地震の被害想定(中央防災会議 平成15年)によれば、東海地震が午前5時に発生すると直前予知(警戒宣言の発令)ができない場合は約7,900人~約9,200人の死者が出ると想定されていますが、直前予知が成功した場合の死者は約1/4になるとされています。