地震・防災関連用語集
カテゴリ:地震
地下の震源から放射された地震波が伝播して離れた地点に達する経路を考えると、深部の地震動がほとんど変化しない領域と浅部の大きく変化する領域に分けて考えることができ、深部の地震動がほとんど変化しない領域を地震基盤あるいは単に基盤とも呼びます。
地震動の大きさや地震災害の程度は地表近くの地盤の状態が大きく影響を及ぼしており、旧河道や旧沼地あるいは厚い軟弱層などが分布するような場所では地震動が大きく増幅されることが知られています。地表付近で地震動が増幅される現象は津波が海岸に近づくと波高が高くなる現象と似ており、S波の速度が深部から地表に向かって遅くなることと津波の速度が沖合いから海岸に向かって遅くなることとが対応しています。
また、尾根や谷の地形を考えると、谷部と比べて尾根中心部では風化帯が厚くてS波速度も小さいことが普通であることから、尾根部では震動が増幅されやすくなります。これに対して地下深部では岩盤(地盤)の状態が安定しており、放射による減衰が無視できるような距離以遠では地震動(S波の震動)の大きさももほとんど変化しません。
なお、地震動としてS波が評価の対象となるのは地震被害がS波(小さな縦揺れの後に続く大きな横揺れ)によるからです。
震源から放射される地震動と地震基盤内を伝播する地震動を一定と考えると、後は基盤面から地表に達するまでの伝播経路に沿ったS波の速度や層の厚さ(地盤構造モデル)を評価することで各地の地震動を想定することができます。中央防災会議の「首都直下地震対策専門調査会」の実施している地盤構造モデルは、S波速度3,000m/sを「地震基盤」とし、地震基盤からS波速度が700m/sの工学的基盤の上面までを「深部地盤」と呼び、工学的基盤から地表までを「浅部地盤」と呼んで区別しています。
S波の速度分布から計算された地表の震度は震度分布図として表されます。例えば東海地震のような具体的な地震やある都市の直下で起こった場合の仮想的な地震の震度分布は防災計画の基本的な資料として使用されています。
基盤という言葉は広く使用され、分野によってイメージが一様ではありませんが、一般にはその地域の地下に広く分布する物理的一様な、あるいはある地質時代に形成された代表的な岩盤または地盤をさすことになります。
橋梁の耐震設計ではS波速度が300m/s程度以上(粘土層の場合はN値が25以上、砂質土層の場合はN値が50以上)の地層を基盤とし、基盤面より上位の地盤が評価対象となっています。
S波の速度値はボーリング孔内に複数個の地震計を挿入してS波の伝播時間を測定する方法(検層)や地表に数台の地震計を配列して微動を観測する方法(微動探査)、カケヤなどで起振して一直線上に並べた多数の地震計で伝播波動を測定する方法(表面波探査)によって得ることができます。また、ボーリング調査から得られるN値から推定することもあります。