地震・防災関連用語集

カテゴリ:災害

災害復旧・復興

災害以前の状態に戻すことを復旧といい、長期的な展望に基づいてより安全で快適な新しい生活の場を創出することを復興といいます。復興と復旧は対比して用いられることがあります。

落雷による停電や鉄道の不通など軽微な被害に対しては復旧することによって以前の状態に戻りますが、大災害の場合は道路の拡張や区画整理など復興計画の策定と実施が行われることがあります。復興の代表的な例として関東大震災の帝都復興事業があります。帝都復興事業で焼失区域の約九割の区域で区画整理が行われ、昭和通り・第一京浜・大正通り・永代通り・晴海通りなど幹線道路の多くが整備されました。現在の首都東京が首都であり続けることができたのは関東大震災の復興によるものであるといわれるゆえんです。

現在の都市の緑豊かな環境と災害に強い町並みの多くは災害復興によるものであり、復興計画の廃止・縮小という苦難と挫折を繰り返しながらも全国に多数存在しています。但馬地震(1925年)の兵庫県城崎温泉柳並木、昭和三陸地震津波(1933年)の集落高地移転・敷地嵩上げ・防潮堤の建設、函館大火(1934年)の区画整理と幅員55メートルの防火道路(緑樹帯)の増設、静岡大火(1940年)の区画整理および幅員36メートルと30メートルの2本の防火道路や駅前広場の新設、戦災復興における仙台のケヤキ並木(定禅寺通り)、名古屋の100メートル道路(若宮大通公園)、姫路の大手前通り、広島の平和大通りと河岸緑地、熊本の辛島(からしま)公園などがあり、これらを現在の人々が良好な環境として享受しています。

大災害に見舞われた大多数の被災者は生きることに精一杯であり将来の良好な環境を望むような境遇にはありません。可能ならば時間を災害前に戻してほしいと願うだけでしょう。災害復興から生まれた現在の良好な環境は被災者の犠牲の上に生まれた環境であることを知ることは防災の立場からも重要なことではないでしょうか。