地震・防災関連用語集

カテゴリ:災害

地盤と地震被害

木造と土蔵の被害率

木造と土蔵の被害率

軟弱地盤を指して地盤が悪いといわれますが、地盤と地震被害(震害)との関係は、建物の振動特性などと関わっており、単純ではありません。右の図*1は関東大地震の際の旧東京市内における木造二階建てと土蔵の被害分布を比較した図であり、振動周期の長い木造は地盤の悪いといわれる下町で被害が大きいのに対して、振動周期の短い土蔵は地盤が良いといわれる山の手で被害が大きく、土蔵に限れば地盤の良否と被害との関係は逆転しています。木造と土蔵の被害の例は、震害は地盤だけでなく、地盤と建物の相互関係で異なることが広く信じられてきました。

ところが、この図が示すような現象に対して疑問*2が出されています。当時の資料調査によると、土蔵の減少率と木造の焼失率との間に非常によい相関があることが確かめられ、このことから推定できるのは猛火によって焼かれた下町では震害としての土蔵の被害がカウントされていないというものです。即ち、地盤の悪い下町では木造はもとより、土蔵も大きな被害を受けている可能性が大きいということです。

地震の被害と地盤との関係は、増幅作用、共振作用、被害の進行性など多くの要因があり、それぞれの要因は地盤の硬軟に応じて時には不利に、時には有利に作用し、その総合的な影響は相当複雑であるとされていますが、相当複雑であるといっても、戸建住宅のような木造建築に限れば軟弱地盤で代表されるような地盤で震害が大きく、軟弱地盤イコール悪い地盤ということができます。

一方、鉄筋コンクリート造のマンションの場合、軟弱地盤で被害が集中している傾向は明瞭でないと理由で、基礎が適切であるなら軟弱地盤が必ずしも悪い地盤であるとはいえません。

軟弱地盤のほかに、地震に際して注意を要する地盤には、砂質地盤、異種地盤、盛土地盤などがあります。

都市の拡大によって、新潟地震での液状化、宮城県沖地震での造成地(団地)などの地盤に関連した被害が目立っています。

*1 木造と土蔵の被害率(関東大震災、1923) 大崎順彦 地震と建築 岩波新書 1983より 原典は斎田時太郎の報告書1935

*2 1923年(大正12年)関東地震による地震動と地盤 "土蔵の話"は本当か? 武村雅之 地震ジャーナルVol.34 2002