地震・防災関連用語集

カテゴリ:災害

津波

地震に伴う海底の変位によって発生する波を一般に津波といい、地震の規模に比べて予想以上の大きな津波を発生する地震を津波地震といいます。地震のほかに火山の噴火や山体の崩壊によって生じる波も津波に含まれます。

西暦1700年以降の約300年間では死者・行方不明者千人以上出した地震は、2011年の東北地方太平洋沖地震を入れて24回ありますが、そのうち11回は津波による被害あるいは津波が被害を大きくしています。1896年(明治29年)の明治三陸地震津波では、津波が三陸沿岸に来襲し、約26,000名もの犠牲者を出しました。この災害は世界各国に伝えられ、それ以後、津波は"Tsunami" として世界共通語になったといわれています。

津波は外洋ではゆったりとした波であり、波長(波の山と山あるいは谷と谷の距離)は数10kmにもなります。津波の速度は水深に依存し、浅いほど速度が遅くなります。外洋ではゆったりとしていた津波が水深の浅い沿岸に近づくと、波の先端ほど水深が浅いので、水深の浅い津波の先端部にブレーキがかかり、津波の前面に後方部が乗り上げるような形となって波高が高くなります。これを浅水効果といいます。また、V字型の湾内に津波が入り込むと、両側から圧縮されるような現象が生じ、狭い湾奥になるほど波高が高くなります。これを集中効果といいます。また、津波の波長が湾の大きさの4倍程度である場合は、湾奥での波高が次々と高くなる現象が生じます。これを共鳴効果といいます。たらいの水を大きく揺するには、たらいの大きさによって揺すり方のテンポが違うのと同じように、湾の大きさに共鳴しやすいような波長の津波が湾内に侵入すると共鳴効果が生じます。その他、水深が浅い深いによって進路が屈折する現象などが加わり、時には、「屏風を立てたような」、「海の壁」と表現されるような津波が来襲することがあります。水深が数十メートル以上ある場合の津波の伝播速度は、重力の加速度に水深を掛け、平方根を取ったもので表されます。水深4,000mの外洋では、1秒間に約200m、1時間に約700kmの速度で進み、ジェット旅客機の巡航速度と同程度です。水深100mになると、1秒間に約30m、1時間に約110kmで、高速道路を走る車より少し速い程度になります。

津波が陸に上がってくる時の速度は、1秒間に約10m程度であるといわれており、津波が目前に迫ってくると逃げるのが困難です。

津波が川に侵入すると津波の先端部の水面は激しく渦巻くステップ状の形状になります。これを段波と呼びます。段波は段差を保ったまま上流に向かって遡上し、時には川に浮かぶ船を上流に運び上げて橋を破壊するような被害が生じます。

以前の津波予報では手作業や判断を要していたので、発表されるまでに時間がかかり、津波警報が間に合わないケースがありましたが、1999年からは自動処理技術を用いた新しい監視システムに換わりました。地震が発生し、その地震のデータから予想される津波の来襲時間や高さを計算するのでは間に合わないので、前もって、多くの地震のモデルについてどのような津波になるかを計算しておき、実際の地震の際は最も似かよったものを検索するという方法がとられています。

地震発生から2分で震度3以上の震度速報、3分で津波予報、これに引き続いて予想される津波の高さなどの津波情報が発表できるようになり、5分前後からは地震の発生時刻、地震の規模(マグニチュード)、震源の位置および大きな揺れが観測された市町村名などが発表され、津波情報が順次追加されます。これらの情報は、地上回線によるオンラインや緊急防災情報ネットワーク、静止気象衛星「ひまわり」などを通して防災機関や報道機関に伝えられ、これらの機関を通じて住民に知らせるようになっています。

2013年5月更新