地震・防災関連用語集

カテゴリ:地盤・基礎など

酸欠空気

地下の砂礫層には硫化鉄や炭酸水素鉄などが還元状態で多量に含まれていることがあります。これらが空気に触れることによって酸化し、酸化第二鉄に変化します。このとき多量の酸素が消費されるため酸欠空気となります。大都市では地下水の汲み上げによって地下水位が低下し、砂礫層の通気性が増大しています。圧気シールド工法によって地下工事が行われると、圧縮空気が砂礫層内を通り道にして広範囲に広がり、工事現場だけではなく地下鉄やオフィスビルの地下室などでも入り込んで、時には酸欠事故を発生させることがあります。

地下の酸欠空気は大気圧と関係しており、気圧が低い天気の悪い日には地下から酸欠空気が噴出し、気圧が高くなると地中に空気が吸い込まれるように、気圧に応じた呼吸運動を繰り返しているので、天気の悪い日に酸欠事故が発生しやすくなります。事故防止対策としては地下水の汲み上げ規制、圧気式シールド工法から泥水シールド工法への変更、地下室の換気と酸素マスクの装備などが必要であるとされています。大地震で地下室の壁や排気口に亀裂が入れば、そこから酸欠空気が噴出してくることもあるかもしれません。地震の後に地下室を点検する場合はそれなりの準備をして入室しなければなりません。

一方、砂礫層での酸欠空気に対して粘土層では別の問題があります。一般に、海底の堆積物は堆積物中のバクテリアによって有機物が分解されると同時に酸素が消費され、還元状態になっています。硫酸還元菌は海水中の硫酸イオンを消費して硫化物を生成するので、海成粘土には硫化鉄が多く含まれています。海成粘土を含む都市部のトンネル工事では湧水を防止するため圧縮空気が用いられますが、今まで空気から遮断され還元状態であった海成粘土が空気に触れると硫化物の酸化反応が進行して硫酸を生じ、発熱現象を引き起こすことがあります。硫酸はトンネル工事のシールド自体ばかりでなく、ガス管や水道管などの埋設管も腐食させます。地盤が海成粘土からなる地域では、埋設管をポリエチレンで被覆したり、埋設管を耐腐食の材質に変えたりすることによって腐食を防止しています。

【参考 酸素濃度と人体に与える影響】
正常空気:21% 16%で呼吸脈拍の増加や頭痛吐き気 10%で顔面蒼白意識不明 8%以下で昏睡から呼吸停止(死亡)