地震・防災関連用語集
カテゴリ:環境
水が酸性であるかアルカリ性であるかは水の中に含まれる水素イオン濃度(単位をpH)によって決まります。pHは0~14の範囲の値で示され、pH7を中性としてpH7より数字が大きいほどアルカリ性が強く、数字が小さいほど酸性が強いことを示します。
空気中にはごくわずかに二酸化炭素が含まれているため、雨水に炭酸が溶けて全く汚染されていない雨でもpH5.6程度の弱酸性になります。このpH5.6を基準にして、これより酸性度の強い雨を狭い意味で酸性雨と呼びますが、一般には雨や雪・霧などの湿性降下物と粉じんやガス状物質の乾性降下物を合わせた酸性降下物を酸性雨と呼びます。
化石燃料(石炭や石油)の燃焼や火山活動などにより発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが太陽光線によって大気中の水分と化学反応を起こして酸性の化合物(硫酸や硝酸)となり、これらが雨に溶け込んで酸性雨となって地上へ降下してきます。
酸性雨による被害としては、
などがあります。
かって経済の高度成長期には環境汚染や自然破壊が大きな社会問題となり、昭和42年には公害対策基本法が、昭和47年には自然環境保全法が制定されました。
大量生産・大量消費の経済・生活の定着に伴って環境への負荷の増大・自動車公害の深刻化する中で、地球環境保全への積極的な取り組みが必要であるという国際的な意識が形成されるようになりました。
環境保全に関する施策を総合的・計画的に推進していこうとの視点から、平成5年には公害対策基本法を廃止して新たに環境基準法が制定されました。
日本では大気汚染物質の排出源となる工場はアジアに進出して減少しているといわれ、火力発電所や工場・自動車等には脱硫装置・脱硝装置が取り付けられることで大気汚染物質の排出量は抑えられています。
平成16年に公表された環境省の「酸性雨対策調査」によると、
「全国的に欧米並みの酸性雨が観測されており、また、日本海側の地域では大陸に由来した汚染物質の流入が示唆された。現時点では、酸性雨による植生衰退等の生態系被害や土壌の酸性化は認められなかった。」
ことがあげられています。
以前は局地的な酸性雨問題として捉えられていましたが、現在では国境を越えた地球規模の問題として捉えられるようになり、発展途上国の電力消費量の拡大や自動車の普及に伴って酸性雨問題が深刻化していくと考えられています。
酸性雨は地球温暖化や森林の衰退と砂漠の拡大などと絡んで地球環境を悪化させます。エネルギーの消費を抑制すること、エネルギーを有効利用すること、汚染物質の排出を抑えることなど持続的発展が可能な社会の構築に加えて光触媒による有害物質の浄化などの新しい技術開発が望まれています。