地震・防災関連用語集

カテゴリ:環境

アスベスト

アスベストは鉱物学的には絹糸光沢のある繊維状の蛇紋石または角閃石の一種であり、工業的には採掘・加工した工業原料を指します。

蛇紋石より成るものをクリソタイルといい、産出量の大部分は繊維状クリソタイルです。クリソタイルのアスベストは石綿とも呼ばれ、綿糸などと同様に糸をつむいで織物として織ることもできます。

世界の主な生産国はカナダ、ロシア、南アメリカ共和国などですが、日本でも北海道の日高山地で採掘していました。消費量のほとんどは輸入によるもので、輸入量は1060年(昭和35年)ごろより増加し、1974年(昭和49年)の35万トンを最高にして1990年(平成2年)ごろより急速に減少しました。

アスベストは安価である上に、綿のように柔らかく強靭で熱に強く断熱性に優れて電気を通さず薬品にも強いことから建材製品を主体として工業材料にまで広く使用されてきました。

建築製品としてはセメントにアスベストを混ぜたセメント板、屋根材、外装材、内装材などであり、ビルなどの工事現場では保温断熱材として吹き付け作業が行われてきました。なお、吹き付け作業は昭和50年に原則禁止となっています。

工業材料としては耐熱・電気絶縁板、自動車のブレーキやクラッチなどの摩擦材や潤滑材、電線の被覆材や機械器具の断熱材などがあります。

最近アスベストによる健康被害が肺繊維症・悪性中皮腫・肺ガンの発生として顕在化しており、いずれも空気中に浮遊するアスベスト吸入することが原因といわれています。

アスベストを吸引しても直ぐに発症することはなく、悪性中皮腫や肺ガンは15~50年もの潜伏期間があるといわれています。長い潜伏期間があることから静かな時限爆弾と呼ばれ、アスベスト製品の生産者やアスベスト製品を扱う建築現場従業者にとっては現在は健康であっても長期間に亘って精神的な不安がつきまといます。

アスベスト問題は長年に亘るだけでなく被害が拡大して深刻な様相を呈する可能性があります。そもそもアスベストは鉱物であり通常の環境下では半永久的に分解・変質しない特徴があり、生産と使用が禁止されても建物や機械の解体によって環境中に飛散することになるので、公的な規制を守ことに加えて個人的にも充分な注意が必要です。2007年11月25日の読売新聞によると、「アスベストを使った建物の解体・改修工事で、ずさんな工事が相次いでいる実体が明らかになった。」とあり、現行の監視体制*では悪質な違反を見つけ出すのは難しいと指摘しています。

兵庫県南部地震では多くの建物が崩壊し、解体作業や撤去作用で街は塵埃でかすんでiいましたが、当時はアスベストに注意を払うような余裕も知識もなかったと思われます。震災地周辺での中皮腫や肺ガンの発生率が高くなるようなことはないのであろうか。これは将来の調査を待たねばなりませんが、杞憂であってほしいものです。

監視体制* 大気汚染防止法によると、アスベストを使った建物を解体・改修する際は都道府県や政令市などへの届出と飛散防止処置が義務付けられ、自治体は立ち入り調査を実施することができる。