地震・防災関連用語集

カテゴリ:環境

生物圏

地球上や大気中で生物が生活している場所全体を生物圏といい、バイオスフェアあるいは生活圏ともいいます。

一般に知られている微生物のほとんどは、常温、常圧、中性付近、豊富な栄養条件の下で活発に増殖しますが、研究室では増殖できない微生物が微生物全体のほとんどを占め、自然界のごく一部の微生物が知られているに過ぎないといわれています。極限環境微生物としては、好熱菌、好冷菌、好酸性菌、好アルカリ菌、好塩菌、好圧菌が知られており、深海の高圧環境、地下の熱水環境、北極や南極域の低温環境等に適応して生息しています。

生物圏の広がりが広いといっても、生物の種類・量は地下2~3mで極端に減少するように、地球全体からみると地球表面の極薄い層に集中しています。生物圏は生物という観点から地球をみるときの重要な概念であり、気圏・水圏・岩石圏に多くの影響を及ぼしています。

地球上の生物は先ず水中で生まれ、26億年前には光合成によって酸素を放出するラン藻類が出現し、海中や大気の成分に大きな影響を及ぼしました。カンブリア紀になって大型の多細胞軟体動物が爆発的に進化しましたが、これらの生物の出現と対応するかのように、大気中の酸素濃度が高くなりました。そして、4億4千年前になると、生物にとって有害な紫外線を遮断するオゾン層が形成されるまでに酸素濃度が高まりました。有害な紫外線が地表に届かなくなると先ず植物が海から上陸し、昆虫そして両生類が進出し、は虫類、ほ乳類、鳥類が次々と出現しました。

有機性の堆積岩は生物の遺骸を起源としており、石油や石炭などの化石燃料の他に白亜*1、チャート*2、珪藻土*3などが含まれます。

化石燃料は植物、動物、プランクトンなどの遺骸が岩石圏に取り込まれたり封じ込まれたりして、長い年月を掛けて変成したものですが、現在は化石燃料を消費することによって、二酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素を気圏に放出しています。二酸化炭素は水に溶けることによって気圏から水圏に移ると、炭酸の形となり、温度条件や生物の作用によって、貝殻や珊瑚の骨格などの炭酸カルシュウムとなります。岩石圏の石灰岩の大半は生物の作用で生じた炭酸カルシュウムを起源としています。

地球には気圏-水圏-岩石圏を巡る様々な物質循環システムが備わっており、以前は人の活動によって生産される有害物質はそのシステムの中で消化されてきましたが、近年の自然・生態系の破壊や汚染など、地球規模の環境汚染が問題化しています。例えば、大気中の二酸化炭素の増加は温室効果をもたらしますが、その対策として、光合成細菌、珊瑚、海草などによる二酸化炭素の固定や熱帯雨林の環境に与える効果など、生物圏を見直す必要が指摘されています。

白亜*1 チョークの別名。コッコリス(単細胞植物の一種)・有孔虫・ウニ・貝殻などより生じた炭酸カルシュウムよりなる。

チャート*2 珪質微化石(放散虫)の堆積岩で硬質。

珪藻土*3 珪藻の殻からなる軟質岩または土壌。