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キネマ旬報を読みながら   2000.7月上旬の巻

映画試写会応募の同志へ

 ぼくの採点評 1
 ぼくの採点評 2 D・ホフマンと試写会
 祝:デンゼル・ワシントン、アカデミー賞主演男優賞受賞
映画の魅力を強引に分析してみた
2002年の夏、シネマ・クレール丸の内館で
アクターズ・スタジオ・インタビュー 2002 夏

映画「エンド・オブ・オール・ウォーズ」への誘い

映画の本「マイ・ファースト・ムービー
わが心のジェニファー
さよなら、ジョージ・ロイ・ヒル監督
原作&映画  「レッド・ドラゴン」
原作&映画 「アイリス」

 
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映画の原作を読む時、
原作の映画化を見る時


「アイリス」


イギリスの文学者アイリス・マードックが、
アルツハイマーに罹った後、亡くなったのが1999年。


その死と前後して、
彼女の夫であり、同じく文学者でもあったジョン・ベイリーが書いた、
次の二冊が原作です。


「作家が過去を失うとき アイリスとの別れ 1」(原題:「Iris: A Memoir」)、1998年刊行。


「愛が試されるとき アイリスとの別れ 2」(原題:「Iris and Her Friends」)、2000年刊行。


映画の中で、
アイリスを見守りながら、夫がタイプしていたものです。


「作家が過去を失うとき アイリスとの別れ 1」を読み、
映画を見、
それから、
「愛が試されるとき アイリスとの別れ 2」を、読み終えました。


最初の一冊を読み、つらくて途中止めしている最中に、映画が来てしまいました。


映画で、私の読んだ印象を凌駕していたのは、
アイリスを演じていたジュディ・デンチの存在感のみでした!
本では、どこまでもジョンを通してのアイリスなのですが、
映画では、ジョンとははっきり離れて、一人の女性がいるという感じを受けました。


手堅く、オーソドックスな映画化では、
長いキャリアで培った文章には、到底敵わないでしょう。


「作家が過去を失うとき」では、書かれてある事実・事柄に心を動かされてしまいましたが、
「愛が試されるとき」に至っては、その文章に感服しました。
子供時代の記述は退屈したものの、
戦争に出征した後から、その筆遣いに、心を奪われる。
言葉の選択、文章の展開、そうして描き方の選択も唸らされる。
ここにあるのは、文学の智慧、文学の恵み、そうとしか言いようのない感じを受ける。


「作家が過去を失うとき」で、
アルツハイマーに罹り、過去の面影を留めない変わりようのアイリスを、
昔の面影を織り交ぜながら描いている。
しかし、
「愛が試されるとき」では、
アルツハイマーに罹っても、アイリスは、アイリスであるというスタンスです。
最後は手におえなくなるも、次第に変わる症状それぞれと付き合いながら、
その暮らしの中で、ジョンの思い出・思索が、繰り広げられ、
その傍でアイリスが時折顔を出す。


どこまでもジョンでいながら、
変わっていくアイリスに接する態度を読み続けていて、
思った事。


老いの先に、人生経験に裏打ちされたラブストーリーが展開されている。
ジョンとアイリスだから、築き上げられたもの。


2003.3.27 記




映画の原作を読む時、
原作の映画化を見る時


「レッド・ドラゴン」の巻


2003年最初に招待された映画試写会で、1月に見ました。


「羊たちの沈黙」(1988)が1989年に新潮文庫で刊行された時に、
一読し、夢中になり、引き続いて、
著者トマス・ハリスの他の作品を一気に全て読みました。
大変寡作なので、全部で三作しかありませんでしたが。(笑)


「ブラック・サンデー」(1975)も怖かったが、
「レッド・ドラゴン」(1981)も大変怖かったのを覚えています。
読みながら、心の中で「ウワーァッ」「ひぇーっ!」と。


とりわけ、車椅子が火達磨になったところは、
私の中でゆるゆるとスローモーションで、長いシーンです。
映画では、短めでした。


最後に、犯人が襲い掛かるところは、
読んでいてもいきなりという風でしたが、
映画では、インパクトが弱かった。


十年以上も前に読んだ印象ですからあやふやですけれど、
そこでの怖い印象を、映画からは受けませんでした。


映画化が、余りにも遅すぎます!


原作の続編「羊たちの沈黙」が映画化(1991年公開)され、ヒットした。
映画「セブン」が話題になった。
そんなサイコサスペンス・ブーム後に、この作品の持ち味を出すのは無理でしょう。
この原作は、ブームに先鞭をつけていたのです。


映画「羊たちの沈黙」にしても、私には原作の方のインパクトが強い。


原作尊重で考えれば、サイコサスペンスとしての演出を最優先にするべきですが、
映画として、アンソニー・ホプキンス主演がまず最初にありきで、
興行を手堅く成功させる為に、人気のある俳優を回りに配し、
人気俳優によるキャスティングがメインになっている。


これが、私から見ての、この映画化の泣き所。
映画俳優ファンとして、スクリーンに登場する俳優さんを見ると、
「やぁ〜!」てなもんですからね。(笑)
嬉し泣きか?


映画会社が、映画ファンの為にこの原作を利用したのであって、
このキャスティングで、この原作の持ち味を求めるのはナンセンスです。


最後の一言


絶対に映画より原作を先に読むべきです。
加えて、今更どうしようもく、手前味噌になって申し訳ないのですが、m(__)m、
サイコサスペンス・フロファイリングの流行前に読んだ人が、
この作品を一番味わえたのだと思います。

2003.2.20 記
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さよなら、ジョージ・ロイ・ヒル監督


2002年12月27日、
ジョージ・ロイ・ヒル監督が、パーキンソン病による合併症のため、
81歳で、この世を去りました。


2001年の夏頃に読んだ、
ジョン・アーヴィング著「マイ・ムービー・ビジネス」の中で、
彼の近況を知り、具合の悪い事は知っていたけれど、
それから一年余で亡くなられるとは…。


最近、「マイ・ファースト・ムービー」を読み、
あらためて映画監督という職業にひときわ関心を持って間がない。
なかなか思うに任せない状況の中で、苦心しながら、
どの監督もそれぞれに自分なりの作品を仕上げているようです。


その本を紹介した文章を書き、その次ぎの文章で何気なしに、
「明日に向かって撃て」「スティング」と、ヒル監督の代表作の名を連ねました。
それから、一ヶ月も経っていません。


今の私の唖然とした気持ちがいくらかでもご理解いただけるでしょうか?
亡くなる前に、そーっと自分に寄って来たような気がする。
こういう話を気味悪がる人もいるでしょう。
でも、私はそう思わない。寧ろ、うれしい。
あの世へ行く前に、何かを言いたかったような雰囲気を感じます。
若い時にリアルタイムで彼の新作を幾つか見ただけの縁なのに…。
今、彼の事をとても知りたいと思う。


高校生という多感な時期に、
スクリーン上の彼の作品から浴びるように受けた何かを、手探るように思い出す。


明るく、精一杯に生きる。それでいて、小粋さを失わない。
そういうヒーローを、きっちりと描いていた。
そう、格好良くと言うより、自然に小粋にやっていくスタイル!


私は文章を書くのが好き。
書くなら、やはり明るく自然に、
それでいてちょっと骨があって、気取ってない方がいい。
私が目指すところと、彼のスタイルとに相通ずるものがあるから、
惹かれるのだろうか?


暗い惜別の思いは彼に相応しくない。
確かに、彼の死はある時代の終焉と言えるけれど、
ただそう言ってしまうのでは、ちょっと虚しい。
それよりか、今一度彼の作品をこの機会に見直して、
彼がこの世に残してくれたものから、彼の思いを汲み取り、
それを活かすのが何よりだと思う。
まだ、彼の作品をご覧になっていない方、是非見てください!

2002.12.31 記
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わが心のジェニファー


映画館サイトの掲示板で、
何本もの映画を見たが落胆したものも少なくない。
かといって、見なければ後悔しそう。
という書き込みを読む


知らず何度も頷く。
その時、私が思い出していたのは、
「わが心のジェニファー」。


LPレコードのサントラ盤にある、解説・あらすじを読む限り、
センチメンタルな、それ程たいした作品ではないようです。
リバイバルはおろか、テレビの放映もビデオもありません。
シネマ・クレールにリクエストしたら、
浜田さんが苦笑することまず間違いないでしょう。(笑)


見ていたら、おそらくもう覚えていないかもしれない。
見損じたがために20年経っても未だ忘れられないのだろうか。


でも、ふと、こう思うことがある。
このタイトルと音楽とだけから、
映画の作者が作ったものとは違う、
何かが私の心に生まれた。
それと、未だ見ぬ映画とがリンクしている。
映画作者には申し訳ないけれど、
見ないほうがいいかもしれないとも、考えられる。


「わが心の…」というフレーズは、手垢にまみれなければ、素敵だと思う。
他にも、最近見た「耳に残るは君の歌声」というタイトルも印象的でした。
この映画は、こちらの期待とはまったく違った方向の仕上がりです。
「あの頃ペニーレインと」というタイトルも一目ぼれで、
これは是非見ようと気にかけていたのに、見損じてしまう。
後で、ビデオを見ましたが、悔しさが倍増するほど、
期待を大きく上回る出来栄え!(私にとってですよ)


映画音楽にもいろいろあって、
ポンと一曲入って、それが効いていること、ありますね。
例えば、P・J・ホーガンの二作。
「ミュリエルの結婚」と「ベストフレンズウェディング」との中にある、
スタンダード・ナンバー。
とてもおいしいワインを飲んだように、たまんない!
オリジナルでいえば、
「明日に向かって撃て」のバカラック、
「スティング」のピアノ曲のように、
映画の中にあって、映画を食ってしまうほどの曲、最近ありましたっけ?


で、「わが心のジェニファー」ですが…(笑)
「カリフォルニア」と「愛は二人で」という素敵な曲があります。
一緒に拍子を取りながら好きな人とハミングしたくなる♪
LPレコードプレーヤが無くて、ちょっと涙が出てきた。(ウソ)


冬の夜更け、こんな話題には、ココアがいいかな。
乾杯!
暖かくして、おやすみなさい。
2002.12.14 記
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マイ・ファースト・ムービー
スティーヴン・ローウェンスタイン編

2002 フィルムアート社



16人の映画監督が、
それぞれのデビュー作について語ったものを、
取りまとめた本です。

アクターズ・スタジオの監督版デビュー作品編を、見ているような気分で、読みました。


以下に、監督名と作品名とを列記します。


ジョエル&イーサン・コーエン
ブラッド・シンプル

アリソン・アンダース
ガス・フード・ロジング

ケヴィン・スミス
クラークス
ガムシュー(探偵)

ケン・ローチ
夜空に星のあるように

マイク・リー
ブリーク・モーメンツ

べルトラン・タヴェルニエ
サン・ポールの時計職人

バリー・レヴィンソン
ダイナー

ニール・ジョーダン
殺人天使

マイク・フィギス
ストーミー・マンデー

ペドロ・アルモドバル
ペピ、ルーシ、ボム

スティーヴ・ブシェーミ
トゥリーズ・ラウンジ

ゲーリー・オールドマン
ニル・バイ・マウス

アン・リー
推手

P・J・ホーガン
ミュリエルの結婚

ジェイムズ・マンゴールド
君に逢いたくて



既に、作品を見ていた、
ジョエル&イーサン・コーエンの「ブラッド・シンプル」と、
P・J・ホーガンの「ミュリエルの結婚」とから、
読み始めました。
初っ端に、コーエン兄弟がいて、うれしい!


へぇ〜と感心したり、ウンウンと頷いたりしながら、
読んでいるうちに、映画作りの大変さや、
世に認められるまでのそれぞれのアプローチに驚いたりして、大変楽しい読み物です。
やはり、語っている監督それぞれの思い入れがそこに詰まっているからでしょう。


同じようにインタビューが始められていても、
それぞれの資質に見合った話の展開になり、
大いに頷けるどころか、あらためてその資質の奥行きに感銘を受けました。


その他にも、
「ケス」「大地と自由」のケン・ローチ、
「ある晴れた日に」「グリーン・デスティニー」のアン・リー、
「君に逢いたくて」「17歳のカルテ」「ニューヨークの恋人」のジェイムズマン・ゴールド等等、
映画が好きな人なら一人くらいは読みたい監督が居そうなくらい、
バランスの取れた広範囲の選択です。


この本で幾人かの監督の話を読み、本を閉じて一番に思ったのは、
好きなことを続け、才能を伸ばすことの大切さ、
世に認められることの困難さ・多様さ・不思議、
が描かれているので、
広く若い人にお勧めしたいということです。


ここには、それぞれの青春が描かれているのです。
格好悪くも逞しく、成長し続ける青春です。


ジョエル・コーエン
「とにかく特別な愛着のある映画ではある。
でも、見るに耐えない代物だね。まったく!(爆笑)」


ジェイムズ・マンゴールド
「サンディ・マッケンドリックのお決まりの言い方にこんなのがある。
「シナリオを書き上げた?よろしい。
次は何をする番かわかるか?
別のシナリオを書き上げるんだ」。
彼の思いはつねに、もっとうまくなれということだった。
そして、それは真実なのだ。」


ケン・ローチ
「自分なりのやり方を追求しているときは、そのやり方に磨きをかけるよう、
究めるよう努力を続ける。
じっくりと吟味をし、邪魔なものは排除し、進むべき道を進むよう努力を続ける」


P・J・ホーガンは、自分の感性を大事にし、
自分が描こうとしているものに、こだわり続けました。
彼の話の中の、トニ・コレットも印象に残る。
「ミュリエルの結婚」で体当たりの演技をし、デビューした彼女も、
今では、メジャーな映画の脇役として、大きな地歩を確立するに至り、
「シックスセンス」や「アバウトボーイ」でご覧になった方も多いでしょう。


まだ全部は読み終えていないのですが、
読み終える毎に、それぞれの監督のファンになる事、
勝手に請合います。(笑)
ああ、又、更に映画の深みに嵌っているよう。

2002.12.4 記
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映画「エンド・オブ・オール・ウォーズ」への誘い


2002年11月にビデオ等が発売されるのを前に、
これまで手元にある資料をまとめてみました。

asahi.com 岡山
2002年9月21日更新記事 より

倉敷の永瀬さんモデルの映画 特別試写会

 タイ・ミャンマー(ビルマ)間の泰緬(たいめん)鉄道建設に日本陸軍通訳としてかかわった永瀬隆さん(84)=倉敷市大島=がモデルの1人として登場する
米国の反戦映画「TO END ALL WARS(すべての戦争を終わらせるために)」の特別試写会が
22日午後1時から、倉敷市本町の倉敷公民館大ホールで催される。
同映画は昨年11月に米国内で公開予定だったが、米同時多発テロで延期されたいわく付きの作品だ。


 永瀬さんは43年、泰緬鉄道建設の憲兵隊通訳として現地へ赴任。
戦後は連合国軍による沿線の墓地調査に通訳として従事し、過酷な作業と伝染病で多くの犠牲者が出たことを知った。
一般の人が海外渡航ができるようになった64年以降、タイへ慰霊の旅を続けている。


 95年からは毎年、日本の捕虜収容所で亡くなった英兵の追悼を横浜市の英連邦戦死者墓地で続け、英国政府から今年、特別感謝状が贈られた。


 映画はスコットランド人の元捕虜で、今年1月に死去したアーネスト・ゴードン氏の体験記「クワイ河収容所」を脚色した。
日本軍の捕虜収容所で虐待された連合軍将校が日本軍下士官に報復を企てるが、最後には憎しみを乗り越えて許す筋書き。


永瀬さんはゴードン氏と10年来の交流があった。
00年1〜2月、タイで行われた現地ロケで再会。
映画について「良くできていて安心している」と満足そうだったという。
映画では最後に永瀬、ゴードン両氏が握手する感動的なシーンもある。


デビッド・カニンガム監督、1時間57分。
日本では劇場公開されず、ビデオ(税抜き1万6千円)とDVD(同4800円)が11月8日から発売される。


永瀬さんは「戦争捕虜は生殺与奪権を握られている。人権無視の残酷さが戦争の真実です。米国のテロなど、今また戦争が近づいている気がする。縁もゆかりもない人同士が憎み合う戦争を、二度と起こしてはならないとの問題提起になれば……」と訴える。


試写会後の午後3時半からアイビースクエアでナガセ軍曹役の俳優佐生有語(さそう・ゆうご)氏らを囲んで茶話会(800円)がある。
試写会の開場は午後0時半、先着400人、無料。問い合わせは永瀬さん。


(9/19)




岡山の試写会情報HP 内「Main掲示板」より
投稿日:2002/09/22(Sun) 22:48 No.3241

エンド・オブ・オール・ウォーズ の特別試写会にいってきました

原題は,「TO END ALL WARA」だが、
発売・レンタルされるビデオDVDの題名は、「エンド・オブ・オール・ウォーズ」のようです。


原作者ゴードンさんの居た収容所で通訳を勤めていた永瀬隆さんは、
戦後長らく、謝罪と償いの為に様々な多くの事をされてきました。
この作品のビデオ・DVD発売・レンタル開始(2002年11月)を前にして、
地元で特別試写会を催したのも、その中の一つに過ぎません。


新聞では、先着400名と有りましたが、
八分程の入りだったのではないでしょうか?
人数については二階まで眼が行き届かないので…(^^ゞ


試写会に先立つ永瀬さんのお話では、東京からも来られた方がいた由。


試写会の後、出演者の方三人が舞台に出て挨拶をされました。
ナガセ軍曹の、佐生 有吾(サソウ ユウゴ)さん。
イトウ軍曹の、木村 栄(キムラ サカエ)さん。
ノグチ大尉の、油井昌由樹(ユイ マサユキ)さん。


その後、アイビースクエアで茶話会が開かれ、
出演者を囲み、30人程の方々が熱心に話を交わしました。


試写会は、ビデオを液晶プロジェクターで写したもの。
フィルムによるスクリーン上での上映でなかったのが残念です。
茶話会もあっという間に終わり、時間が短かった。


当事者二人が存命中に作られた事もあり、
娯楽色は一切無しの、ドキュメンタリータッチの仕上がりです。
米国で作られたのが頷けるほど、
日本軍捕虜収容所での酷い出来事が描かれています。
(実際は、描かれていないもっと酷いこともあったようです)


この悲惨な状況の中で生き抜く意味を手さぐりしていく、
ロバート・カーライル演じるキャンベル少佐や、
キ−ファー・サザーランド演じるリアドン、
そうして若き学徒のまま従軍したアーネストの心情も、
よく描かれていると見受けました。


骨の髄まで日本軍人となっているイトウ軍曹の動揺、
為す術も無く眼前の出来事を見つめ続けるナガセ軍曹をも、
描いているところに、只のドキュメンタリー映画に終らない、
ヒューマンな気遣いが感じられます。


先に上映された「ジャスティス」を始めとする欧米の捕虜収容所モノ作品とは、全く違った様相の戦争映画で、(なにしろジュネーブ協定無視ですから)
上映延期のままなのが余計に残念に思える程、示唆に富んだ作品であること、
間違い有りません。


ゴードンさんは今年の1月に亡くなられましたが、
佐生有吾さんによれば、
この映画作品はご覧になられたようです。
永瀬さんは、84歳になられ、写真では小柄できゃしゃに見られるも、
実際はかくしゃくとした印象を受けました。
今後もお元気でおられること、願います。



拙HP 内、「喫茶店」
2002.9.24 記載

映画「エンド・オブ・オール・ウォーズ」を見る

22日に、倉敷へ出向いて、映画の試写会を見てきました。
第二次世界大戦で日本軍の捕虜になり、
ビルマのジャングルの中を走る泰緬鉄道の工事に従事させられた、
英国人による原作の映画化作品です。


アーネスト・ゴードン氏が書かれた原作は、
「クワイ河収容所」という本で、「ちくま学芸文庫」の一冊として出ています。
(最初の邦訳題名は「死の谷を過ぎてークワイ河収容所」)


映画の題名は、
「TO END ALL WARA」。


この映画は、昨年の米国同時多発テロの影響で、
11月に予定されていた上映が延期されたままになっているのですが、
間もなく一年になろうとする今年の11月に、
ビデオとDVDとが発売されるのに合わせて、
倉敷在住の永瀬隆さんが試写会を催したわけです。


永瀬さんは、泰緬鉄道に従事させられた捕虜達の収容所で、通訳を勤めており、
そこでのジュネーブ協定を無視した非人道的な捕虜への待遇について、
個人的に謝罪と償いとを、戦後長らくやってこられた方です。


以前勤めていた製本会社で、
永瀬隆さんが翻訳された本を作った事があります。


映画の原作者と同じ英国人、レオ・ローリングズ氏が書かれた、
「泰緬鉄道の奴隷たち」という本です。
レオ・ローリングズ氏も同様に捕虜でしたが、
画家でもあって、その手による絵と手記とが収められています。


この本を作っている時、
あの「戦場にかける橋」の話と同じだけど違う、
事実がある事を知りました。
パラパラとめくって目に飛び込んできたスケッチと、
永瀬隆さんの名前が、いつまでも記憶に残り、
その後折々に、永瀬さんの名前を新聞で見かけながら、
今日に至っています。


長らく新聞等だけで見知っていた永瀬さんですが、
会場の公民館二階のロビーに入ると、
直ぐにその人と分かり、
思わず一礼してしまう。
小柄だと思っていたのに、自分と同じくらいの上背でビックリ。


映画は、ビデオを液晶プロジェクターで投影したものだし、
会場の非常口の明かりも強くて、
フィルムでの上映を期待していただけにガッカリしましたが、
映画が進行していくにつれ、
中身に引き摺られ、
だんだんにそのような悪環境であることを忘れてしまいました。


戦争中の捕虜を主人公にした映画は意外に多くあり、
その中で、アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した、
デイビッド・リーン監督の「戦場にかける橋」は、大変有名です。
しかし、この映画を見た、当の捕虜達は、どう受け取ったでしょう?


その答えがこの映画だと思います。
見る人に不快感を与えないような配慮はほとんど無く、
娯楽性を排除して、話が展開されていきます。


日本軍の捕虜収容所に入った連合軍兵士たちの、
当惑を軽く通り越した憤りがまずあり、
それを受け入れる苦しみが続きます。
このジュネーブ協定等全く眼中に無い日本軍の有り様が、
我々に問い掛けているものは重いものです。
今の国際関係に生かしきれていない課題が含まれていると思う。


そして、この捕虜達のもがきの中からドラマが生まれ、
日本軍との関係も進展していきます。
この後は、例によって、作品でご覧になるよう省略させていただきますが、
捕虜達のそれぞれの考えや心情を、
又、それに対する日本軍人のそれぞれのありようを描いて、
只のドキュメンタリー映画ではない、
ヒューマンな映画作品に仕上がっている。
ここに、当事者達のその後の思いが染込んでいるように感じたのは、
私の穿ちすぎた受け取りになるのでしょうか?


モデルとなった当事者であるゴードンさんと永瀬さんとが、
後年、現地で相まみえた場面が映画の最後に出てきます。
ゴードンさんは、完成したこの映画をご覧になって間もなく、
今年の1月に亡くなられました。
そして、永瀬さんは自力でこの映画の広報に勤めて、
この試写会を敢行されました。


上に述べたように、上映されていないだけに、
関係者が舞台挨拶をする機会はこのときだけでした。
日本軍人として出演した、
佐生有吾さん、木村栄さん、油井昌由樹さんを迎えた永瀬さんの姿を見て、
日本はこの問題に対して無様な国だけど、
この人一人のおかげで日本人として救われる思いがするのを、禁じ得ません。
永瀬さんがこの試写会を含め、これまでしてこられたことを無駄にしないよう、
無駄にならないよう、この映画を一人でも多くの方に見ていただきたいと、痛感しました。


映画の終わりに、ナガセ軍曹が僧侶になった旨クレジットが出ますが、
永瀬さんはビルマでの僧の資格を持っておられること、本人から説明がありました。

ビデオ等については、
アットエンターテイメント
を参照してください


2002.10.12 記
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アクターズ・スタジオ・インタビュー 2002 夏


いつも、唐突に始まり、あっという間に終るインタビュー番組で、
映画ファンには堪えられない。


今回の第一週は、
まず、シャロン・ストーンとマイケル・ダグラスで幕開けですが、
これは気づくのが遅く見損じてしまう。
次に、キム・ベイシンガー。
そうして、フランシス・コッポラ監督。

第二週は、
月曜が、シャーリー・マクレーン。
火曜日、ローレン・バコール。
水曜日に、ハーヴェイ・カイテル。
木曜日には、リチャード・ドレイファス。

この後、予告がBSのものだけだったから、
今回は以上でしょう。


キム・ベイシンガーは、私個人的には、
「L.A.コンフィデンシャル」で、大ブレイク。
「ナチュラル」辺りから、何とはなしにお見かけしては、いたものの、
今ひとつ印象に残っていない。
偏見で申せば、行きずりで様々な作品に出演していたのが、
極上の脚本・役柄にぴたりと嵌り、
彼女の真価が発揮された印象を持つ。
インタビューでは、スクリーンとは全く違った雰囲気です。
映画界で揉まれて、やっとこさ、名実共に高く評価されるに至った感じを受けます。
フランシス・コッポラ監督は、
脚本からきわめてマニアックに映画へ向かう印象そのもの。
編集・制作でも力を発揮する人柄で、
インタビューを受けるだけでは収まらず、
自分で展開していく所があって、ニヤリとさせられる。
映画製作のリスクをまともに被り、乗り越えてきた、
真っ当な向こう見ずさとタフさとを感じさせてくれました。
シャーリー・マクレーンさんは、
私にとって大人の女性。
自己研磨で、世界を広げてきた逞しさを仰ぎ見る。
「アパートの鍵貸します」で、
しぐさ・行動から相手の胸の内を知る綾を教えてもらった。
もっと早く、若い時からこの作品を何度も見ておけば、
不様なことはせずに済んだろうし、
なにより、人を傷付けることももっと少なく出来たと思う。
老いても、役の選び方に感心させられ、
脇役でも、でしゃばらずに、きちっと表現しきる巧さに脱帽。
ローレン・バコールさん、最初にお詫びしておきます。
まだご存命で活躍されている事、存じておりませんでした。m(__)m
ボギーの奥さんで、印象に残るあの視線、それだけだったので、
インタビューでの彼女には、心底驚きました。
往年の名優たちに見守られ成長し、
自らの俳優生命の活路を舞台に開いてきた事といい、
高い評価を得た著作もしていることといい、
うなされるばかり。
「マンハッタンラプソディー」でのワンシーン、
主演を食ってるようで、見たくなる。
ハーヴェイ・カイテルは、いつもどんな役をしているのか、
見るまで想像がつかない役者。
それでいて、いつも納得させられる巧者です。
このところ、ビデオで、ポール・オースターの作品を続けて見た。
本当に、いいな〜と、思わずため息の演技です。
「スモーク」から、「ルル・オン・ザ・ブリッジ」に至る、
三作は、通好みとされているようですが、
もっと多くの人に愛されるはずのいい作品。
リチャード・ドレイファスは、
初期の「アメリカン・グラフィティ」を偶々見たし、
あの「グッバイガール」も見たし、
近頃の「陽のあたる教室」も深く印象に残っているので、
一緒に人生を歩んだような気がする俳優です。
彼の人生の躓きの頃、
私は仕事に追われ、全く映画を見ない時期でした。
この符合に、びっくりさせられる。
サービス精神旺盛な雰囲気は期待に違わず、素敵でした。
監督の指し出した役とは違う役を選ぶ話が再度出て、オヤオヤ。
その辺り、この人の天性を感じさせますね。


衛星放送の4人分は、残念ながら私には手が届かない。
で、メリル・ストリープさんは、以前に見た覚えがあるのですが、
同じものでしょうか?

口惜しく、
インターネットで「アクターズ・スタジオ・インタビュー」検索すると、
余りの多さに、唖然。
読むほどに見られなかった口惜しさが増すばかりで、途中で止めました。(笑)
「アンソニー・ホプキンス・ファンサイト」では、まるまる掲載していたのに驚嘆。
他のファンの方々、よろしくー!(^^ゞ

2002.8.24 記
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2002年の夏、シネマ・クレール丸の内館で

 

あのシネマクレールが、
丸の内館の総力をあげて、
真夏に上映する映画「ピンポン」

 

シネマ・クレールに置いてあったチラシからの情報です。(笑)

原作は、松本大洋という漫画家。
この人は天才で、この作品は彼による名作の由。

(近くの丸善の漫画コーナーでは、早々とドーンと平積みしています)

2001年邦画界の話題作「GO」の、
宮藤官九郎が脚本化。

「タイタニック」のVFXにも参加したデジタルの第一人者、
曾利文彦が監督を勤める。

個性的なキャラクター達には、
映画・ファッション・歌舞伎・舞台の第一線で活躍している、
最強メンバーが集結。

こうして見ると、
私の知らないことが一杯。(笑)
日頃映画を見ない観客を動員する、潜在能力が非常に高い!
これが、どこまで発揮されるかが、一番の見所で、
シネマ・クレール・ファンとしては、手に汗を握る思い。

末筆ながら、
岡山要約筆記クラブによる字幕作成が、
予定されています。

2002.7.5 記
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昨日、「ピンポン」上映に際しての舞台挨拶があり、
そのテレビ・ニュースをちらりと見ました。
近づいてきましたね。

要約筆記クラブ作成の字幕版は、
既にさくら道でお知らせしている通り、
9月7日8日に上映される予定です。

この映画には、メンズデイ・レディスデイ割引が適用されるとの事で、
シネマ・クレールの本腰・力の入れようをますます印象づけられました。
館長さんのなんとしてもこの作品をヒットさせたいという思いが伝わってきます。
以前からの映画好きも大事にしたいけれど、
日頃映画を見ない人たち、シネマ・クレールに来ない人たちに
足を運ばせたいという思いの方が、上回っている。
この映画のキャスト・スタッフの顔ぶれをあらためて見直すと、
映画畑以外のキャストが熱演しているし、
エンターテイメント・メジャー感覚を持つスタッフが参加している。
これは、本当に映画ファン・シネマクレールファンの裾野を広げる、
又とない機会なんでしょう。

シネマクレールファンの中には、今回の上映方式をまだ許せない納得できない方がいます。
でも、これを機会にシネマクレールファンが増える事も考えられるので、
私は、応援の方にまわります。
アッ、アッ、石を投げるな!
テメェは、偽ファンだ!
本当のファンは文句を言うに止まっているはず!(笑)

私個人的なことを言えば、(拙HPですもん)
その期間、石関館のメインのラインナップ、全部見たいので、
財布の面からありがたい。(笑)


2002.7.22 追記
 




 

映画の魅力を強引に分析してみた

 

映画の魅力って何だろう?

私にとって、映画は楽しみの一つで、ただのファン。

何よりも映画を愛するという方や、
映画を極めたいという方には、
いろいろ文句がおありだと思うけれど、
ここは手前のHPという気安さで、
思いっきり偏見の映画観を書いてみます。

 

まず、筆頭に来るのが、
「素晴らしきヒコーキ野郎」(1965 米)
私は、小学6年生。

むき出しのエンジンを載せた、初期のプロペラで飛ぶ飛行機が、主役の映画です。
複翼式を初め、いくつかの主要なスタイルの飛行機が出てきます。
各国の代表が、英国からパリへ向け、ドーバー海峡を渡って競う飛行大会が舞台になります。

大きなスクリーンに映し出された飛行機を見上げて、
惚れ惚れと見入ってしまいました。

動く大きな画の魅力が、ここにある。

 

次にくるのが、
「奇跡の人」 (1962 米)
私は、小学3年生か4年生。

芝居というか演技の迫力に圧倒されました。
本場の舞台で大当たりを取っていた作品を映画化したもので、
舞台と同じアン・バンクロフトとパティ・デュークとが、演じています。
ヘレン・ケラーとサリバン先生とのお話ですが、
見始めたら、ただ、この二人の本心のぶつかり合いに引き込まれてしまうだけ。
見終えたら、それまでの遠くの有名な人が直ぐ身近に感ぜられた驚きが残っていました。
お話がただのお話でなくなりますね。

 

そうして、
「サウンド・オブ・ミュージック」 (1964 米)
私は、中学1年生。

小学校の時、音楽は耳が遠いこともあってか、苦痛そのもの。
でも、この映画で、音楽がいっぺんに好きになった!
弾む心、しみる気持ち、心安らかになる音楽…。
グループ・サウンド,ビートルズ等々への世界が開けた。
補聴器を外し、館内に響き渡る音楽を聞いて、
ここが僕の最初の音楽学校と知る。
今でもコンサート気分で見に行っては、いるんです。(笑)
でも、最近は音楽を聞いて映画を思い出すってこと少なくなりました。

 

次はなるは、
「ミクロの決死圏」 (1966 米)
中学生でしたか。

今では、コンピューター・グラフィックなどの普及で、
目に見えないものを描写するって、さほど珍しくないけれど、
あの頃、人体の内部の描写といえば、絵があるのみでした。
それが、ここでは、立体的に、音響的に、紹介されている!
こんな色なのか!こんな風になっているのか!
映画は、いつの時代でも、
それぞれの時代の先端技術を駆使して、
新しい世界を創造して、見せてくれますね。

 

最後は、
「ブリット」 (1968 米)
中学生の時に見たような…。

「卒業」と、どっちにしようか迷いましたが、
より早い方を選びました。
スティーブ・マックイーンが、ムスタングに乗って、
サンフランシスコの坂道を駆けるアクション映画です。
映画ヒーローあるいはヒロインとのおつき合いが、楽しみですね。

映画俳優に引き摺られて見た作品で、又新たな世界が開けてもいきます。

そうして、映画俳優とともに歩む人生。
スティーブ・マックイーンは、亡くなりました。
西部劇などでよく見ていたカーク・ダグラスの息子を、
今はよく見ています。
キャサリン・ロスはあっという間にスクリーンからいなくなりましたが、
キャンディス・バーゲンは、今でもあのスマイルを見せてくれる。

 

今、50歳になろうとしているおじさんの一人が、
若かりし頃に映画に魅入っていった雰囲気を味わっていただけたでしょうか?

他にも,まだ見落としている魅力があるかも知れません。
また、思いついたら書き足していきます。(笑)

あなたは、
これを,読みながら、
それぞれのところへ、
どの作品を持ってくるのでしょう?

2002.5.9
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祝:デンゼル・ワシントン、アカデミー賞主演男優賞受賞

 

2002年のアカデミー賞主演男優賞が、
デンゼル・ワシントンに贈られました。

彼が追っている軌跡の主、シドニー・ポワチエが、
1963年に「野のユリ」で受賞して以来、
40年近くたって、黒人としては二人目の受賞になります。

シドニー・ポワチエには、
先に、アカデミー賞名誉賞の受賞が決まっており、
二重の喜びと言えそうですが、
ポワチエは次のようにはっきりと述べています。
「映画業界は変化したが、変わらない部分もある。
実に残念だ」

ポワチエは、75歳に、
ワシントンは、47歳になりました。

 

ワシントンが前回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた
「ザ・ハリケーン」('99)での、
彼の風貌を見ると、実年齢以上に見えます。
前年の「マーシャル・ロー」('98)の顔と比べて、その違いに驚かされる。

「ザ・ハリケーン」には、渾身の演技力が込められていた。
この作品で受賞を逃した事が、彼に大きな影響を及ぼしたことを、この度の報道で知りました。

「トレーニングデイ」に見られる仕事の変化には、そういう事情があると、本人自ら認めております。

 

ポワチエの若かりし頃に比べ、今は大勢の黒人俳優が活躍しているのですが、
よくよく見れば、彼らの多くはコメディやアクションに重きを置いた活躍の場しか与えられていない。
ワシントンに勝るとも劣らぬ仕事を精力的にこなしているモーガンにしても、助演がほとんど。
専門家によれば、
「メキー・ファイファー、オマー・イブスらの若手は、
デンゼルが20年前に得ていたような仕事さえもらえない」。

今一度彼の演じてきた役柄を見直すと、
そこには、彼の強い信念をうかがう事が出来ます。

「黒人らしい」役を押しつけたがるハリウッドの伝統に抵抗し、
人種問題の足かせをいやと言うほど知りつつ、それを逃げ口上にはしない、
と、雑誌に述べてあるのを読み、膝を打ちました。

ポワチエとワシントンは、実際に会って話しております。

初めて主役をもらえそうになったワシントンに、
ポワチエは、次のようにアドバイスした。
「君のキャリアは最初の3本か4本の出演作で決まる。
自分がいいと信じる役が来るまで待つべきだ」。

1984年頃、
スタジオでワシントンを見かけ、
ポワチエは次のように声をかけた。
「君には素晴らしい才能がある。
だが、才能には責任が伴うものだ。
それを忘れないでくれ」

これは、そのままポワチエ自身についても言える。

 

アカデミー賞授賞式の会場で、
ジュリア・ロバーツがはしゃいでいた姿をご覧になった方も、いるでしょう。
「ペリカン文書」で共演した彼女は、ワシントンを高く評価しており、
その映画製作中にワシントンが、黒人男優として示した配慮についても証言しています。

心底,ロバーツの喜びが納得できる話です。

 

この文章を書きながら、「タイタンズを忘れない」を思い出しました。
彼が主演という触れ込みの作品ですが、
ワシントンは旨く力を抜いて退いた演技をし、
高校生役の若い黒人男優達を前へ押し出しています。
素直に見れば、あの生徒達の方が見た人たちには印象に残るはず。
映画を見たときには、思いもよらなかったワシントンの思いが、
今にして何ほどかは汲み取れるようになりました。

 

ニューズ・ウィーク日本版3/20号
「デンゼルが挑むオスカーの壁」
アリソン・サミュエル著

を元に、書きました。
サポートしていただいたWeb友ばやっちさんに、お礼申し上げます。

 

後日、デンゼル・ワシントン・ファンのHPを知りました。

掲示板の過去ログがしっかり取ってあるのを楽しく読みながら、
この文章をいつか書き直さねばと思っています。

D・ワシントン・ファンは、下記のアドレスへ直行しましょう!

デンゼル・ファン・ルーム(デンゼル・ワシントン・ファン・サイト)

 

 

 


 

ぼくの採点評 2 D・ホフマンと試写会

 

映画の試写会になんとしても行きたい!

この思いの一番強かったのが、

「小さな巨人」(1970 米)〈75点〉
アーサーペン監督
ダスティン・ホフマン主演

の時でした。

あの頃、県庁の直ぐ傍にあった西日本放送の主催により、
駅前のグランド劇場で上映された試写会で見ました。

「卒業」で一躍、時の人となったダスティン・ホフマンの、
「ジョンとメリー」に次ぐ作品で、彼のメイキャップの凄さが前評判でした。
(「真夜中の中のカウボーイ」が、この前か後かは不明です)

監督が、アーサー・ペン、共演にフェイ・ダナウェイの顔ぶれで、
私はもう見たくて見たくて、それも早く見たくて、
試写会応募の葉書を何枚か出しました。

葉書とは別になんとしても試写会を見たい旨、便箋3枚ほどに書き連ね、
手紙も出しました。(笑)
その甲斐有ってか、試写会の招待状を手にする事が出来ました。

その時、私は高校三年生。
高校一年生の時に「卒業」を見てから、二年後。
ダスティン・ホフマンの名前は、今では信じられない程の観客を動員する力がありました。
歌の題名の一部にさえなったほどです。

「俺たちに明日はない」で男の子の心を鷲掴みにしたフェイ・ダナウェイさんに、会いたい。
「奇跡の人」(1962)と「俺たちに明日はない」(1967)と同じ、
監督アーサー・ペンさんの作品なら、裏切られないだろう。

映画の西部劇におけるインディアンの描き方で、
大きく方向転換をした作品の一つと言っていいでしょう。

 

西部劇の方向転換を示した作品といえば、
キャンディス・バーゲン主演の
「ソルジャー・ブルー」(1971 米)〈65点〉も思い出す。

フェイ・ダナウェイに次いで、女優さんで、私が好きだったのが、
キャサリン・ロスとキャンディス・バーゲン。
しだいに、フェイ・ダナウェイから、この二人に鞍替えですね。(笑)

キャンディス・バーゲンは、「パリのめぐり逢い」(1967 仏)〈75点〉で
イブ・モンタンの心を掴んだ役どころが、一番印象的でした。
この「ソルジャー・ブルー」のテーマソングを歌ったパシー・セントメリーは、
「いちご白書」(1970 米)〈80点〉の「サークル・ゲーム」でブレイクしました。
この歌詞の最初の所が、そっくりそのまま英語の過去完了形の問題文で出ていたのに、
ビックリして、儲けた思い出がある。(笑)

この「いちご白書」で、キム・ダービーにめぐり会い、それから、
しばらく彼女を追っかけて、二三作見ました。
テレビドラマ「鬼警部アイアンサイド」にも出てました。

 

ダスティン・ホフマンの作品で
他にも、印象深いものに、次の作品があります。

マラソンマン(米 1976)

ジョン・シュレシンジャー監督
ダスティン・ホフマン主演
ローレンス・オリビエ、ロイ・シャイダー出演

これもD・ホフマンの名に惹かれて、見に出かけたもの。
しかし、この映画で、ローレンス・オリビエ、ロイ・シャイダー、
そして、シュレシンジャー監督を知ったことのほうが私には大きかった。

NYの雑踏における、ユダヤ虐待の爪あとを示した場面が印象に残りました。
ローレンス・オリビエは、ここでの切れ味鋭い雰囲気ではじめて知ったので、
後に、
「リトル・ロマンス」(米 1979)〈80点〉や、
「探偵スルース」(米 1972)〈70点〉で、彼を見た時、大いにずっこけました。
テレビの「アクター・スタジオ・インタビュー」でアンソニ・パーキンが、
R・オリビエについて語っていたのも思い出します。
なかなか凄い名優さんらしいですね。

このサスペンス溢れる作品に惹かれ、原作の続編をハヤカワ文庫で読みました。
その続編も大変おもしろかったが、
あまりにも惨い内容で、映画にはならないのが当然のものです。

ロイ・シャイダーは、「ジョーズ」(米 1975)〈70点〉でご存知の方が多いかもしれませんが、
私は、軍事用ヘリコプターの映画が、一番印象深いです。

 

こう書きながら、双葉さんの本をパラパラめくっていると、
意外な事に気づかされてビックリする事が出てきます。

パピヨン
(米 1973)〈75点〉

ダスティン・ホフマンが、スティーブ・マックイーンと共演した、
この脱獄映画も見たっけ。
その一文の中に、ドルトン・トランボの名前が!
「ジョニーは戦場へ行った」(米 1971年)〈85点!〉
の原作者にして、脚本・監督をした人の名前。
同一人物…?!
知らんかった…。

この「ジョニーは戦場へ行った」につけた双葉さんのコメントは、
「これぞ究極の反戦映画」!
全く同感です。
映画館「テアトル」で見ました。

 

映画の試写会と映画館とで始まったこのお話の締め括りは、
生まれて最初に試写会で見た映画にしましょう。

RSKの招待により、駅前グランドでみた、
「栄光の5000キロ」が、それです。

今は亡き石原裕次郎さんが、自らのプロダクションの命運をかけて作った作品で、
キリマンジャロの麓を走るブルーバードのあの型、今でもよく覚えています。
石原さんの映画作りは、大変熱意溢れるもので、
作品の出来栄えよりも、その熱意がいつも話題になっていました。
それらの作品群の中では,「ある兵士の賭け」が、一番印象に残っています。

主人公の思い入れと、石原さんの熱意とがない交ぜになって、
そのひたむきさに打たれたのでした。

「栄光の500キロ」を思い出していると、
今は、パリダカールが有名だから、
その内、あれを舞台にした作品が出来ないかな?
と思います。

何より、バイクやトラックがいっしょに走る様子や、
そのいわれを知りたいですね。
そして、毎年行なわれるこのレースの舞台を目の当たりにしたいものです。

 

★ 映画の製作年と、一地方都市での上映年とが、必ずしも一致しません。

☆ 双葉十三郎さんの採点は、次のようです。
80点   ダンゼンよろしい
75    上出来の部類
70    見てもいい
65    見てもいいがすこし落ちる
60    平凡な出来ばえ  
65    水準以下だが多少の興味
60点以下 篤志家はどうぞ

 

 




「ぼくの採点評」を片手に 1

 

アカデミー賞式典に合わせて過去の受賞作が衛星放送で再放送されたようです。

その予告を偶然見た時、「グッドバイ・ガール」のシーンがありました。
ビデオで見るよりきれいな画面なのでびっくり。
あんな鮮明な画面で見たいものです。
これは、脚本がニール・サイモンの作品。

舞台で著名なN・サイモンですが、
映画の脚本もいくつか書いており、
その裏話にも触れている彼の自伝の中で紹介されているエピソードには、
印象深いものが幾つもあります。

お母さんのダンスホールでの自慢の思い出がその中の一つ。
読んでて思わずほろりとさせられました。
その話を絡めた映画作品として、映画「ブロードウェイ・バウンド」がある事を、
双葉十三郎さんの「ぼくの採点評X」で知りました。

これと同名の戯曲作品があるようですが、
ダンスですから、踊りや曲がまつわるもので、
本で読むより、舞台か映画などで味わいたい。

アン・バンクロフトさんがお母さん役と言うのもうれしい。

私の行っているビデオレンタル屋さんでは見当たらないので、
いつかどこかで会えるのを楽しみにします。

この映画作品に、双葉さんが、付けた点数が、白星四つ(80点)。
この採点評では高い部類に入り、尚且つ、秀作と述べている。

N・サイモンの映画作品は他にも未見のものが多く、
「第二幕」等も、これからの楽しみです。

 

双葉十三郎さんの「ぼくの採点評」は、ものすごく多くの作品に点数をつけています。
週刊誌で読んだところでは、二万作ほど見ているらしい…!
このシリーズ本など、是非インターネットで検索して楽しみたい。
なにせ、手元にある「X」は、索引が無い!!!
タイトル・監督・出演者名は無論、各種のデーターと共に、
ジャンル・点数からも検索できたらどんなに素敵だろう。

最近は、この本を手元において、ちょうど激安のレンタルを僕としては借りまくっている。
(と言っても、週三本が限界のようです。四本見たら、後々尾を引いて疲れます)

今でも若い人を中心に人気のある「ショーシャンクの空に」が65点、
「タイタニック」でも70点と、辛口な一方、
B級と称される「スピード」も、「すべてをあなたに」も、75点です。
マスコミ評とは違った、率直な採点で、座り直し読んでいます。

いろいろ映画評を読んでも、この人!ってなかなかいないですね。
通(ツウ)過ぎたり、エンターメントっぽく過ぎたり、マニアック過ぎたりします。
あの淀川長治さんは、テレビでは甘く、専門誌では辛く紹介していたように、思います。

かく申す私はどうでしょう?(^^ゞ
ちょっと理屈っぽ過ぎると、自覚はしています。(笑)

この双葉さんの本を片手にいろいろ書きたくなってきました。

 

 

 


 

映画試写会応募の同志へ

 

この春から、試写会への応募を出すようになって、
日々の哀しみと喜びとに、メリハリが一層ついています。(笑)

話題作は、まず、当たりませんねぇ〜!(ため息)

今春から、当たったのは今まで4回。
作品名を並べると、
「トラフィック」「東京マリーゴールド」「JSA」「コレリ大尉のマンドリン」

どちらかと言えば、
地味で、硬派な感じのものばかりでしょう?
でもね、負け惜しみじゃないけど、ホント、いい作品ばかりですよ!

 

というわけで、「トゥームレイダー」は、出しませんでした。(強がり?(笑))
息子のPSでやってみたかったアクションゲームだから、もちろん見たい!
それから、主演のアンジェリーナ・ジョリーにスクリーンで会いたい!!

アンジェリーナ・ジョリーの名前は、映画「ボーンコレクター」で初めて知りました。
「ボーンコレクター」は、先に本を読んでいたので見たいと思わなかったけど、
作中では重要なキャラクターなので、名前だけはチェックしていたんですよ。

「17歳」という好評を得た作品で、その名前に再開。
で、その時、あのジョンボイドの娘だと知り、ビックリ!!!
「真夜中のカウボーイ」や「チャンプ」「5人のテーブル」等などをリアルタイムで見てきたので、
愕然としたのも、正直言うと、あります。(笑)

彼女の最新作、それがあのトゥームレイダー…。
この次は、どんな役、するんだろう?

 

あっ、「コレリ大尉のマンドリン」の感想への、お礼が未だでした。
遅まきながら、ありがとう!m(__)m
読んだよって、書いていただけるだけでもうれしいのに、
過分な感想で、ちょっと、舞い上がってしまいました。(^^ゞ

「コレリ大尉のマンドリン」は、話せばまだまだ話題があります。
出演者の顔ぶれは、映画通には、うれしい部分がありますし、
重苦しい歴史の一こまがバックでも、見終えた後の感じがよくて、
唸らされました。

この映画を見て、「ノッティングヒルの恋人」を見ようと、思いました。
ヒュー・グラントが読んでいるのが、この本だそうで…!

 

先日、アイザック・スターンさんの訃報が新聞に載っていました。
連日の米国同時多発テロ事件の報道の中、目立ちませんでしたが、
私には、大変な驚きでした。

つい最近、「ミュージックオブハート」で、
彼の素敵な笑顔と演技とを見たばかりなので…。
あれが、私にとって彼の最後の姿です。
もし、ご覧になってないのでしたら、その彼を見るだけでも、
十分に価値があると思います。

で、なぜ、最近「ミユージックオブハート」なのかって言うと、
この夏、「アクターインタビュー」というテレビ番組で、
メルリストリープ等の話を聞いて、
ものすごく映画を見たい気持ちが高まって、次々映画をビデオで見だしたのです。
あの番組、あなたも見たのでしょうか?
もし、ご覧になっていたら、どの俳優さんのが一番よかったですか?

 

映画って、こういう風に次々と話がつながってきりがないですね。(笑)

最後にもう一つ。
今、「暗号解読」という本を読んでいます。
この中で、エニグマという暗号の器械について多くのページを割いています。
思わず身を乗り出しました。(笑)
「U−571」という去年上映された映画の中で、重要な位置を占めていた小道具です。
暗号の歴史の中では、大変大きな位置を占めているようです。

 

 



 

キネマ旬報を読みながら   2000.7月上旬の巻

 

映画音楽大特集の背文字に惹かれて借りました。

この特集で知ったこと。
サントラ盤と私が言っていたものは、
今、「スコア盤」といったほうが紛れが無いようです。
インスパイア・ソング盤なるものがサントラ盤と称されているらしい。

(映画主題歌のヒットに着目したレコード・メーカーは、
映画会社とタイアップして、主題歌のみならず
映画からインスパイアされた歌の数々を人気アーティストに書かせ、
それらを寄せ集めたものを“サントラ盤”と称して発売し、
それなりに好評を得るようになってしまった)

皆さん、ご注意下さい。
読んでいるうちに、欲しいCDのリストが長くなってため息をつくばかり。

 

読み出して間もなく、
この号のもう一つの脊見出し、「サイダーハウス・ルール」のサントラ盤が市図に入りました。
そのCDを聞きながら、読んでいると、
「サイダーハウス・ルール」は、作者アーヴィング自らが脚色し、原作とは大いに変わっているそうです。
そうして、アカデミー脚色賞を受賞しました。
でも、よく読むと監督の談話にこうありました。
「ジョン(・アーヴィング)には少し、意見を通すことを控えてもらった」
アーヴィングは、この映画作品を何度も鑑賞し、大いに満足したとの事です。

こんなところを興味深く感じるのは、
先日、「ビリー・ワイルダーならどうする?」を読みかけたせいでしょう。
台詞一つで、全く印象が異なるのを、知り、
映画ならではの展開の醍醐味を感じました。

そんなわけで、「サイダーハウス・ルール」、いよいよ観るのが楽しみです。

ハルストレム監督の作品は、市図にはそうありません。
「やかまし村の子どもたち」「やかまし村の春・夏・秋・冬」ぐらいで、
この監督さんの作品として見ようと思います。

 

この号の作品特集は、「ザ・ハリケーン」です。
作品評を、沢木耕太郎さんが「暮らしの手帖」に書いていました。
そこには、映画で腑に落ちないところを本で補ってコメントしていましたが、
そんなことに構わず、この映画見たいと思っています。

それは、この監督の作品をそうとは知らず多く見ているからです。
「アメリカ上陸作戦」「夜の大捜査線」「華麗なる賭け」
「屋根の上のバイオリン弾き」「ジーザス・クライスト・スーパースター」
「ローラーボール」「月の輝く夜に」「オンリー・ユー」
他に、「シンシナティ・キッズ」「アグネス」はちょっと不明ですが…。
本当にビックリしました。

「ボーンコレクター」のデンゼル・ワシントンは今のところ観たいと思いませんが、
「ハリケーン」は、是非見たいものです。

 

なかなか拾い物が多いなぁと、感心しながら読み進みます。
新作紹介の中の、「あの子を探して」も見たい。
「クレイジー・イングリッシュ」…。
えっ!これって、高橋茅香子さんが「英語で人生をひろげる本」で紹介してたものじゃない?