映画の原作を読む時、
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イギリスの文学者アイリス・マードックが、 アルツハイマーに罹った後、亡くなったのが1999年。 その死と前後して、 彼女の夫であり、同じく文学者でもあったジョン・ベイリーが書いた、 次の二冊が原作です。 「作家が過去を失うとき アイリスとの別れ 1」(原題:「Iris: A Memoir」)、1998年刊行。 「愛が試されるとき アイリスとの別れ 2」(原題:「Iris and Her Friends」)、2000年刊行。 映画の中で、 アイリスを見守りながら、夫がタイプしていたものです。 「作家が過去を失うとき アイリスとの別れ 1」を読み、 映画を見、 それから、 「愛が試されるとき アイリスとの別れ 2」を、読み終えました。 最初の一冊を読み、つらくて途中止めしている最中に、映画が来てしまいました。 映画で、私の読んだ印象を凌駕していたのは、 アイリスを演じていたジュディ・デンチの存在感のみでした! 本では、どこまでもジョンを通してのアイリスなのですが、 映画では、ジョンとははっきり離れて、一人の女性がいるという感じを受けました。 手堅く、オーソドックスな映画化では、 長いキャリアで培った文章には、到底敵わないでしょう。 「作家が過去を失うとき」では、書かれてある事実・事柄に心を動かされてしまいましたが、 「愛が試されるとき」に至っては、その文章に感服しました。 子供時代の記述は退屈したものの、 戦争に出征した後から、その筆遣いに、心を奪われる。 言葉の選択、文章の展開、そうして描き方の選択も唸らされる。 ここにあるのは、文学の智慧、文学の恵み、そうとしか言いようのない感じを受ける。 「作家が過去を失うとき」で、 アルツハイマーに罹り、過去の面影を留めない変わりようのアイリスを、 昔の面影を織り交ぜながら描いている。 しかし、 「愛が試されるとき」では、 アルツハイマーに罹っても、アイリスは、アイリスであるというスタンスです。 最後は手におえなくなるも、次第に変わる症状それぞれと付き合いながら、 その暮らしの中で、ジョンの思い出・思索が、繰り広げられ、 その傍でアイリスが時折顔を出す。 どこまでもジョンでいながら、 変わっていくアイリスに接する態度を読み続けていて、 思った事。 老いの先に、人生経験に裏打ちされたラブストーリーが展開されている。 ジョンとアイリスだから、築き上げられたもの。 |
映画の原作を読む時、
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2003年最初に招待された映画試写会で、1月に見ました。 「羊たちの沈黙」(1988)が1989年に新潮文庫で刊行された時に、 一読し、夢中になり、引き続いて、 著者トマス・ハリスの他の作品を一気に全て読みました。 大変寡作なので、全部で三作しかありませんでしたが。(笑) 「ブラック・サンデー」(1975)も怖かったが、 「レッド・ドラゴン」(1981)も大変怖かったのを覚えています。 読みながら、心の中で「ウワーァッ」「ひぇーっ!」と。 とりわけ、車椅子が火達磨になったところは、 私の中でゆるゆるとスローモーションで、長いシーンです。 映画では、短めでした。 最後に、犯人が襲い掛かるところは、 読んでいてもいきなりという風でしたが、 映画では、インパクトが弱かった。 十年以上も前に読んだ印象ですからあやふやですけれど、 そこでの怖い印象を、映画からは受けませんでした。 映画化が、余りにも遅すぎます! 原作の続編「羊たちの沈黙」が映画化(1991年公開)され、ヒットした。 映画「セブン」が話題になった。 そんなサイコサスペンス・ブーム後に、この作品の持ち味を出すのは無理でしょう。 この原作は、ブームに先鞭をつけていたのです。 映画「羊たちの沈黙」にしても、私には原作の方のインパクトが強い。 原作尊重で考えれば、サイコサスペンスとしての演出を最優先にするべきですが、 映画として、アンソニー・ホプキンス主演がまず最初にありきで、 興行を手堅く成功させる為に、人気のある俳優を回りに配し、 人気俳優によるキャスティングがメインになっている。 これが、私から見ての、この映画化の泣き所。 映画俳優ファンとして、スクリーンに登場する俳優さんを見ると、 「やぁ〜!」てなもんですからね。(笑) 嬉し泣きか? 映画会社が、映画ファンの為にこの原作を利用したのであって、 このキャスティングで、この原作の持ち味を求めるのはナンセンスです。 最後の一言 絶対に映画より原作を先に読むべきです。 加えて、今更どうしようもく、手前味噌になって申し訳ないのですが、m(__)m、 サイコサスペンス・フロファイリングの流行前に読んだ人が、 この作品を一番味わえたのだと思います。 |
さよなら、ジョージ・ロイ・ヒル監督
2002.12.31 記 頁のトップへ |
わが心のジェニファー
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マイ・ファースト・ムービー
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16人の映画監督が、 それぞれのデビュー作について語ったものを、 取りまとめた本です。 アクターズ・スタジオの監督版デビュー作品編を、見ているような気分で、読みました。 以下に、監督名と作品名とを列記します。
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2002.12.4 記
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映画「エンド・オブ・オール・ウォーズ」への誘い
ビデオ等については、 アットエンターテイメント を参照してください 2002.10.12 記 頁のトップへ |
アクターズ・スタジオ・インタビュー 2002 夏
いつも、唐突に始まり、あっという間に終るインタビュー番組で、
キム・ベイシンガーは、私個人的には、 フランシス・コッポラ監督は、 シャーリー・マクレーンさんは、 ローレン・バコールさん、最初にお詫びしておきます。 ハーヴェイ・カイテルは、いつもどんな役をしているのか、 リチャード・ドレイファスは、
衛星放送の4人分は、残念ながら私には手が届かない。 2002.8.24 記 |
2002年の夏、シネマ・クレール丸の内館で
2002.7.5 記 昨日、「ピンポン」上映に際しての舞台挨拶があり、 |
映画の魅力を強引に分析してみた
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祝:デンゼル・ワシントン、アカデミー賞主演男優賞受賞
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ぼくの採点評 2 D・ホフマンと試写会
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「ぼくの採点評」を片手に 1
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映画試写会応募の同志へ
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キネマ旬報を読みながら 2000.7月上旬の巻
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