「タクテクス」1988年9月号(ホビージャパン)の記事より
(各項目へのリンク、レイアウト及び彩色以外は原文のまま)


Death Scenes Aftermaths of Cthulhoid Kills

最後の場面

クトゥルフの犠牲者に捧ぐ

ディファレント・ワールズ誌35号より
Sandy Petersen / 訳:西村ヒロユキ

“クトゥルフの呼び声”での、ツキのない探索者の運命は、未知の怪物に食われたり殺されたりと相場は決まっています。そういう場面は犠牲者にとっては悲しみと嘆きと無益な抵抗の時ですが、生き残りの者にとっては願ってもないヒントとなります。仲間がどのようにやられたかは、探索者たちの相手が何であるかの重要な手がかりとなるはずです。

以下の50の場面は、それぞれ“クトゥルフの呼び声”に登場する怪物と、“クトゥルフ・コンパニオン”で紹介された11の新たな神々・異種族に対応しています。キーパーはこれらを読み上げてもよいですし、状況にあわせて修正を加えてもよいでしょう。あるいはこの記事の内容だけを参考に、自分で死の場面を演出してもかまいません。当然、犠牲者がすべてまったく同じように殺されるはずはありませんが、同じ怪物ならば何らかの共通点があるはずです。以下犠牲者は「彼」となっていますが、もちろん女性であってもよろしい。


アザトース
アトラック=ナチャ
アブホース
異形の神々の従者
イグ
イゴールナク
イスの偉大なる種族
イタクァ、ウェンディゴ
忌まわしき狩人

ガグ
ガスト
ガタノソア
グール
空鬼
クトーニアン
クトゥグァ
クトゥルフ
クトゥルフの落とし子

シアエガ
シャンタク鳥
シュド=メル
シュブ=ニグラス
シュブ=ニグラスの黒き仔山羊
小神たち
ショゴス
砂に住むもの
ゾス=オムモグ

ダゴン、またはハイドラ
ツァール
ツァトゥグァ
ツァトゥグァの落し子
ティンダロスの猟犬
ドール

ニャルラトテップ
ニョグタ
ノーデンス
ノフ=ケー

ハスター
ビヤーキー
深きものども
古きものども
蛇人間
星の精
炎の精

ミ=ゴ
ムーン=ビースト
盲目のもの

ヨグ=ソトース
夜のゴーント

ロイガー

*アザトース、魔王:
「家は、大きな天災にでも遭ったかのように、つぶれていた。のみならず、周辺数百ヤードの範囲にあった木々も裂け、砕かれていた。家の廃虚の中に彼の死体が見つかった。それが彼だとわかったのは、左手の残骸の中ほどに、ねじれた金の指輪が残っていたからだった」

*ビヤーキー:
「死体は道のまん中に、ねじれた形で転がっている。のどが裂けているが、血は不思議なほど少ない。他の部分も服とともにずたずたにされていた。死体は気のせいか縮んでいるようで、青白いはだの色だった」

*クトーニアン:
「幅50センチほどのひどい青あざが、死体を一回りしていた。のどの根本にはぎざぎざの、大きな穴があいていて、手がかくれるほど深い。死体はどこも、いやな臭いの粘液でおおわれていた」

*クトゥグァ:
「死体は燃えてしまってばらばらになっている。それでも、くすぶる車のシートにちゃんと座った骨が見えた。周囲1エーカーの森はまだ燃えつづけている」

*大いなるクトゥルフ:
「道路の上の緑色のしみのまん中あたりに、少し赤くなったところがあるのが見えるだけだ」

*シュブ=ニグラスの黒き仔山羊:
「死体の顔と口じゅうに、黒い膿汁が満ちている。からだの半分には潰瘍に似たただれが広がり、まだ油のような透明な液体が出ている。彼の表情はとてもことばで言えないようなものだった」

*深きものども:
「ひっかき傷が犠牲者ののどをみごとに切り裂いていた。まるで誰かが4本のカミソリの刃を同時に彼の首にあてて引いたかのようだ。同じ4本のひっかき傷は片腕にもあった。その腕は何か強い力で握りしめられたかのように、折れていた」

*ダゴン、またはハイドラ:
「さしわたし数フィートもある大きな、水かきのある足跡が、砂地に残っている。その巨大な足跡の中央に、友人は倒れていた。死体は、そのもののおそろしい重みによって、ほとんど2つにちぎれかかっている」

*ドール:
「粘液の巨大な塊が、車の前半分をすっぽりおおい、森には数マイルに渡って通り道ができていた。しかし、友人の姿はどこにもない」

*空鬼:
「悲鳴を聞いて、わたしたちは部屋へ駆けこんだ。しかし、ドアが開いても見つかったものは、カーペットの上の小さな血のしみと、かすかにこだまする彼の最後の叫びだけだった」

*炎の精:
「彼の座っている椅子はどうにもなっていないが、彼の頭と上半身は黒焦げになり、おそろしい表情をしていた。気味の悪いことに、手足は何ともない」

*盲目のもの:
「彼の顔は正視に耐えず、わたしたちはハンカチでおおってかくした。死体は砂地のくぼみのような、決まった大きさの丸いあばたで傷ついていた。その体は、まるでオーブンで焼いたかのように乾燥しているようだったが、わずかに赤みを帯びていた」

*ツァトゥグァの落し子:
「目に入ったのは骨だけだ。肉はひとかけらも残っていない。そこから、濡れた何かのあとがのびている」

*グール:
「死体は、ネズミか何かがかみ散らしたようだった。眼球は眼窩からきれいにほじり出され、長骨は砕けて髄が見える。後頭部は、おいしい灰色のもののため、穴を開けられている。腹も切り裂かれて、食い荒らされていた。彼を殺したものにとっては、内蔵は珍味であるらしい」

*イスの偉大なる種族:
「頭が医学的な正確さで、すっぱり切られている以外は、彼の体はちゃんとしている」

*名状し難きものハスター:
「あらゆる骨は粉々に砕かれ、皮膚は全体があざになっていて、紫色に変わった血が顔をうっすらと染めている」

*ティンダロスの猟犬:
「彼はあおむけに倒れ、薄い、青みがかった粘液が体をおおっている。頭は切り離されて、胸の上に乗っていた」

*忌まわしき狩人:
「死体は、野獣にやられたかのように、傷ついていた。奇妙なことに、体のいくつかの部分がなくなっているが、その目的はわからない。なにか人間とは違う理屈にしたがう存在が、この男をあちらこちらと選んで切り刻んだかのようだ」

*風のものイタクァ、ウェンディゴ:
「見つかった死体は固く凍っており、高いところから落ちでもしたように、ツンドラに半分埋まっていた。掘りおこしてみると、氷のかけらはついていたが、両足が焦げて切り株のようになっていて、奇妙なながめだ」

*小神たち:
「彼の死体はうつぶせになっている。背中の一部は酸に焼かれて、脊柱と肋骨がのぞいている。肋骨は明らかに細かく砕かれており、頭骨もこわれ、腐食していた。顔も体の前面は無事だが、巨大な重みに地にめりこんでいる」

*ミ=ゴ:
「いけにえの腹や胸じゅうには、小さな切り傷や深いさし傷があって、ずたずただ。その無数の傷から流れた血が赤くたまっていて、死体は傾いた格好で地面に寝ている」

*夜のゴーント:
「彼は連れ去られてしまった。とぎれとぎれの声、悲鳴のような、恐怖にひきつった笑い声が夜の空から聞こえてきて、それは彼の声だとわかった。誰も生きて帰った者のない、あの黒い山へ連れていかれたのだ」

*ノーデンス、大いなる深淵の大帝:
「死体は、1ヶ所を除けば、完全だった。なにかの打撃のあとがあって、折れた鎖骨がみごとに心臓を貫いていたのだ」

*ニャルラトテップ、這い寄る混沌:
「椅子に手足を広げて座っている彼の顔には恐怖の表情が残り、体じゅうにひどいやけどのあとがある。雷にうたれたとしか思えないが、窓もない部屋にどうやって雷が入ってきたかは謎であった」

*ニョグタ:
「ベッドがたたき壊されて床に広がっているが、彼の姿はない。破壊のあとは窓のところまで続いている。窓の柱に切断された足がひっかかっているのが見えた」

*古きものども:
「彼の体は文字通りやつ裂きになっていたが、切り傷やつぶれたところはない。手足は胴体からちぎれて、あちこちに投げ出されている。見なれないまるいあとが、その手足や胴体にたくさんついている」

*砂に住むもの:
「誰かが研いだ鉄の熊手でめくらめっぽう彼の体を打ちのめしたようだった。死体を裏返してみると、背中には大きな穴があいていて、彼を殺したものはかみついて、爪を肝臓につきたてたらしい」

*蛇人間:
「息絶えている彼の体には、のどに2つの大きな穴があったが、血は少ししか出ていない。穴のまわりの皮膚は腐っていて、指で押すと緑色の液がこぼれ出てきた。この液体は指に痛みを与え、洗えば簡単に落ちたが、ちくちくする感じがしばらく残る。死体の皮膚は青く、特に顔は輝かんばかりの青白さだ。舌は黒ずんでとび出し、目もあるかないかわからないほど黒くなっている」

*異形の神々の従者:
「死体の皮膚は裂けて、そこから血が流れている。巨大なむちで打たれたかのようで皮膚がはげ落ちるのみならず、その力は骨も砕いていた。むちのあとには血のほかに、緑色がかった透明な液がたまっていて、沼の匂いがした」

*シャンタク鳥:
「胸から上はなく、半円形の巨大なかみあとが残っているだけだ」

*ショゴス:
「死体は腐りかかった粘液におおわれ、夜の空気の中である時は緑に、ある時は黄色く、光っていた。頭は胴体からちぎれていて、皮膚のかけらが一面に散らばっている」

*シュブ=ニグラス:
「体じゅうに、黒いチーズ状の物質がまつわりついている。頭の前面、顔のあったところは膿になっていて、キラキラ光る体液で青や赤に見える」

*シュド=メル:
「胴体には1つの穴が貫通していて、血や内蔵はすべて吸い出されてしまったようだ。死体はたっぷり1フィートの厚さの悪臭を放つ半透明の粘液に埋まっている」

*クトゥルフの落とし子:
「大きな血溜まりとはらわたが地面に転がり、緑色の粘液と混じりあっている。友人の姿はどこにもないが、ぐちゃぐちゃの内蔵を見ればその運命は明らかだ」

*星の精:
「彼の体にはまったく血の気がなく、まっ白になっているばかりか、全身の骨が折れていた。巨大な深いひっかき傷が胸と足に残っていて、死体は人間には不可能な姿勢で横たわっている」

*ツァトゥグァ:
「地面にあるしわだらけの袋は、しなびて、毛はなく、無数の穴があいており、中には骨しか入っていない。つついてみるとカラカラともの悲しい音を立てた。仲間の皮だ」

*イゴールナク:
「彼の唇や舌、そのほかあちこちの部分はきちんとかみ切られていた。傷口からはまだ固まっていない血がたれているが、死んだのは数時間前のはずだ」

*イグ:
「死体は紫色にふくれあがり、猛毒によるもののように、青黒いしみができていた。見ていると突然、びしゃっという音とともに腹がくずれ落ち、黒い毒液とはらわたが一面に飛びちった」

*ヨグ=ソトース:
「顔の右半分と右腕は、もとの半分以下の大きさに縮み、しわがよっている。残りの部分はみな焼け焦げて、ほこりのように乾いていた。触っただけで崩れてしまう」

*アブホース:
「彼を見かけることは2度となかった。彼の末路を示すものはただひとつ、何週間か後に山の斜面にいたという身の毛もよだつような、虫に似たものの噂だけだった。その虫には、彼の顔がついていたという」

*アトラック=ナチャ:
「死体は繊維のような、柔らかいが鋼鉄のようにじょうぶな物質で厚くおおわれており、顔のところに、2つの針で開けたような穴があった。彼の体の内部組織はすべて液体となって吸い出されたかのようで、人体のぬけがらだけが残っているのだった」

*シアエガ:
「死体は正面のドアにさかさまに留められ、のどと両手首が切り裂かれている。しかし床はきれいなもので、一滴の血も落ちていない」

*ガスト:
「その死体は重い棍棒で叩かれた後、野獣に荒らされたように見えた。わき腹や腕からはかなりの肉が食いとられている。夜にまぎれてやってきたに違いない」

*ガタノソア:
「彼の体は3千年前のミイラのようだが、死んでから2、3日しかたっていないはずだ。皮膚は固めた皮のようで、筋肉も石のようだ。表情はひどいおそれとおびえを表しているが、目は固く閉じている」

*ノフ=ケー:
「死体は凍っていて、氷のように固い。しかし凍った体は完全ではなかった――左の肩と腕がちぎり取られていて、この雪の中に住む何かが持っていったらしい」

*ガグ:
「背骨は強力な一撃を浴びたかのように粉砕され、大きなぎざぎざのかみあとが胴体に残っている。握りしめた手の中には、黒い粗い毛が残っていた」

*ロイガー:
「死体は見なれない青緑色の水たまりの中にうつぶせに倒れている。外傷はまったくないので、心臓発作が死因に違いない。しかしおかしな事に、検死解剖でも動脈硬化のあとは見られなかった」

*ムーン=ビースト:
「彼を殺したやつは、ゆっくりなぶり殺しにしたに違いない。胴体にはいくつも貫通した穴があり、両腕にはやけどのあとがある。死体のそばに暖炉があるので、やけどの原因はおぼろげながら想像がつく」

*ツァール:
「時計と指輪、それに首にかけていた銀のペンダント以外、何も残っていない。少しでも彼の生物としての痕跡を残す部分は永久に消えてしまった」

*ゾス=オムモグ:
「彼の体は変なぐあいにしゃがんだ姿勢で、胴体の内部をぐちゃぐちゃにしてひと塊りにまとめたようだった。押してみると、肋骨が粉々になっているのがわかった」



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