以下のコンテンツ「とらのあな」けえにひ様から提供していただいた、"The Creature Companion" (Chaosium Inc. 1998)におけるモンスター・データを翻訳したものです。
また、翻訳に際して「闇匣」トラペゾヘドロン様に助言をいただきました。
ありがとうございました。


UNSPEAKABLE POSSESSORS:
名状し難きものの憑依体、下級の奉仕種族

そして彼らも確かに見たのだ、背後の水没した廃墟から私達の方へと泣き喚きながら近づいてくる、人間の歪んだ似姿のようなものを、目は鱗に覆われた厚い肉の中に埋もれて見えなくなり、骨のない腕を蛸の触腕のように私達に向かって振り回していたものを……。

――オーガスト・ダーレス「ハスターの帰還」

 名状し難きものの憑依体は、ハスターと人間との間に結ばれた(名状し難き約束として知られている)誓約と引き換えに、この神によって創造される怪物です。誓約の結果として、ハスターは名状し難き約束を結んだ者に憑依する事になります。この現象が生じると、グレート・オールド・ワンの精神は犠牲者のそれを圧倒し、そして彼の肉体を変形させてしまいます。憑依する肉体はまだ生きているものでなくてはなりません(犠牲者が死んでいる場合もやはり肉体の変形は始まりますが、数時間後には停止してしまいます)。もし名状し難き約束を結んだ者が故人であった場合、ハスターは約束の期日より1D6日遅れた後、彼あるいは彼女の最も近い血縁者に代わりに憑依します。犠牲者の皮膚は緑灰色を帯び、表面は鱗状になります。その肉体は人体を膨らませたパロディのような姿に、四肢は骨のないグニャグニャしたものに変化します。

 ひとたび憑依が行われると、その結果誕生するのは常にあらゆるものに致命的な破壊をもたらし、時には単に殺して貪り食う事に満足するような怪物です。

 ハスターに関係する大部分の呪文と同じく、この忌まわしき産物もまたアルデバランの位置に影響される存在であり、アルデバランが地平線に沈むか太陽が昇るかした時には活動を停止して崩壊し始めます。その誕生後にどちらかが最初に起こった時、憑依体はSTR及びSIZを1D20ポイント失います。どちらかの能力値が0以下になった場合は、名状し難きものの憑依体は死んで溶解してしまいます。もし生き残ったなら、怪物は次に太陽が沈みアルデバランが昇った時に再び覚醒します。

 戦闘において、このハスターめいた怪物は犠牲者をその触手のような腕で捕まえようとするでしょう。攻撃が成功した場合、目標は瞬時に口と耳から泡を吹いて、苦痛に満ちた死を迎える事になります。あるいは怪物は、先端に小さな口のついた触手のような指を犠牲者の体内に突き刺して体液を吸い出し、犠牲者が死ぬまで毎ラウンド1D10ポイントの耐久力を吸収する事を選択するかも知れません。そうやって吸収された耐久力は全て、怪物の欲する割合でそのSTR及びSIZへと割り振られる事になります。犠牲者を得れば得るほど、このハスターめいた怪物はより巨大になっていくのです。逆に毎晩充分な犠牲者を得る事がなければ、日の出の際に起こる1D20ポイントの耐久力の喪失によって怪物は崩壊してしまいます。

名状し難きものの憑依体、ハスターの従者

能力値ロール平均値
STR元の数値×221*
CON元の数値×331-32
SIZ元の数値×1.519-20*
INT1515
POW3535
DEX元の数値10-11
移動8
耐久力25-26*

* これらは名状し難きものの憑依体の本来の能力値であり、犠牲者を喰らうたびに増加し、アルデバランが沈むか太陽が昇るかするたびに減少します。

平均ダメージ・ボーナス:+2D6*
武器:触れる 85%、ダメージ 死あるいはラウンド毎に1D10ポイントの耐久力の吸収
装甲:6ポイントの鱗とゴムのような肉
呪文:人間から名状し難きものの憑依体へと変身する以前に知っていたもの。
正気度喪失:名状し難きものの憑依体を見て失う正気度ポイントは1/1D6です。


2007/07/17

“コール オブ クトゥルフ d20”では、この怪物は「ハスターに選ばれし者」"Chosen of Hastur"という名前になっていて、「クリーチャー」の章の「カルティスト(狂信者)」の項の下に収録されています。「名状し難き約束」を交わした者のたどる運命、人間から「ハスターに選ばれし者」への変異の過程については、こちらのデータの方が詳細に書かれていますので、適度に変換してBRP版へと取り込むのも良いでしょう。

"Malleus Monstrorum"におけるこの怪物のデータは、"The Creature Companion"のものとほとんど同じです。上述のもののうち、「戦闘において」以降の文が「攻撃」の項として独立し、特性値の項に「技能:人間だった時に持っていたものの多くを保持しています。」という項目が追加されました。あと、"Malleus Monstrorum"では特性値のうちSTRに増減の可能性を示す註の*が付けられていないのですが、本文中には変わらず明記されていますので誤植だと思われます。


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