以下のコンテンツは、Chaosium社の"Call of Cthulhu"サプリメント"Malleus Monstrorum"におけるデータを翻訳したものです。


XADA-HGLA:
ザエダ=グラー/ザーダ=ホーグラ、アザトースの化身

それは、何対ものしなやかな脚によって支えられた二枚貝の貝殻だった。半ば開いたその貝殻からは、先端にポリプ状の付属肢のついた、いくつかの節を持つ円筒状のものが何本か伸び出ていた。そして貝殻の内部の闇の中には、その知性を欠く様は身の毛もよだつほどの、深く窪んだ眼を持ち、輝く黒髪に覆われた、口の無い顔が見えたように思われた。

――ラムジー・キャンベル 「シャガイからの昆虫」
(「真ク・リトル・リトル神話大系 9」の山中清子訳では「妖虫」)

これは魔太守アザトースの、知られている唯一の化身です。奇怪にしてほとんど言及される事のない、盲目なる混沌の核の一局面なのです。

教団:この姿の大いなるアザトースは、シャンとミ=ゴによってのみ崇拝されています。

その他の特徴:のたうつ混沌の核として出現する場合とは異なり、このアザトースの化身は召喚された時に他の神々や従者を引き連れてくる事はありません。もしザエダ=グラーがその二枚貝のような殻を完全に開いてしまったならば、目も眩むような灼熱の光とともに、アザトースの真なる姿が噴出します。半径50ヤード以内にいる者は即座に核反応のエネルギーを浴びて焼き尽くされ、1D100ポイントのダメージを受けるのです。その後は怒れるアザトースと遭遇した場合と同じように扱われ、毎ラウンドごとにそのサイズは際限なく倍増していく事になります。

攻撃及び特殊な効果:ザエダ=グラーはその身体から緑色に輝く付属肢を伸ばし、犠牲者を潰すか、またはその貝殻の中へと引きずり込み、外なる神のねばつき燃え上がる肉の中で溶解させるかする事によって攻撃します。

ザエダ=グラー、混沌の揺り篭

STR 120CON 230SIZ 120INT 0POW 100DEX 10
移動 15耐久力 175

ダメージ・ボーナス:+14D6
武器:付属肢 100%、ダメージ 14D6または次のラウンドで死亡
装甲:50ポイントの硬い貝殻。しかし、その内部のねばつく肉には装甲はありません。
呪文:なし。
正気度喪失:ザエダ=グラーを見て失う正気度ポイントは、1D10/5D10です。


このアザトースの化身の「ザエダ=グラー/ザーダ=ホーグラ」(Xada-hgla)という名称は、「シャガイからの昆虫/妖虫」においては登場しません。おそらく、同じくキャンベルの短編「暗黒星の陥穽」(「真ク・リトル・リトル神話大系 3」収録、福岡洋一訳)に登場する「ざあだ=ふぐら そーろん」(xada-hgla soron)という言葉から採用されたと思われます。これは、ユゴスの廃坑の底から現れる緑色に輝く恐ろしいものについて、ミ=ゴに警告するように示された言葉でした。

この廃坑からのものがアザトースまたはその化身であるという直接的な記述は「暗黒星の陥穽」にはありませんが、「ネクロノミコン」における記述という形で、ユゴスの住民達を恐れさせるものとしてアザトースの名が挙げられており、またミ=ゴが廃坑から現れる何かを恐れてその周囲から逃げ去っていたという描写があるので、これらの二つの要素をあわせて「廃坑から現れた緑色に輝くものはアザトース(の化身)であり、警告音に示されたザエダ=グラーというのがその名前」という設定が作られたのだと推測されます。そしてその「緑色の輝き」は、外殻の奥の付属肢の発する光として設定されたのでしょう(「シャガイからの昆虫/妖虫」における二枚貝の姿のアザトースの記述には「緑色の輝き」という描写はなく、シャンの神殿の最奥部から現れたのも「ゼラチンのように光り震えながら広がっていく、薄い灰色のもの」でした)。

なお、「暗黒星の陥穽」に登場する「グラーキの黙示録」では、廃坑の底に棲んでいる恐ろしい存在は「ユゴスの裔(すえ)」であると書かれていました。アザトースの名を怖れるとも書かれている事から「ユゴスの裔」自身はアザトースではないと思われます。これが廃坑の底に緑色の金字塔を作った存在、時たま這い上がって来てミ=ゴを逃走させる存在と同一のものなのか、それとも金字塔を作ったのは緑色に輝く恐ろしい何かとは別の、この恐ろしきものを崇拝している種族で、それが「ユゴスの裔」と呼ばれているのか、不明瞭故に複数の解釈の余地があるようです。

#“エンサイクロペディア・クトゥルフ”及び"The Cthulhu Mythos Encyclopedia"の「ザーダ=ホーグラ」"Xada-hgla"の項においては、「暗黒星の陥穽」"The Mine on Yuggoth"は出典一覧に記されていません。


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