日本の三大死因はがん、心臓病、脳卒中で、トップは癌ですが、心臓病と脳卒中を合わせた循環器病による死因はほ
ぼ癌に匹敵します。そして心筋梗塞と脳梗塞をひき起こす原因は「動脈硬化」です。動脈硬化の原因は血管内を流れて
いるマクロファージュ(大食細胞・・・・・・組織球、単球からなり異物、膠質、蛋白細胞組織の破壊産物、白血球、赤血球
、などを貪食して消化する作用がある )が血管壁の中へ入り込んで血管壁にたまったコレステロールを食べてしまいま
す。しかしあまり食べ過ぎると血管内へもどろうとしても肥り過ぎて血管壁を通れない。そして血管壁で動けなくなって動
脈硬化の原因のアテローム硬化となってしまいます。そしてマクロファージュは超悪玉の小さいコレステロールが大好き
です。小さいほうが血管壁に入り込みやすいし、超悪玉コレステロール_化し易く動脈硬化へと変化しやすい。最近の研
究では肥満(とくに内臓のまわりについた脂肪)がいろんな生活習慣病をひき起こし、動脈硬化になりやすいことが分か
ってきました。それが「メタボリックシンドローム」です。最近の研究によりメタボリックシンドロームと密接に関連している
「アディポネクチン」が発見されました。大阪大学分子制御内科学教室の松澤教授(現住友病院院長)のグループによっ
て脂肪細胞について研究を行っていたところ、脂肪細胞で分泌されている未知の物質を世界で始めて発見しました。こ
の物質は「アディポネクチン」と名付けられ(アディポとは”脂肪”と言う意味です)、標準的な体格の人の血液中には多く
存在し、内臓脂肪が増加すると、反対にアディポネクチンは減少することが明らかになりました。
このように脂肪細胞から分泌される生理活性物質を総称して「アディポサイトカイン」といいます。アディポサイトカイン
には動脈硬化を予防する「善玉アディポサイトカイン(アディポネクチン)」と動脈硬化を促進させる「悪玉アディポサイトカ
イン(PAI-1やTNF-αなど)があります。 アディポネクチンは体の中で、どのような働きをしているのかというと、どんな
人でも、普段からタバコや血圧、血糖値の上昇、高脂血症、悪玉のアディポサイトカイン(動脈硬化を促進させるPAI-Iや
腫瘍壊死因子TNF-α、レジシチン、遊離脂肪_、アンジオテンシノーゲン等) などによって血管が少しずつ傷つけられて
います。血液中を流れて全身をめぐっているアディポネクチンは、血管が傷ついているところを見つけると、すばやく入り
込んで修理する修理屋さんですがさながら、体内の至るところで起きる「ぼや」を「大火」にしないよう、消して回っている
消防隊のようなものです。正常な状態では、これら善玉・悪玉アディポサイトカインの分泌はバランスよくたもたれていま
すが、 内臓脂肪が蓄積した状態では、不思議なことに善玉アディポサイトカインの分泌量が減り、悪玉アディポサイトカ
インが過剰に分泌されます。この分泌の乱れが生活習慣病を招き、動脈硬化を進展させると考えられています。そして
100才以上の高齢者は一般の人よりも2倍のアディポネクチンをもっていることが分かりました。又、アディポネクチンは
インスリン感受性をたかめて糖尿病を予防します。さらに筋肉運動にて血中のブラディキニン濃度の増加や筋肉内
MAPKの増加によりブどー糖の筋肉内取り込みが促進され、糖代謝機能の改善が期待できます。 東大門脇孝教授の
研究では、高血糖、高脂血症のマウスにアディポネクチンを投与したところ動脈硬化の予防になり、血糖値もさがり、中
性脂肪値もさがりました。生活習慣病を考える上で最も重要なホルモンであると結論付けられています。善玉アディポサ
イトカイン(アテ゜ィポネクチン)は、インスリン感受性をたかめて糖尿病を予防し血管内皮細胞に作用して動脈硬化を予
防します。悪玉アディポサイトカインは逆に糖尿病や動脈硬化を促進します。最近門脇教授らは「メタボリックシンドロー
ムのより本質的な指標となるアディポネクチンの血中濃度測定法の開発に世界に先駆けて成功されました。活性の高
い多量体アデイポネクチンだけを認識する精度の高さが我々のオリジナリティ。すでに研究試薬としての製造承認がなさ
れ、年内に臨床試験が終わる予定だ。健診項目としも有力なものになるだろう。」と日本医事新報のNo.4287号2006
年6月24日)に述べていられます。
生活習慣病と呼ばれる主な疾患に
「肥満症」 「高血圧」 「糖尿病」 「高脂血症」などがありますが、これらの疾
患は個々の原因で発症するというよりも、肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した肥満が犯人であると考えられています。
★動脈硬化をふせぐために
「メタボリックシンドローム」という概念が確立された目的は、動脈硬化による
循環器病(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞
、閉塞性動脈硬化症など)を如何に予防するかということです。動脈硬化は、ある程度症状が進まない限り、なかなか
症状として出にくい病気です。しかも、動脈硬化による循環器病は働き盛りに突然発症する事が多く、に生命に関わる
重大な病気であり、後遺症も深刻です。メタボリックシンドロームを放置しておくと、やがては動脈硬化をひき起こします。
動脈硬化にならないために、メタボリックシンドロームの段階でキチンと改善しておきましょう。
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日本の企業労働者12万人を対象とした調査では、軽症であっても
「肥満症 (高BMI)」、「高血圧」、「高血糖」「高
グリセリド(中性脂肪)血症」、「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は何も持たない人より心臓病の発
病リスクが5.1倍も増加し、2つ持つ人は全く持たない人に比べ心臓病の発症リスクが10倍ちかく(9.7倍)に、3〜4つ併
せ持つ人ではなんと31倍にもなることが分かりました。このように、たとえ異常の程度は軽くても複数の危険因子が重
複しているケースでは、動脈硬化が起き易いのです。
◆◇
危険因子の数と心臓病のリスク◇◆
危険因子の保有数
0 10 20 30 40
発症リスク 危険因子: 高BMI、高血圧、高血糖、高コレステロール血症 Nakamura
T.et al :Jpn Circ
J.65.11.2001
アディポネクチンは日本の発見であり、悪玉アディポサイトカインが動脈硬化の元凶であってアディポネクチンがその予
防の働きをしていることがはっきりしてきたことから、今や世界の科学者が必死になってその製薬化にしのぎをけづって
います。パーキンソン氏病のアリセプト(エーザイ)に続く日本の発明になってほしいものであります。但し「アリセプト」の
発売に関しては私には全く不可解な問題がありました。
追記:エーザイのホームページでは「アルツハイマー型痴呆に悩む世界中の人々に、朗報をもたらした「アリセプト」はエ
ーザイの国際戦略品の第一号。この開発によって地球規模の製薬メーカーをめざすエーザイの存在意義を世界に証明
した出来事でした。」と自慢している。そしてアリセプトは1996年11月アメリカのFDAから承認を受け1997年4月に英国、
同年10月にドイツ、1998年3月にフランスで発売を開始し、1999年11月には世界41カ国で販売されている。不思議なこ
とに発明国の日本では1999年11月に42カ国目でやっと発売開始、この間日本では認可されなかったことから、インター
ネット上でアメリカからの個人輸入に頼るしかなかった。誰も問題にしていないようだが、発明国がアメリカの承認から遅
れること3年、日本の厚生労働省の官僚の怠慢なのか?i日本の新薬臨床試験の基準がきびしすぎるのであろうか?
それともエーザイの世界戦略であったのか、・・・・・・・・最近新薬の臨床試験を請け負う臨床試験受託業なるものがあ
るときいたが・・・・・・・・・ 肝心のエーザイも医師会も問題にしないのは何故か不可解である。
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