レビー小体型認知症
oborotukiyo
年を取ると誰でも記憶力、認知力がおとろえてきますが、それがすべて痴呆症につながるわけでは
ありません。痴呆という言葉はマイナスイメージがあって、早期発見、早期治療に支障となってい
るとして、厚生労働省は平成16年12月に行政用語としての「痴呆」を「認知症」に変更しました。
しかし外国語では今までどおり英: Dementia、独: Demenzです。
これまで長年使用してきた医学用語としても、よくない意味があるので変更せよと言われても戸惑
いがあります。統合失調症が何の病気か分からないように(昔の精神分裂症のこと)、今まで痴呆
dementiaといってきたのを認知症と呼ぶにはかなりの抵抗があります。
◆普通のもの忘れとは違うの?
認知症の症状としてよく知られているのは「もの忘れ」ですが、知っているはずの人や物の名前が思い出せないなど、年をとると
誰にでも起こるもの忘れを「加齢によるもの忘れ」といい、「認知症によるもの忘れ」とは区別しています。「加齢によるもの忘れ」
は出来事の一部を忘れてしまうことで、例えば食事のあとに「何を食べたか思い出せない」という状態であるのに対し、「認知症
によるもの忘れ」は出来事そのものを忘れるため、「食事をしたこと自体」を忘れてしまい、「ごはんはまだ?」と何度も催促する
ようなことがあります。最近1〜2年間で、同じことを何度も言ったり聞いたりする、財布などを置き忘れたりしまい忘れたりする、
人や物の名前が思い出せないなどの変化がみられる場合は認知症の可能性が考えられます。
◆レビー小体型認知症の特徴は第一にとても生々しい幻視が見えることです。現実にはありえ
ないのに「子供が部屋に入ってきて遊んでいる」とか「お坊さんが来られてるのになんでお茶だ
さへんの」とか言うのである。「そんな人いてないやん」と言っても「なにいうてんの、そこに
いてはるやん」といかにも目の前に見えているような反応が返ってくる。第二に日によって症状
の変動があり、正常に思える時と様子がおかしい時とが繰り返してみられます。第三に歩きにく
い、動きが遅い、手が不器用になる。時々転ぶことがあるなどパーキンソン症状が見られること
があります。脳血流検査ではアルツハイマー病に似た特徴(頭頂葉・側頭葉の血流低下)に加え
、視覚に関連の深い後頭葉にも血流低下がみられます。又、この病気で注意が必要なことは、幻覚
があると神経遮断薬を使うと、痴呆やパーキンソン症状が悪化しやすいことです。
◆レビー小体型認知症の認識の歴史:この認知症の発見には2人の日本人が大きく貢献してい
ます。ジェームス・パーキンソン氏によるパーキンソン氏病の報告(1817年)から144年も経って
新発見が報告されました。1961年にOkazaki氏がアメリカの患者がなくなって、解剖した結果、レ
ビー小体型認知症であることを発表しました。日本人なのに名前がOkazakiとなっているのは、彼は
英語の論文を書いたためだそうです。一方、小阪憲司先生は1976年から1984年の間に、大脳の病理
解剖によってレビー小体を証明できる認知症を発見して、これは新しい痴呆症であり、レビー小体
病と称することを提唱しました。1995年に至ってやっと正式にレビー小体型認知症Dementia with
Lewy bodies(DLB)として世界に認められました。パーキンソン氏病の発見者ジェームス・パーキ
ンソンJames Parkinson(1755年ロンドン生まれ)は一介の開業医兼薬剤師にすぎず、1817年に震顫
麻痺に関する論文”Essay of Shaking Palsy”を発表したが、1824年69才で世を去っている。アメ
リカの医師が彼の墓石を探したが、どこにも発見されず、「イギリスに生まれ育ったイギリス人で、
科学者でありながら、イギリス人からも世界からも忘れ去られた医師」と嘆いたそうである。何時の
世でも先駆者の受難は避けられないものでしょうか。
◆レビー小体型認知症(DLB)の歴史
1817 Parkinson: パーキンソン病では知的機能は障害されないと記載 1961
1976Okazaki: アメリカ人2例でDLB報告
小阪: 改めてDLBと言う疾患を提唱1979
1980Hakim : パーキンソン病の認知症化の大部分は
Boller : アルツハイマー型痴呆(ATD)の合併によるものと発表
1980
1984小阪 : レビー小体病という名称を提唱
小阪 : びまん性レビー小体病を提唱1995 イギリスで第一回国際ワークショップ開催
レビー小体型認知症(DLB)と称する事がみとめられた2000 井関、小阪: DLBに通常型、純粋型、AD型 がある
★ AD型:
ATDとの診断が可能なほどATD病変がめだつタイプ
文献コウノ博士の認知症大講義(http://www.kyowa.or
jp/info/series-lecture/s113.html)
第2回日本脳神経核医学研究会プログラムに”非アルツハイマー型変性痴呆(Non-AlzheimerDegenerative
Dementias)”の表題で発見者の横浜市立大学医学部精神医学教室の小阪憲司先生の論文が載っていました
ので一部転記させていただきました。かなり難しい論文です
1.レビー小体型痴呆Dementia
with Lewy
bodies(DLB)
DLBは1995年に提唱された名称である。大脳皮質から脳幹に多数のレビー小体が出現し、痴呆を主症状とする
症例は、1976年以降の筆者らの一連の報告により注目され、びまん性レビー小体病diffuse Lewy bodydisease
として国際的に知られるようになった。筆者らはこれをレビー小体病のスペクトルでとらえ、この考えが国際
的に受け入れられている。最近、DLBはATDについで2番目に多い痴呆性疾患であり、痴呆性老人の10〜20数%
を占めると報告されている。臨床診断基準も報告された。最近では、DLBの機能画像で後頭葉の血流低下が注目
されており、また治療上ではcholinesterase inhibiter の有効性が指摘されている。(以下略)専門過ぎて
私にも一般人には理解できないと思いますので割愛させていただきます。
文献: 1.小阪憲司、Dickson DW、Braak H他座談会「非アルツハイマー型変性痴呆をめぐって」Dementia
10:456、1996
2.Kosaka K.Iseki E:Resent advances in dementia research in Japan:Non-Alzheimer-type
degenerativedementias、Psychiat clin Neurosci 52:367、1998
3.小阪憲司、井関栄三:非アルツハイマー型変性痴呆の最近の動向.精神医学41、1999
◆認知症の分類
認知症はその原因から、いくつかの種類にわけることができます。認知症はその原因から、いくつかの種類にわけること
ができます。脳の神経細胞の異常が原因で起こる「変性性認知症」には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、
前頭側頭型認知症などがあります。他に脳梗塞など脳の血管の異常が原因で起こる「脳血管性認知症」、脳外傷や脳腫瘍、
脳炎などで起こるその他の認知症があります。認知症で最も多いのは、変性性認知症の代表であるアルツハイマー型認知症
で、全体の約50%を占め、次いで脳血管性認知症およびレビー小体型認知症の20%で、これらは三大認知症と呼ばれてい
ます。
☆メンタルテスト
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里わの火影(ほかげ)も 森の色も
田中の小路(こみち)を たどる人も
蛙(かわず)のなく音(ね)も かねの音(おと)も
さながら霞(かす)める 朧月夜