裁判日記

裁判のこと 2



弁護士さんのところへ行って何ヶ月かした頃、


過労自殺についての取材を 受けてみませんか という話がありました。


弁護士さんを通してのお話でした。


 N○Kのドキュメンタリー番組だそうです。




身が震えました。



ただでさえ、肩身狭く 暮らしています。


夫を死なせてしまった という ものすごい自責の気持ちが昼となく、

夜となく襲ってくる毎日です。


自分の心を立て直すことさえ ままならないその頃、



テレビに出る?


心境を語る?


何を考えているんだN○K・・・・




私を通して、一体何を語らせたかったのでしょう?


報道としては面白いのかも知れません。


「過労自殺」が 新聞にちらほらと取り上げられる時代でした。



でも、一旦、収まりのついた頃ならともかくも、彼が亡くなって1年もたっていないその頃


日々をやっとの思いで 送っていたその頃


遺族を引きずり出して、「同じ思いをしている人たちの励ましになれば」なんていう言葉で


「今自死したい人たちの歯止めになれば」なんていう言葉で



番組を作ることが どれほどむごいことか、考えていたのでしょうか。




他の人たちの励ましなんて どうでもいい。


私は、私を立て直すのに精一杯でした。



私は失敗してしまったのに


彼を助ける事など出来なかったのに。


だから 私に語れよ と?


魂をえぐり 血が噴出すようなこの話・・・




止めて下さい


止めて下さい。



生きているだけで精一杯なのです。


子供がいるのです。


私はまだ壊れるわけには行かないのです









感情的に書きなぐった手紙を弁護士さんに送り、


今後一切、その手の話は持ってこないで欲しいことを伝えました。



けれども


弁護士さんからの返事は




「訴訟を起こした という事は、同時に 公に公表されてもかまわない 

という意味を持つことです。

今後も新聞、ニュースに取り上げられることもあるかも知れません。」

ということでした。




私はそんな事 よく知りませんでした。


勉強不足だと言いたければ言ってください。


でも、知らなかったから第一歩を踏み出してしまった。


良かったのか悪かったのかは まだ分かりません。





その数日後、新聞の片隅に 訴訟を起こしたことについての記事が載っていました。


弁護士さんたちの計らいで 名前だけは伏せてもらっていましたが、

知る人が見れば直ぐ分かります。



決して悪いことをしているわけじゃありません。


だけど、彼を守ってあげられなかった罪悪感と 背中合わせのこの訴訟は 

堂々と胸を張って行っているわけでもないのです。



遠く離れた土地で報道されるのは、痛くも痒くもありません。

面白くはないけれど「勝手にやったら〜」って感じです。




怖いのは 




私の住む小さな町の人々の目でした。