演奏時間:約35分
この曲はしばしば「ベートーヴェンの交響曲の中で最も有名」と紹介されていますが、日本においては第9の方が有名でしょう。冒頭の「ジャジャジャジャーン」(以下、基本動機)は知っていても、最後まで聴いたことのある人は意外と少ないのではないでしょうか。
「運命」の名称はベートーヴェン自身が付けたものではありません。また、海外ではほとんどこの名で呼ばれることはなく、単に「第5番」、或いは「ハ短調交響曲」と呼ばれています。
第5番の特徴は基本動機の執拗な繰り返しと、「苦悩から歓喜へ」という言葉そのままの構成です。
基本動機だけで出来ていると言ってもいいくらい、凝縮された楽章。特に終わり近くのたたみかけるような進行は、音楽を聴く充実感を与えてくれます。
前楽章の緊張から開放された安堵感があり、小休止といったところでしょう。しかし主題は低音で演奏され、まだ幸福や歓喜といった所までは行きません。
ここで暗さが再び戻ってきます。始まって少し後に基本動機の変形がはっきり出てきます。途中で、ベルリオーズが「象が歓喜している」と表現したおどけた部分がありますが、その後さらに沈み込み、緊張がピークに達します。
第3楽章から休みなく続いて一気に歓喜(音量注意)が爆発します。今までの苦悩はこの時のためにあった、と言わんばかりのにぎやかな音楽が続きます。
ラストは名残惜しいのか、いつ終わるのかと思うほどのしつこさです。