三重県名張市
奈良、飛鳥ドライブの帰りに、渋滞を避けて長谷寺、室生寺を経由する国道165号
で三重県津市に向かった。途中、日没までに時間もあったので名張の町に立ち
寄ることにした。山間の小さな町は南北朝時代の能役者観阿弥が、最初に座を結ん
だ場所として有名であり、日本に探偵小説を確立した江戸川乱歩の生まれた町でも
ある。
強い寒気の影響で天候は不安定で、名張の町には時折冷たい雨が落ちていた。
江戸時代の名張は藤堂高虎で有名な藤堂一門の名張藤堂家の治める土地であった。
江戸川乱歩の父親も伊勢国藤堂藩32万石の藩士だったらしく、役人として名張に住ん
でいた。名張川近くの古い町並みの中に江戸川乱歩生誕の碑がたっていた。乱歩は
生誕後まもなく名張を去ったため、大人になってからも名張の町を意識して何度か町
を訪れている。
山と川に抱かれた小さな町は、落ち着いた佇まいが残りなんだか懐かしい匂いのする
町だった。
江戸川乱歩生誕の碑
名張の町に立ち寄った目的の一つに、以前本で読んだ名張藤堂家屋敷を訪ねて
みたかった。信長の重臣丹羽長秀の三男高吉が藤堂高虎の養子に入り、藤堂
高吉を初めとして名張藤堂家が明治まで続いた。
上級武士の屋敷が現存する例は全国でも珍しく、高台の上に陣屋の遺構とともに
屋敷が公開されていた。古い屋敷、民家、商家を見学するのも旅の大きな楽しみ
でもある。
屋敷の係りの人は、郷土の文化財を丁寧に説明してくださり、名張藤堂家の歴史
も判りやすく解説してくれた。とても気持ちが良かった。