日本には美しい城が多く、観光の目玉になっている。滋賀県彦根市、琵琶湖畔に
とりわけ美しい城がある。井伊家(徳川四天王)の城であった彦根城。
国宝の天守閣は大きくないがバランス良く、黒板張りが戦国期の雰囲気も伝える。
平山城に属する城郭は保存がいい。櫓、城門、御殿など江戸時代からの建造物が
多く、映画、ドラマのロケにも何度も使われている。最近、修復されたようだ。
とにかく自然の緑と城郭の建物との調和が良く、城の背後に広がる琵琶湖が城の
守りであるとともに城の美しさを更に引き出している。二十歳の時に桜が満開の時に
彦根城を訪れたが、桜の花に包まれた城郭と琵琶湖のコントラストは今でも目に浮か
ぶ。今まで見た桜の風景で最も記憶に残るものだ。
彦根の城下町を訪れると必ず井伊直弼のことを思う。幕末の彦根藩主であり、幕府
の大老として、たしか四十を過ぎてから歴史の舞台に登場した。開国をした激動の幕
末に安政の大獄を断行し、桜田門外の変で水戸浪士に暗殺された。直弼は美しく静か
な彦根で静かに人生を過ごすはずであったのに、歴史は彼を引きずり出して闇に葬り
さった。もう一度、名作「花の生涯」でも読み返してみよう。そういえば、城の近くの公園
に「花の生涯」の文学碑が建ち、直弼を暗殺した水戸から送られた梅が植えられていた。
皮肉にも幕末、徳川を守る立場の御三家と徳川四天王が敵対してしまった。
気が向くと横浜の桜木町から近い掃部山(かもんやま)公園に足を運ぶ。そこには、
横浜開港に大きくかかわった井伊直弼の銅像が、今や日本を代表する巨大な港町に
発展した横浜の港を見下ろしている。直弼は現在の日本をどんな眼差しで見ているのか。
彦根の周辺、琵琶湖畔には天下人の城跡が多い。彦根の南部には織田信長の壮大な
安土城跡があり、彦根のすぐ隣町の長浜は秀吉が嫁のオネさんと最初に暮らした城下
町だ。天下人とは言い難いが、秀吉側近の石田三成が住んだ佐和山城跡も残る。みな
琵琶湖の水面を眺めながら様々な夢を描いたに違いない。
滋賀県彦根市
桜田門外の変
彦根城で最も美しい風景だ。記念
写真はこのポイントで。