第4話:嵐にやられてメッタメタ【2】

助けを求める声に、慌てて駆けつけたボーボだが、堅く閉ざした金属の檻はどうにもならない。
こんな所で死ぬのは嫌だと、泣き叫ぶ忠太…仲間達も駆けつけたものの齧って食いちぎれる代物ではない相手に、絶望感が広がる。
そんな中、必死に救出の手だてを考えていたガクシャが、うまい手を考え出した。早速、実行…と、言う時シジンの耳が
人間の足音をキャッチした。慌てて物陰に隠れるが、このままでは忠太が見つかってしまう…すると、イカサマが突然走り出した。
「おいっ、どこへ行くんだよ!?」
「へへ、こういうことはあっしに任せておくんなせぇ。」
イカサマは、自慢の足で人間の前をすり抜けると、厨房と反対方向逃げて行った。それを追って人間の足音も、次第に遠ざかった。
この隙に、作戦実行。スプーンをネズミ捕りの下にこじ入れてテコの原理でこじ開けようと言うものだ。タイミングを見て、ガクシャが
ボーボに飛び降りろと指示を出す。ボーボの体重と勢いで、見事ネズミ捕りは弾き飛ばされ、忠太も吹っ飛んだが無事に脱出できた。
「ごめんなさい…僕、みんなにご迷惑をかけちゃって…」
「なあに、俺たち仲間がシッポを合わせりゃ、怖いもんなしさ。この調子でノロイの奴、島から追い出してやろうぜ!」
迷惑をかけたと、しょんぼりする忠太をガンバが元気付ける。と、ボーボの鼻が風の匂いの変化を感じ取った。もしかして…
慌てて甲板に出たヨイショは、向こうに見える黒い雲を発見した。嵐が来る…それを聞いて、呑気なことを言うガンバに、ヨイショが釘をさす。
「忘れるな、ここは海の上だ。どこへでも逃げられる陸(おか)の上とはわけが違うぞ」

やがて、黒い雲は空を覆い雨が降り出して風も強くなっていく…海は荒れはじめ、波が大きくなって、船が揺れはじめる。
そんな中、ガンバと忠太は、揺れに合わせて転がる樽の上に乗りはしゃいでいる。
「いい加減にしないと、今に怪我するぞ!」
だが、ふたりにはヨイショの注意もどこ吹く風。しかし、揺れはますます激しくなって樽は壁に激突して大破。船底の積み荷も崩れ始めた。
幸い、彼らに怪我はなかったが船底の明かりも消え、船内にはけたたましい非常ベルと人間の怒号が交差していた。
いよいよ危ない、彼らは船を捨てて逃げるため、甲板へと向かった。夜、真っ暗な海はまるで巨大な生き物のようにうねり、
船を包み込むほどの波が襲ってくる。
「……!」
閃く雷光と轟く雷鳴の下で、その凄まじく変化した海!その猛烈な波を浴びたガンバは、思わず叫んだ。
「海だ…これも海なんだ!」
彼らは、船を捨てて荒れ狂う海に飛び込んだ。その背後で、船は海に飲まれて行く…
「こんなことなら…もうちょっと、まともに泳ぎの練習しとくんだった…」
慣れないことだけに、ガンバは荒れる海で悪戦苦闘。そんなガンバ助けた自分を、逆に励ますガンバに忠太はちょっと苦笑い。
しかし、波はますます激しく、忠太はガンバを見失ってしまう。必死に名前を呼び、姿を探す忠太は波にさらわれそうになるガンバを発見
慌てて救出に向かった。

こうして、悪夢のような一夜が明け…ガンバは気が付くと、半分に折れた救命浮き輪の上にいた。
「俺…助かったのか…」
仲間の顔を確認して、思わずガンバはホッとする。
「今度ばかりは、さすがのガンバも参ったようだな?」
ヨイショの言葉に、ガンバは負けじと返した。
「へへ…でも、俺またグンと海が好きになっちゃったよ」
笑いに包まれたところへ、イカサマが向かってきた。だが…
「ダメだ、ボーボの姿はどこにもいねぇぜ」
「えっ、ボ、ボーボが…いないの…?」
「そうなんだ。あちこち捜してみやしたが…」
ボーボの行方が分からないと知ったガンバは、慌てて海に飛び込んだ。
「ボーボ、いま…助けに、行くぞ!」
だが、ガンバ自身もヨレヨレの身体。逆に溺れてしまい、イカサマが慌ててガンバを救出した。
「ガンバ、おめぇにはここで寝ててもらうぜ…」
「よおし、みんな手分けしてボーボを探すんだ」
ヨイショの言葉に、彼らは海に飛び込みボーボを探す。だが…必死の捜索も空しく、手掛かり一つない。重い空気が仲間を支配する。

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