第6話:たのしいたのしい潜水艦【2】

ガクシャに促されて、ヨイショは重い口を開いた。
「そう、あれは俺が船乗りネズミのボスとして最初の航海の時だった…確か、あざらし島とか言う殺風景な島だった。
俺は、船乗りネズミのボスとして、島のネズミに挨拶をしようと、でかけたのよ…」
ところが、雷鳴の下で彼らが見た光景は一面に転がる、野ネズミの死骸…後で分かったことだがそれは、ノロイの仕業だった。
空は厚い雲に覆われ、雨も降ってきた。ともかく、様子がおかしいので、彼らは船に戻ろうとした。
そして、港近くの岩場まで来た時…!
彼らの目の前に、巨大な白い影…ノロイが立ちはだかった。
「海賊だったご先祖から、イタチの恐ろしさはよーく聞いていたが…まさか、イタチが群れを成して行動するとは!
それでも俺はボスとして逃げるわけにいかず、敢然と奴に立ち向った!だが…どうしたわけか
奴の目を見たとたん俺の身体は動かなくなった…」
すると、ノロイはわざと視線を逸らした。その隙にヨイショは逃げるが、それをいたぶるようにノロイが追ってくる。
そして、ついに岩壁を背に追いつめられてしまい…
「……!」
ノロイの爪が、ヨイショの目に…!
「あとは、何がどうなったのか自分でも良く覚えていない。気がついた時は、ガクシャに助けられていた…」

ヨイショの話は、ガンバ達にノロイの恐ろしさを改めて認識させた。重い空気が支配するその場を離れ、シジンは甲板に出た。
「地獄の天使、ノロイ…おおノロイ、ノロイよ…」
と、彼の耳が妙な音をとらえた。海がざわめき、異様な気配…
「来る!何かが来るぞ!」
シジンの叫び声に、仲間が集まった。
「あれを見ろ!」
シジンが指差す方角から、巨大な影が近づいてきた…!
こちらに近づいてくる巨大な影…
「島だ、島だ!ヨイショ、島が見えてきた!」
勘違いするガンバに、ヨイショが言う。
「バカ、よく見ろ。島が動くか?」
確かに、その影は島に見えなくもないが…次第に近づいてくる。
「わーっ、島が動いてる!地震だ地震だーっ!」
「うるさいんだよっ、おまえは…」
騒ぐガンバを、ヨイショが押さえつける。
「く…鯨だ!」
「ああ、違げぇねえ…」
「鯨だってぇ?」
ガンバは、初めて見る鯨に呆然。と、その鯨がこっちに向かってくる。慌てて逃げようと言うガンバに対し
ヨイショは、凶暴性はないしこのままじっとやり過ごせと言う。
「今、下手に動いたら餌と間違われて、飲み込まれてしまうかも知れませんぞ」
彼らは、見張台を支えるロープにしがみつき、鯨が去るのを待った。鯨がそばを通るとそれだけで大きく波がうねり
しぶきが洪水の如く押し寄せる。
「何でぇ、意外と大したことなかったな。もう行っちまったぜ」
収まってみると、大した事がないとガンバは虚勢を張るが…
「まだこの真下にいるぞ!」
ヨイショの緊迫した声に、慌てて下を覗くと…海の底に鯨の巨大な影が!
「わーっ、早く行っちまえーっ!」
再びロープにしがみつき、絶叫するガンバ。そこへ、再び海が盛り上がり鯨が海面に出てきた。
潜水艦は鯨の背中に乗ってしまい、そこを転がって海に転落。さらに、泳いでいく鯨の尾が潜水艦を直撃。
このショックで、潜水艦はあえなく大破・沈没してしまった…

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