ヨイショの号令で、彼らは牛に立ち向かった。それぞれが、足を持ち上げようとしたり揺れるシッポの房を攻撃したり、背中に乗ってみたり…そんな中
ボーボは目の前の乳房に飛びついてしまう。すると、さっきのこともあって神経質になっていた牛は、たちまち大きな声を上げて、暴れまわった。
彼らの「特訓」は、あえなく失敗。しかも、牛はその場に横たわってしまった。こうなると、どうしようもない。
「た、た、た…退却ぅーっ!」
ヨイショの号令で、退散。慌てて、安全なところまで退避したガンバ達。
「…手強いなあ」
と、ガンバは思わぬ苦戦に当惑顔。すると…何やらガクシャがお手製コンパスで、牛の身体を計っている。
「ん、よろしい!できた、できた!」
ガクシャは、仲間のもとに帰ってくると
「諸君、喜べ!たった今、我輩が大作戦を作り上げた。全ては頭脳、アイディアであるな。ただ闇雲に突っ走って、ひとの足にマメを作らせるような、
そんな単純なやつは、この際通用しないのであーる」
と、ガンバにマメだらけの足を突き出して皮肉を決め込むと、柵の上に上がって自慢げに「大作戦」を説明し始める。
「まず、ボーボ」
いきなりの指名に、ボーボはちょっとビックリした様子で
「あ、あい…」
「君は、穴掘りが得意だ」
「う、うん…」
「君は、眠っている牛を起こさないようにして、牛のそばに大きな穴を掘ります」
「うん、分かった…」
「次は、忠太君」
「はい…」
「君は、できるだけ牛の目の前に進んで得意の歌を歌ったり、チョロチョロと動き回ったりして牛の目を覚まさせます。怒った牛は、忠太をやっつけ
ようと立ち上がる。そして、そこへ登場するのがイカサマだ」
「ヘッ、おいでなすったな」
「イカサマは、ツツツッと牛の前に進み出て得意のダイス投げ…ヤッ!バチーンと、牛の目に命中。目が見えない牛ちゃんは、そこら辺を暴れだす。
そして、さっきボーボが掘った穴にドッカン」
ここで、一呼吸置いて
「そして、これからが肝心だ」
「うん、うん」
そろそろ…と、期待しているガンバとヨイショが身を乗り出す。
「まず、ヨイショが…」
「ウヒョーッ、おいでなすったーっ!」
「その怪力に物を言わせ、暴れる牛のシッポをムンズ。強力な武器でもある、大事なシッポを押さえられてさすがの牛は、モォー動きが取れない!」
ガクシャの駄洒落に、仲間が笑った後
「さて、いよいよ作戦は大詰めだ。動けなくなった牛に、トドメを刺すのは誰か?」
ガンバは、今度こそ自分が…と、身を乗り出す。
「それは」
「それは…?」
「シジンである!」
これには、ガンバも思わずガクッ。
「シジンは、牛に素早く駆け寄ると…ガブーッ!牛の最大の弱点、オッパイをひとかじり。たまらず牛はあえない最期…以上、ガクシャ大作戦おわり」
と、柵の上から降りてしまう。
「え…終わり?」
一方、ガクシャは自慢げだ。
「どうかね、諸君」
「いやあ、さすがガクシャだ」
「勝利間違いなしです!」
しかし、名前を呼ばれなかったガンバは、ガクシャに急き込んで言った。
「ち、ちょっと待ったー!あ、あのなあガクシャ、何か忘れてやいませんか?」
「はてね…おお、そうだ!大事なことを忘れていたである!」
再び、ガクシャは柵の上に登ると
「この作戦の総指揮は、このガクシャ様が執る!」
「いいぞ、大賛成」
「お前が立てた作戦だ、しっかりやれよー」
仲間達の声を遮るように、ガンバが大声を出す。
「そんなことは、どうでもいいよ!俺だよ俺、俺の出番はどこにあるんだよ?」
柵の上まで登って、ガクシャに詰め寄るガンバだが…
「おおガンバ、いたのか。君の役目は…これだ!この作戦の間じゅう、総指揮官ガクシャ様の疲れた足をマッサージすること!よいな!」
これにはガクッと、下に落ちたガンバだが
「嫌だ、嫌だ!そんなの嫌だっ!」
と、大声を上げるが
「言うことを聞けっ!我輩は、総指揮官であるっ!」
ガクシャに馬乗りにされた上に
「諦めなよ、指揮官殿は足のマメのことで、相当しつこくおめぇのことを恨んでるぜ」
「トホホ…」
イカサマに言われて、ガンバは渋々従いガクシャの身体をマッサージ。そして、準備は整った。
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