第13話 特訓!!モーモー大作戦【3】

「作戦開始!作戦その一、ボーボの穴掘り」
ボーボは、必死に穴を掘る。
「作戦その二、忠太の目覚まし」
忠太は、牛の鼻先に駆け寄ると
「起きろ!起きろっ!」
と、大声をあげた。それに反応して、牛が目を開けゆっくりと起き上がった。
「よし、その三。イカサマ!」
「ようし、チョロのサッといくぜぇ!」
イカサマは、勢い良くサイコロを牛目がけて投げつけたが…大きくアクビした牛の口の中に、サイコロが飛び込んでそのまま呑み込まれてしまった。
「ありゃあ…!」
そして、牛は再び横になってしまった。
「あらら…また寝ちゃった…」
「おいガクシャ、俺の出番は?」
「私は、どうしたらいいの?」
ヨイショとシジンに詰め寄られて。さすがのガクシャもしどろもどろ。一方、慌てたイカサマは、必死になって牛の口を開けようとするが…
「おい…俺のサイコロ返してくれよ。返せったら、返せってんだい!」
イカサマが、怒鳴り散らしても牛は全く反応しない。そして、ガクシャもついに…
「えーと、その、失敗、でしたな。この作戦は…ハハハ」
これに憤然としたヨイショ達は、一斉にガクシャに背中を向けて
「肩、揉めっ!」
そして、サイコロを諦められないイカサマは
「おいボーボ、おめぇも手貸してくれよ。サイコロ、取り返すんだからよ…」
「うん、分かった…」
何とか、牛の口をこじ開けようとするが牛はびくとも動かない。何とかしようと悪戦苦闘している彼らのそばを、一匹の虻が羽音を立てて飛んで行く。
そして、牛の尻に止まるとその針をブスリと一刺し。
「……!」
これにはたまらず、牛は悲鳴を上げて立ち上がった。それを見てガクシャが
「うーっ、やっぱり作戦成功!ヨイショ、出番だ、シッポをつかまえろ!」
「オッケー!」
と、飛び出したもののその大きさと勢いに
「とは、言うものの…ムリだあ…」
彼らは、右往左往して突進する牛から必死に逃げる。そして、先ほどボーボが掘った穴に逃げ込んで難を逃れた。
「いやあ、我輩の計画も捨てたもんじゃない。ボーボの掘った穴が役に立ちましたぞ」
「おい、そのボーボがいねぇぞ…?」
その時、ボーボの悲鳴が。
「助けてーっ!」
何と、ボーボは牛の尻尾に絡み付いてしまっていた。このままでは危険だ。
「あっ、ボーボだ!」
たちまち突進するガンバに、ガクシャが
「ああ、ガンバ…危ない!こういう時こそ、冷静に作戦を立てて…」
と、引きとめようとするが
「ヘッ、冗談!作戦なんてクソ食らえ!突進あるのみーっ!」
と、暴れる牛を追いかける。そして、牛に追いつくとその乳房をガブリとひと齧り。
「……!」
虻に刺されるわ、乳房は齧られるわで、牛はますます暴れ回り牧場の片隅にあった小屋に激突。その木戸を破壊して小屋の中でやっと止まった。
何とか、ボーボを救出できたガンバは
「へへ、ひと齧り作戦、大成功。へへへ…」

その後、彼らは疲れた身体を引きずって歩いていた。中でも、ガクシャは杖を突きながら歩いているが、足のマメが痛むのもあって思うように
歩けず、つまづいて倒れてしまう。
「おい、ガクシャ!遅いぞ!もとはと言えば、お前のヘンテコ作戦で時間を食っちまったんだぞ!」
仰向けに倒れたガクシャに、ガンバのヒステリックな声が飛ぶ。
「起きろよ!立て!歩け!」
なおも飛んでくるガンバの言葉に、ガクシャはムッとしながらも立ち上がって、ヨロヨロ歩き出す。
「フン、あの作戦だって、俺をいいところで使ってりゃ、ちゃーんと成功したのによ」
ガンバは、ガクシャのそばで当たり散らす。
「さあ、歩けよ!イチニ、イチニ…」
ガクシャに対して、嫌味な口調と態度を取り始めたガンバを、たまりかねてヨイショが制する。
「止せ、ガンバ…ちと、やり過ぎだぜ。もとはと言えば、お前が作らせたマメで歩くのが遅ぇんじゃねぇか。なあ、ガンバ…?」
しかし、ガンバの怒りは収まらない。
「フン、それはそれ!さっき、俺は仲間はずれにされたんだぜ!ありゃ、ショックだったよ!あの恨みは、おっきいね!」
ガンバの剣幕に、ヨイショもそれ以上何もいえない。
「さあ、歩きましょう。ひとりだけ遅いと、みんなが遅れますからね」
なおも、嫌味な態度でガクシャを歩かせるガンバ…やがて、そんな彼らの目の前に砂丘が広がった。
「こりゃ、いけねぇや…砂地がずーっと続いてるぜ」
ヨイショの言葉に、ガンバは砂地に降りてみるが足がすぐに沈んでしまう。
「ホントだ…こりゃ、だいぶ歩きにくいな…」
「えー、諸君」
と、ガンバの頭上でガクシャの声が。
「ここはひとつ、急がば回れと行きませんか?つまり、遠回りであるがあの森を抜けて行くんです。その方が、安全でありかつ食料の心配もない。
いかがでしょうかな?」
この当然ともいえる提案に、仲間達は諸手を上げかかる。ガンバには、それが面白くない。
"チェッ、ガクシャめまた気取っちゃって…ようし"
「反対、反対、はんたーいっ!」
ガンバは、突然大声を上げる。そして、砂丘の方から
「俺はこっちを行くぞ!何が何でも、絶対こっちだ!」
これには、ヨイショが少し呆れた顔で
「ガンバ…おめぇ、何もそこまで意地を張らなくても…」
「イーッ!誰がガクシャの言う通りになんか、なるもんかい!」
これには、ついにガクシャも頭にきた。
「さあ諸君、あんなバカはほっといて出発しましょう、出発!」
「ガクシャの言うことなんか聞くな!俺と行こう、俺と!」
「森へ行きましょう!森へ」
「砂漠へ行こう、砂漠へ!」
「森へ!」
「砂漠へ!」
ガンバとガクシャは、お互い譲らず大声を張り上げ仲間達もオロオロ…と、
「ちょっと、待ったーっ!」
イカサマが割って入った。
「こういうことは、だ。後に恨みが残っちゃいけねぇってことよ」
そして、足元の草をむしると即席のくじを作って差し出した。
「さ、長い葉っぱがガンバ、短いのがガクシャだぜ」
その結果、ガンバ・ボーボ・イカサマ・忠太とガクシャ・ヨイショ・シジンの二組に別れることに。
「よし、これで決まった」
「文句なし!」
「では、出発!」
「でっぱーっ!」
こうして、二組はお互いに背を向け合って歩き出した。

だが、森を歩き出してまもなくガクシャが何かためらったように立ち止まった。
「どうしたい?ガクシャ」
「…いやあ、我輩としたことがついカーッとなってしまって…やはり、連れ戻すべきだ。砂漠には危険がたくさんある」
「ようし、任せとけ!」
ヨイショ達は、先ほどの地点に戻り始めるが
「……!」
シジンの耳が「異変」を捉えた。
「こ、この音は…いかん!砂嵐の音だ!」
一方のガンバ達も、歩きにくい砂地を必死に歩いていたが…
「何だ…あの雲は…?」
青空は、見る見るうちに黒い雲に覆われて風が吹き始めた。風は、たちまち激しくなり巻き上がる砂嵐で前が見えなくなった。
「うああああっ…!」
果たして、彼らの運命は…?

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