「ホントなんだってば。ボク、この目でちゃんと見たんだよ。このお兄ちゃん達はな、これから山の向こうの遠いとこに出かけてって、
ノロイと言う悪いイタチをやっつけるんだってさ。ボクも一緒に連れてってもらって、おお暴れするんだ。エイッ、ヤア!トウ!」
その気になって、独りはしゃぐピョンを見て母親ウサギは
「まあまあ…あの、ピョンがあんなことを言ってますけど、まさか…?あの…」
と、不安げな表情を見せる。
「でぇじょうぶ。あっしに任せておくんなせぇって」
自信ありげに、イカサマはその場を離れて独り張り切るピョンのもとに。
「あー、坊や…」
「オッケー、なあに?」
「ちょぃと、坊やに話があるんだ」
無邪気に駆け寄ってくるピョンに対して、イカサマは懐手のまま
「なあ坊や、悪りぃけどよおめぇを連れて行くわけにゃ、いかねぇんだよ…」
「どうして?」
たちまち、ピョンは半べそ状態に。
「ん…つまりよ、おめぇには家もあれば、おっかさんもいる。あっしらとは、ちょっと違うのよ」
「どう違うの?どうして、どうして、どうして?」
ちょっと斜めを向いて、わざとピョンと視線を合わせないような格好で答えるイカサマ。しかし、この「ニュアンス」をピョンが理解できるわけもなく
泣いてますます駄々をこねるので、イカサマは返事に困る。
「どうして、どうして、どうして!?ボクが嫌いなの?」
「い、いやそうじゃねぇって。でぇ好きよ。でもなあ…ここが旅人の辛れぇところでよ…その…」
「いやだ、いやだ、いやだーっ!」
とうとう、ぴょんは泣き出してしまう。
「ご迷惑なんですよ。ピョン、聞き分けのないことを言わないで…」
母親に宥めすかされても、なお母親の胸で泣いて駄々をこねるピョン。しかし、ガンバ達にとってはこれ以上グズグズしていられない。
「何とお礼を申し上げたら良いか…本当にありがとうございました。ささ、ご挨拶なさい」
しかし。ピョンは母親の胸にすがって泣くばかり。
「いやだ、いやだい…」
その様子を見て声をかけそびれていたガンバは、イカサマに促されて
「じゃあピョン、元気でな!」
彼らは、別れを告げると走り出した。
「お兄ちゃんたち、ひどいよー。そんなのないよーっ」
あくまで泣いて駄々をこねるピョンに、ちょっと後ろ髪引かれる感じはするが、ガンバ達はカラス岳山頂を目指して再び走り出した。
ひとつ前の話へ
お話の続きへ 